あたまを使う 2026.8.10

子どもにAIを使わせていい? 教育のプロが語る「子どもとAIの向き合いかた」

子どもにAIを使わせていい? 教育のプロが語る「子どもとAIの向き合いかた」

「ねえ、AI使ってみたい!」と子どもにせがまれて、返事に困ったことはありませんか。宿題の答えを丸写しするのではないか、変な情報を信じてしまうのではないか。心配は尽きないのに、親のほうも正解を知らないのがAIとの付き合い方です。

『中学生からの勉強のやり方(動画つき・アップデート版)』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、改訂の目玉として特集「AIを『最強の勉強パートナー』にする方法」を新設しました。著者は、塾・プラスティーを経営し「勉強のやり方」を教え続けてきた清水章弘さんです。

AI活用の本を書いた清水さんに子どもとAIの距離感を聞くと、意外な答えが返ってきました。「我が家では、子どもだけではまだ使わせません」。その理由と、親子でのAIとの付き合い方を語ってくれました。(全2回の第1回)

取材・構成/こどもまなび☆ラボ編集部

【プロフィール】
清水章弘(しみず・あきひろ)
「勉強のやり方」を教える塾 プラスティー代表
1987年、千葉県船橋市生まれ。海城中学高等学校、東京大学教育学部を経て、同大学院教育学研究科修士課程修了。東京・京都・大阪で「勉強のやり方」を教える塾プラスティーを運営しながら、全国の学校・教育委員会でアドバイザーを務める。TBS「ひるおび」等のテレビ番組で、コメンテーターとしてレギュラー出演中。著書は『面白いほど成績が上がる 中学生からの勉強のやり方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など多数。2児の父。

AIの最大の弱点は「ウソをつくこと」

AIの弱点を先にお伝えすると、やっぱり「ウソが多い」ことです。不確かな情報を確からしく言っていたり、誤った情報を正しいかのように伝えてきたりすることが、いちばん大きな問題だと思います。本のなかでは、このもっともらしいウソを「ハルシネーション(幻覚)」という言葉で説明しました。

いまの学校教育は、基本的に多くは「正解主義」でやってきています。正解がある学びが大半を占めていて、正しいか誤っているかがすごく大事な世界です。そこに「たまに誤りがあるよね」というツールが入ってくる。

メーカーの製品で「何個かに1個、悪いものがある」と言われたら、工場として成立していませんよね。同じように考えて、ときどき誤りがある精度を学習に使えるかどうか。ここが大きな分かれ目で、いまはまだ、AIを完全に信じきれないと考えています。

一方で、子どもたちの世界では活用がすでに始まっています。先日、うちの京都校の中学2年生が「生成AIに予想問題を作らせるのは当たり前でしょう」というテンションで話していて驚きました。だからこそ、正しい距離感を早めに親子で決めておく必要があるのです。

3つの絶対ルール。いちばん難しいのは「鵜呑みにしない」

本のなかでは、AIを使い始める前に必ず守ってほしい「3つの絶対ルール」を紹介しています。

AIを使う際の3つの絶対ルール

1年齢制限を守り、おうちの人と一緒に始める
2個人情報は絶対に入力しない
3AIの言うことを100%鵜呑みにしない

このなかで、子どもにとっていちばん難しいのが3つめです。子どもは、大人が思う以上に正誤への感度が低いからです。たとえば、「隣のクラスの先生は日本一頭がいいらしいよ」と聞けば、「えー!そうなの?!」と信じてしまうのが、小さな子どもです。もっともらしいウソを見抜く力は、まだ育っていません。

だから清水家では、子どもだけで使わせない

だから我が家では、子どもだけではまだAIを使わせていません。子どもたちは使いたがりますが、「まだ早いよ」と伝えています。使うのは、親子で学習する時間。親が横に座って一緒に使い、返ってきた答えを一緒に見るのです。

ポイントは、間違いようのない知識から使うことです。小学生の学習内容なら、親が見ていて「これはさすがに間違えようがない」と判断できるところを確認しながら使っていくのがいいと思います。

丸写しに気づいたら? 「AIを取り上げる」は違う

「宿題の答えをAIに書かせていた」と気づいたときは、どうすればいいのでしょうか。答えは「自由に使わせない」、本当にそれしかないと思います。宿題の答え出しに使えてしまっているのは、家で使える自由度が高すぎるからです。

これは家庭のルールの話であって、「AIを取り上げましょう」とは違います。使いながら、使い方も一緒に身につけていくものだからです。

それに、AIを使ったかどうかを見分けられるのは、宿題ではなくテストです。宿題では満点なのにテストで点が取れなければ、使ったことはわかります。逆にテストでも満点なら、その宿題がその子にとって簡単すぎるだけの話で、問題は小さいのです。

