教育を考える 2020.1.31

非認知能力の育て方3選。将来の年収にも響くかもしれない重要スキルを鍛える方法

編集部
非認知能力の育て方3選。将来の年収にも響くかもしれない重要スキルを鍛える方法

「非認知能力」という言葉は聞いたことがあるけれど、どうすれば伸ばすことができるのか、育み方をまったく知らない……という方は、少なくないのではないでしょうか。

じつは、非認知能力は、これからの社会を生きていく子どもたちにとって、将来を左右するほど重要なスキルと呼ばれています。非認知能力は、具体的にどのようなスキルを意味し、なぜ重要視されているのでしょうか。そして子どもの非認知能力を鍛えるにはどうすればいいのでしょう。

今回は、非認知能力の育て方についてご紹介します。

非認知能力とは

非認知能力の育て方について考える前に、まずは非認知能力とは何かご説明しましょう。

非認知能力は、英語では“Non-Cognitive Skill”、OECD(経済協力開発機構)では「社会情動的スキル」と言い表されます。簡単に言えば、読み・書き・計算など、IQや学力テストで測定できる能力が「認知能力」、数字で測定するのが難しい能力が「非認知能力」です。産業医の武神健之氏は、非認知能力を「数字だけでは測れない、総合的人間力」と称しています。

では、非認知能力は、具体的にどのような要素で構成されているのでしょうか。

ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのレズリー・モリソン・ガットマン准教授と、ロンドン大学のイングリッド・スクーン教授は、非認知能力として以下の8つの要素を挙げています。

  • 自己認識(Self-Perceptions)
    自己効力感、やり抜く力
  • 意欲(Motivation)
    モチベーション、やる気
  • 忍耐力(Perseverance)
    根気、我慢強さ
  • 自制心(Self-Control)
    自分をコントロールする力、精神力
  • メタ認知戦法(Metacognitive Strategies)
    自分の能力を把握する力
  • 社会的能力(Social Competencies)
    リーダーシップ能力、社交性
  • レジリエンスとコーピング(Resilience and Coping)
    回復力、ストレスへの対処能力
  • 創造性(Creativity)
    生み出す力

白梅学園大学の無藤隆教授は、非認知能力について「目標や意欲、興味・関心をもち、粘り強く、仲間と協調して取り組む力や姿勢が中心」と述べています。非認知能力は、社会に出てからも必須の非常に重要なスキルと言えるでしょう。非認知能力の育て方を知っておくことで、子どもの将来にも役に立つのです。

非認知能力の育て方02

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幼少期に非認知能力を身につけるべきワケ

非認知能力の育て方について注目されるきっかけにもなった研究が、シカゴ大学教授のジェームズ・ヘックマン氏が行なった「ペリー就学前プロジェクト」です。

ペリー就学前プロジェクトとは、経済的に恵まれない家庭の3〜4歳の児童を対象に、毎日2時間半の授業を受けさせ、週に1回は教師が家庭訪問して90分の指導をし、「就学前に質の高い教育を受けさせる」というもの。その後、質の高い教育を受けた子どもたちと、同じような経済的境遇にある質の高い教育を受けなかった子どもたちの人生を約40年にわたって追跡調査しました。その結果、質の高い教育を受けたグループと受けなかったグループにIQの差は見られなかったものの、質の高い教育を受けた子どもたちのほうが、収入や持ち家率、学歴が高く、逮捕率が低かったのだとか。幼少期に身につけた非認知能力が、子どもたちの将来に大きな影響を及ぼすということが明らかになったのです。

また、非認知能力は、ストレスの耐性にも関わっています。前出の産業医・武神氏は、学生時代に成績が優秀だったのに社会に出て苦戦する人は、「認知能力のために非認知能力を犠牲にしてきた」と言います。反対に、共感力やコミュニケーション能力、協調性や忍耐力、回復力、やり抜く力などの非認知能力が高い人は、新しく出会った人々とも協力し、トライアンドエラーを繰り返すことができ、ストレスに強いのだとか。

勉強で身につく認知能力ももちろん大切ですが、幼少期に非認知能力を身につけておくことは、全ての基礎となると言えるでしょう。

では、早期に非認知能力を鍛えておくにはどうしたらよいのでしょうか。非認知能力の育て方をご紹介しましょう。

非認知能力の育て方03

非認知能力の育て方

非認知能力の育て方をご紹介しましょう。

非認知能力の育て方1 努力を褒める

皆さんは、子どもがテストで100点をとったとき、どのような言葉をかけるでしょうか。つい、「100点なんてすごい!」「頭がいいね」なんて声をかけてはいませんか? じつは、そのような言葉かけは、非認知能力を育てるうえでは逆効果かもしれません。スタンフォード大学の心理学教授であるキャロル・ドゥエック氏が、とある実験で証明しています。

同氏は、数百人の小学生にテストを受けさせたあと、ひとつのグループには「頭がいいね」「能力」を褒め、もうひとつのグループには「頑張ったね」「努力」を褒めました。その結果、能力を褒められた子どもたちは、新しい課題に挑戦しなくなってしまったのだそう。対象的に、努力を褒められた子どもたちは、新しい課題に挑戦するようになったのだとか。

