親の関わり/非認知能力 2026.5.12

「うちの子がSNSと出会う日」のために、いまできること

「うちの子がSNSと出会う日」のために、いまできること

夕食のあと、ふと気がつくと、子どもがママのスマホをのぞき込んでいる。

「ねえ、これなあに?」

そんな小さな瞬間に、ちょっとだけドキッとしたこと、ありませんか?

うちの子はまだ未就学児(小学校低学年)。SNSの話なんて、まだまだ先のこと……そう思っていたのに、子どもの目はもう、しっかり大人のスマホ画面を追いかけている。

最近は世の中でも、「子どもとSNS」というテーマがあらためて注目されはじめています。でも、いま気になるのはきっと、ニュースの細かい話よりも――。

「うちの子がSNSと出会う日、何ができていればいいんだろう?」

そんな問いではないでしょうか。

小さいうちに知っておく意味は、ちゃんとある

じつは、子どものスマホデビューは思っているより早くやってきます。

小学生のおよそ4〜5割がすでにスマホを使いはじめており、中学生になるとSNSの利用率もぐっと伸びていきます。気づいたら、わが子もタイムラインの世界に――そんな日は、案外すぐそこなのです。

そして、SNSとうまく付き合える子に育つかどうかは、じつはSNSを始める前の親子関係に大きく左右されると言われています。

「困ったら親に話せる」「家族でなんでも話題にできる」――そんな土台は、まだスマホを持たないいまの時期にこそ作られるのです。

しかも、心理学の研究からは子どものSNSは〝使う時間〟よりも〝使い方〟のほうが大事だと分かってきています。同じ30分でも、使い方しだいで心への影響は大きく変わるのです。

この記事では、SNSと自己肯定感のつながりを最新の研究をもとにお話ししながら、いまの時期から始められる、家庭のちいさな工夫をご紹介します。

SNSは「ただ眺めるだけ」のときに、自己肯定感を削る

ベルギー・マーストリヒト大学のフェアダウン氏らは、これまでの数多くのSNS研究を集めて分析し、ある大事な気づきにたどりつきました。

SNSの影響は、「友達とやりとりする使い方」と「ただ眺めるだけの使い方」で、まったく違うというのです。*1

「友達とやりとりする使い方」とは、メッセージを送ったり、コメントしたり、自分で投稿したりすること。誰かと直接かかわる使い方です。

「ただ眺めるだけの使い方」とは、人の投稿を黙々と見続けたり、画面をスクロールし続けたりすること。自分からは何も発信しない使い方です。

研究の結論はとてもシンプルでした。

やりとりする使い方は、「人とつながっている」という感覚を高めて、気持ちを上向きにしてくれる。でも、ただ眺めるだけの使い方は、気持ちを下げて、ねたましさや自分への不満を生み出してしまう、というものでした。

つまり、画面と関わること全部がよくない、という話ではないのです。

そう聞くと、ちょっとホッとしませんか?

たとえば、小学校入学のときに持たせる、あのちいさな子ども携帯。下校途中にぽちぽち打たれた「ママ、だいすきだよ」のメール。

そう、あなたの宝物のあのメールのことです。

あれはまさに、研究でいう「気持ちを上向きにしてくれる使い方」のお手本です。止める必要なんてまったくない、むしろ大事にしてあげたいやりとりだったのです。

問題なのは、「ただ眺めるだけ」の時間が積み重なってしまうこと。同じSNSやスマホでも、使い方しだいでこんなに正反対の結果になるなんて、ちょっと驚くのではないでしょうか。

SNSを眺める子どもとスマホ利用時間を意識させる目覚まし時計

「キラキラ投稿」が、人と比べる気持ちを引き出す

なぜ「ただ眺めるだけ」が、そんなに心に負担をかけるのでしょうか?

