「ゲームやめなさい!」「何時間やってるの!」「いいかげんにしなさい!」—— 夕方のリビングで、こんな言葉が日課になっていませんか? 子育ての悩みランキングで、「ゲーム・動画がやめられない」は常に上位に入る “国民的ストレス” です。*1
でもじつは、子どもがゲームをやめられないのは、意志が弱いからでも、親のしつけが甘いからでもありません。脳の報酬システムが “そうさせている” のです。
今回は、子どもの脳で何が起きているのかを知ったうえで、「やめさせる」より効果的なアプローチを考えます。
目次
ゲーム中、子どもの脳では何が起きているのか
ゲームをしているとき、脳内では「ドーパミン」という神経伝達物質が大量に放出されています。ドーパミンは、おいしいものを食べたとき、目標を達成したとき、誰かにほめられたときなど、「快」を感じる場面で分泌される物質です。
1998年に科学誌『Nature』に掲載された画期的な研究では、ビデオゲームのプレイ中に脳の線条体(せんじょうたい)という領域でドーパミンが放出されることが確認されました。*2
その放出量は、食事や他の楽しい活動と比べても顕著なものだったのです。つまりゲームは、脳にとって非常に “報酬価値の高い” 活動です。ステージをクリアする、対戦で勝つ、レアアイテムを手に入れる、そのたびにドーパミンが放出され、脳は「もっとやりたい!」と求めます。

子どもの「ブレーキ」はまだ未完成
もうひとつ知っておきたいのは、脳のなかで衝動を抑える役割を担う前頭前野(ぜんとうぜんや)の発達スピードです。前頭前野は、判断、計画、我慢、感情のコントロールなど、いわば「脳のブレーキ」の機能を司ります。ところが、この部分が完全に成熟するのは25歳前後だそう。
つまり、小学生の脳は「アクセル(報酬系)は全開なのに、ブレーキ(前頭前野)はまだ未完成」という状態にあります。ゲームに夢中になっている子どもに「やめなさい!」と叫んでも、なかなか止められない理由はここにあります。
脳の構造的に “わかっていてもやめられない” のは当たり前のことなのです。「何回言ったらわかるの!」と怒りたくなる気持ちは痛いほどわかりますが、脳科学の視点で見れば、子どもの脳はまだ「言われた通りに即座にやめる」機能が十分に備わっていない段階にある、ということです。
「取り上げる」がうまくいかない脳科学的理由
ゲームに夢中のわが子を見て、「もう没収だ!」と取り上げた経験がある方も多いのではないでしょうか。しかし、強制的にゲームを取り上げると、子どもが激しく怒ったり泣いたりすることがあります。
これは「わがまま」ではなく、脳が快楽物質を突然遮断されたことへの反応です。
ドーパミンに慣れた脳は、それが急に得られなくなると不安やイライラを感じるようになります。大人がコーヒーを急にやめたときに頭痛や不機嫌になるのと、メカニズムは似ています。つまり、「没収」は短期的には効果があるように見えても、子ども自身が「自分でやめる力」を育てることにはつながりにくいのです。
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「やめさせる」より効くアプローチ5つ
脳の仕組みを理解したうえで、家庭でできる具体的な方法をご紹介します。
① ゲームの「やめどき」をゲーム感覚で決める
② 「次にやること」を先に用意しておく
③ ルールは「子ども自身」に決めさせる
④ 「やめられた」をほめる
⑤ 親自身のスクリーンタイムも見直す

「敵」はゲームではなく、孤独である
ゲームに過度にのめり込む子どもの背景には、学校での人間関係の悩みや、家庭で承認されていない感覚など、現実で得られにくいものを、ゲームが代わりに満たしているのです。
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「ゲームのやりすぎ」を心配するのは当然ですが、表面的に時間を制限するだけでなく、お子さんが現実の世界で「楽しい」「認められている」と感じられる場面を増やすことが、長い目で見たときの最も効果的な “ゲーム対策” かもしれません。
FAQ(よくある質問)
Q. ゲーム時間は1日何時間までが適切ですか?
A. 目安として「1日2時間以内」とするガイドラインがありますが、睡眠・食事・運動・対面の交流が確保されているかを基準に、家庭の状況に合わせて調整するとよいでしょう。
Q. WHOが認定した「ゲーム障害」とはどのような状態ですか?
A. ゲームの時間を自分でコントロールできない、日常生活よりゲームを優先する状態が続き、生活全体に支障が出ている場合に該当します。「ゲームが好き」とは異なり、学校生活や睡眠、人間関係などへの影響が判断のポイントです。
Q. ゲームを完全に禁止したほうがいいのでしょうか?
A. 完全禁止は、かえって執着を強めることがあります。友だちとの共通の話題になっている場合は、排除が社会的な孤立につながるリスクも。大切なのは「禁止」ではなく「つきあい方」を一緒に考えることです。親子でルールを決め、守れたことを認めながら、少しずつ自己管理力を育てていきましょう。
*1 | パステル総研(2025)|子育てのお悩みランキング2025年版
*2 | Koepp, M. J., et al. (1998)|Evidence for striatal dopamine release during a video game(Nature, 393, 266-268)
*3 | 竹内光ほか(2018)|ネットとゲームへの依存が脳に及ぼす影響(日本心理学会『心理学ワールド』91号)









