教育を考える/親の関わり 2026.7.17

【W杯出場国】フランスって、どんな国?世界一「食事に時間をかける国」に学ぶ、食卓が子どもを育てる話

【W杯出場国】フランスって、どんな国?世界一「食事に時間をかける国」に学ぶ、食卓が子どもを育てる話

ワールドカップで、青いユニフォームに身を包んだ強豪・フランス。愛称は「レ・ブルー(青の意味)」。優勝2回、準優勝2回を誇る、まぎれもない世界のトップチームです。そんなフランスには、サッカーと並んで世界に知られたもうひとつの顔があります。「食」の国、という顔です。

「食事の時間かあ。うちはいつもバタバタで、気づけば5分でごはんが終わってる」「子どもが遊び食べして、なかなか席についてくれなくて……」。毎日の食卓に、そんなふうに小さなため息をついている方も多いのではないでしょうか。

じつはこの「家族で食卓を囲む」という時間、子どもの育ちを静かに支えていることが、近年の研究からわかってきています。今回は、ワールドカップを入り口に、フランスという国のこと、そして「食を大切にする」文化から見えてくる、食卓の時間の価値を、一緒に見ていきます

フランスって、どんな国?

試合の前後に子どもと話せるよう、フランスの基本をまとめてみました。

首都 パリ
有名な建物 エッフェル塔、モン・サン・ミッシェル、ルーヴル美術館
人口 約6,800万人(日本の約5割)
言葉 フランス語(世界で約3億人が話す言葉)
有名な食べもの バゲット(細長いパン)、クロワッサン、クレープ、チーズ
サッカー W杯優勝2回(1998年・2018年)。愛称は「レ・ブルー」

フランスの象徴といえば、首都パリにそびえるエッフェル塔。高さは約330メートルです。「東京タワーとどっちが高いかな?」とクイズにすると、子どもは身を乗り出してくるはずです。海に浮かぶ島の修道院モン・サン・ミッシェルや、世界一有名な絵「モナ・リザ」があるルーヴル美術館も、フランスにあります。

サッカー好きのお子さんなら、キリアン・エムバペという選手の名前を聞いたことがあるかもしれません。フランス代表のユニフォームが青いのは、国旗の青・白・赤の三色(トリコロールと呼びます)から来ています。試合を見ながら「フランスは青いチームだね」と話すだけでも、子どもにとっては国旗を覚えるきっかけになります。

そして子どもと盛り上がりやすいのは、やっぱり食べものの話です。細長いパンのバゲットや、サクサクのクロワッサンは、フランス生まれ。おやつでおなじみのクレープも、もとはフランスの料理です。「いつも食べているあれ、フランスから来たんだよ」と伝えると、遠い国がぐっと身近になります。

緑の木々の葉に縁取られた、青空の下のエッフェル塔とセーヌ川にかかる橋

フランスは、世界一「食事に時間をかける国」

フランスの食文化は、その豊かさが世界に認められ、ユネスコの無形文化遺産にも登録されています。とはいえ、それは高級レストランの話だけではありません。フランスの人たちが大切にしているのは、家族や友人と食卓を囲み、ゆっくり時間をかけて味わうという、日々の食事のスタイルそのものなのです。

実際、フランスは世界のなかでも食事にかける時間が長い国として知られています。日本の家庭の食事と比べると、その違いが見えてきます。

ポイント 日本でよくある食卓 フランスの食卓
出し方 いちどに全部ならべる 前菜、主菜、デザートと一皿ずつ順番に
かける時間 短め。すませることが多い たっぷり。ゆっくり味わう
会話 テレビを見ながらのことも 食べながらおしゃべりを楽しむ
子どもの役割 食べる人になりがち 買いものや準備を手伝うことも

「一皿ずつゆっくりなんて、うちには無理」と感じるかもしれません。もちろん、毎日フランス式にする必要はまったくありません。ただ、この「食卓を大切にする」という感覚が、子どもの育ちにとってどんな意味を持つのか。じつは、いくつもの研究がそのヒントを教えてくれています。

赤い日よけと窓枠、青いドアが特徴的なレストランの外観と、店先に並べられたテラス席

家族の食卓には、子どもを支える力があった

毎日の食事は、おなかを満たすだけの時間ではありません。世界中の研究を集めて調べた、大きな分析があります。

18万人以上の子どもを対象にした複数の研究を分析したところ、週に3回以上、家族で食卓を囲む子どもは、そうでない子どもに比べて、食事の内容が健康的である傾向が見られました。(アメリカ イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校、アンバー・ハモンズ研究員ら)*1

さらに、より新しく、より大きな分析でも、同じ方向の結果が示されています。

57の研究、20万人以上を分析したところ、家族で食事をする回数が多い子どもほど、食事の質がよい傾向が見られました。この傾向は、国や家庭の経済状況、そして一緒に食べる相手が親ひとりか家族みんなかにかかわらず、共通して見られたといいます。(ドイツ マックス・プランク人間発達研究所、マッテア・ダラッカー研究員ら)*2

大切なのは、これらが「食卓を囲めば必ずこうなる」という話ではない、という点です。あくまで、そういう傾向が見られたということ。それでも、家族でテーブルを囲むというありふれた時間が、子どもの毎日と静かにつながっている。そう思うと、いつもの食卓が、すこし違って見えてくるかもしれません。

