親の関わり 2026.10.23

「口をきかない」は反抗ではない。小5〜中1「思春期の入口」12のサイン

「口をきかない」は反抗ではない。小5〜中1「思春期の入口」12のサイン

「話しかけても「別に」しか返ってこない」「いつの間にかドアを閉めるようになった」「小4までは何でも話してくれたのに」

帰ってくるとランドセルを置いてそのまま自分の部屋へ。夕食で「今日どうだった?」と聞いても、「普通」のひとことで終わる。そんな姿を見て、「反抗期が始まった」と身構えたり、「嫌われたのかな」と落ち込んだりしているお母さんは少なくありません。

じつは、小5〜中1の子どもが口をきかなくなるのは、親を嫌いになったからではありません。親から少し離れて、自分をつくり始めた合図と考えられます。反抗期とは「蚕でいえば、いままで幼虫だったのが自分のまわりに “まゆ” をつくっているような状態」だといいます。(東京成徳大学教授、田村節子氏)*1 まゆという壁で親と距離をとり、自分で決める機会を少しずつ増やしながら、じっくり自分をつくっていく時期。口数が減るのも、その壁ができ始めた姿のひとつと見ることができそうです。

ただし、「黙っている」姿のすべてが成長のサインとは限りません。似て見える変化のなかに、気にかけておきたいものが混ざっていることもあります。そこで、12のサインを「見守ってよい8つのサイン」と「気にかけたい4つのサイン」の2列に分けました。ここ1〜2か月のわが子の様子を思い浮かべながら、どちらの列に□がつくかを見てみてください。

小5〜中1は、反抗期のピーク手前、思春期の入口にあたります

こどもまなびラボの「思春期と反抗期の違いとは? 「口が悪くなる男の子」「不機嫌になる女の子」の対処法」の記事でも紹介しているように、第二次反抗期は中学生・高校生の時期にピークを迎え、反抗的な態度そのものは早い子で小学校中学年くらいから始まるといいます。(和洋女子大学こども発達学科、大神優子氏)*2 小学校中学年ごろからは「前思春期」が始まっているともいわれ、この時期の子どもは「生理的な発達にともなう変調、対人関係の難しさ、自我の形成にともなうしんどさなど、大変さを同時に抱えています」とのこと。(東海大学教授、医学博士、芳川玲子氏) 小5〜中1は、反抗的な態度が出始めてから中高生のピークへ向かう、ちょうど途中の時期にあたります。

京都市こころの健康増進センターの資料では、「親に対してよそよそしくなる」「批判的な態度を示す」といった思春期の心の変化を、一般的に反抗期と呼ぶと説明されています。*3 よそよそしさも、思春期に起こる心の変化のひとつなのです。

なぜ親に話すことが減るのでしょうか。思春期に大きな変化が表れるのは、脳の前頭葉の発達によって、自分を第三者の視点で見る「メタ認知」ができるようになるからだと説明しています。(青山渋谷メディカルクリニック名誉院長、精神科医、鍋田恭孝氏)*4 自分を客観視できるようになると、人間関係のなかでの自分の立ち位置も見えてきて、友だちにどう思われているかが気になり始めます。小学生までは親によく話をしていた子どもも、思春期に入ると、話をする相手が親から友だちへと変わっていくそうです。(関東中央病院 精神科、菊地秀明氏)*5

笑顔で並ぶ男の子と女んおこ

12のサインを「見守ってよい」と「気にかけたい」の2列で見てみましょう

左の8つは、親から離れて外へ向かう動き。右の4つは、親から離れられないか、外からも離れていく動きです。似て見える行動を横に並べました。

見守ってよい8つのサイン(親から離れて、外へ向かう) 気にかけたい4つのサイン(離れられない/外からも離れる)
□1. 学校のことを聞いても「別に」「普通」。自分からは話さなくなった
□2. 自分の部屋にこもる。ドアを閉めている時間が増えた
□9. 部屋にこもるだけでなく、友だちとも会わなくなり、学校にも行きづらくなっている
□3. 「うるさいな」「いまやろうと思ってたのに」と強い言葉で言い返す
□4. 親のちょっとしたミスに揚げ足をとる。口答えが増えた
□10. 言い返さないのではなく、言い返せない。親の顔色を見て黙る
□5. 鏡を見る時間が増えた。髪型や服にこだわる
□6. 行き先を言わずに友だちと出かける。友だちとの約束を優先する
□11. 何をするにも「お母さんが決めて」。自分で選ぶ場面で動けなくなる
□7. 「疲れた」「めんどくさい」が増え、家でダラダラしている
□8. 注意するとふてくされる。にらむ、返事をしない
□12. 家でも学校でも「いい子」。嫌なことも我慢して、不満をいっさい口にしない

左の列に□がいくつもつくなら、思春期の入口に差しかかっているサインと考えられます。8つはどれも、こどもまなびラボの「反抗期を「ありがたい」と考える親の神対応。「うるさいな!」は自立への第一歩です」の記事などで、専門家の意見をもとに紹介してきた反抗期・思春期にありがちな言動。親の接し方を間違えたせいではなく、成長の過程でよく見られる変化です。

