教育を考える/親の関わり 2026.6.15

楽しそうに続ける親の隣で、子どもは育つ。「いつの間にかできてた」をつくる親子習慣

楽しそうに続ける親の隣で、子どもは育つ。「いつの間にかできてた」をつくる親子習慣

「コツコツ続けることって、大切」だと、自分の人生でそれを実感してきたからこそ、わが子にもこの力を手渡したい。そう願う親御さんは多いはずです。毎日の家事、子どもの寝る前の絵本タイム、仕事や資格試験の勉強。こうした小さな積み重ねが、いつのまにか自分を成長させる土台になっていた——その手応えは、何ものにも代えがたい財産です。

だからつい、「毎日やりなさい」「続けないと意味ないよ」と声をかけたくなる。子どもを思えばこその、自然な気持ちです。でも不思議なもので、そう言えば言うほど、子どもの足は重くなっていく。じつは「続ける力」は、言葉で教えるより、もっと効果的な方法があるようです。今日はその方法を、一緒に見ていきましょう。

「やりなさい」が続く力を育てにくい理由

「宿題やったの?」「ピアノの練習は?」と毎日のように声をかけても、子どもはなかなか自分から動かない。そんな経験はありませんか? 指示が悪いわけではありません。むしろ、子どもの将来を思うからこその、愛情のあらわれです。

ただ、外から「やりなさい」と促される行動は、子どもにとって「やらされること」になりやすい。これは、自分のなかから湧き出た「やりたい」ではないので、続ける力の源になりにくいのです。

子どもは、大人の指示の言葉よりも、大人の「ふるまい」そのものを見て、まねながら学んでいく——これは心理学者バンデューラが提唱した観察学習の考え方です。「ああしなさい、こうしなさい」と言われた内容より、親が実際にどう過ごしているかのほうが、ずっと強く子どもに伝わります。

つまり、続ける力を子供に渡す一番の近道は、教えることではありません。親自身が、楽しそうに続けている姿を見せることなのです

観察学習(モデリング)とは

  • 人が、他者の行動やその結果を見ること(観察)を通して、新しい行動の仕方を学んでいく仕組み。指示や報酬がなくても、まねを通じて学習が成立する点が特徴。

黒板に書かれた「CONTINUING EDUCATION」の文字とペン立てに入った色鉛筆

いちばん効くのは、親が楽しそうに続けている姿

子どもは、親をよく見ています。言っていることと、やっていることが違えば、子どもがまねるのは「やっていること」のほうです。逆に言えば、親が心地よく続けている習慣は、それだけで何よりのお手本になります

実際、3歳から5歳の子どもとその親を対象にした研究では、親子で一緒に体を動かす習慣を育てる働きかけが、子どもの活動量を支える鍵になりうることが示されています(中国 香港中文大学、シンディ・シット教授ら)*1。

親が外から「やらせる」のではなく、親自身の習慣に子どもが自然と巻き込まれていく。そんな形が、無理なく続く土台になるのです。

子どもに「行動」を見せる

特別なことをする必要はありません。親が毎朝のストレッチをしているなら、「一緒にやろう」と誘うより前に、まず隣で見ていてもらうだけでいい。子どもは、親が気持ちよさそうに体を伸ばす姿を、ちゃんと観察しています。

「今日もやってるんだ」「なんだか楽しそう」。そう感じた子どもは、ある日ふと、自分から隣に並びはじめます。招き入れるのは、指示ではなく、楽しそうな雰囲気です。

完璧な親である必要はない

毎日きっちり続けられなくても、心配いりません。続けたり、休んだり。そんな等身大の姿も含めて、子どもには伝わります。むしろ「昨日はお休みしちゃったけど、今日はやろうかな」とつぶやく親の姿は、「完璧じゃなくていいんだ」という安心を子どもに渡しているのです。

続けることは、頑張って耐えるものではなく、生活のなかに自然にあるもの。その感覚こそが、いちばんの贈り物です。

「いつの間にかできてた」を、見えるかたちにする

続ける喜びには、ひとつの特徴があります。それは、その瞬間には実感しにくく、振り返ったときに初めて見えてくる、ということです。毎日ほんの少しずつの前進は、当日には変化を感じられません。だからこそ、記録に残し、過去の自分と並べてあげることが大切になります

