「うちの子、もっとできるはずなのに……」「なにに対しても消極的で、将来大丈夫かな……?」など、子どもに対する悩みは尽きないものですよね。特に、コミュニケーション能力が高く積極的な子やスポーツや勉強が得意な子と比べて、自分の子どもに特別な才能や強みが見当たらないと、不安が募り焦ってしまうもの。
そんなとき、つい「もう、全然ダメじゃないの」などとネガティブな声かけをしてしまうことはありませんか? でも、これが大きな失敗なのです。親が発したネガティブな言葉どおりに、「自分はダメなんだ」と子どもが自信を失い、ますますやる気をなくしてしまうかも……。
親の言葉には子どもに絶大な影響力があります。うまく使えば、子どものいいところをグングン伸ばしてあげられるはず。そこで今回は、子どもが輝くために有効な「親の声かけ方法」を紹介します。お子さんの潜在能力を引き出すヒントが見つかるでしょう。
すべての子どもが「才能の種」をもっている
子どもは本来、無限の可能性を秘めています。あなたの言葉で、お子さんの潜在能力を引き出していきましょう。なぜなら、すべての子どもに「才能の種」が眠っているからです。
国立教育政策研究所初等中等教育研究部の白水始総括研究官は、どの子にも「好奇心」や「自分で試行錯誤しながら学ぶ力」というポテンシャルが備わっていると指摘しています。*1
現時点で特別な才能が見つからないからといって、無気力で平凡な子だと決めつけてはいけません。ただし、誰かが引き出してあげないと、せっかくの才能が芽吹くことなく終わってしまう可能性も……。
『声かけ×仕組み化×習慣化で変わる! 子どものやる気の引き出し方』(日本能率協会マネジメントセンター, 2023)の著者で教育専門家の石田勝紀氏は、学校での好成績は「才能」がなくても獲得できると述べています。確かに、テストの点数は才能というよりも、勉強(努力)の結果と言えるでしょう。
石田氏によると、才能とは「長所」であり、「子どもが自覚しなくてもスムーズにできるもの」「子ども自身は当たり前すぎて自分ですごいと思わないもの」なのだとか。さらに、「学校の科目に直接つながるものとは限らない」とも述べています。
そこで、親がすべきことは、次のような「才能の種」がないか子どもを観察することです。*2
- 「子どもが自主的にやりたがるもの」
- 「言われなくてもどんどん興味をもってやること」
たとえば、おもしろいことを言ってみんなを笑顔にする子、ヒーローになりきって何かと戦い続ける子、好きなキャラクターの絵を一心不乱に描く子、恐竜博士の子、友だちが泣いていたら自分も泣いてしまう子などが挙げられます。あなたのお子さんは、どんな「才能の種」をもっているでしょうか。
学業以外の分野も含めた広い視点をもち、自分の子どもをよく観察すれば、じつに様々な「才能の種」が見つかるはずです。そしてお子さんの「才能の種」を見つけたら、次はその才能を開花させる手伝いをしていきましょう。
前向きな言葉でやる気が出る。脳科学では常識!
せっかく「才能の種」を見つけても、親がネガティブな言葉をかけていては、開花するはずの才能も埋もれてしまう可能性があります。「なんでもっと頑張れないの?」「そんなことしたらダメでしょう?」といった言葉を使っていませんか?
最も身近な存在である親からそのような言葉を投げかけられると、子どもは「自分は何をやってもダメな子なんだ」と思い込んでしまうかもしれません。その結果、より引っ込み思案になり、挑戦することを諦め、本来の魅力を発揮できなくなってしまう恐れがあります。
一方で、親のポジティブな言葉は、想像以上に子どもにプラスの影響を与えます。脳科学者の高田明和氏は、「言葉には私たちの脳を変える作用がある」ことが「脳科学の常識」だと述べています。さらに、「ポジティブな言葉は、信頼される人から与えられたとき、より効果を発揮する」と断言しています。
これは、信頼する人からポジティブな言葉をかけられると、「免疫力を高めるエンドルフィン」や「意欲を高めるドーパミン」などの「脳内快感物質」が分泌されるためです。つまり、子どもが絶対の信頼を寄せる親の前向きな言葉には、子どものストレスを軽減し、やる気を引き出す効果があると言えるでしょう。*3
子育ては長期的な取り組みです。親のポジティブな言葉の積み重ねが子どもに与える影響は非常に大きいと考えられます。ですから、ポジティブで前向きな言葉を積極的に子どもにかけていくことが重要になってくるのです。
次の項では、子どもの潜在能力を開花させるための「効果的な親の声かけ」を具体的に紹介していきます。これらの方法を日常生活に取り入れることで、お子さんの可能性を最大限に引き出すことができるでしょう。
子どもの潜在能力を開花させる「効果的な親の声かけ」
そうは言っても、「前向きな言葉をかけてあげたいのに、ついネガティブワードを口にしてしまう……」と、お悩みの方も多いはず。
でも、大丈夫です。親が子どもに言ってしまいがちなNGワードをOKワードに言い換える例をシーンごとに紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてください。きっと、うまくいきますよ。
【勉強のやる気がアップする声かけ】
子どもが勉強を好きになるかどうかは、親の言葉がけ次第。もしかしたら数年後、「僕、もっと勉強をして、〇〇中学(高校)に絶対合格する!」なんて言い出すかもしれません。子どものやる気の芽を摘まないようにしたいものです。
NGワード「テストで100点とれてすごいね!」
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OKワード「毎日勉強を頑張った成果が実ってよかったね!」