フランスの食卓のテーブル

「一緒につくる」が、子どもの食を広げる

フランスの食文化のもうひとつの特徴は、子どもも食づくりに関わることです。買いものについていき、野菜を洗い、テーブルを整える。フランスでは、そうやって子どもが食事づくりの一員になる姿が、ごく自然に見られます。この「一緒につくる」という関わりにも、うれしい発見があります。

小学5年生3,398人を調べたところ、家での食事づくりを手伝う回数が多い子どもほど、野菜や果物を好み、自分で健康的な食べものを選べるという自信(自己効力感)が高い傾向が見られました。(カナダ アルバータ大学、イェンリー・チュー研究員ら)*3

台所は、子どもにとって発見の宝庫です。トマトのへたを取る、レタスをちぎる、卵を割る。ひとつひとつが、小さな「できた」の積み重ねになります。そして自分が手をかけた料理は、不思議とおいしく感じられるもの。「これ、わたしが洗ったにんじんだね」という誇らしげなひとことが、苦手だった野菜への扉を、そっと開けてくれることもあります。

もちろん、忙しい毎日のなかで、毎回一緒に台所に立つのは大変です。でも、たまの週末に、たったひとつの作業を任せてみるだけでも充分。子どもにとっては、食べる時間が「参加する時間」に変わる、大きな一歩になります。

木のテーブルに敷かれた麻布の上に置かれた、焼き立ての3つのクロワッサンと小麦の穂

今週末は、バゲットを一本買ってみる

とはいえ、フランスのまねをして、毎日一皿ずつ料理を出したり、食事に何時間もかけたりする必要はありません。いまの食卓のスタイルは、そのままで大丈夫。もっと軽い、たったひとつのことから始めてみませんか。

おすすめは、今週末、パン屋さんやスーパーでバゲット(フランスパン)を一本買ってみることです。食卓に出して、「これ、フランスのパンなんだよ」とひとこと添える。それだけで、いつもの食事がちょっとした話のタネになります。かたい皮をちぎって、どこがおいしいかを言い合ってみる。それだけで充分です。

もし子どもが乗ってきたら、次はほんの小さな役割をひとつ。パンをお皿にならべる、テーブルをふく。なんでもかまいません。手伝いが難しい年齢の子でも、「このパン、フランスの子も食べてるんだって」と話すだけで、遠い国がぐっと近づきます。試合を見たあとの食卓に、その国のパンが一本あるだけで、ワールドカップはもっと楽しくなります。

食事は、ただの栄養ではありません。味わい、語らい、分かち合う時間でもあります。食の国フランスの知恵は、毎日を頑張るあなたにも向けられています。

***
ワールドカップで青いユニフォームの「フランス」を見かけたら、思い出してみてください。華やかなサッカーの国は、食卓をなにより大切にする国でもあります。「フランスの人はね、こういうパンを食べるんだって」。そんなひとことから、今週末はバゲットを一本、食卓に並べてみませんか。試合の話をしながらちぎるパンは、子どもにとって、世界とつながる小さな入り口になります。

FAQ(よくある質問)

Q. 子どもが遊び食べをして、なかなか食事が進みません。

A. 幼児期の遊び食べは、多くの子どもに見られる自然な姿です。無理にやめさせようとするより、食事の時間をあらかじめ区切っておくのがおすすめです。フランスでも食事の時間はだいたい決まっています。「時計の針がここに来たら、ごちそうさまね」と見通しを伝えると、子どもも切り替えやすくなります。それでも進まない日は、深追いしすぎないことも大切です。

Q. 共働きで、家族そろって食卓を囲むのが週に数回しかできません。

A. 毎日そろわなくても大丈夫です。研究でも、週に3回以上という回数が、ひとつの目安として挙げられています。大切なのは回数よりも、囲めるときにゆっくり過ごすこと。朝ごはんを一緒に食べる日を決める、休日の昼食だけは会話を楽しむなど、できる範囲で無理なく続けることのほうが、ずっと意味があります。

Q. 台所の手伝いをさせたいのですが、かえって時間がかかって大変です。

A. 最初のうちは時間がかかって当然です。まずは火や刃物を使わない、安全でかんたんな作業から始めてみてください。レタスをちぎる、卵を割る、テーブルをふくなど、ひとつだけで充分です。うまくいかなくても「手伝ってくれて助かったよ」と声をかけることで、子どもの「またやりたい」という気持ちが育ちます。完璧な仕上がりより、参加できたことを大切にしてあげてください。

(参考)
*1 Hammons, A. J., & Fiese, B. H. (2011)|Is frequency of shared family meals related to the nutritional health of children and adolescents? Pediatrics, 127(6), e1565-e1574.
*2 Dallacker, M., Hertwig, R., & Mata, J. (2018)|The frequency of family meals and nutritional health in children: a meta-analysis. Obesity Reviews, 19(5), 638-653.
*3 Chu, Y. L., Farmer, A., Fung, C., Kuhle, S., Storey, K. E., & Veugelers, P. J. (2013)|Involvement in home meal preparation is associated with food preference and self-efficacy among Canadian children. Public Health Nutrition, 16(1), 108-112.