あたまを使う/理科 2026.8.10

雷はなぜ光ってから鳴るの? 子どもと学ぶ「音と光のかけっこ」

雷はなぜ光ってから鳴るの? 子どもと学ぶ「音と光のかけっこ」

遠くでゴロゴロと鳴りはじめると、子どもがすっ飛んできてしがみつく。「大丈夫だよ」と背中をさすりながら、音が遠ざかるのを待つ。夏の夕方、そんな時間を過ごしたことはないでしょうか。

そのあいだ、頭のすみでぼんやり考えていたりします。雷って、どう説明したらいいんだろう。改めて考えてみると、大人でも仕組みをうまく説明できないものです。

じつは、雷を怖がるのは、子どもの心が順調に育っている証拠。そして、雷ほど「親子で科学する」のにぴったりな教材は、なかなかありません。今回は、怖がる子どもと一緒に楽しめる「音と光のかけっこ」のお話です。

雷を怖がるのは、想像力が育っているから

考えてみれば、突然、空が光って、地面が震えるほどの大きな音が鳴るのです。大人だってびくっとしますよね。大きな音や光に「危険かもしれない」と身構えるのは、人間に生まれつき備わった、自分を守るための大切なしくみ。

そして幼児期は、想像力がぐんと伸びる時期でもあります。見えないものを思い描く力が育ったからこそ、「あの音の正体はなんだろう」と想像がふくらみ、怖さも大きくなるのです

⚡ ここがポイント
雷を怖がるお子さんは、感受性と想像力が豊かに育っているということ。抱きついてきたら、まずはぎゅっと抱きしめ返す。「怖いね、びっくりしたね」と気持ちを受けとめてもらえること。それが、子どもにとって何よりの安全基地になります。

親を抱きしめる子ども

「正体を知ること」が、怖さをやわらげる

そのうえで、もうひとつできることがあります。それは、雷の「正体」を一緒に知ることです

心理学の研究では、子どもの怖さは「その対象についてどんな情報を持っているか」に大きく左右されることがわかっています。子どもたちに見慣れない動物についてポジティブな情報を伝えると、怖いという気持ちも、避けようとする行動も、はっきりと減ることが実験で示されました。(イギリス サセックス大学、アンディ・フィールド教授ら)*1

この実験で興味深いのは、情報の力が「気持ち」だけでなく「行動」まで変えたことです。ポジティブな情報をもらった子どもたちは、その動物に近づくことを避けなくなりました。知ることは、子どもの世界をひとまわり広げてくれるのです。

逆に言えば、正体がわからないままだと、怖さは想像のなかでどんどんふくらんでいきます。「雷さまにおへそをとられるよ」と伝えるより、「音と光のかけっこなんだよ」と教えてあげるほうが、子どもの心はずっと軽くなるのです。

また、4 〜 7歳の子どもを対象にした研究では、子どもたちは年齢が上がるにつれて「本当のことを確かめれば怖くなくなる」という対処法を使えるようになっていくことがわかっています。(アメリカ カリフォルニア大学デービス校、クリスティン・ラガトゥータ教授ら)*2 子どもの心は、正体を知る準備を少しずつ整えているのです

リラックスした様子で身を寄せ合い、カメラに向かって笑顔を見せる3人家族

雷は「音と光のかけっこ」

では、子どもにどう説明すればよいのでしょうか。難しい言葉はいりません。ポイントは3つです。

ポイント 1
雷は「雲のなかの静電気」
冬にセーターを脱ぐとき、パチッとなりますよね。あれと同じものが、雲のなかにたまっています。雲のなかでは氷の粒がぶつかり合って、静電気がどんどんたまっていく。たまりきれなくなった電気が、ビカッと飛び出したものが雷です。「お空の大きなパチッなんだよ」で、雷が一気に身近なものになります。
ポイント 2
光と音は、同時に出発している
ピカッという光と、ゴロゴロという音は、じつは雷が落ちた瞬間に同時に生まれています。でも、届くタイミングがずれる。なぜなら、光と音では走る速さが全然違うからです。
ポイント 3
光は速すぎて、音はのんびり
光は1秒で地球を7周半もできる、宇宙一のかけっこ名人。一方、音は1秒に約340メートルしか進めません。だから、光が一瞬でゴールしたあと、音がのんびり追いかけてくるのです。「どっちが先に届くかな」と数えはじめれば、怖い雷が、少しだけ楽しい観察対象に変わります。
ピカッとゴロゴロの間 雷までの距離(めやす)
3秒 約1キロメートル
6秒 約2キロメートル
15秒 約5キロメートル

