あたまを使う/教育を考える/習い事/親の関わり/非認知能力 2025.7.2
更新日 2025.7.3

「すぐにあきらめる子」を「最後まで頑張る子」に変える親のひと言。忍耐力は失敗体験で育つ!

編集部
「すぐにあきらめる子」を「最後まで頑張る子」に変える親のひと言。忍耐力は失敗体験で育つ!

「難しいからやめたい」「うまくいかないからやらない」――そんな言葉を子どもから聞いたことはありませんか? 情報社会の現代では世の中の変化も目まぐるしく、正解がひとつではありません。そんななかで、これからの子どもたちに求められるのは、うまくいかないときにも投げ出さない力、すなわち「忍耐力です。

近年注目される「やり抜く力(GRIT)」や「あきらめない心」も、すべてこの力と深く関係しています。本記事では、専門家の知見をもとに、子どもの “粘り強さ” を育てるヒントをわかりやすく解説。家庭でできる工夫や、親としての関わり方も具体的にご紹介します。

子どもの「忍耐力」とは? いま求められる理由を専門家が解説

忍耐力とは、簡単に言うと「困難な状況でも投げ出さずに取り組み続ける力」。一見すると精神論のようですが、じつは人生のあらゆる場面で必要なスキルのひとつです。

京都大学大学院教授の森口佑介氏は、非認知能力のなかでも「目標を達成する力」の重要性を強調。「忍耐力」はその核心にあり、学力や人間関係、さらには将来の職業選択にまで影響すると言います。また、養護教諭の宍戸洲美氏は、「忍耐力がある子は挑戦を乗り越える経験を積めるが、ない子はすぐに “自分はダメだ” とあきらめてしまう」と指摘しています。

このように、忍耐力のある・なしは、子どもの将来にも大きな影響を与えるのですね。これからの時代に必要な「忍耐力」。次項からは、「あきらめない心」「やり抜く力(GRIT)」「粘り強さ」を含む、「子どもの忍耐力の育て方」について、各専門家の見解をご紹介していきます。

忍耐力を伸ばす02

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【GRITとは?】子どもの「やり抜く力」を育てる習い事の選び方【おおたとしまさ氏】

教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏は、「これからの時代に必要なのは “やり抜く力(GRIT)”」と語ります。GRITとは、情熱と粘り強さをもって物事をやり遂げる力のこと。近年の研究では、「IQの高さよりGRITの高さのほうが人生の成功に結びつく」と言われているほど注目されています。

では、この力はどう育てればよいのでしょうか。おおた氏が提案するのは「習い事」。ただし、「親がやらせたいもの」ではなく「子どもが自分でやりたいと思えるもの」が条件です。

自分で選んだ習い事に取り組む子どもは、最初は夢中になり、成果も出やすいため、楽しみながら続けられます。しかし、徐々にレベルが上がると壁にぶつかりはじめ、「うまくいかない」「もうやめたい」とネガティブな感情が発生し、挫折を味わいます。

そのときに踏ん張り続ける経験こそが、忍耐力やあきらめない心を育てるのです。この「夢中→挫折→乗り越え→達成」のプロセスを繰り返すことが、子どもの将来にとって大きな財産になるでしょう。

【忍耐力の育て方】

  • 子どもが「やりたい」と思える習い事を選ばせる
  • 挫折や失敗も「成長のチャンス」として受けとめる
  • 続けた先にある「達成感」を一緒に味わう

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子どもの「粘り強さ」を伸ばすカギは、自主性と自己肯定感【宍戸洲美氏】

「最後まで頑張れる子どもには、“自分で選んだ” という主体的な意欲がある」と話すのは、養護教諭として長年子どもたちと向き合ってきた宍戸洲美氏です。

子どもが何かに挑戦したとき、苦しい場面でも粘り強く頑張れるかどうかは、「やらされたこと」か「自分が選んだこと」かで大きく変わってくるといいます。そのためには、親は日ごろから「〇〇しなさい」と一方的に指示を出すのではなく、「あなたはどうしたい?」「どれにするか自分で決めてね」と、子ども自身に主体的に選ばせることを心がけましょう。

そして、そのような自己決定を支えるのが、親から注がれた愛情によって育つ「自己肯定感」です。「自分は大切な存在だ」「頑張ればできる」という気持ちが、困難にぶつかったときの “心の支え” になります。小さな成功体験の積み重ねと、親からのあたたかい励ましによって、子どもの忍耐力はしっかりと育まれていくでしょう。

【忍耐力の育て方】

  • 子ども自身に「選ぶ体験」をさせる
  • 成功体験を積み重ねて「自信の土台」をつくる
  • 失敗しても「あなたなら大丈夫」と愛情で支える

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【非認知能力】「目標達成力」が高い子どもが未来を切り拓く【森口佑介氏】

京都大学大学院教授の森口佑介氏は、非認知能力のなかでも特に重要なものとして「目標を達成する力」を挙げています。この力が高い子どもは、学力が高く、クラス内でもうまくやっていける傾向があることに加え、将来は社会的に安定した職業に就く可能性も高いとのこと。

目標を達成するまでには当然、失敗や思い通りにいかないことがつきものです。そこで問われるのが、失敗後に気持ちを切り替える「切り替え力」、そして誘惑に負けずに取り組みを継続できる「自己抑制力」。これらが備わっている子どもほど、困難に負けず、やり遂げる力=忍耐力を発揮できます。