親子で使う実践。「あなたはバスガイドです」

親子で一緒に使うときの実例をお見せします。僕が自分のGeminiで試したのは、「あなたはバスガイドです。山梨県甲府市に旅行で行きます。バスガイドさんになったつもりでやり取りしてください」というお願いです。そして「ニュースで甲府の気温が高いとよく見ますが、どうしてですか」と聞いてみました。

AIの返答(一部)

「皆さん、バスの車内は冷房を強めにしておりますが、一歩外に出ますと、まるで大きなオーブンの中にいるような暑さでございますね」「なんでこんなに暑いのか、その理由は3つの大きな要因が重なっているからでございます。皆さん、ぜひ窓から周囲の景色を見渡しながらお聞きください」

この続きに、盆地の説明やフェーン現象、内陸性気候といったキーワードが、物語のなかに自然に入ってくるのです。小学3年生になると、地元の地理から社会の学習が始まります。バスガイドやツアーコンダクターになりきってもらう学び方は、親子で絶対に盛り上がると思います。

歴史人物へのインタビューや、カレンダーづくりにも

本で紹介した「なりきりインタビュー」もおすすめです。塾では、ナポレオンで盛り上がった中学生がいました。AIにコロンブスになりきってもらい、航海のことを尋ねると、「セントヘレナの湿っぽく風の強い部屋から、君に答えよう」から始まり、「それでも私を動かし続けたもの——それはいったい何だったと思うか?栄光と秩序だ。私が成し遂げたかったのは、単に領土を広げることではない。フランス革命という未曾有の混乱を収束させ、新しい時代の礎を築くことだった」「さて、君は私の歩んだ道のりのどこに最も関心があるのかな?」と「対話」をしてくれます。

口頭でやり取りできるのも、いいところです。文字がまだ書けない小さな子でも質問を口にできますし、AIにきちんと伝わるように話そうとするなかで、話し方そのものが鍛えられていきます。

勉強を始める前の準備にも使えます。我が家では、学習カレンダーづくりをAIと一緒にやりました。将棋が好きな娘のために、将棋を指す女の子と、大好きな猫のイラスト入りのカレンダーです。こうした使い方は子ども一人では思いつかないからこそ、親のサポートに価値があります。

「AIがあるなら、もう勉強しなくていいのでは?」に答える

子どもにこう聞かれたら、正直に言うと、気持ちは本当にわかります。自分が子どものときにAIがあったら、「勉強しなくていいじゃん」と思ったはずです。だからこれは、コーチング的な共感ではなく、超リアルな共感です。

それでも勉強したほうがいい理由は2つあります。1つめは、社会のしくみの問題です。AIの進歩がどんなに速くても、社会システムが変わるのにはすごく時間がかかります。

たとえば高校入試の問題がAIのスピードに合わせてすぐつくり変えられるかというと、全然変わらないわけです。もちろん企業の採用も、入社後の仕事も。だから、いま生きている子どもたちは、最低限の勉強はやっておいたほうがいい。

2つめは、人と直接関わる価値は、むしろ高まっていくからです。誰かと顔を合わせて対話し、仲良くなる場面はなくなりません。相手の言葉の裏を読むのは国語の学習ですし、相手の住んでいる土地や文化を知ることは地理の学習や、外国語学習です。

そして、ふだんから勉強していると、頭のなかに知識の「フック」ができます。新しく知ったことをそのフックに引っかけて覚えられるから、記憶に残りやすいのです。その記憶を頼りに相手と対話をするわけですから、頭にフックをたくさん用意してから会話をしたほうが、会話が弾むはずです。

ちょっとした知恵があったほうが、生きていくのが楽になりますよね。本の特集も、こんな言葉で締めくくりました。AIは道具。使いこなすのは、みなさん自身です。

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「AI活用の特集を書いた著者が、我が子にはまだ使わせていない」。この事実がいちばんの答えなのだと、取材を通じて感じました。禁止でも放任でもなく、親が横に座って一緒に画面を見る。

考えてみれば、答えの丸写し自体はAIが登場する何十年も前からあった話で、問われているのは道具ではなく家庭のルールのほうなのです。

バスガイドになったAIの語り口を楽しそうに再現する清水さんの様子に、AIと学ぶ時間は親子の時間にもなるのだと教えられた取材でした。

※第2回では、未就学〜低学年のうちに育てたい「自学力」の芽と、親の仕組みづくりについて聞いています。

清水章弘さん ほかのインタビュー記事はこちら】

  • できないことが、できるようになる。その「勉強の楽しさ」は低学年でこそ実感させてあげて。教育のプロが語る、”自学力”の身につけさせかた(※近日公開)