デジタル音楽イコライザーの波形

そのまま使える「声かけ」リスト

説明が苦手でも大丈夫。場面ごとに、ふだんの会話のトーンのまま口に出せる声かけをまとめました。

こんなとき 声かけ例
怖がって抱きついてきたら 「びっくりしたね。大丈夫、ここにいるよ」
→ 最初は仕組みの話をしない。気持ちの受けとめが先
少し落ち着いてきたら 「あの音ね、セーターを脱ぐときのパチッと同じなんだって。空のなかの、大きいパチッ」
→ 知っている体験につなげると一気に身近になる
ピカッと光ったら 「光った。音が来るまで数えてみようか。いーち、にーい……」
→ 数えている間は、待ち時間が観察の時間に変わる
「なんで音は遅いの?」と聞かれたら 「なんでだろうね。ママも不思議。あとで一緒に調べてみようか」
→ 正解を教えるより、一緒に不思議がるほうが好奇心が育つ
音が遠ざかってきたら 「数える数が長くなってきたね。遠くに行ったみたいだね」
→ 「終わりが来る」とわかると安心につながる

子ども博物館での親子の観察研究では、親と一緒に展示に取り組んだ子どもは、ひとりのときよりも探索が長く、幅広く、的を絞ったものになることが示されています。親が「なぜだろうね」と語りかけることが、子どもの科学的な考え方を支えていたのです。(アメリカ ピッツバーグ大学、ケヴィン・クロウリー教授ら)*3

つまり、雷の会話は、立派な科学の時間なのです

親子が両手でタッチをするシルエット

今度からできる「3秒数えて1キロ」

次に雷が鳴ったら、試してほしいことがひとつだけあります。お子さんを抱っこしたまま、ピカッと光った瞬間から、一緒に「いーち、にーい、さーん……」と数えてみてください。

ゴロゴロが聞こえたら、「3秒だったね。1キロくらい先みたい」とつぶやくだけ。数を重ねるうちに、「さっきより数が増えた。雷、遠くに行ったのかな」と、お子さんが自分で気づく瞬間が来るはずです。

大事なのは、ママが正解を知っている必要はないということです。「なんで音は遅いんだろうね」「不思議だね」と一緒に首をかしげるだけで充分。むしろ、ママが本気で不思議がる姿こそが、子どもの「知りたい」に火をつけます

怖くて抱きついていた腕の力が、いつのまにか「次はいつ光るかな」と待つワクワクに変わっていく。ママの腕のなかという安全な場所で、お子さんは怖さと知りたい気持ちの両方を経験します。怖いものから逃げるのではなく、安心できる場所から観察してみる。この小さな成功体験は、雷以外の「はじめて出会う怖いもの」に向き合うときの、心の土台にもなっていきます。それこそが、科学の入り口です。

⚠ 安全第一で
雷が近い(数える間もなくゴロゴロが来る)ときは、窓から離れて建物のなかで観察を。安全第一で楽しんでくださいね。
⚡ かみなり豆知識
雷の温度は約3万度。太陽の表面(約6千度)より、ずっと熱いのです。ゴロゴロという音は、この熱で空気が一瞬でふくらんで、はじけた音。「雷って太陽より熱いんだって!」は、子どもが幼稚園で友だちに話したくなる、とっておきのネタです。

***
雷を怖がる姿は、感受性が育っている証拠。まずはその怖さを100%受けとめて、それから「音と光のかけっこ」を一緒に楽しんでみてください。ぎゅっと抱きしめる腕のなかで語られた雷のひみつは、きっとお子さんにとって、夏の一番の思い出になるかもしれません。

FAQ(よくある質問)

Q. 雷を極端に怖がります。無理にでも仕組みを教えるべき?

A. 無理は禁物です。まずは抱きしめて気持ちを受けとめることが最優先。落ち着いているとき(晴れた日の絵本タイムなど)に、遊びとして雷の話をしてみるのがおすすめです。

Q. 「雷さまにおへそをとられる」と言うのはよくない?

A. 昔ながらの言い伝えも文化のひとつですが、怖がりやすいお子さんには、正体不明の存在が怖さを増幅させることも。お子さんの様子を見ながら、仕組みの説明と使い分けてあげてください。

Q. 秒数を数える方法は何歳からできますか?

A. 数を数えられるようになる3〜4歳頃から楽しめます。距離の計算は小学生から。幼児期は「光と音のかけっこ」というイメージだけで充分です。

(参考)
*1 Field, A. P., & Lawson, J. (2003)|Fear information and the development of fears during childhood: Effects on implicit fear responses and behavioural avoidance. Behaviour Research and Therapy, 41(11), 1277-1293.
*2 Sayfan, L., & Lagattuta, K. H. (2009)|Scaring the monster away: What children know about managing fears of real and imaginary creatures. Child Development, 80(6), 1756-1774.
*3 Crowley, K., Callanan, M. A., Jipson, J. L., Galco, J., Topping, K., & Shrager, J. (2001)|Shared scientific thinking in everyday parent-child activity. Science Education, 85(6), 712-732.