「ねえママ、なぞなぞ出していい?」と、ちょっと得意げな顔でかけ寄ってくる子。少し前まで「答える側」だったわが子が、自分から「出題する側」になっていく姿に、ふっと嬉しくなる瞬間があります。
なぞなぞを出してくる、その姿に「成長したな」と感じるあのとき。じつはそこには、わが子の心のなかで起きているとても大切な発達の動きが映し出されているのです。
目次
「ねえママ、出していい?」と言える子の心で起きている、ちいさな転換
子どもが「出題する側」に回るとき、頭のなかでは、じつは大きなジャンプが起きています。
答える側でいるとき、子どもは「自分の頭のなか」で考えるだけで十分です。でも出題する側になると、相手が答えを「まだ知らない」と前提する必要があります。「自分は知っているけれど、ママは知らない」とわかっているから、出題できるのです。
何気ない「ねえママ、なぞなぞ出していい?」のひとことは、じつは、わが子の心のなかで「自分」と「相手」をちがう存在として扱う力が動きはじめています。
▼ 答える側と出題する側、頭のなかの違い
答える側
自分の頭のなかで考えるだけでいい
出題する側
「相手は知らない」と前提する力が必要

わが子の「出題したい!」は、人を思いやる心の芽ばえ
「自分の知っていることを誰かに伝えたい」「相手をびっくりさせたい」「いっしょに笑いたい」。なぞなぞを出題する子の心のなかには、こうした温かな気持ちが入りまじっています。
これは、自分のなかにあるものを、相手と分かち合いたいと願う気持ち。そして、相手の反応をたのしみに待てる心の余裕でもあります。
「もう、なぞなぞばっかり……」と少し疲れる日もあるかもしれません。でもじつは、わが子はママの反応がだいすきで、ママを楽しませたくて、ちょっとほめてほしくて出題しているのかもしれません。出題したい気持ちは、まわりの人を思う心の芽そのもの。その気持ちに、笑って、ちょっとほめてあげるだけで、その芽はじんわりと育っていきます。
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問題をつくり、答えをさがしているあいだ、子どもの頭のなかで起きていること
その「出題したい!」が動きだしたとき、わが子の頭のなかでは、じつは複数の力が同時に働いています。
問題をつくっているときは、「答え」と「ヒントになる言葉」をどちらも頭のなかに置きながら、相手に伝わる順番をくみ立てています。これは、短い時間にいくつかの情報を抱えておく力(ワーキングメモリ)を、おうちのなかでフル活用している瞬間です。
答えをさがしているときも、子どもの頭はぐっと働いています。「あ、これかな?」と仮説をひとつ立てては、ちがえば引っ込めて、次のアイデアへ切り替えていく。これは「思いついたものをいったん保留して、ちがう見方をする力」を、笑いながら練習している時間でもあります。
▼ 研究のポイント
ワーキングメモリ、考えを切り替える力、いったん止める力などをまとめて「実行機能」と呼びます。これらの力は4 〜 7歳のあいだに発達し、そのあとの学習や生活の土台になることが報告されています。(カナダ ブリティッシュコロンビア大学、アデル・ダイヤモンド教授ら)*1
なぞなぞは、机に向かわなくても、笑いながらできる「考える力」のトレーニング。子どもが「うーん……」と眉間にしわを寄せている時間そのものが、じつは大きな育ちの時間です。すぐに答えを教えずにじっくり待ってあげることが、お子さんの脳をいちばん伸ばします。
そしてなぞなぞの楽しさには、考える力を育てるだけでなく、心のとても深いところを育てる側面もあるのです。
▼ なぞなぞ中、子どもの頭のなかで動いている2つの力
問題をつくっているとき
「答え」と「ヒント」を頭のなかに同時に置きながら、相手に伝わる順番をくみ立てている
→ ワーキングメモリの練習
答えをさがしているとき
「これかな? → 違う → こっちかな?」と仮説を立てては引っ込め、違う見方に切り替えている
→ 認知的柔軟性の練習

4〜7歳の心で育つ「相手の頭」を想像する力のしくみ
そもそも「相手は自分とちがうことを知っている / 知らない」と理解できるようになるのは、ちょうど4 〜 5歳ごろといわれています。研究の世界では、この力は「心の理論(Theory of Mind)」と呼ばれています。
▼ 研究のポイント
心の理論は、子どもが「自分の知っていること」と「相手の知っていること」の違いを理解できるようになる力で、4 〜 5歳ごろにおおきく育つことが世界規模の研究で示されています。(米国 ミシガン大学、ヘンリー・ウェルマン教授ら)*2
そして、子どもが自分でなぞなぞを出題するようになる時期は、まさにこの心の理論がぐんと育つ時期と重なります。
▼ 研究のポイント
心の理論の発達は、子どもの言葉のやりとりや会話の力と深く結びついていることが、長期的な調査で報告されています。(カナダ トロント大学、ジャネット・アスティントン教授ら)*3
