「スイミングスクールに通っているけど、なかなか上達しない」「学校のプールの授業が嫌みたいだ」など、水泳に関する悩みがあるときは、親子で一緒にプールへ行き、お子さんが水に慣れることからサポートしませんか?
ひとりでは不安だったプールも、お父さんお母さんのサポートがあれば、楽しい場所に変わることでしょう。子どもの水慣れから、クロールなどの動作練習まで、幅広い水泳の練習法を説明します。
1. 顔を水につける練習
アトランタオリンピック競泳代表・宮崎義伸氏らが指導するセントラルスポーツ株式会社では、子どもが水に慣れるために、まず大人が水の中に入ることをすすめています。子どもと向かい合いって立ちながら、やさしく声をかけてあげましょう。そうすることで、子どもの緊張感がほぐれます。入水は心臓から遠い足から少しずつ。徐々に体を慣らしていきましょう。
プールで水に顔をつけてみよう!
顔を水につけるのに抵抗ある子どもは、まず膝を曲げて肩までつかる練習を。そこから小さくジャンプをして立ち上がり、次は大きくジャンプします。
慣れてきたら、手のひらですくった水を顔にかけてみます。次は水面に両腕で大きな輪を作り、その中に顔をつけてみましょう。最後に頭まで潜り、水中で目を開けられるようになったら、だいぶ水に慣れていることでしょう。
息をこらえて、頭までもぐってみよう。はじめは壁につかまりながら行ってもいいんだよ。慣れてきたら、壁から手をはなしてやってみよう。
(引用元:セントラルスポーツ株式会社 (2006),『親子で楽しむはじめてのスイミング』, 主婦の友社.)
2. 水の中で鼻から息を吐く練習
ボビングとは、水中で鼻から「ブクブク」と息を吐き、顔をあげて「パッ」と口から息を吸う動作を繰り返す練習法です。ポイントは、息を吐く前にしばらく息を止めること。また、最初は壁につかまって行うのが安全です。
慣れてきたらお父さんやお母さんと手をつないで一緒にボビングをやってみましょう。そのとき大人も息を吐く・吸うタイミングで「ブクブク」「パッ」と声をかけることが大切です。
また、鼻から息を吐けているかしっかり確認してあげてください。息を吐き切っていれば自然と吸うので、ボビングは息を吐くことに重点を置くと良いと宮崎氏らはいいます。
子どもと一緒に水中でゲームをしよう!
子どもがよりいっそう水に親しみを持つために、親子でゲームをするのもおすすめです。国際水泳解説者の東島新次氏は、水中でジェスチャーゲームをすると水慣れしやすいといいます。
お父さんがお子さんに「犬」と伝えたら、子どもは水中で犬のジェスチャーをしてお母さんに伝える……というように、家族で遊んでみましょう。
3. キック練習(プールサイド・陸上)
水泳の基本動作のひとつである、キックに特化した練習法です。泳ぎ方によって異なりますが、おおむねプールサイドや陸上で行えます。
プールサイドでクロールの腰掛けキック
宮崎氏らによると、両足の親指が軽く触れあうように意識すれば、より良いキックになるそうです。
- プールサイドに座り、両手を後ろについて体を支えます。
- 足は膝を伸ばしてももから動かし、足の甲で水を蹴り上げます。
- 両足を交互にリズミカルに動かして、キックをしましょう。
プールサイドで平泳ぎの腰掛けキック
平泳ぎのキックは足裏を使って水を押し出すイメージを持つと良いとのこと。クロールに比べて足指やかかとの方向に注意が必要なので、腰掛けキックの段階で細かな動作を身につけておくことが大切です。
- クロールより上半身を少し後ろに倒して、両手を後ろについて体を支えます。
- 足を伸ばした状態から膝を曲げて体にひきつけます(膝の間はこぶし2つ分空ける)。
- 足指とかかとを外側に向け、足裏で水を押し出すようにして蹴ります。
- 膝をまっすぐに伸ばし、両足を閉じる。
バタフライの陸上キック
陸上キックの練習は、バタフライのキックによる腰の動きを覚えるために行います。お父さんお母さんはお尻を出す動作のときに背中が丸くなっていないか、確認してあげてください。
- 両足をそろえて立ち、両手を腰にあてます。
