からだを動かす/スイミング 2018.3.6

【夢のつかみ方】元水泳日本代表選手・萩原智子さん(後編)~目標を達成するために“覚悟”を持つ!~

【夢のつかみ方】元水泳日本代表選手・萩原智子さん(後編)~目標を達成するために“覚悟”を持つ!~

2000年のシドニーオリンピックで、200m背泳ぎ4位入賞という輝かしい成績を持つ、『ハギトモ』の愛称で知られる萩原智子さん。

前編では、萩原さんが両親からしてもらったことへの感謝、そして、挫折を乗り越えるきっかけを与えてくれた友人の存在、ポジティブな周りの人たちからの影響などを語っていただきました。

後編では、目標達成のための方法や、失敗したときのヒントの見つけ方などを、じっくりとお聞きしました。栄光の裏にある、努力や挫折、萩原さんはどのような経験をしてきたのでしょうか。

夢や目標達成に近づくためには「やる!」という“覚悟”を持つこと

萩原さんが水泳を始めたきっかけは、海で溺れたという経験からでした。水泳をはじめてからも、たくさん失敗をしてきたそうです。でも、『失敗があるからこそ成長できた』と萩原さんは言います。

「水泳指導などで子どもたちと接するときに、その子になにかできないことがあったら『ラッキーだよ!』と伝えます。できないことがあるということは、考え方によっては伸びしろがあるということ。つまりそれは、『まだまだ自分は成長できる』ということなのです。それは失敗も同じで、もしなにかに失敗したとしても、それを克服できたらもう一段階成長できるチャンスが待っています

しかし、ただむやみに頑張れば失敗を克服したり、できないことができるようになったりするわけではないとも……。

「よく、ピンチはチャンスだと言いますよね。確かにそのとおりだと思いますが、じつはそう簡単にピンチはチャンスに変わらないのです。大切なのは、ピンチがチャンスに変わる間にある“ヒント”に気づくこと。わたしの場合で言えば、溺れたときに父が言ってくれた言葉、中学生で挫折しかけたときの親友の叱責がヒントになりました。落ち込んだときに、母が言ってくれたポジティブな考え方もそのひとつかもしれません。そういった小さなヒントに気づいたおかげで、わたしは失敗を成長に変えることができたのです」

元水泳日本代表選手・萩原智子さんが語る「夢のつかみ方」後編2

萩原さんにとってピンチがチャンスに変わった出来事のひとつに、シドニーオリンピック前になかなか勝てなかったライバルでもある先輩から言われた言葉があります。

「『なぜわたしは先輩に勝てないのですか?』と先輩に直接聞きました。いま思えば失礼なことを聞いたなと思いますけど(笑)。でもその先輩は、わたしを茶化すことなく、真面目にこう答えてくれました。『ハギトモは、わたしに本当に勝ちたいと思って練習しているの?』と。その言葉の意味をずっと考えていたら、わたしには“覚悟”が足りないということに気づきました。夢をつかむためには、『オリンピックに行きたいな』『先輩に勝ちたいな』という単なる願望を持つのではなくて、『心からオリンピックに行く!』『先輩に勝つ!』という“覚悟”を持つことが大切なのです。覚悟が持てるようになったら、練習に対する意識がガラッと変わりました。コーチともコミュニケーションを積極的に取るようになりましたし、練習にも真剣に取り組めるようになりました。夢はもちろん、毎日なにかをするという身近な目標は誰でも持つと思います。でも、夢や目標達成に近づくためには自分自身と向き合って『夢や目標を達成するんだ!』という覚悟を決めることなのです

元水泳日本代表選手・萩原智子さんが語る「夢のつかみ方」後編3
◆高校1年生「インターハイ」にて

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親は子どもが立ち上がるためのサポート役に徹し、子どもはたくさん挑戦して失敗を繰り返してほしい

