あたまを使う/社会/英語/非認知能力 2025.11.11

年収差240万円、起業率280倍の衝撃。教育移住が切り開く子どもの未来。「留学しない」がリスクになる?

長野真弓
年収差240万円、起業率280倍の衝撃。教育移住が切り開く子どもの未来。「留学しない」がリスクになる?

文部科学省『令和の留学政策に関する調査 参考資料集』(2024年7月)に、驚くべき数字がありました。留学経験者は、「卒業後の起業率が非経験者の約280倍」。年収も留学未経験者に比べて「学部卒で約240万円高い」というのです。

同じ日本で育っても、ここまで差が開く——。その背景にあるのは「教育環境の違い」です。世界では、子どものうちから「発言する」「挑戦する」教育が当たり前。一方、日本の留学率はわずか0.8%でOECD最下位。若者の海外志向も6か国中最下位です。

「日本の教育だけでは、世界に通じる力が育ちにくいのでは?」——そんな思いから、いま、“教育移住”という新しい選択肢に注目が集まっています

教育移住のメリット2つ

とはいえ、実際に教育移住するのは簡単なことではありません。それでも移住に踏み切るほどの理由とは? メリットは大きく2つあります。

【メリット1】社会性・人格形成面での効果

多様性を認め合う心が育つ:多様な背景をもつ友だちとの交流を通じて、違いを受け入れる力が自然に身につきます
国際的な視野が広がる:世界の “当たり前” を感じることで、グローバル社会で生きる力が育まれます
自己表現力が豊かになる:自分の意見を述べることが重視されるため、間違いを恐れず挑戦する姿勢が身につきます
コミュニケーション力が向上する:授業での発言やプレゼンテーションを通じて、考えを効果的に伝える力が育ちます

【メリット2】学力・進学面での効果

才能がぐんぐん伸びる:海外の学校では興味や得意分野を重視し、「自由に考える力」を育む教育が行なわれています
批判的思考力が身につく:グローバル社会で求められる力を育む国際基準のカリキュラムで学べます
生きた語学力が自然に身につく:日常生活のすべてが語学習得の機会。授業や友だちとの会話を通じて、自然な発音や表現力が育まれます

文科省の「年収+240万円」「起業率280倍」は、”自由に考え、挑戦する教育環境” が生んだ結果と言えるのではないでしょうか。日本にいながらその環境を作るのは難しいーー。だからこそ、教育移住という選択肢が注目されているのです。

欧米人とアジア人の男の子二人

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【年齢別】教育移住のタイミング

こどもまなび☆ラボでは、主に12歳頃までのお子さまを対象にしています。教育移住が注目されているのも、まさにこの年代。柔軟性が高く、新しい環境や言語を自然に吸収できる時期だからです。

◆未就学児:この時期の移住は、さまざまな面でとても有利です。新しい環境への適応力も高く、現地の教育システムに自然に溶け込むことができます。ただし、日本語もまだおぼつかない時期なので、日本語も同時にしっかりと身につける配慮が重要です。

◆小学校低学年(1-3年生):日本での基礎学力を身につけつつ、新しい環境での学習にスムーズに移行できるタイミングです。英語(現地語)習得や現地になじむのも早いでしょう。ただし、日本の文化や習慣については意識して身につける必要があります。

◆小学校高学年(4-6年生):教科学習が本格化する時期であり、移住に際しては十分な準備が必要です。日本語は忘れない年齢である一方で、現地の言葉の習得や習慣に慣れるのに時間がかかることも。事前に現地の言葉の基礎を固めておくことで、現地での学習にスムーズに対応できます。

移住時の年齢が上がれば上がるほど、現地になじむのに時間はかかると言えそうです。日本人としてのアイデンティティ、日本語の維持も考えておく必要があります。移住期間を含めた未来設計を考慮して、移住時期は慎重に検討した方がよいといえるでしょう。とはいえ、「何歳がベスト」と断言することはできません。子どもの性格や家庭の考え方に合わせて、最適なタイミングを探ることが大切です。

授業を受ける子どもたち

人気の教育移住先

次は、人気の教育移住先を紹介します! 移住タイミングと同時に悩むのが移住先でしょう。王道はイギリスとアメリカ。世界の大学ランキングのトップを占め、教育水準が高いのはやはり魅力です。しかし、ビザや費用も含めて移住のハードルは高いのが現状。

そこで昨今人気なのが、シンガポールやマレーシアなどの近隣アジア諸国やオーストラリアです。治安の良さに加えて、シンガポールはスクールの充実度、マレーシアは物価の安さ、オーストラリアは自然豊かで住みやすいことから注目されています。ヨーロッパでは、ビザ取得が比較的容易なオランダが人気なようです。

◆シンガポール

メリット:高水準の教育システム、多文化環境、暮らしやすさ(医療・治安)、日本からのアクセスの良さ
教育費用:インターナショナルスクール年間200-450万円程度
生活費(4人家族・1か月):90万円前後(高層マンション3LDKの家賃40-80万円含む)
注意点:人気のインター校は1-2年待ちのところもあるため、早めの計画が必須

