「クラスでいちばん前なんです」「まだ伸びる?もう止まった?」「牛乳を飲ませれば伸びるの?」
背の順の列のいちばん前に、わが子の頭が見える。両親とも背が高いほうではないから、「この子も伸びないのかな」と半分あきらめかけているお父さんお母さんもいるでしょう。
身長が遺伝の影響を受けるのは事実です。ただ、じつは、身長にはぐんと伸びる「時期」があります。一生で身長が急激に伸びる時期は2回しかなく、2回目は小学校高学年から中学生のあいだ。この時期を知っておくと、食事や睡眠にかける手間を生かしやすくなります。
目次
身長がいちばん伸びる年は、女の子は11歳ごろ、男の子は13歳ごろです
身長が急激に伸びる時期は、人生に2回あります。1回目は赤ちゃんのときで、生後1年で身長は約1.5倍になります。2回目が、思春期と呼ばれる第二次性徴の時期で、この2回目の急な伸びを「成長スパート」と呼びます。
伸びの大きさは年によってまったく違います。ピークの年には、女の子は平均11歳ごろに年約8cm、男の子は13歳ごろに年約9cmも伸びます。その後、伸びは少しずつゆるやかになり、一般的には18歳ごろまでに止まるといわれています。
雪印メグミルクが2019年に小中学生の子どもをもつ母親500名に行なった調査では、85%が「子どもの身長を伸ばしてあげたい」と答えています。*1 その願いを後押しできる時期は、ごく限られた数年です。
表の年齢は平均的な目安で、個人差があります。男の子の成長スパートは女の子より2年ほど遅れて来る、という順番だけ押さえておけば十分です。
なぜ「いつ来るか」を知る必要があるのか。予測身長よりも身長を伸ばすには、成長のピークの「前に」運動や遊びで体を動かすことが大切なのだそうです。(国立病院機構西別府病院 婦人科医・スポーツドクター、松田貴雄氏)*2 また、成長スパートに合わせて栄養や睡眠を十分にとれば、「予測身長プラス4cm」を目指せるといいます。(順天堂大学スポーツ健康科学部教授、鯉川なつえ氏)*3 ピークが過ぎてから慌てても間に合いません。だから、入口のサインを知っておく意味があるのです。
両親の身長から出す「予測身長」の計算式と、その数字がどこまで当てになるかは、こどもまなびラボの子どもの身長を伸ばすために知っておきたい【成長スパート】と【予測身長の計算式】にまとめています。

成長スパートが近づいているかは、5つのサインが目安になります
成長スパートは第二次性徴の時期と重なります。体が思春期の入口に差しかかったサインは、「いちばん伸びる時期が近い」目安にもなります。次の5つのうち、いくつ当てはまるか数えてみてください。
【成長スパートが近づいているサイン】
- □この1年の伸びが、それまでの年より明らかに大きい
- □女の子は10歳前後、男の子は11〜12歳ごろになった
- □「疲れた」「だるい」が増え、家でダラダラする時間が長くなった
- □イライラや不機嫌など、感情の波が大きくなった
- □髪型や体型など、自分の見た目を気にし始めた
サイン1:この1年の伸びが、それまでの年より明らかに大きい
いちばん確かなサインは、身長そのものです。学校の健康診断の記録を並べて、1年ごとの伸び幅を見てください。それまで毎年ほぼ同じ幅で伸びていたのが、ある年から急に大きくなる。それが、スパートが始まった目安です。「今年はやけに袖が短い」と感じたら、数字で確かめてみましょう。
サイン2:女の子は10歳前後、男の子は11〜12歳ごろになった
第二次性徴が始まるのは、女の子で10歳前後、男の子はそれより少し遅れて11〜12歳ごろが目安です。成長スパートも、男の子は女の子より2年ほど遅れて訪れるといわれています。小学4〜5年生の女の子、小学6年生〜中学1年生の男の子なら、まだ伸びていなくても「これから」の時期。「クラスでいちばん前」は、いまの順番であって、終わった結果ではありません。
サイン3:「疲れた」「だるい」が増え、家でダラダラする時間が長くなった
以前は元気だったのに、「めんどくさい」「疲れてるからやらない」と寝転がる時間が増えた。「第二次性徴が始まると、成長にエネルギーがもっていかれるので、どうしても疲れやすくなる」とのこと。(心理カウンセラー・医学博士、芳川玲子氏)*4 体の成長にエネルギーを使っている最中と考えられます。「外では気を張っているから、家ではリラックスしている」と受け取って、口うるさく注意しすぎないのが得策です。
サイン4:イライラや不機嫌など、感情の波が大きくなった
急に口が悪くなった、ふてくされる、理由もなく不機嫌。体の変化とともに、心にも波が立ちやすい時期です。この時期の子どもは「ホルモンが不安定で、感情がコントロールできない」ことも一因。「そういう時期なんだ」と割りきって、一歩離れて見守ることを勧めています。(心理カウンセラー・医学博士、芳川玲子氏)
サイン5:髪型や体型など、自分の見た目を気にし始めた
