あたまを使う/健康を考える/心と身体/非認知能力 2025.12.4

“寝る前3分” を変えるだけ。子どもの脳が育つ科学的な睡眠習慣とは?

“寝る前3分” を変えるだけ。子どもの脳が育つ科学的な睡眠習慣とは?

「うちの子、朝なかなか起きてこない……」「夜になってもダラダラして、いつまでも寝ない……」そんな悩み、ありませんか?

じつは最近の研究で、頭がいい子ほど「睡眠の質」が高いことがわかってきました。

そして睡眠の質を決めるのは、寝る時間の長さではなく、“寝る前のたった3分” の過ごし方。この3分を変えるだけで、子どもの脳の育ち方、翌日の集中力、学習効率が驚くほど変わります。

今回は、頭がいい子の家庭が密かにやっている寝る前3分の “脳が育つ” 睡眠習慣を、科学的根拠とともにご紹介します。

「睡眠の質」が、子どもの頭のよさを左右する

睡眠はただの「休息」ではありません。脳が記憶を整理し、定着させる大切な時間でもあります。2010年に発表されたメタ分析研究では、睡眠の質が良い子どもほど、学業成績が有意に高いことが示されています。*1

また、6〜12歳の子どもを対象にした研究でも、睡眠習慣スコアが1単位上がると、学業成績が3.8ポイント向上するという明確な相関関係が確認されました。*2

つまり——頭のよさは生まれつきではなく、”毎晩の睡眠習慣” が土台をつくる。わかりやすくいうと、寝る前のたった数分の過ごし方が、子どもの”脳の育ち方” を決めているのです。

そこで今回は、今日からできる “寝る前3分の習慣” をご紹介します。どれも特別な準備や道具はいりません。ただ、「少しだけ整える」ことで、驚くほど睡眠の質が変わります。

ベッドで眠る子供

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習慣1|今日の “よかったこと” をひとつ話す——感情を整理する3分

寝る前に「今日のよかったこと」をひとつだけ話す家庭は、子どもの睡眠の質が高いそうです。心理学の研究では、感謝の気持ちをもつ人ほど睡眠の質が高く、入眠時間も短いことがわかっています。*3

この研究で明らかになったのは、寝る前のネガティブな思考が減り、ポジティブな思考が増えることで、より良い睡眠につながるということ。

【こんな経験、ありませんか?】
寝る時間なのに、子どもが昼間あった嫌なことを思い出して、ぐずぐず言い出す。

「もう寝る時間でしょ!」と言っても、
「でも、明日先生に怒られるかも……」と不安そう。

結局30分以上かかって、やっと寝付く——。
こんな夜が続くと、翌朝も起きられず、悪循環に。

だからこそ、「今日、いちばん楽しかったのはなに?」「今日はどの瞬間が嬉しかった?」と、ボジティブな内容を思い出させてあげましょう。軽く聞くだけでOKです。そんなに深く考える必要はありません。子どもは「今日のよかったこと」を口に出すだけで、心がふっと落ち着くのです。

🏠 今日からできる声かけ

  • 「今日はどんな気持ちで帰ってきた?」と、感情から聞く
  • 「楽しかったことある?」「嬉しかったこと、なにかあった?」とポジティブな記憶を引き出す
  • 「そっか、それはよかったね!」と受け止めて、一緒に喜ぶ

この声かけが、子どもの心を整理し、安心して眠りにつくための準備になります。

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習慣2|30秒の “静かな時間” をつくる——身体を睡眠モードに切り替える

次に取り入れたいのが、寝る前の “静かな時間”。自律神経の研究によると、静けさは心身をリラックスさせ、入眠をスムーズにすることがわかっています。*4

ここで大切なのは「会話をしない」こと。寝る前は、どうしても「明日の準備は?」「早く寝なさい」と声をかけがちですが、それが子どもをさらに覚醒させてしまいます。代わりに、こんな工夫を取り入れてみてください。

