暑い日の縁日、公園帰りのおやつ、家族で行ったお祭り。ふわふわのかき氷を「わーい!」と大きな口でほおばったわが子が、次の瞬間、「いたたっ、あたまが……!」と眉をぎゅっと寄せる。
あの瞬間、そばで見ているこちらまで、なんだかこめかみがきゅっとする気がしませんか。「そんなに急いで食べるからだよ」と言いたくなる気持ちも、「大丈夫?」とあわてて背中に手を当てる気持ちも、どちらも、わが子の「いた〜い!」に反応した経験があると思います。
じつはこの「頭がキーン」、きちんと名前のついた、れっきとした体の反応です。仕組みを少し知っておくと、痛がるわが子に「それはね」とひとこと添えてあげられます。そして、痛くなりにくい食べ方も、きちんとあります。
目次
「頭がキーン」には、じつは名前がある
かき氷やアイスを急いで食べたときに起こる、あの一瞬の頭痛。名前もない気まぐれな痛みのように思えて、じつは医学の世界に、きちんとした居場所のある頭痛です。
◆ 研究でわかっていること
かき氷やアイスを急いで食べたときの頭痛は「アイスクリーム頭痛」と呼ばれる、正式な頭痛の一種です。国際的な頭痛の分類にも、冷たいものが原因で起こる頭痛としてきちんと記載されています。(国際頭痛学会「国際頭痛分類 第3版」)*1
つまり、わが子が痛がっているのは、食べ方が悪いからでも、体が弱いからでもありません。冷たいものを食べれば、多くの人に起こりうる、ごくありふれた体の反応なのです。名前がついていると分かるだけで、「うちの子、大丈夫かな」という不安が、少し軽くなりませんか。どれくらいありふれているのか、大きな調査の結果を見てみましょう。
◆ 研究でわかっていること
台湾で13 〜 15歳の中学生8359人を対象におこなわれた大規模な調査では、40.6パーセントの子が「アイスクリーム頭痛」を経験したことがあると答えました。(台北栄民総医院、ジョンリン・フー博士ら)*2
クラスのおよそ4割の子が経験している、と考えると、わが子だけが特別に痛がりなわけではない、と少し安心できますね。しかもこの調査では、痛みの多くはとても短く、程度も軽いものだったと報告されています。 
頭のなかで、何が起きているの?
では、口のなかは冷たいのに、どうして「頭」が痛くなるのでしょう。まずは、体のなかで起きていることを、3つのステップで見てみましょう。
かき氷で「キーン」となるまでの3ステップ
ふわふわのかき氷が、口の天井(上あご)にふれる。
脳へ血液を送る血管がぐっと広がり、血流が増える。このタイミングで痛みが起こる。
広がった血管がもとの太さに戻ると、痛みも自然に消えていく。
この流れを、実際に人の脳で確かめた研究があります。
◆ 研究でわかっていること
13人の大人に協力してもらい、冷たい水をストローで上あごに当てながら脳の血流を測ったところ、冷たさが届いた直後に「前大脳動脈」がぐっと広がり、血流が増えたそのタイミングで参加者が痛みを感じていました。血管がもとの太さに戻ると、痛みもすっと引いていきました。(米国退役軍人局ニュージャージー医療センター、メリッサ・ブラット氏ら)*3
では、なぜわざわざ血液が増えるのでしょう。研究チームは、これを脳の「防御反応」ではないかと考えています。脳はとても温度に敏感な、大切な器官です。冷たいものが急に入ってくると、脳は「冷えすぎないように」と、あたたかい血液を送りこんで自分を守ろうとする。ところが頭蓋骨は硬い箱のような構造なので、なかへ急に血液が増えると圧力が上がり、それが痛みとして感じられる、というわけです。
口のなかの冷たさが、なぜ頭の痛みになるのか。その橋渡しをしているのが、上あごの奥にある神経の集まりだと考えられています。冷たい刺激をこの神経が受けとると、その情報が脳のほうへ伝わり、痛みとして感じられる。だから、痛いのは冷やされた口ではなく、少し離れた頭のほうになるのです。
「お口が冷たいのに、どうしてあたまが痛いの?」とわが子に聞かれたら、「お口の奥とあたまは、細い電話でつながっているんだよ」くらいの言い方で伝えてあげると、小さな子にも届きやすいかもしれません。言いかえれば、あの「キーン」は、わが子の脳ががんばって自分を守ろうとしているサインでもあるのです。

痛くなったら? すぐできる対処
とはいえ、痛いものは痛い。その場でできることを知っておくと、わが子に落ち着いて声をかけられます。
まず伝えたいのは、この頭痛はごく短い時間で落ち着くということ。ほとんどの場合、痛みは長く続かず、少し待てば自然に引いていきます。だから、慌てなくて大丈夫。「すぐ治るよ、大丈夫」と背中をさすってあげるだけでも、子どもはずいぶん安心します。痛みそのものよりも、痛くて驚いている心のほうを、先に受けとめてあげたいところです。