シールでもメモでも「できた」を親子で始める

カレンダーにシールを貼る、好きなスタンプを押す、ノートにひとこと書く。やり方はなんでもかまいません。「今日できたこと」を、子どもが楽しめる方法でひとつ残してみましょう。「ストレッチした」「絵本を1ページ読んだ」。それだけで十分です。

シールやスタンプが1週間、1か月とたまっていくと、子どもは自分の足あとを目で見られるようになります。「こんなに続けてきたんだ」という発見が、次もやってみようという気持ちを自然に育てます。

実際、子どもの自己効力感(自分にはできるという感覚)は、成功体験を積み重ねることでもっとも強く育つと報告されています(アメリカ ケンタッキー大学、エレン・アッシャー准教授ら)*2。

「できた」の記録は、その成功体験を目に見えるかたちで残す装置なのです。

結果ではなく「続けた事実」を言葉にして返す

メモを見返すとき、上手にできたかどうかは脇に置きましょう。注目したいのは、「続けてきた」という事実そのものです。「毎日ちょっとずつ続けてきたね」。そう声をかけられた子どもは、結果ではなくプロセスに目を向けるようになります

うまくいった日もそうでない日も、続けたこと自体に価値がある。その視点が、長く続ける力を支えます。

休んだ日があっても、大丈夫

「何日かサボったら、もう終わり」。そう思っていませんか? じつは、そうではないことが研究でわかっています。

日常生活のなかで習慣がどう形づくられるかを追った研究では、行動が自動化していく過程でときどき実行を飛ばしても、習慣化のプロセスにはほとんど影響しないことが示されました(イギリス ロンドン大学、フィリッパ・ラリー博士ら)*3。

大切なのは、完璧に毎日やることではなく、長い目で見て続いていくこと。何日か空いてしまっても、また戻ってこられれば大丈夫。抜けた日に一喜一憂しなくていいのです。

この事実は、親にとっても子どもにとっても大きな安心になります。「今日はできなかった」を失敗ととらえず、「また明日やればいい」と軽やかに構える。その姿勢こそが、続ける習慣をいちばん長持ちさせます

今日から親子で試せる、小さな一歩

親が大切にしている習慣を隣で見ていてもらうだけでいい。「続けなさい」と言う代わりに、続けている姿を見せ、続けてきた足あとをいっしょに眺める。
***
あなた自身が実践している小さな習慣の積み重ねの先で、子どもはきっと、ある日「いつの間にかできてた」と実感する日が、きっと訪れるはずです。

FAQ(よくある質問)

親に続けている習慣がない場合はどうすればいいですか?

A.大がかりなものでなくて大丈夫です。寝る前のコップ一杯の水、朝のカーテン開けなど、すでにやっている小さなことを「習慣」として意識し、子どもの前で口に出してみてください。新しく始める場合も、親自身が楽しめる小さなことから選ぶのがおすすめです。

子どもがメモを書くのを嫌がります。

A.無理に書かせる必要はありません。親が自分のぶんを書く姿を見せるだけでも十分です。シールを貼る、スタンプを押すなど、書く以外の記録方法に変えると、ゲーム感覚で楽しめる子もいます。子どもが乗ってくるのを待ちましょう。

何歳ごろから始められますか?

A.「親の姿を見せる」アプローチは、年齢を問いません。記録を親子で楽しむのは、自分の足あとを認識できるようになる3〜4歳ごろから無理なく取り入れられます。お子さんの様子に合わせて、できる範囲から始めてください。

 

(参考)
*1 Feng, J., Huang, W. Y., & Sit, C. H.-P. (2022)|Effectiveness of a Parent-Focused Intervention Targeting 24-H Movement Behaviors in Preschool-Aged Children: Study Protocol for a Randomized Controlled Trial. Frontiers in Public Health, 10, 870281.
*2 Joët, G., Usher, E. L., & Bressoux, P. (2011)|Sources of self-efficacy: An investigation of elementary school students in France. Journal of Educational Psychology, 103(3), 649-663.
*3 Lally, P., van Jaarsveld, C. H. M., Potts, H. W. W., & Wardle, J. (2010)|How are habits formed: Modelling habit formation in the real world. European Journal of Social Psychology, 40(6), 998-1009.