あたまを使う/国語 2018.7.9

【親子でとりくむ読書感想文 書き方レッスン】第4回:自分と向き合う時間にこそ読書の意味がある

松嶋 有香
【親子でとりくむ読書感想文 書き方レッスン】第4回:自分と向き合う時間にこそ読書の意味がある

(この記事はアフィリエイトを含みます)

こんにちは。文章力養成コーチの松嶋有香です。
本屋の店先に「読書感想文コーナー」がお目見えしました。この時期はまだ足を止める人はいません。これが8月の中旬を過ぎると、品切れになる課題本も出てくるほど、このコーナーに人だかりができます。そばでその光景を見ていると「今からとなると、かなり付け焼き刃的な読み方になるのだろうなー。かわいそうだなー。」という気持ちになります。
皆さんは夏休み前にこの記事を読んでいるわけですから、そうならないようにしっかり準備をしてくださいね。

さて、前回、第3回の復習です。「心が動いた文やシーンがあるページに付箋を貼る」という行程でしたね。コツとして重要なポイントがありました。

「子どもが選んだシーンを絶対に否定しない」

そう、毎週同じことを申しております。とにかく、子どもの読書感想文なのですから、子どもから出た言葉について、どんなに自分の理想と違っても否定しないことです。

さて、今回は、第4回。前回の段階で本に貼った付箋紙。そこから親子で会話をしましょう

まずは、全体の位置を確認します。
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0. 計画を立てる
1. 本を選ぶ
2. 心が動いた文やシーンがあるページに付箋を貼る
3. 質問シートを作る。答える。
4. 近い内容をまとめて文にする
5. 4を組み立てる
6. 書いてみる
7. 時間を置いて、見直す
8. 書き直す
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2まで終わっていますので、今日は3です。

3. 質問シートを作る・答える

さあ、ここからぐっと深い親子ワールドに突入です。覚悟をしっかり決めてくださいね。途中でへばった時のために、冷たくて甘い物を用意しておくことをオススメします。

まず、付箋紙にページ数が書いてあることを確認し、剥がします。それを、白い紙に貼りましょう。大きさはB5かA4くらいが良いでしょう。ノートでも構いません。

そして、保護者も付箋紙が貼られた部分を読んでみます。そこで、お子さんの普段の姿を改めて確認することもあるでしょうし、今まで知らなかった一面を見ることもあるでしょう。

「なぜ、ここで感動したのか」
「どうして、そこが気になるのか」
「もし自分だったらどうするのか」
「もし、魔法でストーリーを変えられるとしたら、どうしたいか」
「どうして付箋に○○と書いてあるのか」

そういうことを話し合っていきます。自分の心と対話する時間になります。考察より内省に近い感覚かもしれません。高学年の場合は、自分で自問自答できる可能性があります。高学年の子で、この作業を自分でしたいと言った場合は、そうさせてみましょう。

子どもの知的好奇心を育てる3つのポイント
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コツ。問い詰めないこと。

さて、毎年この段階で問題になるのが、「親子で会話をしましょう」と言っているのに、なぜか、質問がキツくなってしまうケースです。これは、子どもに対する注意ではありません。保護者の方が相当気をつけないと、難しい点です。アンケートでもこの点について、感想が寄せられています。

  • 子どもの方にも、親の求めている正解を回答したい、間違えたくない、という気持ちがあるようでした。「こういうふうに感じたんじゃない?」と親が誘導しているように感じる場面もありました。
  • 全体的には良かったのですが、「詰問にならないこと」と「誘導尋問にならないこと」には苦慮しました。いつの間にか子ども自身の意見が、親の誘導したい方向に塗りつぶされないかヒヤヒヤしました。
  • 私の意図が入った誘導尋問ではなく、かつ、いろいろな角度からの答えを引き出すための質問をなかなか思いつけませんでした。

 
そうかと思うと、楽しく済んでいる人もいるのです。

  • 意外と簡単でした。感情が動いたシーンを3か所にしぼり、それぞれ質問すると、たくさん答えてくれました。口から出た言葉を、どんどんメモしていきました。自分の興味のある本を選んだことが影響していると思いました。
  • 簡単でした。書いていて楽しかったです。
  • いろいろな登場人物の立場に立って考えたり、「なぜ、そう思ったのか?」「それをしなくても良かったのではないか?」と様々な疑問をなげかけるのはとても楽しかったです。立場が変わると見えるものが違ってみえることに子どもが気づき、親子の会話を楽しみました。

 
私が思うに、この違いは、普段、親子で何かをきっかけにおしゃべりを楽しんでいるか、それとも理想の答えをいつも親が希望しており、それに近い正答のようなものを子どもが頑張って考えているかの違いだということ。この年は普段から私の講座を受講している生徒が多かったのですが、「楽しかった」と言っている保護者は、普段の学習報告もとても楽しそうなのです。

保護者の方もイメージしてみてください。友人と同じ本を読んだ、同じ映画を観たとします。その感想を交換し合う時、正解を求めますか? 求めませんよね。単純に会話を楽しむはずです。その会話の中で、新しい気づきがあったり、他者理解があったりしますよね。

