2018.4.20

なんば先生の国語教室【第2回】 大きく変わる大学入試と国語

難波博孝
なんば先生の国語教室【第2回】 大きく変わる大学入試と国語

新学期に入りましたが、暖かいと思えば肌寒いときもあり、不安定な気候が続きますね。こんにちは。広島大学の難波です。国語教室連載2回目です。

不安定といえば、新しい学校や園、学年や集団など、日本の4月は生活がなにもかも新しくなり、心も体も不安定になる時期ですね。そういうときは、先が見通せると少しは楽になります。一年なら一年の展望が見えると、まずこれをしてあとこれをしたら年度末にはこうなるな、というように。

人は先の見通しが少しでも立つと前向きになれます。未来が見えにくいとどうしても不安になり、今の不安定さがよけいに増すことになります。子どもたちの未来が少しでも見えると、親子とも不安な気持ちが少しでも解消され、今の生活をしっかり楽しむことができます。

とはいえ、未来は何が起きるかわかりません。何か手がかりはないでしょうか。

目の前に広がる子どもたちの未来

見通せない子どもたちの未来ですが、今はっきりしていることもいくつかあります。それは、あと2年したら(2020年度)大学入試が大きく変わることです。少なくとも今からはっきり見える未来を見据えておくと、現在の不安も少なくなるし、準備のしようもあるでしょう。

2020年度1月、つまり2021年1月、今の高1が高3になった時、大学入試センター試験は廃止され、大学入学共通テスト(仮称)が始まります。

大きな変更点は、これまでになかった記述式問題の導入と、英語について4技能(読む・聞く・話す・書く)を見るというところです。英語のこともみなさんは気になるでしょうが、ここは記述式の問題の導入について見ていきたいと思います。

記述式!! とびっくりされたことでしょう。そうです。共通テストに記述式の問題が導入されるのです。センター試験といえば、白丸に鉛筆で黒く塗りつぶすものと皆さん思ってますよね。確かにこのようなマークシート式(記号選択式)の問題も新しい共通テストには残ります。それに加えて、記述式の問題が入ってくるのです。

記述式の問題は国語と数学に入ってきます。ここは国語教室ですので、国語だけにお話を絞りますが、今回のお話は数学の記述問題にもあてはまるとお考えください。

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大学入試で問われる記述問題とは

とにもかくにも、まずは記述式問題の例を見てみましょう。ここでお示しするのは、共通テストのプレテストとして実施されたものです。国語科の第一問の問題はこうです。

青原高等学校では、部活動に関する事項は、生徒会部活動規約に則って、生徒会部活動委員会で話し合うことになっている。次に示すものは、その規約の一部である。それに続く【会話文】は、生徒会部活動委員会の執行部会で、翌週行われる生徒会部活動委員会に提出する議題について検討している様子の前半部分である。後に示す、執行部会で使用された【資料1】〜 【資料3】を踏まえて、各問い(問1〜3)に答えよ。
(この後に、生徒会規約、生徒会執行部の会議の様子としての【会話文】、資料1〜3として学校新聞などが載っています)

(引用:独立行政法人 大学入試センター|問題冊子 国語

どうでしょう。今までの大学入試センター試験とは大きく違いますね。難しい評論文や小説ではなく、記述式問題の問題文は、このような「実用文」なのです。つまり、記述式問題は「実用文」を読んで答えるものなのです

もちろん今までのような問題文もあります。現在のセンター試験と新しい共通テストとは次のような違いがあります。

(センター試験)
第一問 評論文
第二問 小説
第三問 古文
第四問 漢文

(共通テスト)
第一問 実用文(記述式)
第二問 評論文
第三問 小説
第四問 古文
第五問 漢文

時間も80分から100分になり、20分伸びます。つまり記述式の実用文問題が一つ増え、20分延長されたわけです。

また、先に見たように、第一問はひとつの実用文を読むのではなく、生徒会規約・会話記録・新聞などの資料など、複数の種類の文章を読んで関連付けなければなりません。これを、20分程度で行うのです。

では、問題文のあとには、どのような設問が続くのでしょうか。ざっと並べてみます。

問1:
傍線部「当該年度に部を新設するために必要な、申請時の条件と手続き」とあるが、森さんが新聞に載せるべき条件と手続きはどのようなことか。五十字以内で書け(句読点を含む)。

問2:
空欄『ア』に当てはまる言葉を、要望の内容が具体的に分かるように、二十五字以内で書け(句読点を含む)。

問3:
空欄『イ』について、ここで森さんは何と述べたと考えられるか。次の(1)〜(4)を満たすように書け。

(1) 二文構成で、八十字以上、百二十字以内で書くこと(句読点を含む)。なお、会話体にしなくてよい。((2)〜(4)は略)

(引用:同上)

ここで記述の字数を見てください。最高50字・25字・120字を書かなくてはいけないことがわかります。合わせると200字近い量です。これを20分程度で書かなければならないのです。

なんば先生の国語教室第2回2

実用的な問題を解く力をつけるには

ここまでをまとめると次のようになります。

新しい共通テストでは今までのマーク式のセンター試験の問題に加えて、複数の種類の実用文を関連付けて読む問題が加わったこと全部で200字近く記述する問題が加わったこと、そして、それを20分程度で解かなければならないこと、です。

さらに衝撃的な事実を加えます。大学入試センターによれば、先程の問3の正解率は0.7%、つまり1,000人に7人しか正解をしていないのです。言い換えれば、差がつく問題となっているのです

あと2年後にはこのような未来が待っています。

問題文の内容は変化するでしょうが、このような傾向の問題になることははっきりしています。それは、世界の入試がこのような形に変わってきているからです。

たとえば、読解力では既に日本を上回ることもある台湾では、すでに実用文についての記述式の統一大学テストが行われています。この流れは止めることはできないでしょう。そしてこのような共通テストが実施されると、おそらく20年以上は使われることになります。(センター試験は30年間実施されました)

では、このような未来に向けて、私たちは子どものことばの教育としてどのようなことを考えていけばいいでしょうか。学校では? そして家庭では? それは次回考えたいと思います。