「お姉ちゃんばっかりほめてる気がする」「下の子には甘いのに、上の子には厳しくなってしまう」。きょうだいを育てていると、ふとした瞬間にそんな胸のざわつきを感じることはありませんか。
寝る前にその日を振り返って、「同じようにほめてあげられなかったな」と落ち込む夜もあるかもしれません。でも、まずお伝えしたいのは、きょうだいを同じようにほめられないのは、あなたが不公平な親だからではないということ。むしろそれは、ふたりの子どもを「別々の人間」として、それぞれの目で見ている証拠なのです。
この記事では、きょうだい研究の知見をもとに、「比較しないようにしなきゃ」と自分を縛るのではなく、今日から少しラクになれる “ひとつの視点” をご紹介します。
目次
「同じようにほめられない」のは、ごく自然なこと
そもそも、きょうだいは同じ家で育っても、驚くほど違う個性を持っています。性格も、得意なことも、ほめられてうれしいポイントさえも違う。だとしたら、親のほめ方が子どもごとに変わるのは、当たり前のことです。
工作が得意な上の子には「よくつくったね」と言う機会が多くなり、体を動かすのが好きな下の子には「速かったね」と声をかける回数が増える。それは差別ではなく、その子の「好き」に合わせた自然な反応です。
じつは研究の世界でも、親がきょうだいに対してまったく同じ関わり方をすることは、ほとんどないことがわかっています。親がきょうだいそれぞれに異なる関わり方をすることは、多くの家庭で見られるものとして研究の対象になってきました。(米ブリガムヤング大学、アレクサンダー・ジェンセン教授ら)*1
「同じようにできない自分」を責める必要は、まったくないのです。
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気をつけたいのは「量の差」より「比較の言葉」
とはいえ、ひとつだけ知っておきたい研究結果があります。それは、ほめる「量」の差よりも、「お兄ちゃんのほうができるね」といった比較の言葉のほうが、子どもに影響しやすいということです。
アメリカの388家族(第1子・第2子とその父母)を対象にした調査では、「どちらの子のほうが勉強が得意か」という親の思い込みが、その先の子どもの成績の差と関連する傾向が見られました。興味深いのは、実際のきょうだいの学力は平均するとほとんど変わらなかったという点です。(米ブリガムヤング大学、アレクサンダー・ジェンセン教授と米ペンシルベニア州立大学、スーザン・マクヘール教授)*2
ここで大事なのは、「比較してしまった自分はダメだ」と落ち込むことではありません。人と人を比べてしまうのは、人間の脳の自然な働きです。だからこそ、次の章でご紹介する “視点” が大切になります。

比較を消すより、「縦の視点」をひとつ足す
「比較しないようにしよう」と意識すればするほど、比較が頭から離れなくなる。そんな経験はありませんか。禁止のルールは、親の心を縛るだけで長続きしません。
そこでおすすめしたいのが、比較を消そうとするのではなく、視点をひとつ足すこと。それが「横」ではなく「縦」で見る、という視点です。
横の視点とは、きょうだいや周りの子と比べる見方。縦の視点とは、その子の「過去」と「現在」を比べる見方です。
縦の視点で見ると、ほめる言葉は自然と「その子だけの物語」になります。きょうだいの間で言葉の数が違っても、それぞれが「自分の成長を見てもらえている」と感じられれば、不公平にはならないのです。
実際、きょうだい間の親の関わりの違いについて調べた研究では、関わりに差がある家庭でも、子ども自身がその関わりをどう受け止めているかが、親子関係のあたたかさと関連する傾向が示されています。(米ブリガムヤング大学、アレクサンダー・ジェンセン教授と米ペンシルベニア州立大学、スーザン・マクヘール教授)*1

今日からできる、小さな「縦の声かけ」
むずかしいテクニックはいりません。今日の生活のなかに、次のような声かけをひとつだけ足してみてください。
「前より○○になったね」を1日ひとことだけ。
🗣 たとえばこんなイメージ
✅ 「昨日より早くお着替えできたね」
✅ 「前は泣いてたのに、今日は自分で言えたね」
✅ 「去年は補助輪つけてたのにね」
ポイントは、きょうだい両方に同じ数だけ言おうとしないこと。むしろ数を揃えようとすると、また「同じようにできない」苦しさに戻ってしまいます。
そしてもうひとつ。もし「お姉ちゃんはできるのに」と言ってしまった日があっても、大丈夫。そのあとに「でも、あなたは前よりここが伸びたよね」とひとこと足せば、子どもに届くメッセージは変わります。言ってしまった言葉を消すことはできなくても、足すことはいつでもできるのです。
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きょうだいを同じようにほめられないのは、手抜きでも不公平でもなく、ふたりを別々の人間として見つめているからこそ。悩んでいるということ自体が、それぞれの子を大切に思っている証拠です。比較を「なくす」のではなく、「前より○○になったね」という縦の視点をひとつ足す。まずは、そこから始めてみませしょう!
FAQ(よくある質問)
Q. 上の子ばかり叱ってしまいます。もう手遅れでしょうか?
A. 手遅れということはありません。研究でも、親の関わりに差がある家庭で大事なのは、子ども自身の受け止め方だと示唆されています。「前よりできるようになったね」という縦の声かけを、今日からひとつ足すところから始めてみましょう。
Q. 「お兄ちゃんみたいにやってみたら?」も比較になりますか?
A. 「どちらが上か」という優劣のニュアンスがなければ、過度に心配する必要はありません。気になる場合は「お兄ちゃんのやり方、参考になるかもよ」のように、優劣ではなく選択肢として伝える形にすると安心です。
Q. 子ども本人が「ずるい」ときょうだいと比べてきます。どうすれば?
A. まず「そう感じたんだね」と気持ちを受け止めたうえで、「あなたにはあなたのいいところがあるよ」とその子だけの具体的なエピソードを伝えてみてください。親が縦の視点で見ている姿は、少しずつ子ども自身の見方も変化していきます。
(参考)
*1 Jensen, A. C., & McHale, S. M. (2017)|Mothers’, fathers’, and siblings’ perceptions of parents’ differential treatment of siblings: Links with family relationship qualities. Journal of Adolescence, 60, 119-129.
*2 Jensen, A. C., & McHale, S. M. (2015)|What makes siblings different? The development of sibling differences in academic achievement and interests. Journal of Family Psychology, 29, 469-478.
*3 Jensen, A. C., McHale, S. M., & Pond, A. M. (2018)|Parents’ social comparisons of siblings and youth problem behavior: A moderated mediation model. Journal of Youth and Adolescence.