🏠 今日からできる環境づくり

  • 部屋の明かりを少し暗くする(間接照明やオレンジ系の光がベスト)
  • テレビ・スマホをオフにする
  • 30秒だけ “何もしない時間” をつくる
  • ゆっくりハグする(幼児の場合)

こうした “刺激を減らす時間” が、身体のスイッチを睡眠モードに切り替えます。特に、照明をやわらかくするだけでも効果は絶大です。光の刺激は脳を覚醒させてしまうため、寝る前の静けさ+やさしい光環境は、最強の組み合わせです。

ベッドの脇にある間接照明

習慣3|翌日の準備をひとつだけ済ませる——脳を安心させる1分

最後に、寝る前の1分でできる「明日の準備」をひとつだけ済ませましょう。どれか “ひとつだけ” で十分です。

  • 明日の服をイスに置く
  • 宿題をランドセルに入れる
  • ハンカチ・ティッシュを準備する
  • 習い事バッグを玄関に置く

心理学では、やり残したタスクは脳に残り続け、睡眠を妨げることがわかっています。実際、仕事で未完了のタスクを抱えた大人は、週末の睡眠の質が低下するという研究結果もあります。*4

大人でも「明日の準備ができてると安心して眠れる」ことはよくありますよね。それは子どもも同じ。逆に、やり残し感があると、脳は “緊張モード” のまま。寝つきが悪くなり、睡眠の質にも影響が出てしまいます。

🏠 今日からできる準備サポート

  • 「明日の準備、なにかひとつだけやっておこうか?」と選択肢を出す
  • 「これだけやっておけば、明日は安心だね」と達成感を言葉にする
  • すべて完璧にやらせようとせず、「ひとつだけ」を徹底する

明日の準備をひとつ終えることで、脳が「今日のタスクは完了」と判断し、安心して睡眠に入れるのです。

脳のアニメーション

まとめ|寝る前3分が、子どもの未来を変える

3つの習慣をみると、どれもごく簡単。それでも、睡眠の質には驚くほど大きな変化が出ます。

  • 夜のモヤモヤが整理される(感情
  • 身体が睡眠モードに切り替わる(身体
  • やり残し感が消える(

この「感情・身体・脳」の3つが整うと——

  • 翌朝の目覚めがラクになる
  • 日中の集中力が高まる
  • 学習の定着力が上がりやすくなる

研究によると、睡眠は記憶の定着に不可欠であり、特に深い睡眠が学習内容をしっかりと脳に刻み込む役割を果たしていると言われています。つまり、頭がいい子は、睡眠を味方につけているのです。*5

頭がいい子だから特別なことをしているわけではありません。むしろその逆で、誰でもできる “小さな習慣” を淡々と続けているだけ。

その積み重ねが「睡眠」「朝のリズム」「集中力」「学習効率」を整え、子どもの “頭のよさ” の土台になっているのです。

***
今日から、できるところだけで大丈夫。寝る前3分で、子どもの脳と心は、ぐんと育っていきます。「うちの子、朝起きられないんです……」と悩んでいたお母さんが、この3つを試したところ、2週間後には「朝、自分から起きてくるようになりました!」という声も。完璧を目指す必要はありません。まずは「今日のよかったこと」をひとつ聞くことから、始めてみませんか?

(参考)
*1 Dewald, J. F., et al. (2010)|The influence of sleep quality, sleep duration and sleepiness on school performance in children and adolescents: A meta-analytic review. Sleep Medicine Reviews.
*2 Sivakumar, C. T., et al. (2022)|Effect of sleep habits on academic performance in schoolchildren age 6 to 12 years. Journal of Clinical Sleep Medicine.
*3 Wood, A. M., et al. (2009)|Gratitude influences sleep through the mechanism of pre-sleep cognitions. Journal of Psychosomatic Research.
*4 Syrek, C. J., et al. (2017)|Zeigarnik’s sleepless nights: How unfinished tasks at the end of the week impair employee sleep on the weekend through rumination. Journal of Occupational Health Psychology.
*5 Stickgold, R., & Walker, M. P. (2007)|Sleep-dependent memory consolidation and reconsolidation. Sleep Medicine.