あたまを使う/教育を考える 2020.2.11

「ゲームや漫画は禁止!」が、子どもの“集中力の育ち”を阻害する理由

「ゲームや漫画は禁止!」が、子どもの“集中力の育ち”を阻害する理由

子どもは元来飽きっぽいものですが、「いまの子どもたちの集中力は、かつての子どもより低下している」と指摘するのは、首都圏トップクラスの難関校合格率を誇る進学塾VAMOSの代表である富永雄輔先生。その要因はどんなところにあり、どうすれば子どもの集中力を伸ばしてあげられるのでしょう。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)

好きなことをやることでしか集中力は育たない

効率的に勉強をして結果につなげるには、集中力が不可欠です。では、集中力があるとはどういうことを指すのでしょうか? 長時間、勉強を続けられるというイメージを持っている人もいるかもしれませんね。でも、長時間にわたって勉強することは、別に集中していなくてもできることです。ダラダラと集中しないまま勉強をすることはできるからです。

わたしが考える集中力がある子どもは、短いパートの集中を繰り返したくさんできる子どもです。しかも、その集中の度合いが、わたしの感覚ではふつうの子どもの1.4倍くらいあるイメージ。100メートルダッシュにたとえるなら、ふつうの子が6本もダッシュをすれば疲れてしまうところを、集中力のある子どもはふつうの子より速いスピードで12本のダッシュができるといった感じです。

では、集中力があるか否かはどう決まるのか? わたしは、小さい頃から好きなことに集中する経験をたくさんしてきた子どもが、それ以降も充実した集中力を得られるのだと考えています。人間が持っている集中力というものは、好きなことをやることでしか絶対に増やせません。その好きなことというのは、なんでもいい。親とすれば、それがレゴブロックなどの知育玩具だったり、それこそ勉強だったりすればうれしいのでしょうけれど、漫画やテレビでもいいのです。

富永雄輔先生インタビュー_集中力の育て方02

小学生は6年間で約2,446時間も机に向かう! 子どもの集中力と学習机のかたち
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いまの子どもは集中力をどんどん失っている

いまの子どもたちの集中力は、かつてと比べてどんどん下がってきているように思います。ゲームでも、わたしが子どもの頃なら『ドラゴンクエスト』などのRPGにハマって、それこそ三日三晩ほとんど寝ずに遊ぶ子どももいました。でも、いまのスマホのゲームは集中しなくてもいいものばかり。なぜかというと、いまの子どもたちは膨大な情報や娯楽に囲まれているために、ゲームにすら集中できなくなっているからです。

漫画の例なら、かつての漫画の主流は、『ドラゴンボール』など子ども向けのものでした。ところが、いまの漫画の主流は明らかに大人向けのもの。なぜなら、いまの子どもたちは漫画を買わないから。というのも、漫画1冊を読み通すことへの興味や集中力が、いまの子どもにはないからです。スマホやタブレットでいろいろなコンテンツに触れ、飽きたら次々に別のコンテンツに移ることができる。だからこそ、集中力が育たないのです。

そう考えると、「ゲームや漫画は禁止!」なんてことをいってしまえば、ただでさえ低下気味である子どもの集中力の育ちを、親がわざわざ阻害することになってしまいます。

もちろん、子どもが集中できる好きなものが、先に挙げたレゴブロックなどの知育玩具だったり、あるいは習い事だったりすればベストでしょう。ですから、子どもに習い事をさせるにも、やはり子どもが好きなものかどうかという軸で判断してほしい。ただでさえいまの子どもたちは忙しいので、好きでもない習い事をたくさんさせてしまうと、集中するタイミングがまったくない生活を子どもが送ることになってしまいます。

富永雄輔先生インタビュー_集中力の育て方03

人生をより豊かにする「長期的な集中力」

そして、この集中力こそが、子どもにとっては強力な武器になります。これからの時代を生きる子どもにとって大切なものとして、いろいろな人たちがさまざまな力を挙げますが、集中力こそ大切なものだとわたしは信じています。

わたしは、いわゆる難関校に受かる子どもかどうかは、会ってから30分で見極められます。そして、そのちがいはどこにあるかというと、集中力の有無です。もちろん、集中力が育っていない子どもも、その後の努力によって難関校に合格するということはあります。ただ、集中力がある子どもは、その時点で極めて高い確率で難関校に合格できるといい切れる。わたしの感覚では、上位の難関校に合格する子どもの9割は、強い集中力を持っています。

そう考えると、親としてはやはり好きなことに没頭する経験を子どもにさせて、しっかりと集中力を身につけさせることを意識してほしい。ただ、みなさんにはもうひとつ別の視点も持っていてほしいのです。それは、「長期的な集中力」というものがあるということ。

先に、集中力があるとは、短いパートの集中を繰り返したくさんできることだと述べました。それももちろん大切な集中力です。でも、たとえば1カ月のあいだの小テストですべて100点を取るというような、長いパートでの集中も大切です。短いパートの集中を長期間にわたって続けられる力があれば、長い人生をより良い方向に進められる人間になれるのではないでしょうか。

富永雄輔先生インタビュー_集中力の育て方04

それは子どもの学力が伸びるサイン!
富永雄輔 著/廣済堂出版(2019)
富永雄輔先生著書

■ 進学塾VAMOS代表・富永雄輔先生 インタビュー記事一覧
第1回:子どもを「“エンジンがでかい”賢い子」にするための、親の心得
第2回:“できない”意識を持つ子にすべき、超重要なこと「褒めて自己肯定感を高める!」
第3回:「ゲームや漫画は禁止!」が、子どもの“集中力の育ち”を阻害する理由

【プロフィール】
富永雄輔(とみなが・ゆうすけ)
京都府出身。進学塾VAMOS代表。幼少期の10年間をスペインのマドリードで過ごす。京都大学卒業後、東京・吉祥寺に幼稚園生から高校生までを対象とする進学塾VAMOSを設立。現在、吉祥寺校に加え、四谷校、浜田山校の3校を開校。入塾テストを行わず、先着順で子どもたちを受け入れるスタイルでありながら、毎年、首都圏トップクラスの難関校合格率を誇る。受験コンサルタントとしての活動も積極的に行っており、年間300人以上の子どもたちの家庭をヒアリング。その経験をもとに、子どもの個性に合った難関校突破法や東大生を育てる家庭に共通する習慣についての研究を続けている。主な著書に『男の子の学力の伸ばし方』(ダイヤモンド社)、『女の子の学力の伸ばし方』(ダイヤモンド社)、『東大生を育てる親は家の中で何をしているのか?』(文響社)、『「急激に伸びる子」「伸び続ける子」には共通点があった!』(朝日新聞出版)がある。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。