あたまを使う/非認知能力 2025.12.12

『まだやりたい!』『もう少し!』️——切り替えが苦手な子への対応法(5〜7歳)

木野未来
『まだやりたい!』『もう少し!』️——切り替えが苦手な子への対応法(5〜7歳)

「あと10分ね」と約束したのに、時間が来ると「まだやりたい!」「もう少し!」と大泣き。宿題の途中で「もうやらない!」と投げ出す。こうした「切り替えの苦手さ」に、多くの親御さんが悩んでいるのではないでしょうか。

今回、こんなお悩みが届いています。

【お悩み相談】
毎日ではないが週に何度か子どもの対応で悩むことがあります。宿題の間違いを指摘すると「もう宿題しない」と言ったり、YouTubeを「あと10分で消そうね」と伝え、その時は「うん、わかった」と言うのに、消した途端に機嫌が悪くなったり。機嫌が悪くなると親に対して「うるさい」と言ったり、睨んだりしてきます。その様子に親である私もイライラしてしまい、解決に至りません。(6歳男の子ママ)

じつは、5〜7歳ごろの子どもは、脳の発達段階として切り替えが苦手な時期。「いまやっていることを止めて、次に移る」という行動には、まだ発達途上の前頭前野の働きが必要で、大人のようにスムーズにはいかないのです。

今回は、YouTube・宿題・時間管理など、日常のあらゆる場面で使える「切り替えをスムーズにする3つのコツ」をお伝えします。

ライタープロフィール

アバター画像

木野未来

元小学校教員

小学校教員・英語専科教員として12年間勤務、これまでに2,000人以上の子どもたちを指導。現在は、教育分野での執筆活動をはじめ、クリエイターやファミリーサポート・里親支援など多方面で活動中。2児の母。
イギリスやアメリカへの留学経験を通じて学んだペアレンティングの視点を軸に、日本の家庭でも実践できるヒントをお届けします。

5〜7歳は切り替えが苦手な時期!

じつは、幼児期から小学校低学年の子どもが切り替えを苦手とするのは、脳の発達段階として自然なことです。

「いまやっていることを止めて、次に移る」という行動には、実行機能と呼ばれる脳の働きが必要です。この実行機能をつかさどる前頭前野は、この時期はまだ発達途上。大人の6〜7割程度の働きしかないと言われています

(関連記事)IQより大切! 将来を左右する子どもの「実行機能スキル」を伸ばす5つの方法

つまり、切り替えができないのは「わがまま」ではなく、「脳が発達途上」だから。親が「私の育て方が悪いのかも」と罪悪感を持つ必要はありません。一方で、「切り替え力」は日々の工夫や声かけで少しずつ育てていくことができます。では、具体的にどうすればいいのでしょうか。

切り替えをスムーズにする3つのコツをお伝えします。

宿題する子ども

【入学準備おすすめ7記事】入学前の不安、解消します!
PR

コツ① 「いつ終わるか」を明確にする

幼児期から小学校低学年の子どもにとって、「あと10分」は抽象的すぎて実感がわきません「どこで終わるのか」を具体的に示すことで、心の準備ができるようになります

■ 区切りのわかりやすい単位で伝える

時間ではなく、子どもが理解しやすい「区切り」で終わりを伝えると効果的です。たとえば、

  • YouTube視聴時:「この動画が終わったらおしまいね」「タイマーが鳴ったらおしまいね
  • ゲーム:「このステージが終わったらね
  • 宿題:「このページが終わったら休憩しよう
  • 遊び時間:「砂時計が落ちるまで遊んでいいよ

「あと○分」という抽象的な時間より、「この動画まで」「このページまで」といった具体的な区切りの方が、子どもには理解しやすく、納得して終われます

時間を区切りにするときは、タイマーを「お知らせ役」にすることも大切なポイント。「ママが止めさせる」のではなく、「タイマーが教えてくれる」という構図にすることで、親子の対立を避けられます。

終了時間の前には、段階的に声をかけることも効果的です。「あと10分だよ」→「あと5分」→「あと1分、そろそろおしまいだよ」と少しずつ心の準備をさせることで、突然終わらされる感覚が和らぎます。そして、時間通りに手を止められたときは、たくさんほめてあげましょう

■ 毎日同じ流れをつくる

「帰宅→おやつ→宿題→YouTube→お風呂→夕食」など、毎日のルーティンを決めておくと、子ども自身が「次は何をする時間」と見通しを持てるようになります。

スケジュールボードや時計に絵を貼るなど、視覚的に見えるようにするとさらに効果的です。

携帯と時計

コツ② 終わった後の楽しみを先に伝える

「やめなさい」だけでは、子どもには「楽しいことを奪われる」という喪失感しか残りません。終わった後に何か楽しいことが待っていると分かれば、前向きに切り替えられます

具体例:

  • YouTube:「YouTube見終わったら、お風呂で宝探しゲームしようか
  • 宿題:「宿題終わったら、おやつにアイス食べようか
  • 公園:「帰ったら、好きな絵本読もうね

ポイントは「次の楽しみ」を先に提示すること。切り替えを「終わり」ではなく、「次への始まり」として捉えられるようになります。

必ずしも特別なご褒美である必要はありません。「一緒に夕飯の準備しよう」「ママとお話ししよう」など、親子の時間そのものが楽しみになることもあります。子どもが「次も楽しそう」と思えれば、自然と切り替えやすくなります。

親子の画像

コツ③ 共感と選択の声かけ

切り替えの瞬間は、子どもにとって「やりたいことを止められる」ストレスフルな場面。そこで大切なのが、感情を認めてから次に進むこと、そして選択肢を与えることです。

■ 感情を認める

いきなり「さあ、次!」と切り替えを強要するのではなく、まず子どもの気持ちに寄り添いましょう。

  • NG: 「約束したでしょ! 早く止めなさい」
  • OK:楽しかったよね」「もっとやりたかったよね」→「じゃあ、次は○○しようか

感情を受け止めてもらえると、子どもは安心して次の行動に移れます。

■ 選択肢を与える

一方的に指示するのではなく、子ども自身に選ばせることで「自分で決めた」という感覚が生まれます。

具体例:

  • YouTube:「あと何本みたらやめられそう?
  • 宿題:「どのページまで頑張る?」「いつやる? おや食べたらやる?
  • お風呂:「〇〇したらお風呂? それともお風呂入ってから〇〇する?

選択肢は2つ程度に絞ること。多すぎると迷って決められなくなります。また、どちらを選んでも親が困らない選択肢にすることが大切です。

■ 一緒にやる・伴走する

「ひとりでやりなさい」ではなく、「一緒にやろう」という姿勢も切り替えを後押しします。たとえば、

  • ママも一緒に片付けるよ
  • 次は一緒にこれやってみようか

親が伴走することで、子どもは安心感をもって次の行動に移れます。

***
5〜7歳ごろの子どもが切り替えを苦手とするのは、脳の発達段階として自然なことです。「わがまま」だと思わず、温かく見守りながら、少しずつ切り替える力を育てていきましょう。

今回ご紹介した3つのコツ―時間の見える化、終わった後の楽しみ、共感と選択の声かけ——は、YouTube・宿題・時間管理など、あらゆる場面で応用できます。できそうなことから一つずつ試してみてください。