つまり、わが子の「ねえママ、なぞなぞ出していい?」は、相手を想像し、相手とつながろうとする心が動きはじめたサイン。なぞなぞの時間は、その育ちを家のなかでぐっと深めてくれる、貴重なひとときなのです。
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なぞなぞの時間が、お友達関係や将来のコミュニケーションを育てる
出題することは、相手を楽しませる経験でもあります。「これ、当たるかな?」「ヒントを出してあげようかな?」と、相手のことを想像しながら言葉を選ぶ。これは、お友達との会話や、これからの人間関係の練習にもなっているのです。
▼ 研究のポイント
心の理論がよく育っている子どもは、友達関係でうまく協調できることや、まわりから好かれやすいことが、世界中の研究の総合分析で示されています。(オーストラリア クイーンズランド大学、ヴァージニア・スローター教授ら)*4
家のなかで「ねえママ、なぞなぞ!」と笑い合うひととき。それはじつは、わが子の将来人と豊かにつながる力を育てている時間でもあります。なぞなぞを出してくる、そのいまの姿そのものが、未来のお子さんを支える土台になっていくのです。
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今日からできる、子どもの出題を”育てる”ママのひとこと
最後に、明日から取り入れられるちいさなひとことをご紹介します。
それは「うーん、わかんないなあ。ヒントある?」というひとことです。
子どもが出題してきたとき、すぐに答えを言ってしまうのではなく、ヒントを求めてみる。すると子どもは、ママに伝わるようにヒントを工夫しなければなりません。それが、「相手の頭」を想像するいちばんの練習になります。
たくさんやる必要はありません。時間に余裕があるときに、ひとつの出題で大丈夫。出題されたら、まず「うーん、わかんないなあ。ヒントある?」と返してみる。それだけで、お子さんの相手を思いやる力を、おうちでじっくり育てていくことができます。
ヘンテコな問題でも、答えが意味不明な問題でも大丈夫。出題したい気持ちそのものが、わが子の育ちの動きなので、そのまま受けとめてあげてください。
▼ 「ヒントある?」が育てる、相手を想像する力
1. 子どもが出題する
↓
2. ママが「うーん、わかんないなあ。ヒントある?」と返す
↓
3. 子どもが「ママに伝わるヒントは?」と相手のことを想像する
***
なぞなぞをいっぱい出してくれる時期は、思っているよりあっという間に過ぎていきます。「ねえママ、なぞなぞ出していい?」と言ってくれる、いまの時間を可能な範囲でたっぷり楽しんでください。
FAQ(よくある質問)
Q. 子どものつくるなぞなぞの答えがめちゃくちゃです。訂正したほうがいいですか?
A. 訂正しなくて大丈夫です。答えがズレていても、出題したい気持ちこそが心の育ちのあらわれだからです。「その答え、思いつかなかった!」とそのまま受けとめてあげると、お子さんの自信にもつながります。
Q. 同じ問題を何度も出してくるのですが、見守っていていいのでしょうか?
A. 見守って大丈夫です。同じ問題で出題を重ねること自体が、お子さんの自信になっています。出題のしかたが少しずつ上手になっていく姿に気づいてあげてください。
(参考)
*1 Diamond, A. (2013)|Executive Functions. Annual Review of Psychology, 64, 135-168.
*2 Wellman, H. M., Cross, D., & Watson, J. (2001)|Meta-Analysis of Theory-of-Mind Development: The Truth About False Belief. Child Development, 72(3), 655-684.
*3 Astington, J. W., & Jenkins, J. M. (1999)|A Longitudinal Study of the Relation Between Language and Theory-of-Mind Development. Developmental Psychology, 35(5), 1311-1320.
*4 Slaughter, V., Imuta, K., Peterson, C. C., & Henry, J. D. (2015)|Meta-Analysis of Theory of Mind and Peer Popularity in the Preschool and Early School Years. Child Development, 86(4), 1159-1174.









