からだを動かす/体操 2018.6.21

バランス能力や身体の操作性が向上する! 「マット運動」でスポーツの基本を身につけよう。

編集部
バランス能力や身体の操作性が向上する! 「マット運動」でスポーツの基本を身につけよう。

小学校の体育では、1年生から6年生まで「マット運動」が取り入れられていていますが、これは学習指導要領にも書かれているように国で定められたカリキュラムです。

マット運動は、ドッジボールやサッカーのようにボールを使ったり、ゲーム性をもったチームプレーをしたりするわけではないので、子どもたちがワクワクを感じるには少々控えめな種目かもしれません。しかし、実はマット運動にこそ、スポーツの基本を身につけるための技能がギュッと凝縮されています。

体育の授業では、マット運動ではどのような動きを学ぶのか、1~2年生の授業で取り入れられている動きを例にあげ、そこにどのようなメリットがあるのかを解説します。

マット運動で向上する3つの力

小学校の体育やスポーツ教室で行なう「マット運動」について、『日本大百科全書』(ニッポニカ)には次のように解説されています。

マットを使用して行う運動で、倒立、転回、宙返りが運動の中心である。初めは、背をつけて行う「前回り・後回り」、ついで腕立てで行う「腕立前方・後方転回」、「側方転回」、さらに「前方・後方・側方宙返り」、そして「2回宙返り」、「ひねり宙返り」と発展する。マット運動は柔軟性、機敏性、巧緻(こうち)性など身体支配能力の養成に欠かせない運動である。体操選手の補助運動としてだけでなく、児童・生徒が転倒したときの安全対策としてもぜひ採用してほしい運動である。(後半、省略)

(引用元:コトバンク|マット運動

ここで使われている「柔軟性」「機敏性」「巧緻性」といった表現は、言い換えれば「体の柔らかさ」「すばやさ」「きめ細やかな動き」で、マット運動に限らずスポーツ全般に必要な能力だと言えます

もうひとつ、幼児向け体操教室のサイトで紹介されている「マット運動で向上させることができる3つの力」について紹介します。

・バランス能力の向上
・身体の操作性の向上
・危機回避能力の向上

(引用元:早稲田ユナイテッド│幼児体育教室『早稲田体育』 〜 マット運動が効果的は理由とは? 〜

これら3つの力は、「体の柔らかさ」「すばやさ」「きめ細やかな動き」とも関わりが深く、スポーツの基本であるとともに、子どもたちが健やかにたくましく育つためにも必要な力です。

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小学校低学年で学ぶ「マット運動」で身につく力

それでは、実際に小学校低学年の「体育」で学ぶマット運動のいくつかを例に挙げて、どのような力が身につくのか詳しくみていきましょう。

文部科学省の「小学校体育(運動領域)まるわかりハンドブック」に記載されている「マットを使った運動遊び」の具体的な指導内容から、「ゆりかご」「丸太転がり」「前転がり」「背支持倒立」をピックアップしてみます。

ゆりかご

体操座りの姿勢で背中を丸め、ゆりかごのように前後にゆらゆらと体を揺らします。体が前後に回転する感覚をつかむとともに、起き上がるときに腹筋を使うことで「バランス能力」「体の操作性」を向上させます。

丸太転がり

マットの上で横になって腕を頭上へ伸ばして、丸太のように体をまっすぐ一直線に保ち、左右に転がります。この運動で体が左右に回転する感覚をつかみます。また、手の指先や足のつま先をピンと伸ばし、まっすぐな姿勢を保つことが「きめ細やかな動き」の習得につながります。

前転がり

おなじみの「でんぐり返し」です。頭の後ろをマットにつけるようにかがむには「体の柔らかさ」を求められます。背中を丸くしたまま、腹筋で起き上がる動きは、「すばやさ」「バランス能力」「体の操作性」を向上させてくれます。

背支持倒立

仰向けに横になり、足を上へしっかり伸ばします。そのままでは体がぐらつくので、手で腰を支えて倒立をキープします。この運動では、体が逆さになる「バランス感覚」を養い、下半身をしっかり伸ばすために腹筋を使うので「身体の操作性」につながります。

バランス能力や身体の操作性が向上するマット運動2

自宅で行なうマット運動、おすすめは「エビのポーズ」

マット運動は、体操用の専用マットがなくても自宅で座布団や厚手のタオルケットなどを使って簡単に練習できます。腹筋がうまく使えない小さい子どもは、ゆりかごの動きひとつにしても、バランスを崩して畳に後頭部をぶつける可能性がありますので頭の周辺が安全かどうか注意して行いましょう。

回転できるような十分な広さが確保できないとき、マット運動の練習としておすすめなのが「エビのポーズ」です。

  1. ゆりかごの状態からゆっくり寝ころんで、足を頭の前方へ投げ出します。
  2. 背中をしっかり丸めながら、スネの部分を床にくっつける姿勢を取ります。
  3. はじめは床に足が届かなくても、だんだん体が慣れてくるとスネ全体が床にくっつくようになります。

 
体の柔らかさは、思った通りに身体を操作する能力やケガの予防(危機回避)をする能力にも密接に関わってきます。また、子どもたちが憧れるような側転や転回(ハンドスプリング)といった大技を習得するうえでも必要になります。「エビのポーズ」は、大きな動きのないマット運動ですが、その効果は絶大です。

***
体が固くてマット運動は苦手だったという人も、お子さんの練習に付き合って「エビのポーズ」を試してみましょう。筋力アップとバランス感覚を養うとともに、危険回避能力を鍛えて、ケガをしにくい健康な体づくりに親子で取り組めると良いですね。

(参考)
文部科学省│「小学校体育(運動領域)まるわかりハンドブック」マットを使った運動遊び
文部科学省│学習指導要領 第2章 各教科 第9節 体育領域
早稲田ユナイテッド│幼児体育教室『早稲田体育』 〜 マット運動が効果的は理由とは? 〜
ベネッセ教育情報サイト│マット運動が好きになる「エビのポーズ」と腹筋練習法