その答えのカギを握るのが、人がついやってしまう「人と比べるくせ」です。

私たちにはもともと、自分を周りの人と比べてしまう習性があります。SNSは、その「比べる相手」を、これまでにないほどたくさん見せてくる場所なのです。

トレド大学のフォーゲル氏らがフェイスブックの利用と自己肯定感のつながりを調べた研究によれば、SNSをよく使う人ほど自己肯定感が低い傾向がありました。その背景には「自分よりよく見える人と比べる機会」がたくさんあることが関わっていたのです。*2

考えてみれば、SNSのタイムラインに流れてくるのは、他人の人生のいわば「ハイライトシーン」ばかり。

楽しい旅行、おいしい食事、輝かしい成果。逆に、家でぼーっとしている時間や、うまくいかなかった出来事は、ほとんど投稿されません。

こうした「キラキラ」だけを毎日見続けていると、子どもは知らず知らずのうちに、自分のふつうの日常と比べて「自分はみんなより劣ってる……」と感じやすくなってしまうのです。

思春期の子には、とくに影響が大きく出ることも

オーストラリア・フリンダース大学のティガーマン氏らは、13〜15歳の女の子438人に2年間つきあって、SNSの使い方と自分への評価の変化を見つづけました。*3

そして見えてきたのは、SNS上の「友達」の数が多い子ほど、2年のあいだに自分の見た目への不満や、自分への評価がきびしくなる傾向があるということでした。

つながる相手が増えれば、それだけ比べる相手も増えてしまうのです。

これは女の子だけの話ではありません。男の子も含めて、思春期にSNSをよく使うと「他人の目で自分を見る」クセがついていく可能性があることが、いくつもの研究で指摘されています。