鏡を見る時間が長くなった、服にこだわり始めた、「太った?」と聞いてくる。京都市こころの健康増進センターの資料では、思春期の体の成長スピードはとても速く、慣れ親しんだ自分像があっという間に過去のものになると説明されています。この時期に容姿や体型を気にするのは「自我の順調な育ち」だと話しています。(産婦人科医、高橋幸子氏) 体が変わり始めたから、見た目が気になり始める。これも思春期の入口によく見られる変化のひとつです。
サイン1と2は身長と年齢の「数字」、3〜5は体や心が変わり始めたことの「表れ」です。数字のサインが当てはまれば、スパートが始まっているか、近づいている可能性があります。思春期の心の変化への向き合い方は、こどもまなびラボの思春期と反抗期の違いとは? 「口が悪くなる男の子」「不機嫌になる女の子」の対処法で扱っています。

スパートを逃さない条件は「睡眠・食事・運動」の3つです
サインが見えたら、やることは3つに絞れます。成長スパート期に意識したいこととして、適度な運動、エネルギーバランスのとれた十分な食事、そして8〜10時間の睡眠が挙げられています。(順天堂大学スポーツ健康科学部教授、鯉川なつえ氏) 中央教育審議会も2002年の答申で、子どもの体力向上のために「よく食べ、よく動き、よく眠る」という “健康3原則” の徹底を掲げ、家庭の役割は非常に大きいとしています。*5 特別なことではなく、この3つを「この数年だけは崩さない」ことが条件です。
条件1:睡眠は8〜10時間。成長ホルモンは眠っているあいだに多く出ます
睡眠中には成長ホルモンが分泌され、骨や筋肉の発達が進むと説明しています。(元養護教諭、宍戸洲美氏)*6 成長スパート期の睡眠は、1日8〜10時間を目安にするよう提案しています。(順天堂大学スポーツ健康科学部教授、鯉川なつえ氏) ところが小学校高学年は、宿題や習い事で就寝が遅くなり、ゲームやSNSに時間を削られる時期でもあります。
小学生なら23時以降、中学生なら午前0時以降に寝ている子どもは、自律神経失調症の症状を訴えるケースが多いと指摘しています。(小児科医・文教大学教育学部教授、成田奈緒子氏) 日中にぼーっとすれば、食事も運動もおろそかになりがちです。睡眠は、ほかのふたつの条件の土台でもあるのです。夜更かし対策は、こどもまなびラボの大谷翔平選手の10時間睡眠に学ぶ! 子どもの成績・体力が劇的に変わる睡眠術に詳しくあります。
条件2:食事は「牛乳だけ」ではなく、骨をつくる栄養の組み合わせで
冒頭の「牛乳を飲ませれば伸びるの?」に答えるなら、牛乳は材料のひとつであって、それだけで伸びるものではありません。成長スパート期の食事のポイントは、骨を強くするカルシウムとマグネシウムを2対1のバランスでとる、ビタミンDでカルシウムの吸収を助ける、たんぱく質と一緒にビタミンCをとる、亜鉛で新陳代謝を上げる、の4つとまとめています。(管理栄養士、新生暁子氏) カルシウムを「吸収させて、骨にする」組み合わせが要るのです。
具だくさんのカレーなら、肉や魚介でたんぱく質と亜鉛、きのこでビタミンD、野菜でビタミンCとミネラルがひと皿でそろいます。朝食を抜かないことも条件のうち。文部科学省の全国学力・学習状況調査では、朝食を毎日食べている子どもほど各教科の平均正答率が高い傾向が見られ、スポーツ庁の全国体力・運動能力、運動習慣等調査でも、毎日朝食を食べる子どもほど体力合計点が高い傾向が報告されています。*7 朝ごはんの大切さは、こどもまなびラボの朝食で子どもの未来が決まる!? 恐ろしい……ウソのような「朝ごはん」の事実。にまとめています。*8
条件3:運動は1日60分、骨に刺激を与える遊びで十分です
骨は適度な刺激を受けることで強くなるといわれています。身長を伸ばすための運動として挙げられているのは、ストレッチや体操、鉄棒などのぶら下がり、スキップ・ジャンプ・縄跳びのように骨に刺激を与える動き、そして水泳。目安は1日60分程度と推奨されています。(順天堂大学スポーツ健康科学部教授、鯉川なつえ氏)鬼ごっこやゴム跳びのような、友だちとの外遊びで足ります。
ひとつだけ注意があります。無理な運動は関節への負担が大きく、身長が急に伸びる時期の激しい運動はケガにもつながりやすいので、「もっとやれば伸びる」と練習量を足さないこと。大切なのはピークの前から楽しく体を動かしておくことで、量を競う話ではありません。遊びの動きが運動能力を伸ばす理由は、こどもまなびラボの運動能力アップに必要な動きはすべて「遊び」から!【親子で楽しむ運動遊び6選】で扱っています。*9
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「両親ともに背が低いから、きっとこの子も」。そうあきらめる必要はありません。遺伝は身長に大きくかかわりますが、いちばん伸びる数年をどう過ごすかは、これから決まることです。
今夜は、学校の健康診断の記録を1枚、引き出しから出してみてください。去年と今年の差を引き算する。それだけでサイン1の答えが出ます。
FAQ(よくある質問)
