芸術にふれる/アート 2018.11.20

「デカルコマニー」ってどういう意味? 作品制作の簡単なやり方教えます。

編集部
「デカルコマニー」ってどういう意味? 作品制作の簡単なやり方教えます。

「デカルコマニー」とは、フランス語で「転写」を意味する、シュルレアリスムの芸術技法です。紙などに絵の具を垂らし、乾かないうちに別の紙を押しつけると、予想もできない面白い模様が現れます。

オスカル・ドミンゲスによって確立されたこの技法は、いまや幼稚園や保育園、小学校で大人気。画用紙に絵の具をポンポンと置き、紙を半分に折って開くと、左右対称の美しい模様が現れる……あれがデカルコマニーなのです。

簡単にきれいな模様が作れ、子どもが喜ぶデカルコマニー。もちろん自宅でもできますよ。今回はデカルコマニーの発祥や、作品の作り方をご紹介します。

芸術技法としてのデカルコマニーの意味

デカルコマニー(décalcomanie)は、フランス語の動詞「décalguer(転写する)」に由来しています。プラモデルの作成や小物のデコレーションなどに使われる「転写シール」をご存知でしょうか? シールを貼って、こすったり水でぬらしたりして模様を写すと、最初からそこに印刷されていたように見える、あのシールです。これは「デカール」とも呼ばれることがありますが、デカルコマニーと同じ語源というわけです。

デカルコマニーを芸術表現として確立したのは、シュルレアリスムの画家オスカル・ドミンゲス(1906~1957)です。1920年代に発生したシュルレアリスムは、フロイトの精神分析などから影響を受けた、無意識や偶然の要素を重視する芸術運動。キャンパス上に絵の具を置き、紙を押しつけたりすることによって生まれるふしぎな模様は、まさに偶然の産物です。シュルレアリスムの代表的な画家であるマックス・エルンスト(1891~1976)やサルバドール・ダリ(1904~1989)も、デカルコマニーを用いた作品を発表しました。

デカルコマニーのねらい

デカルコマニーは前衛芸術のなかで生まれたわけですね。では、なぜ幼児教育で盛んに行われているのでしょうか?

近畿大学九州短期大学の研究紀要に掲載された論文「演習講義『デカルコマニー・デッサン』想像から創作へ」(2017年)によると、デカルコマニーは子どもの想像力を養ってくれるそう。

予想できないわくわく感と、形態の分からない左右対称画の完成に驚き、何だろうと少ないボキャブラリー(語彙)で必死に探索を始める想像力、物を見つけ出す活動が幼児にとって、楽しんで自由に、思い思いに表現をして、想像力を膨らませる絵画遊び(創作)の基盤となりえるのである。

(引用元:近畿大学学術情報リポジトリ|〈論文〉演習講義「デカルコマニー・デッサン」想像から創作へ

デカルコマニーを実践するにあたって、特別な技術や道具は不要。筆を持つ必要すらないので、指先の動きが発達していない幼児でも簡単に「作品」を生み出せるのです。

文部科学省の定める「幼稚園教育要領」には、幼稚園修了までの達成が期待される「ねらい」のひとつとして「生活の中でイメージを豊かにし,様々な表現を楽しむ」ことが挙げられています。子どもの感性を育み、芸術表現を楽しんでもらうには、デカルコマニーはぴったりだといえるでしょう。

デカルコマニーのやり方

デカルコマニーの制作過程は単純明快です。

用意するもの

画用紙、絵の具(マニキュアでも!)

やり方

  1. あらかじめ、紙を半分に折って開き、折り目をつけます。これによって、どの線を中心に左右対称となるのかわかりやすくなります。
  2. 紙の上に、チューブから直接、絵の具を出します。パレット上に出して水で溶いてもかまいませんが、色が薄くなりすぎないようにしましょう。
  3. 出した絵の具を、指や筆を使って好きなように伸ばしてみましょう。指も筆も使わず、絵の具を点々と出すだけでも面白い表現になります。
  4. 絵の具が乾かないうちに、折り目に沿って紙を折りましょう。絵の具がきちんと転写されるよう、全体を丁寧にこすります
  5. 紙が破けないよう、ゆっくりと開きましょう
  6. 完成です。どんな模様になりましたか? それは何に見えますか? 絵の具が乾いたら、色鉛筆や絵の具で描き足して、作品としてさらに発展させるのも素敵ですね。

デカルコマニーでちょうちょを作ろう

上で挙げた論文によると、高校1年生にデカルコマニーをやらせて「どんな形に見えましたか?」と尋ねたところ、「蝶々」という答えが「人の顔」と並んで最も多かったそう。たしかに、中心線の周りに鮮やかな絵の具が広がっている様子は、蝶の羽に似ていますね。

デカルコマニーを利用すれば、きれいなちょうちょのオーナメントが簡単に作れますよ。さっそくやってみましょう!

用意するもの

画用紙、絵の具、ハサミ、カラフルな針金あるいはモール、セロハンテープ

やり方

  1. 紙を半分に折って開き、折り目をつけます
  2. 紙の上に絵の具を置いていきます。白い部分をあまり残さないようにすると、鮮やかな蝶になりますよ。
  3. 紙を折って全体をこすり、ゆっくりと開きます
  4. 絵の具が乾いたら、再び紙を折り、ちょうちょの形に切り抜きます
  5. 触角を作りましょう。2本の針金(モール)をゆるやかに曲げ、ちょうちょにつけます。裏側からテープで貼るのがよいでしょう。
  6. 完成です! たくさん作って壁に貼ると、目を奪われるほど華やかになります。

デカルコマニーでこいのぼりを作ろう

デカルコマニーを使えば、ちょうちょの羽だけでなく、魚のウロコもカラフルに表現することができます。魚にもいろいろありますが、四角形に近い「こいのぼり」が作りやすいかもしれません。いっしょにこいのぼりを作ってみましょう!

用意するもの

画用紙、絵の具、ハサミ、のり、黒のサインペン

やり方

  1. 完成形を想像しやすいそう、先に紙をこいのぼりの形に切ります
  2. 紙を半分に折って開き、折り目をつけます。ちょうちょは左右対称でしたが、こいのぼりは上下対称です。
  3. 紙の上に絵の具を置いていきます。線よりも点で表現すると、よりウロコっぽく見えますよ。
  4. 紙を折って全体をこすり、ゆっくりと開きます
  5. 目を作ってあげましょう! 別の紙を丸く切り取り、中に黒目を描いて、のりで貼ります
  6. 完成です。1匹ではさみしいので、たくさん作って仲間を増やしてあげましょう!

 
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簡単だけれど、子どもも大人も楽しめるデカルコマニー。難しく考えず、色が生み出す偶然を楽しんでくださいね。

(参考)
富山大学学術情報リポジトリ|造形教育におけるデカルコマニーの意義
近畿大学学術情報リポジトリ|〈論文〉演習講義「デカルコマニー・デッサン」想像から創作へ
J-STAGE|「見立て」によりイメージを媒介させた絵画的アプローチの妥当性を検証するための基礎的研究
コトバンク|シュルレアリスム
Sotheby’s|Max Ernst OHNE TITEL
Sotheby’s|Salvador Dalí ANATOMIES-SÉRIE
文部科学省|第2章 ねらい及び内容