新学期が間近に迫り、親として「学校とどう付き合おう」と考える機会が増えるのではないでしょうか? じつは、親と学校の関係の質は、子ども自身の学校生活の充実度に直結することがわかっています。
今回は、教育心理学の研究をもとに、学校との関係をより良くするための親の姿勢とコミュニケーションの工夫をご紹介します。
目次
親の「学校への信頼」が、子どもの学校適応を支えている
「親が学校を信頼しているか」は、一見、子ども本人には関係ないように思えるかもしれません。ところが、中学生345名を対象とした調査では、生徒の教師に対する不信感には、保護者の教師への信頼感(家庭の要因)が影響していることが示されました。*1
親が学校や先生を信頼していない態度を日常的に見せていると、子ども自身も先生を信頼しにくくなる可能性があるのです。先生への信頼感は、授業への取り組みから友達関係、進路への意識まで、子どもの学校生活の土台になります。もちろん学校に違和感を感じる場面はあるでしょう。
とはいえ大切なのは、その違和感を子どもの前で不信として表現するのではなく、親自身が「先生と対話を続ける」という姿勢を持つこと。これこそが、子どもの安心の土台になるのです。

関係構築は「聞く」「伝える」の往復から
保護者面談での教師の発話を分析した研究では、教師が保護者と連携を深めていくプロセスにおいて、「傾聴的発言」「自己開示的発言」「保護者からの情報収集」がカギとなることが示されています。*2
裏を返せば、親の側も「聞く」「伝える」「情報を共有する」という往復が、連携を深める土台になるということです。連絡帳や面談では、「うちの子の最近の様子はどうですか?」と開かれた質問を投げかけてみましょう。親だけでは見えない視点を先生から受け取れます。一方で、「家では○○に取り組んでいます」「最近こんな話をしていました」と家庭での様子を共有することも、先生が子どもへの関わり方を工夫する手がかりになります。
相談事があるときは、「こうしてください」と要望を伝えるのではなく、「親としてどうサポートできるか、先生のご意見をお聞きしたい」という形が効果的です。連絡帳を書く際も、「昨日は〇〇を頑張っていました。学校ではいかがですか?」と、ポジティブな面とセットで尋ねることで、先生も「家庭と一緒に子どもを育てている」という協働の意識を持ちやすくなります。
ほんの少し言葉を工夫するだけで、先生を「心強い味方」に変えていくこともできるのです。
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良好な関係づくりに欠かせない「5つの観点」
2025年に発表された小学校教員203名を対象とした研究では、学級担任と保護者が良好な関係を築くために、「積極的な受容・配慮」「適時的な報連相」「詳細な情報共有・記録」「尊重的双方向性」「直接的交流」の5つの観点が重要であることが明らかになりました。*3
これは教師に求められる視点ですが、親の側からも同じ枠組みで関係を見直せます。相手の立場を思いやり(受容・配慮)、必要なタイミングで情報を伝え(報連相)、重要なやり取りを連絡帳に残し(情報共有・記録)、お互いの意見を尊重しながら対話し(双方向性)、顔を合わせる機会を大切にする(直接的交流)。
| 良好な関係づくりに 欠かせない「5つの観点」 |
親側からできる具体的なアクション |
|---|---|
| ① 積極的な受容・配慮 | 相手(先生)の立場や状況を思いやる |
| ② 適時的な報連相 | 必要なタイミングで早めに情報を伝える |
| ③ 詳細な情報共有・記録 | 重要なやり取りや共有事項を連絡帳などに残す |
| ④ 尊重的双方向性 | 一方的にならず、お互いの意見を尊重しながら対話する |
| ⑤ 直接的交流 | 面談や行事など、直接顔を合わせる機会を大切にする |
どれも特別なことではなく、日々の関わりのなかで少しずつ積み重ねていける姿勢です。
完璧な関係を目指さなくていい
ここまで読んで、「そんなに丁寧に関われる自信がない」と感じた方もいるかもしれません。でも、安心してください。先生との関係づくりに、満点は必要ありません。連絡帳のひとこと、面談での率直なやり取り、行事でのあいさつなど、そのひとつひとつが、少しずつ信頼の貯金になっていきます。
ときにはすれ違いや、伝え方を後悔する場面もあるでしょう。それでも、対話をやめずに関わり続けること自体が、「あなたの味方でいたい」というメッセージとして先生に届きます。大切なのは完璧さではなく、継続すること。できる範囲の関わりを、無理なく積み重ねていきましょう。
***
親と学校の良好な関係は、先生と親が仲良くするためではなく、子ども自身が安心して学び、成長できる環境をつくるためのもの。親と先生が互いを信頼し合っている環境でこそ、子どもは自分を表現し、挑戦する勇気を持てるようになるのです。
よくある質問(FAQ)
Q1. 先生に相談するタイミングが分かりません。些細なことでも連絡してよいのでしょうか?
A. 子どもの学校生活に影響がありそうなことは、早めに共有する方が関係構築にプラスです。家庭での体調変化や気になる発言は、先生にとって大事な情報になります。毎回長文で相談するのではなく、「気になったのでお伝えします」という一言を添えた簡潔な共有で十分です。
Q2. 学校の方針に違和感を感じたとき、どう伝えればよいでしょうか?
A. いきなり「おかしいと思います」と伝えるのではなく、まずは「なぜそうされているのか背景を教えてください」と聞く姿勢を持ちましょう。学級全体の流れや他の子たちの状況など、親からは見えない事情があるかもしれません。背景を聞いた上で、「家庭ではこう感じているのですが、いかがでしょうか」と双方向の対話を目指すことで、建設的なやり取りが生まれます。
Q3. 仕事が忙しく、学校行事に参加できないことが多いです。関係づくりに支障があるでしょうか?
A. すべての行事に参加する必要はありません。ただ、参加できるときには顔を出す、難しいときには連絡帳でひとこと添えるなど、「関心を持っている」というメッセージを送ることが大切です。「子どもが○○を楽しかったと話していました」と共有するだけでも、先生との距離は縮まります。
*1 日本教育心理学会|中学生の教師に対する信頼感とその規定要因(中井大介・庄司一子, 2006)
*2 日本教育心理学会|保護者面談における教師の連携構築プロセスに関する研究(上村惠津子・石隈利紀, 2007)
*3 日本学校改善学会|ソーシャルサポートを背景とした小学校学級担任と保護者間との関係構築が自己効力感及びワーク・エンゲイジメント向上に与える影響の検討(杉山志穂・藤原忠雄, 2025)









