「もう終わりにしようね」と言っても「あと5分!」とねだる子ども。「YouTubeが見たい!」と駄々をこねる場面。「ゲームの途中だから!」と電源を切りたがらない……。こんな状況に心当たりはありませんか?
モバイル社会研究所の「モバイル社会白書 2024年版」によると、スマートフォンの所有開始年齢は低年齢化の傾向にあると指摘。また、インターネットやデバイス利用時間(学習目的を除く)は、小学1〜3年生で平均83分、4〜6年生では110分、中学生に至っては151分と長時間に及びます。さらに、どの小学生の学年も約7割の子どもが毎日YouTubeを視聴しているとのことです。
「このままではスマホ依存になってしまうのでは」と心配している方も多いのではないでしょうか。じつは、デジタル機器との関わり方により、子どもの生活習慣の形成に大きく影響することがわかっています。新学期に向けて、お子さんの生活習慣を見直すには絶好のタイミング。そこで、専門医の監修のもと、健やかな子どもの成長のために知っておきたいデジタル機器の影響との賢い付き合い方についてまとめました。
監修者プロフィール

精神科医・総合診療医・漢方医・臨床心理士
島根医科大学医学部医学科卒業後、同大学医学部附属病院第三内科、三重大学医学部付属病院総合診療科などを経て、2018年、不登校/こどもと大人の漢方・心療内科 出雲いいじまクリニックを開院。
多くの不登校児童生徒を医療の面から支えている。島根大学医学部精神科教室にも所属。
目次
スマホの長時間利用が子どもに与える5つの影響
日本小児科学会は「子どものスマホ利用」について注意を呼びかけています。実際どんな影響があるのでしょうか。
夜間のスマホ使用は、画面から出るブルーライトが睡眠ホルモン(メラトニン)の分泌を抑え、子どもの睡眠の質を低下させます。これにより、夜中に何度も起きる、朝起きられないといった問題が起こることがあります。
スマホの使用時間が長いほど学力が低下する傾向があります。これは勉強時間の減少だけでなく、「すぐに答えを得たい」という思考習慣により、じっくり考える力が育ちにくくなるためです。
スマホ使用で座っている時間が増えると、外遊びや運動の時間が減少します。これにより骨や筋肉の発達が妨げられ、基礎的な運動能力の獲得にも影響します。
近距離で画面を長時間見続けることで、視力低下や近視のリスクが高まります。一方、外遊びなどで遠くを見る機会が増えると、目の健康にプラスの効果があります。
直接的な対面コミュニケーションが減ると、表情や声のトーンから感情を読み取る能力が育ちにくくなります。人との関わりを通じて学ぶ社会的スキルは、将来の人間関係の基礎となります。
また、スマホ依存による夜型生活や睡眠不足により、朝起きられずに学校を遅刻したり休みがちになり、不登校になってしまうケースもあります。家族でスマホの適切な使用ルールを話し合い、「禁止するもの」ではなく「賢く使いこなすもの」として、子どもの健全な発達を促すことが必要です。
親子で実践! スマホ依存から抜け出した家族の成功例
心配になったからといって、いきなりデジタル機器の使用を禁止するのは逆効果。家族でデジタル機器との上手な付き合い方を考え、実践することが大切です。過去にあった、実際に子どものスマホ依存を軽減することができた、実践例を紹介します。
🕰️ 使用時間と場所のルールづくり
まずは、家族全員で「デジタル機器を使ってよい時間・使わない時間」を決めましょう。話し合いながら、スマホ利用のルール化をつくることで、子どもも納得して使用できるようになります。特に終了時間を見える化する工夫をすると、切り替えがスムーズになります。
- タイマーなどを使って「あと何分」かを目に見える形で示す
- 子ども部屋ではなく、リビングなど家族が見える場所で使う
- 寝る1時間まえからは「スマホ・タブレットお休み時間」にして、決まったBOXのなかにデジタル機器を入れる
🃏スマホ以外の楽しみを増やす
スマホがないと初めは「することがない」と感じる子どもも多いもの。そこで、スマホ以外の楽しい時間を増やせるかどうかがカギとなります。絵本の読み聞かせ、簡単なボードゲーム、家族での会話タイム、軽いストレッチなど。「スマホを取り上げられた」ではなく「〇〇の時間が増えた」という前向きな実感が大切です。
- 毎日寝る前に絵本を読む時間をつくる
- 休日は公園や自然の中で過ごす時間や料理などをして楽しむ時間を意識的に増やす
- 子どもが興味をもつおもちゃや本を充実させる
👀親自身が見本になる
「子どものため」と言いながら、親だけはスマホを見ているというのでは効果半減。特に小さいお子さんは親の行動を観察して学ぶので、大人が率先してお手本を見せることが重要です。子どもは親の行動をよく見ています。大人自身がスマホとの付き合い方を見直し、よいお手本を示すことが何よりも効果的です。
- 子どもと一緒にいる時や食事中は、自分のスマホを見えないところへ
- 月に1回は「家族みんなでデジタルお休み日」を設ける
- 親自身が本を読んだり、趣味を楽しむ姿を見せる
まずは家族で話し合おう!よりよいデジタルライフへの第一歩
デジタル機器の使い方について、子どもも交えて話し合いながら家族のルールを決めていくことがおすすめです。デジタル機器やスマホを「禁止」ではなく「よりよい使い方」を考える機会にします。
子どもにルールを守ってもらうためには、その理由を年齢に合わせて伝えることが大切です。「スマホを長く使うと目が悪くなるよ」「夜使うと朝起きられなくなるよ」など、わかりやすく説明しましょう。そして、家族全員で決めたルールは紙に書いて、冷蔵庫やリビングなど目につく場所に貼っておくと効果的です。
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親子で少しずつ続けることで、お子さんの睡眠の質が上がり、朝の目覚めや日中の集中力も改善していきます。また、体力や視力の維持、対面でのコミュニケーション能力の発達にもつながるでしょう。デジタル機器に振り回されない、バランスの取れた生活習慣を子どもと一緒につくっていけるといいですね。
(参考)
日本小児科学会|スマホの時間 私は何を失うか
モバイル社会研究所|モバイル社会白書 2024年版