あたまを使う 2019.4.9

「質の良い眠り」が脳を育てる。子どもの発達に規則的な睡眠が必要なワケ

「質の良い眠り」が脳を育てる。子どもの発達に規則的な睡眠が必要なワケ

「眠育」という言葉はご存知ですか? いま、日本の教育現場において、「眠育」の重要性が叫ばれています。

今回は眠育についての解説とともに、規則正しい睡眠が子どもにとってなぜ必要なのか、その理由をご紹介しましょう。

睡眠の教育が、今こそ必要なワケとは?

「眠育」とは、「睡眠教育」のことを指し、睡眠についての知識と正しい睡眠習慣を身につけることを言います。私たちは知育や体育、食育など、学校でさまざまな教育を受けていますが、睡眠についての授業を受けたことはあるでしょうか。

「睡眠なんて単なる休息の時間だから……」と思ってはいませんか? 睡眠は人生の3分の1の時間に相当し、もちろん単なる休息ではありません。睡眠は私たちの体を支えて守るという重要な役割を果たすとともに、睡眠中の潜在意識は心のケアも行なっているのです。つまり、眠育は「食育」と同じように、“生きていくために必要な教育”なのです。

ところが世界的に見てみると、日本は全体的に睡眠時間が短くなってきていて、きちんと「眠ること」が、大人も子どももできていないのが現状。OECD(経済協力開発機構)が2014年に行った国際比較調査の中で、各国の15歳~64歳までの男女の睡眠時間を比較すると、最も長い南アフリカの9時間22分と比べ、日本人は睡眠時間が7時間43分と、1時間30分以上も短いという結果が出ています。

さらに、世界の主要国29カ国の中では、日本は韓国に次いで二番目に睡眠時間が短いことが分かっています。この要因にはスマホやパソコンの普及によって、生活の夜型化が進んでいることが挙げられますが、もうひとつの大きな要因は、日本人の睡眠に対する意識の低さがあると言います。

明治以来、教育は「五育」の思想に基づき行われてきました。五育とは体育・知育・才育・徳育そして食育をさしますが、これらはすべて、日中の活動時間になされるものです。睡眠領域については、第六番目の教育として「眠育」が存在すべきあり、老若男女を問わず、すべての世代に伝えられなければいけません。しかし、現在の日本の社会では眠育は全く不十分な状況で、医療関係者にさえ知識がなかったり、睡眠の重要性の認識が薄かったりすることは大問題です。

(引用元:日本眠育普及協会|眠育とは

睡眠に対する意識が低く、睡眠時間を十分に取らないことは、心にも体にも影響を及ぼします。そのひとつとして大きな問題になっているのが、小中学校の不登校問題です。2017年度に行った調査によると、小中学校の不登校児童生徒は14万4031人にのぼり、前年度より1万人以上増えていることが分かりました。

また、2014年に文部科学省が発表した実態調査では、不登校のきっかけの上位は1位が「友人との関係」、2位が「生活リズムの乱れ」、3位が「勉強が分からない」という結果が出ていて、不登校の原因に生活リズムの乱れが関係しているケースが非常に多いことが分かります。

前述のように睡眠は心身のケアをする大事な時間ですから、睡眠時間が削られたり、睡眠の質が低下することは、生活リズムそのものに大きく影響を与えるのです。

睡眠不足が子どもの心身に及ぼす影響とは?

では、睡眠が足りていなかったり、睡眠のリズムが乱れることは、子どもの心身にどんな影響を与えるのでしょうか。

睡眠不足は、成長の遅れや食欲不振・注意や集中力の低下・眠気・易疲労感などをもたらします。子どもの場合、眠気をうまく意識することができずに、イライラ・多動・衝動行為などとしてみられることも少なくありません。また睡眠不足は将来の肥満の危険因子になることも示されています。

(引用元:厚生労働省 e-ヘルスネット|睡眠不足や睡眠障害、子どもへの大きな影響

成長の遅れや原因不明の体調不良、集中力が続かないなど、体の不調や精神的な問題は、睡眠と切り離して考えがちですが、実は睡眠が大きく関係している場合も考えられます。もし、このように子どもの心身の不調で悩んでいるようなら、しっかりと睡眠が取れているかを一度見直してみることも必要です。

たとえば、子どもの睡眠時無呼吸症候群、おねしょ(夜尿)、睡眠時遊行症、いびき、歯ぎしりなど、睡眠障害が原因で睡眠不足になっているケースもあります。その場合は、必要な医療機関に相談・治療することで、症状が改善することもあります。睡眠時の症状は本人では気づかないことですから、親御さんがその症状を見つけてあげ、適切な処置をしてあげることが大切です。

また、学習面でも影響があります。健全な生活習慣のある子どもは、そうでない子どもよりも学習意欲が高く、体力・運動能力が高いことがさまざまな調査によって明らかになっています。具体的には、レム睡眠の際に脳内で記憶の整理・定着が行われるのですが、睡眠不足になると学習したことが脳内に定着せず、成績にも関係すると言われているのです。

眠育の先進地域では、不登校が減少する成果も!