この行程も同じです。ぜひ、お子さんの声に素直に耳を傾け、驚き、笑い、時には泣いて、会話を楽しんでください

読書感想文にするための会話ですから、メモを取るのを忘れずに。自力でメモが取れる年齢のお子さんは、メモを取らせてみてください。その時にも、テストではないということを念頭に置いてくださいね。

お子さんの様子もアンケートから分かります。きっと皆さんの役に立つ情報ばかりですよ。

  • 「ここは、こういうことでいいのかな?」「どうしてこの子はこんなこと言ったのかな?」と聞きつつ、「ここ、大事なところかも」などと、2時間くらいぶっ続けで、読み進めていきました。ふと気が付くと13時を過ぎており、「お腹すいたね! お昼にしようか」という感じでした。二人ともかなり集中していたようで、驚きました。
  • 著者の意図とは、全く別のところに反応し、ものすごく地味な存在の登場人物に、感情移入をしていました。そこに、自分の姉の存在を感じ、数少ないセリフの中から、その存在感を確実に深く読み取っていました。驚くと同時に、感激しました。
  • 「さあ、ここからぐっと深い親子ワールドに突入です。」この言葉で、先生を身近に感じられ、また親子で同じ方向を向くことができたように思います。
  • 二人で向き合って話を聞いてもらえることが嬉しいようでした。
  • 書いてある答えが単純でがっかりしましたが、そこから更に聞くと、ちゃんと思うことが出てきました。
  • 子ども自身はあくまでキャラクターの乱暴な言い方が好きだったようです。そこから、なぜ一見乱暴なキャラでも主人公に頼りにされているかを一緒に考えることができたのは非常に良かったです。
  • 子ども一人では、遠浅の海で浮き輪をつけて遊んでいるようなもの。親子で話すことによって、ダイビングのように深い深海まで潜っていけて、素敵な世界が広がることを子どもは、わかったようです。
  • 最初、なんでこんなに質問ばかりするの? と、非常に面倒がっていましたが、やり進めるうちに、答えながら、「そうそう、それとね!」など、言いたかったことを思い出してふくらませることが出てきて、スムーズになりました。

 
親子でとりくむ読書感想文書き方レッスン第4回2

メモのコツ

一見、これはあまり関係ないかな、と思っても、発言したことは全部書き留めてください。口に出したということは、関係が大ありだということです。

また、自分の思いを言葉に変換するのに時間がかかる子もいます。そういう子も、お母さんさえイライラしなければ、ほとんど大丈夫です(笑)時間をとって、優しく、質問を繰り返していきましょう。親子で疲れてきたら、甘くて冷たいものでも食べて、リフレッシュしましょう。どうしても無理なら、時間を置きましょう。寝た方が良い時もありますので、そう感じたら、次の日にしましょう。

そして、この段階から完璧な文章を目指さなくて良いです。溢れてくる言葉をどんどん書き留めてください。話が悪い方向に向かっても、大丈夫です。子どもがきちんと向き合おうとしている証拠です。感極まって泣き出してしまう親子もいるようです。そういう時は泣いちゃってください。

おたまじゃくしの 101ちゃん
おたまじゃくしの 101ちゃん
かこさとし(著、イラスト)/偕成社

以前、この本を読んだ1年生男子のお話です。

101ぴきの兄弟がいるおたまじゃくしの7ちゃん。道草が大好きで迷子になります。心配したお母さんが7ちゃんを見つける途中、ザリガニたちの喧嘩に巻き込まれ、死んでしまいそうになるシーンを選びました。

彼は自分を7ちゃんに投影してお話を進めます。そんな中

  • お母さんが死んじゃったら、だっこもおんぶもしてもらえない
  • お料理も作ってもらえない。まだ僕はお料理ができないから大変
  • お腹が空いてもご飯を食べられないから死んじゃう

 
そんな話をしたそうです。

そして、お母さんとどんどん会話をすすめるうち、7ちゃんになりきった彼は、「お母さんは死なないで」と泣いてしまったそうです。
そんな彼が最終的に作文に書いた言葉が

「おかあさんがいなくなったら、こえがでなくなるくらいかなしいきもちになる」

でした。彼は、本当に7ちゃんの気持ちが分かり、お母さんの死を想像したら、喉が詰まるほど悲しい気持ちになってしまったのでしょうね。

ちなみに、このお子さんは、何年か連続して賞を取りました。それ以上に、本を通じ、自分の心と向き合う素晴らしさを理解した彼は、賞よりも大切なものを勝ち取った気がします。

この読書感想文指導は、お母さんたちにとっても、ひとつの試練になるかもしれません。でも、この指導のゴールでは、素晴らしい子どもの作文があり、本に向き合う力、自分の心と対話する力がそなわったお子さんがいるはずです。一緒に頑張りましょう!

次回予告
第5回『質問と答えをセットにして文章化してみよう』
・キーワードは何? テーマは何?