逆上がりがはじめてできた。新しい漢字を書けるようになった。靴紐が結べるようになった。そんなとき、子どもがぱっとこちらを振り返って「できた!」と目を輝かせる瞬間が、ありますよね。
その顔を見たとたん、こちらまで嬉しくなって、思わず「やったね!」と一緒に手をあげる。あの瞬間の、胸がじんと熱くなる感じ。
あれこそ、子育ての一番のご褒美かもしれません。家事に追われてクタクタな日でも、あの「できた!」の笑顔ひとつで、ふっと報われた気持ちになる。そんな経験、きっとあなたにもあるはずです。
今日は「できた!」を子どもと分かち合える、その喜びそのものを一緒に味わってみたいと思います。あなたが心から「うれしい」と感じていること、その気持ちをぐっと掘り下げてみましょう。
目次
「できた!」の瞬間に、振り返る理由
子どもがなにかをやりとげたとき、すぐにこちらを見るのは、「ねえ、見てくれてた?」という気持ちからです。うれしいことが起きたとき、人はそれをひとりで抱えるより、だれかと分かち合いたくなるもの。大人だって、いいことがあったら家族や友だちに話したくなります。
特に子どもにとって、一番分かち合いたい相手は、大好きなお母さんやお父さんです。
「できたよ!」の視線は、「この喜びを、いっしょに感じてほしい」という心の声です。だからこそ、その視線に「うん、見てたよ!」と応えてあげるだけで、子どもの喜びはぐんとふくらみます。
うまく言おうとしなくて大丈夫。子どものうれしそうな顔を見れば、こちらまで思わず「やったね!」と声が出て、自然に笑顔になる。その、自然とこぼれてしまう声や表情を、そのまま返してあげればいいのです。むしろ、とっさに出るその反応のほうが、どんな気のきいた言葉よりまっすぐに伝わります。

一緒にガッツポーズする、それだけでいい
「できたね!」のあとに、なにか気のきいたことを言わなきゃ、と思う必要はありません。むしろ、一番子どもの心に残るのは、お母さんが自分と同じくらい、いやそれ以上に喜んでくれた、その姿だったりします。
両手をあげて「やったー!」とハイタッチする。ぎゅっと抱きしめる。「見て見て、大きなことが起きたよ!」と、同じテンションでびっくりしてみせる。そんなふうに、喜びをからだ全体で表すと、子どもは「自分のうれしいことは、家族みんなの嬉しいことなんだ」と感じます。
「やったー!」
抱きしめる
びっくり
この「一緒に喜ぶ」という関わりは、子どもの自信の土台になります。成功を、独り占めせずに分かち合えた経験は、心のなかに記憶として残っていくのです。そしてその記憶は、なにかに挑戦するときの、そっと背中を押す力にもなります。
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「結果」より「やってきたこと」に光をあてる
一緒に喜ぶとき、ひとつ知っておきたい小さなコツがあります。それは、「できた」という結果そのものよりも、「ここまでやってきたこと」に目を向けてあげること。
「逆上がり、できたね!毎日、練習してたもんね!」「最後まであきらめなかったね!」など、たどってきた道のりに触れると、子どもは「頑張ればできるようになるんだ」という感覚を、じわじわとつかんでいきます。たとえ今回うまくいかなくても、その努力に目を向けてもらえた子は、また挑戦してみようと思えるのです。
(結果・能力をほめる)
(過程・努力に触れる)
もちろん、まずは「わー、できたね!」と素直に喜び合うのが一番です。そのうえで、ひとこと、その子が積み重ねてきた時間に光をあてる。それだけで、喜びは次への意欲につながっていきます。
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研究でわかっていること
嬉しい出来事を誰かと分かち合うと、その喜びはもとの出来事以上に大きくなることが、心理学の研究で示されています。しかも、相手が心から、いきいきとした反応を返してくれたときほど、その効果は高まり、ふたりの関係がさらに良くなるといいます。(米国 カリフォルニア大学ロサンゼルス校、シェリー・ゲーブル教授ら)*1
子どもの「できた!」によろこんで反応することは、子どもの喜びを何倍にもしながら、親子のきずなも深めてくれるのです。
また、子どもは大好きな人の表情を手がかりにして、世界の受けとめ方を学んでいきます。同じできごとでも、お母さんが嬉しそうにしていれば、子どもも「これは嬉しいことなんだ」と感じとる。生後1歳ごろから見られるこの力は、社会的参照と呼ばれています。(米国 マサチューセッツ大学、ソール・フェインマン氏ら)*2
親が喜ぶ姿そのものが、子どもにとっては大切な学びになっているのです。だから、あなたが見せる笑顔は、けっしてムダになりません。
そして、喜びを伝えるときの言葉も、じつは未来につながっています。「頭がいいね」と能力をほめるより、「がんばったね」と過程をほめられた子のほうが、難しいことにも前向きに取り組み、楽しめることがわかっています。(米国 コロンビア大学、クローディア・ミューラー氏とキャロル・ドゥエック教授)*3 「一緒に喜ぶ+やってきたことに触れる」は、研究の面からも理にかなった関わりなのです。

今日から、できること
難しく考えなくて大丈夫です。子どもが「できた!」とこちらを見たら、まずは同じ顔で笑い返してあげてください。気の効いた言葉も、特別なご褒美だって、毎回、必要ではありません。
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あなたが心からよろこぶ、その姿が、子どもにとっても大きな勇気になります。そして、その笑顔は子どもだけでなく、あなた自身の1日も明るくしてくれるはずです。
FAQ(よくある質問)
Q. 大げさに喜ぶと、ほめすぎになりませんか?
A.心からの喜びを分かち合うことは、ほめすぎにはなりません。気になる場合は、「あたまがいいね」と能力を持ち上げるより、「がんばってたもんね」と過程に触れると、子どもの前向きな気持ちにつながりやすくなります。
Q. うまくできなかったときは、どう声をかければいい?
A.結果が出なくても、そこまでの努力に目を向けてあげてください。「最後までやってみたね」「ここまでがんばったね」と、挑戦したこと自体を一緒に認めると、また次もやってみようという気持ちが育ちます。
(参考)
*1 Gable, S. L., Reis, H. T., Impett, E. A., & Asher, E. R. (2004)|What do you do when things go right? The intrapersonal and interpersonal benefits of sharing positive events. Journal of Personality and Social Psychology, 87(2), 228-245.
*2 Feinman, S., Roberts, D., Hsieh, K. F., et al. (1992)|A critical review of social referencing in infancy. In Social Referencing and the Social Construction of Reality in Infancy (pp. 15-54). Springer.
*3 Mueller, C. M., & Dweck, C. S. (1998)|Praise for intelligence can undermine children’s motivation and performance. Journal of Personality and Social Psychology, 75(1), 33-52.