そのうえで、昔から知られている方法があります。それは、温かい舌を上あごにぺたっと押し当てる、あるいは温かい飲み物を少し口に含む、という方法です。「舌をお口の天井にくっつけてごらん」と声をかければ、痛みに気をとられていた子の意識が、ちょっとした遊びのほうへ向くという効果もあります。痛みが引いたら、「ほらね、すぐ治ったね」とひとこと。こんな体験・経験があると、子どもは次に痛くなっても慌てないでしょう。

次から痛くなりにくい、たったひとつの工夫
ここまでを踏まえて、次のかき氷タイムに「ひとつだけ」持ちこんでほしい工夫があります。それは、ゆっくり食べること。ただそれだけです。これは気休めではなく、比べる実験で確かめられています。
◆ 研究でわかっていること
子どもたちを2グループに分け、同じアイスクリームを「5秒未満で急いで食べる」グループと「30秒以上かけてゆっくり食べる」グループで比べたところ、急いで食べた子は27パーセント、ゆっくり食べた子は13パーセントが頭痛を起こし、およそ半分にとどまりました。(マクマスター大学、ヤヌシュ・カゾロフスキ准教授ら)*4
急いで食べると、冷たい刺激が一気に上あごに届きます。ゆっくり口のなかであたためながら食べれば、その刺激がやわらぐ。さきほどの3ステップの、いちばん最初のところをそっとゆるめてあげるイメージです。
大切なのは、伝え方です。「急いで食べちゃだめ」と止めるのではなく、「ゆっくり味わうと、キーンってなりにくいんだって。競争しようか、どっちがゆっくり食べられるか」。そんなふうに、遊びのかたちで誘ってあげる。禁止ではなく、ひとつのコツとして手わたすほうが、子どもはきっと素直に受けとってくれます。
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かき氷の「キーン」は、わが子の脳が自分を守ろうとする、けなげな反応でした。仕組みが分かれば、痛がる姿に慌てず、「それはね」と理由を添えて、「ゆっくり食べてみようか」と隣で笑いながら声をかけてあげられます。理由を知っているだけで、同じ場面がずいぶん違って見えてくるものです。この夏、次にかき氷を囲むときは、どっちがゆっくり食べられるか、親子で競争してみるのはいかがでしょう。
FAQ(よくある質問)
Q. かき氷の頭痛は、体に悪いのでしょうか?
A. 冷たいものによる頭痛は短い時間でおさまるもので、それ自体が体を傷つけるものではないと考えられています。ただし、頭痛がとても長く続く、くり返し起こって困るといった場合は、念のためかかりつけの小児科に相談すると安心です。
Q. どうしてうちの子は、よく頭痛になる気がします。
A. 痛みの感じやすさには個人差があります。急いで食べる子ほど起こりやすい傾向があるので、まずは「ゆっくり食べる」ことを試してみてください。それでも頻繁に痛がる場合は、体質的な要因もあるため、無理をさせず様子を見てあげましょう。
Q. 痛がっているとき、どうしてあげるのが一番ですか?
A. 「大丈夫だよ」と声をかけて落ち着かせてあげるのが一番です。あわせて、温かい舌を上あごに当てる、温かい飲み物を少し含むといった方法で、冷えた上あごをあたためると楽になることがあります。
(参考)
*1 Headache Classification Committee of the International Headache Society. (2018)|The International Classification of Headache Disorders, 3rd edition. Cephalalgia, 38(1), 1-211.
*2 Fuh, J. L., Wang, S. J., Lu, S. R., & Juang, K. D. (2003)|Ice-cream headache: a large survey of 8359 adolescents. Cephalalgia, 23(10), 977-981.
*3 Blatt, M. M., Falvo, M., Jasien, J., Deegan, B., Ó Laighin, G., & Serrador, J. (2012)|Cerebral Vascular Blood Flow Changes During ‘Brain Freeze’. The FASEB Journal, 26(S1), 685.4.
*4 Kaczorowski, M., & Kaczorowski, J. (2002)|Ice cream evoked headaches (ICE-H) study: randomised trial of accelerated versus cautious ice cream eating regimen. BMJ, 325(7378), 1445-1446.









