教育を考える 2026.4.17

「なんで?」「自分でやる!」「ダメ!——3歳〜5歳の困った行動、どうすればいい?

編集部
「なんで?」「自分でやる!」「ダメ!——3歳〜5歳の困った行動、どうすればいい?

「なんで?なんで?」が止まらない。
「自分でやる!」と言うのに、うまくいかなくて泣く。
止めると癇癪になる。でも危ない。汚れる。時間もない。

毎日のことだから、だんだん消耗してくる。「また今日も……」と自分を責めてしまう夜もあるかもしれません。

でも少しだけ、立ち止まって思い出してほしいことがあります。

あの子は以前、泣くか眠るかしかできませんでした。

あなたの腕のなかで、世界のすべてはあなただった。それがいまや、「自分でやる」と言い、「なんで?」と問い、行きたい場所へ自分の足で走っていく。この「手がかかる」は、あの赤ちゃんが確かに大きくなった証拠です。

そのことを頭の片隅に置きながら、今夜の困りごとを一緒に見ていきましょう。

手をあごに当てて、伏し目がちに悩んでいる女性

「なんで?なんで?」が止まらないのはなぜ?

3歳を過ぎると、子どもの「なんで?」は本当に終わりがなくなります。

「なんで空は青いの?」「なんでお父さんはひげが生えるの?」「なんでこの虫は死んじゃったの?」——答えても答えても次の「なんで?」が来る。夕方、疲れているときに限ってそれが続く。

これは子どもが「世界に働きかける力」を手に入れた証です。

それまでの子どもは、与えられた世界の中で生きていました。3歳を過ぎると、自分から世界に問いかけられるようになる。「なんで?」はその最初の道具です。好奇心が言葉になった瞬間、ともいえます。

✂ 今夜使える一手

全部に答えなくていいです。

「いい質問だね」とひとこと返すだけで、子どもは「自分の疑問は大切にされている」と感じます。答えを知らなければ「大人も知らないことってあるんだよ。一緒に調べてみようか」でじゅうぶんです。

むしろそのやりとり自体が、知りたがる力を育てます。

うんざりしてしまった日は、「今日はもう質問タイム終わり。明日また聞かせてね」と伝えても構いません。親が限界を伝えることも、子どもへの正直なコミュニケーションです。

「自分でやる!」→できない→泣く、のループ

靴を自分で履こうとする。うまくいかない。でも手伝おうとすると「ちがう、じぶんで!」と怒る。しばらくしてまたうまくいかない。今度は泣く。

親としては「じゃあどうしろというんだ」としかなりません。

これは子どもの中に、ちぐはぐな二つの力が同時に育っているから起きています。「自分でやりたい」という意志は本物です。でもまだ体と手先が、その意志に追いついていない。その落差が、癇癪や涙になります。

エリクソンという発達心理学者はこの時期を「自律性を育てる段階」と呼び、「試みを尊重されること」が子どもの自信の土台になると述べています。逆に言えば、失敗するたびに止められたり手を出されたりすると、「自分でやってもどうせうまくいかない」という感覚が育ちやすくなります。

✂ 今夜使える一手

時間があるときは、待つ。靴が逆でも、今日はそれでいい。

時間がないときは、「今日は急いでるから手伝うね。次はゆっくりやろう」と声に出して伝える。「手伝われた」ではなく「次がある」と伝わると、子どもは切り替えやすくなります。

泣いているときは、解決しようとしなくていいです。「やりたかったんだよね」「悔しかったね」と気持ちを言葉にするだけで、子どもは「わかってもらえた」と感じ、落ち着きやすくなります。

リビングで笑顔で子どもと遊ぶ家族

止めると癇癪になる。でも危ない・汚れる・時間がない

虫を素手でつかもうとする。台所に入ってきてなべを触ろうとする。出かける直前に水たまりに突進する。

止めるたびに泣いて怒る。でも止めなければ怪我をするか、大惨事になるか、遅刻する。

この綱引きは、毎日何度も起きます。

少し思い出してみてください。1歳のころ、あなたの子はテレビのリモコンをかじっていませんでしたか。まるで大好物のように、真剣な顔で。

あれは遊んでいたわけでも、困らせたかったわけでもありません。「これは何だ?」と確かめていたのです。世界がまるごと実験台だった。

3歳になっても、それは変わっていません。虫も、なべも、水たまりも、全部「触ったらどうなる?」という実験です。好奇心の向かう先が、リモコンから世界に広がっただけ。「ダメ」と言われるほどその方向に引き寄せられるのも、禁じられたことへの好奇心も、ある意味でとても健康なサインです。