左の□が少なければ、入口がまだ先か、穏やかに入り始めたところかもしれません。穏やかに育って反抗期がないという子どももいて、それは子どもの欲求を上手に親が受け止めていた場合だそうです。(早稲田大学教授、本田恵子氏)*6

右の列は、数ではなく「向き」で見てください。左の□が多いこと自体は心配いりません。右にひとつでも当てはまるものがあれば、少し気にかけておきたいところです。

黒板の中央から外側に向けて、さまざまな方向や形を示す複雑な矢印をチョークで描いている手

見守ってよい8つのサインは、どれも「親から離れて外へ向かう」動きです

似たサインをふたつずつまとめ、専門家の見方を並べました。

見守ってよいサイン 専門家の見方
サイン1・2
「別に」・部屋にこもる
思春期の男の子が部屋にこもるのは、親の干渉を遮断して「自分」という新しい存在を形成しようとしているからだといいます。(心理学者、諸富祥彦氏) 小学校中学年ごろのイライラは、「自分の思いをうまく言葉に整理できない」ことが一番の原因だそうです。(元白梅学園大学子ども学部教授、増田修治氏)*7
サイン3・4
強い言葉・揚げ足
口が悪くなるのは、ホルモンが不安定で感情をコントロールできないことも一因です。(東海大学教授、医学博士、芳川玲子氏) 口答えは、論理的に考える力が育ってきた表れととらえることもできます。*8 「親がうざい」も、脳が引き起こしている感情のひとつだと指摘しています。(脳科学者、中野信子氏)*9
サイン5・6
鏡を見る・行き先を言わずに出かける
容姿を気にするのは、「自我の順調な育ち」。(産婦人科医、高橋幸子氏) 10歳くらいから、男の子は自分の力を試したい気持ちが強くなるといいます。(東海大学教授、医学博士、芳川玲子氏)
サイン7・8
ダラダラ・ふてくされる
第二次性徴が始まると、成長にエネルギーをとられて疲れやすくなるとのこと。(東海大学教授、医学博士、芳川玲子氏) ふてくされるのは、心を許しているからこそ親に甘えている姿です。(心理学者、諸富祥彦氏)

気にかけたい4つのサインは、反抗の「激しさ」ではなく「向き」で見分けます

親離れや反抗期は、「子どもが社会の中で親に頼らず同世代の仲間とともに自分の力を信じてやっていく、大人になっていくという過程の一部」だと述べています。(関東中央病院 精神科、菊地秀明氏) 心配されているのは、むしろ反抗しない・できない子ども。自分では何も決められない、親を恐れて反発できない、家や学校で良い子を演じてしまう。そうした子どもが、不登校や摂食障害などの問題を引き起こしてしまうことがあるといいます。右の4つは、この指摘を日常の姿に置き換えたものです。

気にかけたいサイン 見守ってよいサインとの違いと、関わり方
サイン9
友だちや学校からも離れる
部屋にこもっても(サイン2)、友だちとつながっていれば成長の途中。外の世界ごと遠ざかるのは、向きが逆です。まわりの目が気になり始める時期に、自分なりに主張する力や自己選択する力が育っていないと、人間関係のなかでどう動くかを決められず、中学校で不登校が急に増える一因になるといいます。(青山渋谷メディカルクリニック名誉院長、精神科医、鍋田恭孝氏)
→ 担任やスクールカウンセラーに早めに相談を
サイン10
親の顔色を見て黙る
言い返せる子(サイン3)は、言い返しても関係が壊れないと感じているのかもしれません。反抗したくても親の押さえつける力が強い場合、「大人になったときにどこかで爆発してしまう可能性がある」との指摘も。(京都女子大学教授、臨床心理学専門、正木大貴氏)
→ 子どもの言い分を最後まで聞く時間をとる
サイン11
何でも「お母さんが決めて」
行き先を言わずに出かける(サイン6)のは、少なくとも自分で決めている状態。「ああしなさい」と言われ続けた子どもは、自分で決めることが増える思春期に戸惑い、殻に閉じこもることがあるそうです。(青山渋谷メディカルクリニック名誉院長、精神科医、鍋田恭孝氏)
→ 小さなことから選ばせる場面を増やす
サイン12
家でも学校でも「いい子」
家でダラダラできる(サイン7)のは、家が安心できる場所だから。家でも気を抜けず、不満を口にしないのは、「良い子を演じてしまう」状態に近づいている可能性があります。
→ 家ではダラダラしていいと伝える

手がかからないことと、安心して甘えられていることは、別のことです。

家族3人が並んで笑顔で立っている

親ができるのは「干渉しない。でも関心は向ける」の3つです

「関心を向けてくる相手を追っ払ってひとりになることと、関心がまったく向けられず、ほったらかしにされてひとりでいることは全然違う」といいます。(法政大学文学部心理学科教授、渡辺弥生氏) 必要なのは、干渉を減らすことと、関心を減らさないことの両方です。