萩原さんは、水泳という習い事を通じて成長する楽しさや苦しさ、失敗を乗り越えるために大切な心のあり方を学びました。萩原さんの両親は、萩原さんが安心して全力で水泳に取り組める環境をつくって支えてくれました。そして、ネガティブになりがちな考え方を変えてくれたのも両親であり、そもそも萩原さんと水泳と出会わせてくれたのも両親でした。子どもと一緒に喜怒哀楽をともにしてくれた親という存在があったからこそ、萩原さんは水泳で夢をつかむことができたそうです。

わたしの両親は、いつもわたしと一緒になって頑張ってくれていました。頑張ってお弁当をつくってくれたりマッサージをしてくれたり。悩んだときには一緒に悩んでくれて、『大丈夫だよ!』と声をかけてくれた。ネガティブな性格だったわたしが変われたのは、ポジティブな両親の存在があったからでした。そうやって、夢や目標を子どもと共有することが大事なのだとわたし自身も親になってから感じています。たとえば、美味しいものを食べて『美味しいね』と子どもに笑顔で言うと、子どもも笑顔になりますよね。反対に、子どもが笑顔でいるのを見ていると、親も笑顔になることができる。それと同じで、親が変われば子どもも変わりますし、反対に子どもが変われば、親も変わるのだと思うんです。子どもが成長するだけでなく、親だって子どもと一緒に成長し合えると信じています。一緒に楽しんで、悩んで、一緒に頑張る。夢や目標を子どもと共有して、そこに全力で子どもが取り組めるような環境をつくってあげる。それこそが、習い事をする子どもに対する親ができる最高のサポートになるのではないのでしょうか

元水泳日本代表選手・萩原智子さんが語る「夢のつかみ方」後編4
◆水泳教室で子どもたちに水泳の楽しさを伝える萩原さん

前編はこちら→

■ 元水泳日本代表選手・萩原智子さん インタビュー一覧
第1回:「習い事としての水泳をオススメしたい5つの理由」
第2回:「子どもたちに持ってほしい水への感謝」
第3回:【夢のつかみ方】(前編)~ずっと支え続けてくれた、両親への感謝~
第4回:【夢のつかみ方】(後編)~目標を達成するために“覚悟”を持つ!~

【プロフィール】
萩原智子(はぎわら・ともこ)
1980年4月13日生まれ、山梨県出身。山梨学院大学付属高校~山梨学院大学~山梨学院大学院。小学校2年生のときに、海で溺れたことがきっかけで水泳をはじめる。2000年のシドニーオリンピックには200メートル背泳ぎと200メートル個人メドレーで出場し、ともに決勝進出を果たし入賞。2004年に一度は引退するも、2009年に現役復帰を果たし2010年には日本代表に返り咲く。2012年のロンドンオリンピック選考会後に2度目の引退。現在は、一児の母として子育てをしながら日本水泳連盟理事を務める他、テレビ・ラジオ出演や水泳の解説、講演活動、ライターとしても活躍中。また、水泳教室に加えて「水の大切さ」 や「水の教育」にも取り組む、水でエデュケーション・コミュニケーションする『水ケーション』の活動にも注力している。また、山梨県、福島県、愛知県で水泳大会『萩原智子杯」も開催している。

【ライタープロフィール】
田坂友暁(たさか・ともあき)
1980年生まれ、兵庫県出身。バタフライの選手として全国大会で優勝や入賞多数。その経験を生かし、水泳雑誌の編集部に所属。2013年からフリーランスとして活動。水泳の知識とアスリート経験を生かして、水泳を中心に健康や栄養などの身体をテーマに、幅広く取材・執筆。また映像撮影・編集も手がける。『スイミングマガジン』で連載を担当する他、『DVDレッスン 萩原智子の水泳 基礎からチャレンジ!』、『DVDレッスン 萩原智子のクロール 基礎からチャレンジ!』(ともにGAKKEN SPORTS BOOKS)、『呼吸泳本』、『明日に向かって~病気に負けず、自分の道を究めた星奈津美のバタフライの軌跡~』(ベースボール・マガジン社)などの書籍も多数執筆。