Q. 牛乳を毎日飲ませていれば、身長は伸びますか?
A. 牛乳は材料のひとつですが、それだけで伸びるとは言えません。カルシウムとマグネシウムを2対1のバランスで、ビタミンDでカルシウムの吸収を助け、たんぱく質と一緒にビタミンCを、亜鉛で新陳代謝を上げる。この4つが成長スパート期の食事のポイントです。(管理栄養士、新生暁子氏) 牛乳に加えて、肉や魚、きのこ、野菜を組み合わせた食事と、8〜10時間の睡眠、1日60分程度の運動をセットにしてください。
Q. 小学5年生の男の子で、クラスでいちばん前です。もう手遅れですか?
A. 男の子のピークは13歳ごろで、小学5年生はまだその手前にいます。男の子の第二次性徴は11〜12歳ごろに始まることが多く、成長スパートも女の子より2年ほど遅れて訪れます。成長のピークの前に運動や遊びで体を動かすことが大切だと述べています。(国立病院機構西別府病院 婦人科医・スポーツドクター、松田貴雄氏) いまの背の順は途中経過なので、睡眠・食事・運動の3条件を崩さずに、ピークを待ってください。
Q. 予測身長の計算式で出た数字より、いまの伸びが少ない気がします。
A. 両親の身長から出す予測身長は、遺伝の影響の目安であって、結果を約束する数字ではありません。計算より大きく伸びることも、下回ることもあります。成長スパートに合わせて栄養や睡眠を十分にとれば、予測身長プラス4cmを目指せる、との見解もあります。(順天堂大学スポーツ健康科学部教授、鯉川なつえ氏) 数字に一喜一憂するより、スパートの時期に3条件を整えることに目を向けてみてください。
Q. スポーツクラブで毎日練習しています。運動は多いほど伸びますか?
A. 多ければよいわけではありません。身長を伸ばす運動として挙げられているのは、ストレッチや体操、ぶら下がり、ジャンプや縄跳び、水泳のように骨に刺激を与える動きで、目安は1日60分程度です。無理な運動は関節への負担が大きく、身長が急に伸びる時期の激しい運動はケガにもつながりやすいため、練習量を足すより、睡眠時間を削っていないかを先に確かめてください。
(参考)
*1 雪印メグミルク株式会社(2019)|小中学生の子どもを持つママに「子どもの理想の成長」を調査.
*2 オムロン ヘルスケア(2016)|「成長スパート」を知って、身長を伸ばそう.
*3 こどもまなびラボ|子どもの身長を伸ばすために知っておきたい【成長スパート】と【予測身長の計算式】
*4 こどもまなびラボ|思春期と反抗期の違いとは? 「口が悪くなる男の子」「不機嫌になる女の子」の対処法
*5 中央教育審議会(2002)|子どもの体力向上のための総合的な方策について(答申).
*6 こどもまなびラボ|大谷翔平選手の10時間睡眠に学ぶ! 子どもの成績・体力が劇的に変わる睡眠術
*7 農林水産省|令和6年度 食育白書 第2部第1章.
*8 こどもまなびラボ|朝食で子どもの未来が決まる!? 恐ろしい……ウソのような「朝ごはん」の事実。
*9 こどもまなびラボ|運動能力アップに必要な動きはすべて「遊び」から!【親子で楽しむ運動遊び6選】