そのためには、親が手出し口出ししすぎないことが大切です。子どもが自分で立てた目標を、自分の力で達成できるように見守る親の姿勢が、意志力を育みます。つい手を貸したくなる場面でも、ぐっとこらえて信じる――。それが子どもの「あきらめない心」を引き出すカギとなるのです。

【忍耐力の育て方】

  • 子どもが自分で目標を立てられるよう促す
  • 失敗しても「切り替えてまた挑戦する」姿勢を称える
  • 誘惑に負けそうなときは「どうしたいか」を一緒に考える

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「なぜ?」と考える子は伸びる! 粘り強さを育む親の関わり方【佐藤めぐみ氏】

自分の思いを貫こうとする子は、“粘り強さ” の素質がある子」と話すのは、公認心理師の佐藤めぐみ氏。時には頑固に見える子も、その思考のベースには「なぜ?」「こうしたい!」という強い疑問と意志があり、それこそ忍耐力があるという証なのです。

これまでのように、先生や親の指示に素直に従う子が「いい子」とされてきた時代とは異なり、これからの社会では、自分で考え、問いをもち、深掘りできる力が重要となります。つまり、「あきらめずに突き詰める力=粘り強さ」が、子どもの将来を豊かにしていくのです。

そうした力を育てるには、子どもが何かに夢中になっている姿を否定せず、あたたかく見守ることが大切。意志の強さがネガティブに出ないように、よい方向へ導くサポートをしてあげましょう。

「どうしてそれに夢中なの?」「もっと調べてみよう!」「よく知っているね!」といったポジティブな声かけが、子どもの粘り強さを「生きる力」に変えていきます。

【忍耐力の育て方】

  • 子どもの「なぜ?」や興味を尊重する
  • 夢中になっていることをよく観察し、言葉で応援する
  • 意志の強さをポジティブに捉え、認める声かけを心がける

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【失敗体験の活かし方】子どもが「あきらめない子」になる親の声かけ【ボーク重子氏】

「失敗経験こそが、やり抜く力や回復力を育てることにつながります」とライフコーチのボーク重子氏が述べるように、子どもが前向きに挑戦し続けるためには、失敗を “終わり” ではなく “通過点” と捉える視点が必要です。そのカギになるのが「忍耐力」。

子どもは、自分が取り組んだことを認められると、自己肯定感が育くまれ、主体性ややる気が引き出されます。その積み重ねが、困難にぶつかってもやり抜こうとする力――すなわち “忍耐力” につながっていくのです。

特に効果的なのは、親自身の失敗体験を子どもと共有すること。恥ずかしい気持ちもあるかもしれませんが、ぜひ「お母さんもこんなことで失敗したけど、こうやって乗り越えたよ」と話してあげてください。そうすることで、子どもは「失敗してもいいんだ」と安心し、「できるまで何度でもやり直せる」ことが理解できるようになります。

親が自分の姿を通して「挑戦し続けることの大切さ」を伝えることが、子どもの「やり抜く力」を育む一番のお手本になるでしょう。

【忍耐力の育て方】

  • 子どもが失敗したときは責めずに一緒に振り返る
  • 親の失敗体験を共有し、やり直せることを示す
  • 「失敗=学び」と捉える考え方を日常で伝える

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【FAQ】子どもの忍耐力に関するよくある質問と親の悩み解決

Q1. 忍耐力がない子は、将来困りますか?

A. 将来すべての困難に打ち勝つ必要はありませんが、少なくとも「うまくいかないときも粘り強く取り組む力」は人生をより豊かにする重要な力です。挑戦・失敗・回復の経験は、学力や人間関係、職業選択など、さまざまな面でよい影響を与えるでしょう。

Q2. 忍耐力を伸ばすには、何歳くらいから関わるとよいですか?

A. 幼児期からでも十分可能です。大切なのは「小さな選択を自分で決める」「最後までやり遂げる」などの体験を積み重ねていくこと。年齢に応じた声かけとサポートを意識して接するように心がけましょう。

Q3. 子どもがすぐに「もう無理」と言ってしまいます。どうしたらいい?

A. 「もう無理」と感じた背景には、疲れや不安、できないことへの焦りがあります。まずは気持ちに寄り添い、「どこが難しかった?」と具体的に話を聞いてみましょう。そのうえで、乗り越えられる小さな目標を一緒に考えてみてください。

Q4. 親が失敗談を話すと、本当に効果がありますか?

A. 大いにあります。親も挑戦し、失敗し、乗り越えてきのだと知ることで、子どもは「失敗してもいいんだ」「大人もそうなんだ」と安心します。完璧な姿を見せるより、“努力する姿勢” を共有することの方が子どもに届きやすいですよ。

Q5. 忍耐力を育てるのに効果的な習い事はありますか?

A. 習い事の種類よりも「子どもがやりたいと思えることかどうか」が大切です。夢中になれるものなら、自然と粘り強く取り組むようになります。そして、うまくいかないときの気持ちの折り合いのつけ方や、達成感を得る経験が “やり抜く力” につながっていきます。

***
困難に直面したとき、自分の力で乗り越えようとする「忍耐力」は、これからの社会を生きる子どもにとって欠かせない力です。「諦めない心」「粘り強さ」「やり抜く力(GRIT)」は、生まれつきの性格ではなく、日々の関わりや経験の積み重ねによって育まれます。子どもが小さな挑戦を積み重ねられるように、見守り、励まし、ときには一緒に立ち止まる。そんな親の姿勢が、子どもの未来を切り拓く大きな力になるでしょう。

文/野口燈

(参考)
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