「自分を肯定する力」が育つ大切な時期に、ずっと誰かと比べつづける環境にいたら――そう考えると、ちょっと心配になりますよね。

だからこそ、その時期がやってくる前に、「比べないで、自分を大切にする」気持ちの土台を、家庭のなかで育てておきたいのです。

SNSと向き合う家庭での親子の対話の様子

SNSと出会う前に、家庭で育てたい3つの土台

ここからは、お子さんがまだSNSを使っていないいまだからこそ育てておきたい、親子関係の土台を3つご紹介します。

「SNSの話」というより、これからの親子のコミュニケーションの土台づくり。SNSとの付き合い方は、その自然な延長線上にあります。

1. 家のなかから「比べる言葉」を、そっと減らしてみる

SNSが自己肯定感を削るのは、人と比べる気持ちを引き出すから――そうお伝えしました。

じつは、その「比べるくせ」のはじまりは、SNSに出会うずっと前、家のなかでの何気ない言葉にあったりします。

「お兄ちゃんはもうできたのに」
「○○ちゃんはちゃんとお片づけしてるよ」
「お友だちはもう自転車乗れるんだって」

こうした言葉は、急がせたいとき・励ましたいときに、つい口から出てしまうもの。決してダメな言葉ではありません。

でも、毎日のように繰り返し聞かされた子は、「自分の価値は誰かと比べて決まるんだ」という感覚を、少しずつ身につけていってしまうのです。

代わりに使ってみたいのは、その子自身に向けた言葉。

「昨日より上手にできたね」
「○○ちゃんはこれが好きなんだね」
「ゆっくりでいいよ」

こうした「あなたはあなたのままでいい」というメッセージが、将来SNSの〝キラキラ〟に出会ったとき、「自分は自分でいい」と思える芯になります。

2.「うれしい」も「いやだった」も、話せる食卓をつくる

フェアダウン氏らの研究は、SNSを「自分から発信する使い方」をする人ほど、つながりを感じて気持ちが上向くことを示していました。

逆に「ただ眺めるだけ」の受け身の使い方は、心を削っていく――。

これって、じつはSNSに限った話ではないのです。

自分のなかに湧いた気持ちを、ちゃんと言葉にできる子。逆に、心のなかに溜め込んでしまう子。その分かれ道は、毎日の食卓や寝る前の数分でつくられていきます。

「今日、なにが一番たのしかった?」
「いやだったこととか、あった?」

最初は「べつに」「わかんない」で終わるかもしれません。それで大丈夫です。

大事なのは、子どもがふと「聞いてほしいな」と思ったときに、「話せる場所がある」と知っていること

そして、子どもが何を言っても、親が「そうなんだ」とまず受け止めてくれること。

この〝話せる関係〟があるかどうかは、いつかSNSで嫌なことが起きた日、わが子が黙って抱え込むか、あなたに話してくれるかの分かれ道にもなります。

3. 親もスマホと、ちょっと距離を取ってみる

子どもは、親の言葉よりも姿を見て育ちます。

あなたのことがだいすきだから、なんでもまねしたいんですよ。

将来「スマホばかり見ないで!」と言いたくなったとき、説得力をもつのは、いまの自分の姿です。

完璧でなくて大丈夫。家族でひとつだけ、約束してみませんか。

たとえば「食事中はスマホを置く」「寝る1時間前はさわらない」「日曜の朝はスマホを見ない」。どれかひとつでかまいません。

「スマホを使わない時間も、こんなに楽しい」という実感を、家族の日常のなかで少しずつ積み重ねていくこと。

それが、何年か先にSNSと出会うお子さんへの、いちばん大きな贈りものになります。

SNSの使い方をマルとバツで判断するイメージ

最後に、ふたつだけ

ここまで読んで、「やってみようかな」と思ってくださった方も、「うまくできるかな」とちょっぴり不安になった方もいらっしゃるかもしれません。

どちらの気持ちも大切に、最後にふたつだけ、お伝えさせてください。

「完璧な親」より「ほどよい親」のほうが、子どもには良い

ひとつめは、完璧な親が子どもの自己肯定感を育てるわけではない、ということ。

「比べる言葉、また言っちゃった」「今日も食卓で全然話せなかった」――そんな日があってもまったく大丈夫。

むしろ「今日は疲れてるから、ぎゅっとするだけね」とすなおに言える親のほうが、無理して完璧をよそおう親よりも、子どもには深い安心感を与えます。

「親も人間なんだ」「完璧じゃなくていいんだ」という感覚は、親の自然な姿から子どもが学んでいくものだからです。

スマホを置く数分は、あなた自身を癒す時間にもなる

ふたつめは、フェアダウン氏らの研究が示したように、〝ただ眺めるだけ〟の時間は大人の心も削るということ。

つまり、スマホをそっと置いてお子さんの顔を見る数分は、お子さんを守るためだけの時間ではありません。

タイムラインの「キラキラ」から目を離して、目の前のお子さんの「キラキラ」とむきあうこと。それは、あなた自身の心の疲れをやわらげる時間でもあるのです。

***
ここで紹介した3つの土台は、どれも特別なことではありません。

きょうの夕食どきに、ひとこと変えてみる。寝る前に、ひとつ聞いてみる。それだけでもう、はじめの一歩です。

いまの時期にまいた小さなタネは、何年か先、お子さんがSNSの世界と出会ったとき、きっと支えになってくれるはずです。

よくある質問(FAQ)

Q1. うちの子はまだ未就学児ですが、いまからSNSを意識する必要はありますか?

A. SNSそのものを意識するというよりも、「人と比べないこと」「家族でなんでも話せること」「親自身もスマホと上手に付き合うこと」――こうした土台を育てておくことが大切です。SNSを始めてから慌てて伝えるよりも、いまの日常の会話のなかで少しずつ感覚を育てておくほうが、ずっと自然に身についていきますよ。

Q2. 子どもにスマホやSNSを使わせるのは、何歳ごろからがいいでしょうか?

A. ご家庭の方針によるので「○歳から」と一律には言えませんが、大切なのは「持たせる年齢」よりも「持たせる前にどんな関係を作れているか」です。家族でルールを話し合える、困ったときに親に相談できる――そんな関係さえできていれば、いつスタートしても上手に付き合っていけます。逆に、その土台がないままスマホだけを与えると、トラブルが起きたときに孤立しやすくなってしまいます。

Q3. 親自身がSNSをよく見てしまいます。子どもに何と伝えたらよいでしょう?

A. 隠す必要はありません。「お母さんもね、SNSを見すぎちゃう日があるんだ。だから一緒に気をつけようと思ってるよ」と伝えるだけで十分です。完璧な姿よりも、自分の弱さもふくめて見せてくれる親のほうが、子どもは安心します。一緒にスクリーンタイムを確認するなど、〝親子で取り組むこと〟そのものが、何よりのお手本になりますよ。