3〜5歳くらいは「なぜなぜ期」とも言われるように、子ども自身に疑問が溢れ出てくる時期。空はなぜ青いのか、悲しくなるとどうして涙が出るのか、ダンゴムシが丸くなるのはなぜか……。大人が簡単には答えられないような質問を、次から次へと投げかけてくる子も多いはず。また、そんな「質問攻撃」にやれやれ、と疲れを感じてしまう親御さんもいることでしょう。
しかし、この質問こそが多方面への好奇心の表れであり、順調に知能が発達している証拠なんだそう。
半分は親との受け答えを楽しんでいるだけとも捉えられますが、実はこの“なぜなぜ期”、子どもが“勉強好き”“理科好き”に育つチャンスなのです。
「これなあに?」から「なぜ? どうして?」へ
「これなあに?」に対して「◯◯だよ」と答えるだけでよかった2〜3歳の頃に比べ、3〜4歳になると質問も多様化。ことばと文字が頭の中で一致し、覚えたことばを上手に使えるようになる時期だからこそ、探究心が溢れ出てくるようです。
子どもというのは元来、強い探究心を持っています。これは人間がまだ野生動物だった頃の名残なのです。野生動物は生まれた瞬間に、過酷な自然環境の中に急に投げ出されます。その瞬間に周囲から様々な情報を入手して分析し行動しなければ、たちまち天敵の餌食になってしまいます。そのため動物には、先天的に強い探究心が備わっているのです。
幼い子どもが何にでも興味を示し、「なぜ?」「なに?」と訊いてくるのはそのためです。それを上手に育んでいけば、あとは勝手に「理科が得意の子」に育っていきます。
(引用元:All About|理科のできる子に育てる低学年からの学習法)
いろいろな科目の中でも、答えを導き出すにあたり、数値を使って計算したり、いろいろな作業をしたりしないといけない問題が多いのが理科。ひょんな「なぜ?」をきっかけに、答えを見つけ出すための姿勢が身についていけば、理科がきっと楽しいものと感じられるようになるはずです。
子どもの好奇心を肯定し同じ目線に立つ
では、「なぜ?」と聞かれたらどう答えるのがベストなのでしょうか。子どものためには、なんでもすぐに答えられるのが立派な大人、という認識は捨ててしまいましょう。
すぐ答えが与えられることが習慣になっていると、子どもは「ママに聞けばなんでも答えがわかる」と頼り切ってしまい、自分で考える力が伸びないのだそうです。
(引用元:曽田照子(2013) ,『ママ、言わないで!子どもが自信を失う言葉66』,学研パブリッシング.)
子どもから科学的な質問をされたとき、知的探究心を伸ばすポイントをまとめてみました。
1. 質問を肯定する
まず「よくそこに気づいたね!」と疑問に思ったこと自体を肯定してあげましょう。ただし調子を合わせて形式的にそう言っても、子どもには見抜かれてしまいます。
「どうして寒いと体が震えるの?」と聞かれたら、たとえ当たり前だ、そういうものだ、と思っていても、本気で考えてみるのです。大人が何気なく理解しているつもりになっていることも実はよくわかっていなかったりするもので、たしかに不思議がいっぱいです。
2. すぐに答えず、一緒に疑問を持つ
質問にすぐ答えられてしまった子どもは、考えることの面白さを実感することができません。また、答がすぐに導き出せない問題は投げ出してしまう、根気のない子に育ってしまう可能性も否定できません。
もしも答えがわかっていたとしても「どうしてなんだろうね」と寄り添い、自ら答えを探し始めるように促してあげましょう。
3. わからなかったらネットや図鑑に頼ってOK
親たるもの、なんでも答えられなくては! と威厳を保とうとする必要はありません。知ったかぶりは最もNG。親の役割は、知識を与えることではなく勉強の仕方や調べ方を伝えること。
ネットや図鑑の力を借りながら、子どもが理解できるよう、かみくだいて説明してあげましょう。するといずれ、子ども自らが疑問解決のために勉強する姿勢が見られるはずです。
