「学校に行きたくない」。ある朝、子どもの口からそのひとことを聞いたとき、頭が真っ白になった……。そんな経験を打ち明けてくれるお母さんは、決して少なくありません。心配で胸がつぶれそうになるのも、「どうしてうちの子が」と戸惑うのも、わが子を大切に思っているからこその、自然な気持ちです。
でも、ひとりで抱え込む必要はありません。いま、不登校は「クラスに1人以上」の身近な出来事になっています。そして、その数が増えたぶんだけ、相談できる窓口も確実に増えているのです。今回は、「誰に、何を、どの段階で相談すればいいのか」を1枚の地図のように整理してお届けします。
目次
不登校は「35万人」。あなたの家庭だけの問題ではありません
文部科学省の最新調査によると、2024年度に不登校だった小・中学生は35万3970人。小学生だけでも約13万8000人にのぼり、児童生徒1000人あたり38.6人であることが示されました。*1 つまり、どのクラスにも1人以上いる計算です。
この数字が伝えてくれるのは、「不登校は特別な家庭に起きる特別な出来事ではない」という事実です。同じ朝を迎えているお母さんが、全国に何十万人もいます。そして国も、教育支援センターの拡充やスクールカウンセラーの配置強化など、相談の受け皿づくりを進めています。「相談する」ことは、レールを外れることではなく、公式に用意されたルートに乗ることなのです。
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段階別・相談先マップ。「いま」に合った窓口があります
相談先は、お子さんの状態によって選び分けるのがポイントです。3つの段階に分けてご紹介します。
| お子さんの様子 | おもな相談先 |
|---|---|
| ① 行きしぶりが出はじめた | 担任の先生・養護教諭(無料) |
| ② 欠席が週単位で続く | スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカー(無料) |
| ③ 欠席が月をまたいで長期化 | 教育支援センター・児童精神科・小児科・フリースクール(無料〜有料) |
【段階1】行きしぶりが出はじめたら:まずは学校のなかの味方に
朝の腹痛や頭痛、「行きたくない」が週に何度か続く。この段階での相談相手は、毎日お子さんを見ている担任の先生と養護教諭です。連絡帳や電話で「最近こんな様子で」と伝えるだけで、学校側の見守りの目がひとつ増えます。保健室登校など、柔軟な選択肢を一緒に考えてもらえることもあります。
【段階2】欠席が続きはじめたら:専門職につながる
休みが週単位で続くようになったら、スクールカウンセラー(SC)やスクールソーシャルワーカー(SSW)の出番です。SCは子どもの心のケアと保護者の相談に、SSWは家庭環境や福祉制度との橋渡しに強みがあります。どちらも学校を通じて無料で利用でき、予約は担任経由でお願いできます。
【段階3】長期化してきたら:学校の外にも扉があります
欠席が月をまたいで続く場合は、自治体の教育支援センター(適応指導教室)、児童精神科や小児科、フリースクールなど、学校外の選択肢も視野に入ります。教育支援センターやフリースクールでの活動は、条件を満たせば出席扱いになる制度もあり、2024年度には4万人以上の子どもたちが学校外の機関等での相談・指導により出席扱いとなったことが報告されています。*1
研究が教えてくれる「早めの相談」の意味
「様子を見たほうがいいのかな」と迷う気持ち、よく分かります。ただ、研究の世界では「早めにつながること」の価値が繰り返し示されています。
米国・ネバダ大学ラスベガス校のカーニー教授らは、学校を休みがちな子どもへの支援に関する25年分の研究を整理し、早期の把握と介入、そして段階に応じた支援が重要であることを指摘しました。*2 また、ライデン大学のヘイン博士らの研究では、学校に行きづらい状態はひとくくりにできず、背景の違いに応じて支援を変える必要があることが整理されています。*3 だからこそ、家庭だけで原因を突き止めようとせず、専門家と一緒に「うちの子の場合」を見立てていくことが近道になるのです。
さらに、8つの研究・435人の子どもを対象としたメタ分析では、カウンセリングなどの心理社会的支援を受けた子どもは、出席状況に改善が見られる傾向が報告されています。(セントルイス大学、社会福祉学者のブランディ・メイナード博士ら)*4
相談は「大げさな1歩」ではなく、現状を変える確かな入り口なのです。

最初のひとことは、これだけでいい
いざ相談するとなると、「なんて切り出せばいいの?」と手が止まりますよね。完璧な説明はいりません。たとえば、こんなひとことで充分です。
