あたまを使う/教育を考える/国語 2018.11.17

「子ども俳人」急増中! 「俳句」を詠むと豊かな言語感覚と語彙力が身につく理由

長野真弓
「子ども俳人」急増中! 「俳句」を詠むと豊かな言語感覚と語彙力が身につく理由

テレビ番組の影響もあって、俳句人気が高まっています。今や全国で子どものための俳句大会が開かれるほど子ども俳人が増えているのです。

俳句には、語彙力や表現力を向上させる学びの要素がたくさんあります。短い文の中に思いを込める難しさと面白さ、知れば知るほど奥深い俳句の世界は、子どもの素直な感性を生かすのにぴったりです。

「俳諧は三尺の童にさせよ。初心の句こそたのもしけれ。(三冊子)」と、あの松尾芭蕉も子どもに俳句を詠ませることを勧めています。

そんな俳句の魅力に迫ってみましょう。

俳句の歴史

室町時代末期に広まった連歌、俳諧。17世紀に松尾芭蕉『おくのほそ道』で確立された「蕉風俳諧」が俳諧のその後の流れを大きく変えました。

江戸時代末期には衰退していた俳諧でしたが、明治時代に正岡子規を中心に盛り上がった文学運動(俳句革新運動)により、俳諧は俳句へと発展したのです。正岡子規が創刊した文芸誌『ホトトギス』は現在の俳句界の礎を築いたと言われています。

「俳句」を詠むと豊かな言語感覚と語彙力が身につく理由2

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俳句の魅力

次に俳句を詠むことの魅力を詳しく見てみましょう。

■感受性が育まれる

俳句には季語があります。季節を表す句を作るためには、まず観察が大事。ものを見て、そのものや季節を感じて、表現する、その細やかな心に感性が宿ります。眺めているうちに愛着が湧いたり、興味が湧いたり、日常にワクワクを発見することで、そこからさらに世界が広がっていくかも知れません。

■豊かな言語感覚が身につく

俳句は五七五17音に想いの全てを込めなければなりませんので、無駄を無くし、言葉を選ぶ必要があります。自分の言いたいことにぴったりな言葉を探しながら様々な語彙や表現に出会うでしょう。その過程で言葉の美しさに気づき、豊かな言語感覚が身についてくるのです。

■年齢は関係ない

俳句は季語などのいくつかの“決まりごと”さえ知れば、誰でも作ることができます。特別な道具はいりませんし、場所も選びません。親子で一緒に楽しむことができるのも魅力ですね。ピクニックに行った公園や、好きな食べ物のことなど、同じお題で句を詠んで、お互いの句を楽しんでみましょう。

■心の拠り所になる得る

聖路加国際病院名誉院長・日野原重明さんとの俳句の文通で話題になった小林凛くん。彼は壮絶ないじめの苦難を、俳句を綴ることで乗り越えました。俳句に心情を吐き出すことでなんとか自分を保つことができたのです。“表現する”ことは子ども自身の心の拠り所になり得ますし、親がそれを見て、子どもが何を考え、どう感じているのかという心の機微に気づくことができるツールにもなるのです

「俳句」を詠むと豊かな言語感覚と語彙力が身につく理由3

小学生が俳句を作るときの3ステップ

俳句といってもどう始めればいいのか、俳句を作る“コツ”もよくわかりませんよね。

子どもが作る俳句の魅力はのびのびと自由なところ。決まりごとがあるといってもあまり難しく考えず、子どもらしい感性で作っていいのです。

俳人の金子兜太氏は著書の中で「俳句は遊びの延長であってほしい」と話しています。

また最近は俳句を小学校の授業で取り入れている学校もあるようです。実際に小学生に俳句の指導をされた前田正秀先生の例がとてもわかりやすいのでご紹介します。

(1)七五調のリズムを味わう

「古事記」「日本書紀」の時代から続く日本古来の叙情形式である五七調と七五調は昔から日本人には心地よいリズムなのです。まずそのリズム感に馴染むことが俳句への第一歩。そのためには俳句の音読が有効だそう。手拍子も合わせるなど楽しくリズムを取ってみましょう。

江戸時代の3大俳人である、松尾芭蕉・与謝蕪村・小林一茶、明治時代の正岡子規の名句を鑑賞することは、俳句を始める際とても役に立つでしょう。ぜひお子さまと一緒に手拍子を取りながら音読してみてください。

(2)「自分だけの発見」を俳句に

最初は17音に言葉をはめることに集中しますが、慣れてくると内容にもこだわろうとするようになるのだそう。そんな時アドバイスするとしたら、「自分だけの発見」にこだわること。

見たものを写生するように言葉する、体験を具体的に、家族や友達を題材にするなど。まずは興味を持った身近な題材から始めてみましょう。

(3)気持ちを書かずに気持ちを表す

題材が見つかったら、次は表現方法でのコツです。子どもは素直に嬉しかったこと、悲しかったことをそのまま言葉にするかもしれません。しかし俳句では直接表現よりも間接的な言葉でその感情を表して読者に想像してもらう方がいい句となります。

初げいこ心も竹刀もまっすぐに

(引用元:金子兜太監修(2014),『子どもと楽しむ俳句教室』p102, 誠文堂新光社.)

このように場面を詠むだけで清々しい心意気の心情が表せると素晴らしいですね。ポイントは、「気持ちを書かずに気持ちを表す」ですよ。

(4)俳句を鑑賞し合う

俳句を作った後はお互いの句を鑑賞し合いましょう。友達同士でも親子でも、自分が作った句が褒められれば嬉しいですし、次の励みにもなります。人が作った様々な句に触れれば俳句を見る目も育ちます。

子どもの俳句番組に出演した教育評論家の尾木直樹氏は、俳句を作る過程で心が解放され、イキイキと変わっていく子ども達の表情に感動されています。大人のものに比べるとひねりはあまり効いていませんが、率直な表現が心にストレートに響くのです。まずは素直に一句、始めてみましょう!

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今の俳句人気の立役者と言える俳人、夏井いつき先生もおっしゃっています。「センスや才能がなくても誰でも簡単にできる。自分が思ったことやしゃべったことを俳句にできるとおもしろくなってくる」。夏井先生の元には小学生からもたくさんのファンレターが届くそうです。俳句は子どもたちをも魅了してしまう証拠ですね。

俳句を詠むことで、日本語の幅が広がり、表現豊かになります。国際化が進むいまだからこそ、日本語の美しさを再認識し、言葉を大切にできる人が増えることはとても大事なのではないかと思います。

(参考)
心揺さぶる算数の授業をめざして|総合的な学習の時間「俳句づくり」
Woman excite|感性を磨く俳句づくりのコツ
文春オンライン|尾木ママが語る俳句の魅力「思わぬ自分、思わぬ他者を発見できる」
毎日新聞|子育て親子 秋晴れに 言葉紡ぐ目 閃閃と
コトバンク|三冊子
金子兜太監修(2014), 『子どもと楽しむ俳句教室』, 誠文堂新光社.