日本では睡眠に関する意識が低く、眠育が遅れていると言われていますが、近年では大阪や兵庫などでは「眠育」がすでに導入されている地域もあります。

たとえば堺市の三原台中学校区では、平成27年度から「眠育」をスタートさせました。校区の小中学生全員に睡眠の大切さを説明するリーフレットを配り、年に3回の授業も実施しています。授業では、いつ寝ているのかの「睡眠表」をつけさせ、睡眠の質や量を検討し、問題の多い子どもには、親も交えた面談も行っているようです。

ある中学3年の女子生徒は10日出席しては10日休むことを繰り返していた。親が夜も働いており、夕食は午後11時、寝るのは日付が変わった後だったという。親も交えた面談の後、夕食を7時に食べて11時には寝られるようになり、その後は1日も休まず登校した。
また、中学2年の男子生徒は連日午前2時ごろまで塾の宿題に取り組み、朝、親が起こすと暴れるように。面談後、塾をやめて夜十分に寝るようになり、家庭内暴力は消えたという。

(引用元:SankeiBiz|睡眠の大切さを教える「眠育」って何? 規則的な睡眠で不登校予防、家庭内暴力も収まる

このように「眠育」の先進地域では、3年間で不登校率は約37%減るなどの成果が出ています。そして29年度からは、堺市全体で眠育に取り組んでいるのです。

家庭で実践したい、規則正しい睡眠のコツ

いくら学校で眠育が広がっても、実際に睡眠をとるのは各家庭でのこと。子ども自身が睡眠の大切さを知るとともに、親御さんの意識も変えることも必要です。まずは、子どもが快適に眠ることができる寝室の環境を整えたり、バランスの良い食事を用意したりするなど、親御さんが心がけることも必要です。

また、質の良い睡眠を取るために、以下のようなことに気をつけましょう。

<朝>
・毎朝できるだけ同じ時間に起きるように習慣づけ、しっかり朝日を浴びる
・朝食は必ずとり、炭水化物、たんぱく質、糖質などバランス良い食事をとる
<昼>
・しっかり体を動かす
・食事はバランスよく、できるだけ同じ時間帯に食べる
<夜>
・眠る2時間前までに夕食は済ませる。夜は脂質が多いものはできるだけ避ける
・眠る30分前にはテレビやスマホなどの画面を見るのは控える
・できるだけ毎日、同じ時間に眠る
・夜寝ている間は、電気は消す
・寝室はこまめに掃除をして、寝具は清潔を保つ

このように、睡眠の環境や食事、日中の過ごし方によって、睡眠の質をあげることができます。また、睡眠時間は幼児は10時間以上小学校低学年は9〜10時間小学校高学年は9時間中学生は8時間以上を目安にし、午後7時から午前7時までの間で眠るようにしましょう。

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眠りの仕事でもうひとつ大事なことは、「脳を育てる力」です。海馬と言う脳は、新しい知識を蓄えるために最も大事な脳で、唯一細胞分裂して大きくなります。そして、質の良い眠りをすることは、海馬の発育を助けると言われています。お子さんに良い教育を受けさせたいと願う親御さんがほとんどだと思いますが、質の良い睡眠をさせることも同じぐらい大切です。規則正しい睡眠とバランスのよい食事を毎日用意することは、親から子どもへの一番の贈り物ですよ。

文/内田あり

(参考)
西川リビング|眠育公式サイト「キッズの眠育」
SankeiBiz|睡眠の大切さを教える「眠育」って何? 規則的な睡眠で不登校予防、家庭内暴力も収まる
NHK|子どもたちの質の良い眠りが人生を豊かにする
日本眠育普及協会|眠育とは
日本睡眠科学研究所|日本国内の睡眠事情
厚生労働省 e-ヘルスネット|睡眠不足や睡眠障害、子どもへの大きな影響