- 「1」の掛け声でお尻を後ろに出します。
- 「2」の掛け声でお尻をもとの位置に戻します。
背泳ぎの水面キック
アテネオリンピックなどで背泳ぎの選手として出場した稲田法子氏によると、あお向け姿勢は進行方向が見えないため子どもが不安になりやすいとのこと。不安で姿勢が崩れると足やお尻が沈む原因になるので、大人が進行方向に立ってあげましょう。手を引いたり、顔をのぞき込んであげると子どもは安心すると稲田氏はいいます。
- けのび姿勢を保ちながら、右膝を軽く曲げて蹴り上げます。
- 右膝が伸びきるまで蹴り上げたら、膝を伸ばしたまま蹴り下ろします。
- 左足も同様に行い、左右交互に繰り返します。
4. ストローク練習(プールサイド・水中)
大人が見守りながら行うストロークの練習も、正しいフォームを身につけるのに役立ちます。プールサイドや水中でやってみましょう。
クロールのストロークの練習
リオデジャネイロオリンピックで池江璃花子選手らを担当した村上二美也氏によると、手を回すときは体の真ん中を通る中心線に向かって行うと良いとのこと。推進力を増やすためにリラックスした状態で腕を回せているか、確認してあげましょう。
- 両足を肩幅くらいに開いて立ちます。
- 上半身を前方に90度くらい倒して片方ずつ腕を大きく回します。
- 水中では水を押さえるイメージを持ちましょう。
なでるような回し方では泳ぎが小さくなってしまいます。また、外から手を回して横から入れたり、斜めに入れたりすると、まっすぐ泳げません。
(引用元:村上二美也 (2017),『知ってる?水泳 (クイズでスポーツがうまくなる) 』, ベースボールマガジン社.)
平泳ぎのストロークの練習
日本水泳連盟会長・青木剛氏によると、平泳ぎのストロークは「大きくならず、わきをしめる」のがポイントだそう。また、腕の動きが逆ハート形を描いているか確認してあげましょう。
- 頭上に伸ばした手を外に開きます(キャッチ)。
- ひじが肩のあたりにくるまでかき、腕を内側に向けて戻します(プル)。
- 開いたわきを一気にしめながら顔をあげます。
- 胸の前あたりで小さく手をあわせ、そのまま伸ばし、頭を水に沈めます。
バタフライのストロークの練習
青木氏は、バタフライではストロークの動きと息継ぎのタイミングを合わせるよう意識するのが大切といいます。陸上での練習のほか、水中で片手だけのストロークにも挑戦して、体のうねりのタイミングをチェックしてみましょう。
- 親指側から入水し、頭も下げて水中へ入れる動作をします(息は吐きません)。
- プルの段階で息を吐き、頭の高さまで手のひらは外側を保ちます。
- 胸に向かって外から内へ(プッシュ)。まっすぐ下げながら息を吐きます。
- 腕を水から抜き上げつつ上半身も上げ、素早く息を吸います。
- 腕を伸ばし、素早く前へ(リカバリー)。親指から入水します。
背泳ぎのストロークの練習
村上氏によると、背泳ぎの手の動きは「前へならえ」をイメージすると良いのだそう。片手ずつ、両手同時にと2つの練習で動きをマスターしましょう。
- 前ならえのように両手を前方に出し、親指を上にします。
- 手のひらの向きを変えながら両腕を持ち上げます。
- 腕をねじりながら、水を押すようにして回します。
- この動作を片腕ずつやってみましょう。
***
お父さんお母さんも一緒に水中にもぐっている、自分が水面に浮いているときは見守ってくれていると思うと、子どもは安心して水泳に取り組めます。ぜひ、お子さんをプールに誘って実践してみましょう。
文/かのえかな
(参考)
セントラルスポーツ株式会社 (2006),『親子で楽しむはじめてのスイミング』, 主婦の友社.
東島新次・堂下雅晴 (2007),『やってみよう!水泳 (小学生レッツ・スポーツシリーズ) 』, ベースボールマガジン社.
村上二美也 (2017),『知ってる?水泳 (クイズでスポーツがうまくなる) 』, ベースボールマガジン社.
青木剛 (2005),『水泳―オリンピックのスーパースイムでうまくなる! (めざせ!スーパースター)』, ポプラ社.