なぜ? に対する「NGワード」「NG行動」
逆に、質問に対してNGなのは、以下のような受け答え。いずれもせっかくの好奇心・探究心を、根元からスッパリ切り落としてしまうような残念な答え方です。
×「そういうものなの!」
×「そんなの◯◯に決まってるじゃない」
このほかにも「またあとでね」とその場をやり過ごした場合は、実際にあとになっても何もしないでいると子どももがっかり。信頼を失いかねません。もちろん、手が空いてから改めてこどもの質問に向き合うのであればOKです。
また、子どもの質問は無邪気なものでつい笑ってしまいたくなることもありますが、一笑に付すのもNG。子どもは大人が思っている以上にナイーブ。一度笑われてしまうと恥ずかしさや恐怖心を覚え、質問できなくなってしまう場合もあります。
幼い子の場合は、質問自体がうまく説明できず、何を言っているのかわかりにくい時も。そんなときは「なにがききたいのかわからないよ」と切り捨てるのではなく、やさしく寄り添って質問内容を引き出してあげましょう。
実際の観察や体験を通して説明を
本や図鑑で調べるのももちろんよいですが、「百聞は一見に如かず」。勉強の楽しさを知っている子は、机の上以外のあらゆる場所から学びのチャンスを得ています。
本来、何かを学ぶことは心をウキウキさせ、楽しいものです。「勉強」感覚が希薄な幼児期にこそ、その「楽しさ」を体感させることが大切なのです。
(引用元:祖川泰治(2015) ,『IQがみるみる伸びる 0歳から6歳までの遊び方・育て方』,廣済堂出版.)
わからないなら机に向かって調べましょう! ばかりではなく、体感することで理解につながれば、親も子も学びの楽しさを実感できるはず。
「なぜ?」をきっかけにして、近所の図書館や川や公園へ出かけたり。また、答えを見つけられそうな動物園や博物館、キャンプや登山などを週末に計画すれば、親子一緒にワクワクできますね。
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子どもの疑問に寄り添いたいのはやまやまだけれども、毎日忙しくそんなに余裕はない、という親御さんも多いことでしょう。
ならば、ときには「◯年生になったら学校で教えてもらえるよ」と未来へ希望をもたせてみたり、「お母さんもわからないから、◯◯くんが大きくなったら勉強して教えてくれる?」とお願いしてみたり。夏休みの自由研究のテーマにしよう、と提案し、疑問を忘れないようにメモしておくのもいいですね。
その時はわからなくても、ほかのことを勉強していくうちに知識と知識が結びつき、「なんだ、そういうことか!」と心から納得できる時が来ることもあるはずです。
親が真摯に向き合うべきなのは、質問自体ではなく、こどもの“好奇心”の方。「なぜ?」は勉強の楽しさを知るワクワクの芽。大事に育てていけるといいですね。
文/酒井絢子
(参考)
ベネッセ 教育情報サイト|「なんで?」と言われても、「間違っているから違う」としか言えません[中学受験]
AERA dot.|「9歳のころがカギ」 自分の子どもを「理系」にする方法
gooニュース|子どもの 「なぜなぜ攻撃」に、正確な知識で答えるのはNG!?
All About|カンタン! 子どもの知的好奇心を引き出す方法
All About|理科のできる子に育てる低学年からの学習法
ReseMom|これからの教育キーワードは「没頭力」汐見稔幸・高濱正伸対談
祖川泰治(2015) ,『IQがみるみる伸びる 0歳から6歳までの遊び方・育て方』,廣済堂出版.
キャシー・ウォラード(2012) ,『なぜ? どうして? 身のまわりの疑問、まるわかり大事典』,飛鳥新社.
立石美津子(2014) ,『1人でできる子が育つ 「テキトー母さん」のすすめ』,日本実業出版社.
曽田照子(2013) ,『ママ、言わないで!子どもが自信を失う言葉66』,学研パブリッシング.