関わり方 やり方と専門家の見方
関わり方1
「別に」には「そっか」で受ける
「まずは共感すること。『そうなの? それは嫌だよね』と共感してあげると話しやすくなり、親への信頼も高まる」と述べています。(教育評論家、親野智可等氏) 子どもの言い分を最後までさえぎらずに聞いているか、それだけは意識的にチェックしてほしいそうです。(早稲田大学教授、本田恵子氏)
→ 問い詰めず、正論も言わず、「そっか」で止める
関わり方2
楽しそうなときに声をかける
「大丈夫なの?」と心配なときにだけ声をかけると、子どもの心はかえって閉じていきがち。楽しそうに過ごしているときにこそ、関心を寄せていることを伝えましょう。
→ 「そのまんが、おもしろそうだね」とひとこと
関わり方3
行き先を言わないときは、危険を具体的に話す
まずは起こりうる危険を具体的に話して聞かせ、そのうえで親自身も一度その場所へ足を運び、子どもと同じ風景を見て共感することも大事だとアドバイスしています。(認知科学者、松井智子氏)
→ 「あの通りは暗くなると車が多いから、6時には駅の側に戻ってね」と、場所と時間だけを伝える

***
「小4までは何でも話してくれたのに」。その時間は、なくなったわけではありません。10歳頃の子どもの「飛躍」は、それまでの親による教育やインプットが花となって開きはじめた表れだと述べています。(法政大学文学部心理学科教授、渡辺弥生氏)*10 たくさん話してくれた日々が、いま黙って自分をつくる力になっているのでしょう。

左の8つに□がついたなら、それは親から離れる準備が進んでいる印。右の4つが空欄なら、まゆの壁はきちんと外に向かって開いています。今夜「別に」が返ってきたら、「そっか」とひとこと返して、そのまま同じ食卓にいてください。

よくある質問(FAQ)

Q. 小6なのに、左の8つがひとつも当てはまりません。遅れているのでしょうか?
A.
遅れではありません。反抗的な態度は早い子で小学校中学年から始まるとされますが、ピークは中学生・高校生の時期です。穏やかに育って反抗期がないという子どももいて、それは子どもの欲求を親が上手に受け止めてきた場合だそうです。(早稲田大学教授、本田恵子氏) 右の4つに当てはまらなければ、入口がまだ先か、穏やかに通過しているところと考えてよいでしょう。
Q. 右の4つのうち、ひとつだけ当てはまりました。すぐに何かしたほうがいいですか?
A.
一度の様子だけで決めつける必要はありません。見ておきたいのは、その状態が一時的なものか続いているか、そして学校生活に影響が出ているかどうかです。友だちや学校から離れていく様子が続く場合は、担任やスクールカウンセラーに早めに相談してください。サイン10〜12は、気にかけたいサインの表の「→」にある関わりを家庭で意識することから始められます。
Q. 「うざい」「うるさい」と言われるたびに傷つきます。どう受け止めればいいですか?
A.
「うざい」は、脳が引き起こしている感情のひとつだといいます。(脳科学者、中野信子氏) 注意されてふてくされるのも、心を許しているからこそ親に甘えている姿だそうです。(心理学者、諸富祥彦氏) 言葉そのものに反応せず、「そういう時期なんだ」と一歩離れて見守るだけでも、受け止める側の気持ちは少し楽になるはずです。
Q. お父さんとだけ話さなくなりました。これも成長のサインですか?
A.
父親とあまり話さなくなり、避けるようになるのは、専門家の意見をもとに挙げられている反抗期にありがちな言動のひとつです。お父さんから追いかけたり、無理に会話を求めたりせず、子どもが楽しそうにしているときに「それ、おもしろそうだね」と短く関心を向け続けてみてください。距離を保ちながらも、関係を切らさずにいられます。

(参考)
*1 こどもまなびラボ|反抗期を「ありがたい」と考える親の神対応。「うるさいな!」は自立への第一歩です
*2 こどもまなびラボ|思春期と反抗期の違いとは? 「口が悪くなる男の子」「不機嫌になる女の子」の対処法
*3 京都市こころの健康増進センター|思春期のこころを育むためのガイド
*4 こどもまなびラボ|思春期の問題は学童期からはじまっている? 10歳までの親子関係が大事な理由
*5 公立学校共済組合 関東中央病院|反抗期について
*6 こどもまなびラボ|「10歳の反抗期」に親がすべきこと。子どもは親の思いどおりには育たない!
*7 こどもまなびラボ|子どもの反抗的な態度にイライラしてる!? 【“中間反抗期” の時期・特徴・対処法】
*8 こどもまなびラボ|「うちの子だけ?」小4で心が折れやすくなる子どもたち。10歳の壁を飛躍に変える親の接し方
*9 中野信子(2021)|『中野信子のこども脳科学 「イヤな気持ち」をエネルギーに変える!』フレーベル館.
*10 こどもまなびラボ|「10歳の壁」ではなくて「10歳の飛躍」! 親が我が子の10歳をもっと面白がるべき理由