連絡帳なら、「最近、朝に『行きたくない』と言う日が増えています。学校での様子を教えていただけますか」。電話なら、「ご相談したいことがあります。スクールカウンセラーの予約はどうすればいいでしょうか」。
状況を整理しきれていなくても大丈夫。「困っています」と伝えること自体が、支援のスタートボタンなのです。
「親の相談」は、子どものためでもあります
もうひとつ、お伝えしたいことがあります。相談窓口は「子どもを預ける場所」ではなく、「親が話を聞いてもらう場所」でもあるということです。
不登校が続くと、お母さん自身も眠れなくなったり、自分を責めてしまったりしがちです。けれど、親が誰かに話を聞いてもらい、少し肩の力を抜けることは、子どもにとって何よりの安心材料になります。子どもは親の表情や声のトーンにとても敏感だからです。スクールカウンセラーも教育支援センターも、保護者だけの相談を歓迎しています。「子どもが行きたがらないので、まず私だけで伺ってもいいですか」。この形の相談は、むしろ王道なのです。

相談しても、心の葛藤が消えないときは
相談先につながったのに、気持ちが晴れない。「本当にこのままでいいの?」という不安がぐるぐる回ってしまう。そんな日があっても、まったくおかしくありません。相談は魔法のスイッチではなく、少しずつ効いてくる伴走だからです。
そのうえで、覚えておいてほしいことが3つあります。
1つめは、相談先は変えても、複数併用してもいいということ。担当者との相性が合わないと感じたら、別の窓口を訪ねるのは「わがまま」ではなく、当然の選択です。2つめは、同じ経験をした保護者が集まる「親の会」の存在。正解を教えてくれる場所ではありませんが、「うちも同じだった」というひとことが、専門家の助言とは違う種類の力をくれます。3つめは、お母さん自身のためのカウンセリングという選択肢。子どもの問題としてではなく、「私がつらい」を主語にして話せる場所を持つことは、決して遠回りではありません。
葛藤が消えないのは、あなたが真剣に向き合っている証拠。その揺れごと、相談の場に持ち込んでいいのです。
***
学校に行けない日々は、親子にとって長いトンネルのように感じられるかもしれません。でも、トンネルのなかには、案内灯のように相談先が点々と灯っています。担任の先生、養護教諭、スクールカウンセラー、教育支援センター。そのどこか1か所に「困っています」と伝えること。それが、今日からできる、確かな1歩です。あなたはすでに、この記事を読んでその準備を始めています。その姿勢こそ、お子さんにとって最高の味方の証なのです。
よくある質問(FAQ)
Q1. どのくらい休みが続いたら相談すべきですか?
A. 目安は2週間です。「行きたくない」がしばらく続く、腹痛や頭痛などの身体症状が強い場合は、担任の先生やスクールカウンセラーに相談しましょう。早めの相談は大げさなことではありません。
Q2. 子どもが相談を嫌がります。親だけで行ってもいいですか?
A. もちろんです。スクールカウンセラーも教育支援センターも保護者のみの相談を受け付けており、むしろ最初は親だけで訪れるケースが一般的です。まずは「私だけで伺ってもいいですか」と伝えてみましょう。
Q3. フリースクールに通うと出席扱いになりますか?
A. 学校長の判断など一定の条件を満たせば、指導要録上の出席扱いになる制度があります。2024年度には4万人以上が利用しました。まずは在籍校に確認してみましょう。
*1 文部科学省|令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果(2025)
*2 Springer|A Response to Intervention Model to Promote School Attendance and Decrease School Absenteeism(Kearney & Graczyk, 2014)
*3 Elsevier|Differentiation Between School Attendance Problems: Why and How?(Heyne, Gren-Landell, Melvin & Gentle-Genitty, 2019)
*4 SAGE Publications|Treatment for School Refusal Among Children and Adolescents: A Systematic Review and Meta-Analysis(Maynard, Heyne, Brendel, Bulanda, Thompson & Pigott, 2018)