✂ 今夜使える一手

「制止」より「方向づけ」を意識してみてください。

虫を触りたいなら、安全な種類を選んで一緒に観察する。台所に入りたいなら、洗い物の泡を触らせる。水が好きなら、出かける前にコップ一杯の水で遊ばせる——やりたい気持ちそのものは否定せず、実現できる形を少しだけ用意してあげることで、「ダメ」の回数が減っていきます。

それでも危ないことは止めていい。そのときは「ダメ」より「危ないから止めるね」と理由を一言添えると、子どもは「否定された」より「教えてもらった」と受け取りやすくなります。

「そんな余裕、いまはない」という日のために

ここまで読んで、「わかるけど毎日それができるわけない」と感じた方もいると思います。そうです、できない日のほうが多いかもしれない。

それでいいです。

発達心理学が伝えていることは、「毎回完璧に対応しなさい」ではありません。肯定的な経験が少しずつ積み重なっていけば、それで十分だということです。

余裕がない日は、ひとことだけ返すことを決めておくと楽になります。

「なんで?」が続いたら——「いい質問だね」とだけ言う。

「自分でやる!」と泣いたら——「悔しかったね」とだけ言う。

止めて癇癪になったら——「やりたかったんだよね」とだけ言う。

説明も解決も、その場ではしなくていい。気持ちを受け取ったというサインを渡すだけで、子どもの受け取り方はずいぶん変わります。

そして、うまくできなかった後で「さっきはああ言っちゃったけど、本当はすごいと思ってたよ」と伝え直すことも、じゅうぶんな関わりです。

子どもの隣で寄り添う親の手元

5歳を過ぎると、また変わる

3〜5歳の「なんで?」と「自分でやる!」が落ち着いてきたころ、今度は少し違う困りごとが出てきます。

「どうせ僕なんて」「どうせ無理」という言葉が出てきたり、友だちと比べて落ち込んだり。それまであんなに自信満々だったのに、と戸惑う親も多いです。

これは後退ではありません。

小学校に入る前後から、子どもは初めて「他の人から見た自分」を意識し始めます。自分を客観的に見る力が育った証です。「どうせ無理」は、自己認識が深まったことの、最初のあらわれでもあります。

あの「なんで?」が「世界への好奇心」だったように、「どうせ無理」は「自分への問い」の始まりです。

そこにどう関わるかは、またべつの話になります。でも根っこは同じです。気持ちを受け取って、小さな一歩を一緒に踏み出す。それだけでいい。

今日も、怒って、疲れて、それでもまだ「どうしたらいいんだろう」と考えているあなたは、じゅうぶんいい親です。

答えを探しているその時間が、もうすでに子どもへの愛情です。

よくある質問(FAQ)

Q. 「なんで?」の質問に毎回答えられなくて自己嫌悪になります。どうすればいいですか?

全部に答える必要はありません。「いい質問だね」と受け取るだけで子どもは満足することが多いです。知らないことは「大人も知らないことってあるんだよ」と正直に伝えて大丈夫。一緒に調べる姿勢を見せることのほうが、知識の答えより子どもの好奇心を育てます。

Q. 「自分でやる!」と言うのに泣くのは、わがままですか?

わがままではありません。「やりたい気持ち」と「まだできない体」のあいだで起きているギャップです。意志と能力が同時に育っているこの時期特有の現象で、自律心が育っているサインでもあります。泣いているときはまず「悔しかったね」と気持ちを受け取るだけで、子どもは落ち着きやすくなります。

Q. 危ないことを止めるたびに癇癪になります。止めないほうがいいのでしょうか?

危ないことは止めて大丈夫です。ただ「ダメ」だけより「危ないから止めるね」と理由を一言添えると、子どもは「否定された」より「教えてもらった」と受け取りやすくなります。また、やりたい気持ちそのものを別の形で実現できる場を少し用意してあげると(洗い物の泡を触らせるなど)、「ダメ」の回数自体が減っていきます。