NGワードのように結果だけをほめてしまうと、結果が出なかったとき、子どもは「結果を出せない自分はダメなんだ」と思い込んでしまいます。そんな人生はつらいと思いませんか? その代わり、一生懸命頑張ってきたプロセスをほめてあげるのです。子どもは「努力が認められて嬉しい!」と感じて、「次も頑張ろう!」とやる気がアップするのではないでしょうか。
NGワード「95点とれてすごい。でも次は100点がとれるようにね」
↓
OKワード「95点とれたんだ。勉強頑張ったね!」
このNGワード、意外と言いがちではないですか? 親はほめているつもりでも、最後のひと言が余計。ほめてもらえたと思っていた子どもは、「次は100点とれるようにね」にがっかりしてしまいます。これが達成できたら次は〇〇、というように、つねに親から課題を与えられると子どもは窮屈なもの。まじめな子ほど無理をして疲れ果ててしまいます。ほめるときは、ほめることに専念しましょう。*4
【子どもの「集中力」を育てる声かけ】
ゲームやYouTube三昧で勉強しようとしない子どもを見ていると、イライラしてしまうのが親心。しかし視点を変えたら、何時間もゲームやYouTubeに集中できるなんてすばらしい集中力だと思いませんか? その集中力の芽がぐんぐん伸びたら、お子さんの可能性は広がるはず。
NGワード「ゲームばっかりやってないで、勉強しなさい!」「いつまでYouTubeを見てるの!」
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OKワード「そのゲーム、楽しいよね。だけど勉強も大切だから、何時から宿題をするのか一緒に決めよう」
まず、趣味を頭から否定するのはNGです。子どもが趣味を楽しんでいる気持ちを受け止めましょう。それから、子ども自身に具体的な勉強開始の時間を決めてもらいます。時間通りに行動できたら、子どもをほめることも忘れずに。*5
首都圏トップクラスの難関校合格率を誇る進学塾VAMOS代表・富永雄輔氏は、「小さい頃から好きなことに集中する経験をたくさんしてきた子どもが、それ以降も充実した集中力を得られる」と断言しています。しかも「好きなことがゲームであってもかまわない」のだとか。ちなみに「上位の難関校に合格する子どもの9割は、強い集中力」をもっているとのこと。子どもの集中力を育てるためにも「ゲームをやめて勉強しなさい!」とは言わないほうがよさそうです。*6
【子どもの「挑戦力」を育む声かけ】
成果にかかわらず、失敗を恐れず積極的に挑戦できる人間に成長してほしい。これは多くの親の願いでしょう。挑戦なくしては、成長も成功も得られないからです。子どもの挑戦力を育むには、適切な声かけが鍵。子どもの挑戦を促すような言葉かけが◎ですよ。
NGワード「お皿が割れちゃったじゃない! だから危ないって言ったでしょ!」
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OKワード「ケガしなかった? ママも子どもの頃、お皿を割っちゃったことあるんだ」
東京都市大学教授の井戸ゆかり氏は、子どもが手伝いをしている最中にお皿を割ってしまっても、親はその失敗を「チャンス」ととらえるべきだとしています。子どもの挑戦力をつけるために、ときには親自身の「失敗経験」を話してみてください。「自己肯定感が高い子どもには挑戦意欲も備わっている」とのことなので、子どもが挑戦できる環境をどんどんつくってあげましょう。*7
NGワード「なぜ手を挙げないの? もっと積極的に参加しなきゃ!」
↓
OKワード「授業中に手を挙げて間違えたらと思うと、緊張するよね。お父さんも手を挙げて失敗したこと、たくさんあったな。でも、失敗するのは悪いことじゃない。勇気をもっていろいろ試してみることが大事なんだ」
子どもが失敗を恐れて挑戦できないとき、厳しく原因を問い詰めたり、無理強いしたりすると、子どもは苦痛を感じていっそう殻に閉じこもってしまうかもしれません。子どもの自己肯定感を高めるためにも、「失敗してもいいんだ」ということを教えてあげましょう。*7
「挑戦して失敗することも大切な経験である」「親も様々な失敗を経験してきた」ということを子どもが理解すれば、「まずはやってみよう」という姿勢が育つでしょう。自己肯定感の高い子どもは、挑戦意欲も高い傾向にあります。
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親の言葉の威力をうまく活用して、子どものなかに眠っている底知れぬポテンシャルをグイっと引き出してあげましょう。お子さんへの声かけをちょっと工夫するだけで、見違えるほどキラキラ輝き出すはずです。
文/上川万葉
(参考)
*1 参考・カギカッコ内引用元:東洋経済オンライン|「子どもの潜在力を引き出す親」はここが違う
*2 参考・カギカッコ内引用元:こそだてまっぷ|【専門家監修】子どもの才能の見つけ方と伸ばし方
*3 参考・カギカッコ内引用元:Leader`s Lounge|脳科学の権威が解説!ポジティブな言葉が効果的な理由
*4 参考:All About|ほめてるつもりでほめてない?NGな子どものほめ方
*5 参考・カギカッコ引用元:AERA Kids|親の「声かけ」が子どもの才能を引き出す! 気を付けるべき「8つ」のルール
*6 参考・カギカッコ引用元:STUDY HACKERこどもまなび☆ラボ|「ゲームや漫画は禁止!」が、子どもの“集中力の育ち”を阻害する理由
*7 参考・カギカッコ引用元:STUDY HACKERこどもまなび☆ラボ|「失敗を恐れない力」の育て方。子どもに「挑戦したい!」と思わせる、効果抜群な言葉かけ