次に、子どもたちに高得点をとるのが難しいテストを受けさせました。すると、努力を褒められたグループは「もっと頑張らなくちゃ」と意欲的に取り組んだ一方、能力を褒められたグループの子どもたちは「自分は頭が悪い」と感じ、問題を解くことが楽しくなくなってしまったのです。その後、能力を褒められたグループは成績が落ち、反対に努力を褒められたグループは成績が上がりました。

いったいどういうことなのでしょうか。EQWELチャイルドアカデミーの主席研究員・浦谷裕樹氏いわく、能力を褒められた子どもたちは、点数が下がった時点で「自分には能力がない。だから勉強をしても仕方がない」と努力することをやめてしまうのだそう。一方で、努力を褒められたグループは、点数が下がっても「努力が足りなかったからだ」と考え、「もっと頑張ろう」と努力を継続できるのだと言います。努力やプロセスを褒めることによって、チャレンジ精神が芽生え、意欲的に挑戦するようになるのです。

非認知能力を育てるためには、「結果ではなく努力を褒める」ことを心がけたほうが良いですね。

非認知能力の育て方2 遊びを通して伸ばす

非認知能力は、遊びを通して伸ばすことも可能です。おすすめなのは、将棋棋士の藤井聡太氏が幼児期から遊んでいたことで有名なキュボロ

キュボロとは、ビー玉の通り道になる溝やトンネルが上下についた、5cmの立方体の積み木のこと。積み木を組み合わせて自分だけの道を作り、ビー玉を転がして遊びます。

藤井聡太氏は3歳の頃から遊んでいたことで有名ですが、キュボロを組み立てるのは大人でも困難。簡単そうに思えますが、見えない道を想像しながら組み立てていくのは意外にも難しいのです。日本知育玩具協会認定講師の中村桃子氏は、キュボロを使うと、自制心やり抜く力コミュニケーション能力などといった非認知能力が育つと述べています。

小さなお子さんが自分で組み立てることは難しいかもしれませんが、まだ自分で組み立てられることができなくても、大人が試行錯誤しながら作っていく過程を見せることで、「うまくいくことにも理由があり、うまくいかないことにも理由がある」という論理的思考が身につくのだとか。そのあとは、出来上がった道にビー玉を落とす一番楽しい作業をさせてあげるといいですね。

自分でキュボロを組み立てられるようになってからは、想像力や、ビー玉の転がり方を予想・検証する問題解決能力、家族や友人と相談しながら遊ぶことでコミュニケーション能力などが身につくのだそう。

キュボロは、親子で楽しく遊びながら非認知能力を鍛えることのできる、理想的なおもちゃなのです。

非認知能力の育て方3 失敗談をシェアする

全米の女子高生が知性や才能、リーダーシップを競う大学奨学金コンクール「全米最優秀女子高生」で、娘のスカイさんが優勝したことでも注目を集めた、ライフコーチのボーク重子氏は、非認知能力の育て方として「親の失敗談をシェアする」ことを推奨しています。

多くの親御さんは、子どもの良いお手本になるべく、自分の失敗を見せないように心がけているのではないでしょうか。しかし、ボーク氏は、「失敗こそシェアする」ことをすすめています。失敗か成功かという結果ではなく、「なにがどうしてどうなったか」というプロセスを見せるべきなのだそう。

そうすることで、子どもは、失敗は通過点であってやり直しができるということ、方法はひとつじゃなくてもしひとつの方法が駄目でも他の選択肢や可能性を試せばいいといったことを学んでいくことができます。それは、回復力ややり抜く力といった非認知能力そのものですよね。

(引用元:StudyHacker こどもまなび☆ラボ|子どもが親の失敗から学ぶもの。「やり抜く力」を育むなら“格好悪い親”であれ

非認知能力の育て方に悩んでしまう方も多いかもしれませんが、無理に「かっこいい親」であろうとせず、かっこ悪い姿や失敗する姿も子どもに見せることで、非認知能力を伸ばすことができるのです。

***
非認知能力の育て方を3つご紹介しました。子どもの将来の年収にも響く重要スキル、非認知能力。今日から少しずつ、子どものために工夫してみてはいかがでしょうか。

(参考)
ベネッセ教育総合研究所|生涯の学びを支える非認知能力をどう育てるか
Gutman, Leslie M. and Ingrid Schoon (2013), “The impact of non-cognitive skills on outcomes for young people: literature review,” Education Endowment Foundation.
ジェームズ・J・ヘックマン 著, 古草秀子 訳(2015),『幼児教育の経済学』, 東洋経済新報社.
東洋経済オンライン|産業医が見た「ストレスに弱い人」の決定的要因
キャロル・S・ドゥエック 著, 今西康子 訳(2016),『マインドセット 「やればできる!」の研究』, 草思社.
東洋経済オンライン|「能力給」が社員のやる気を削ぎかねないワケ
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