◆マレーシア

メリット:国民の英語能力が高い、多文化環境、低コスト、暮らしやすさ(ビザ取得、治安)、親日
教育費用:インターナショナルスクール年間50-300万円程度
生活費(4人家族・1か月):50万円〜(家賃相場約10-50万円)
注意点:生活コストは割安だが、教育コストはそれほど安くない

◆オーストラリア

メリット:ゆとりある教育環境、質の高い教育システム(世界の大学トップ100に9校がランクイン)、治安の良さ、豊かな自然、温暖な気候、留学生が多い、日本との時差が少ない
教育費用:インターナショナルスクール年間130-230万円程度
生活費(4人家族・1か月):約90万円(都市部で家賃月約50万円)
注意点:欧米のスクールの多くは9月始まりだが、オーストラリアカリキュラムでは1月が1学期となる

◆アメリカ(ハワイ)

メリット:多様な教育選択肢、環境・気候の良さ、個性重視の教育、多文化環境、大学進学への道筋
教育費用:人気校 年間 270-470万円程度
生活費(4人家族・1か月):約100万円(家賃 約47万円含む)
注意点:ビザの種類が多く複雑。取得に時間がかかる/治安が悪い地域がある

◆オランダ

メリット:子どもの幸福度が高い国の教育が受けられる、ビザの取得が比較的容易、教育費が安い、英語環境が整っている
教育費用:インターナショナルスクール 年間約50万円〜/現地校 18歳(義務教育修了)まで無料 ※親の長期滞在ビザ取得の条件あり
生活費(4人家族・1か月):約50万円(郊外3ベッドルーム 家賃 約25万円含む)
注意点:公立学校はオランダ語で授業が行なわれる/賃貸物件が少ない

オランダのピンクのチューリップ

海外移住先輩家庭からのアドバイス

実際に海外教育移住を実行された方の体験をご紹介しましょう。澤田知恵海さんは、2016年から7年半、ご家族4人でマレーシアに教育移住されました。1年前から主にインターネットでリサーチを開始。住居は現地の日本人エージェントを利用し、移住の数か月前に下見に行ったそうです。

移住当時、お子さんは12歳と10歳。澤田さん一家は以前にも海外在住経験があり、日本でも子どもたちはインターナショナルスクールに通っていたため、英語は堪能でした。そのため、現地での生活にもすぐになじめたと言います。

移住先をマレーシアにした決め手は、「教育水準の高さ」「治安の良さ」「物価の安さ」。教育移住を終えてよかった点として、「多国籍の友人に囲まれる環境で、世界の現実を目の当たりにし、グローバルな考え方ができるようになった」「外から自国の文化を見直すことで、親子共々成長できた」と語ってくれました。最後に、海外移住を検討されている方へのメッセージをご紹介します。

海外教育移住は、お子さんにとってとても有意義な体験となるのは間違いありません。わが家は、小学校高学年のタイミングでしたが、環境適応を考えると就学前もおすすめです。学校は徹底的に調べて、慎重に決めましょう。海外での生活では思いがけないことも起こるかもしれません。でも大丈夫。たいていの問題には解決方法が見つかりますから、前向きに明るい気持ちで進んでいってほしいです。ただし、お子様への期待が大きくなりすぎないように気をつけたいですね。子どもにとってよかれ、と思っても本人には精神的に負担になってしまう場合もありますから、もしどうしても無理だったら帰国する勇気も必要です。臨機応変に対応しながら、お子様と一緒に最適な道を探っていってくださいね。

澤田知恵海さん

澤田知恵海さん

教育移住は、学力だけでなく「人間力」を育てる実践の場。多様な価値観のなかで過ごした経験が、子どもの一生の財産になります。

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文科省データが示す格差は、単なる「語学力」の差ではありません。それは「考え方」「挑戦する力」の差です。世界が “多様性と自立” を重んじるなか、日本の教育はまだ “均一と正解” を求めている。この環境の違いが、卒業後の年収で240万円、起業率で280倍もの開きを生んでいるのです。

「日本の教育でも十分」——そう思っていた10年前なら、それでよかったかもしれません。でもいまは違います。いまや「留学しない」「世界を見ない」ことこそが、子どもの未来を狭める最大のリスクになりつつあります

わが子に「自分で考え、挑戦する力」を。
わが子に「多様性を受け入れ、世界で生きる力」を。

それは、特別な才能をもつ子だけの話ではありません。環境さえ整えば、どの子にも育まれる力です。教育移住は、その環境をわが子に贈る選択。異文化のなかで日々を過ごすことで、世界を広い視野で見る力が、自然と、確実に、身についていきます

10年後、20年後——。「あのとき、一歩踏み出してよかった」と思える日が、きっと来るはずです。お子さんの可能性を広げる新しい一歩を、考えてみませんか?

(参考)
文部科学省|令和の留学政策に関する調査 参考資料集
帰国生のミカタ|海外教育移住とは?海外留学はいつから?移住におすすめの国はどこ?疑問を徹底解説!
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