教育を考える/親の関わり 2026.6.4

「ちゃんとした子育て」で疲れてない? そんなあなたに知ってほしい3つの話

「ちゃんとした子育て」で疲れてない? そんなあなたに知ってほしい3つの話

子どもの前ではいつもおだやかでいたい、声を荒げたくない、栄養バランスのとれたごはんを出したい、しずかな寝かしつけをしたい――。

そう思って毎日全力で走っている親御さんに、ちょっとだけ余談を。

昭和の時代に、よく「肝っ玉母ちゃん」と呼ばれる存在がいました。床に落ちたおにぎりを「3秒ルール」と言って拾って食べさせ、走り回る子どもたちを一喝しながら、なんだかんだみんな元気に育てていく――そんなイメージです。

時代背景がまったく違うので、いまの子育てと比較するのは無理がありますし、いまそれをやれと言いたいわけでもありません。ただ、そこまで極端なやり方でも、子どもは普通に育ったという事実は、ちょっとした補助線にはなります。

つまり、いま「完璧でありたい」と頑張っている人はダメな親なのではありません。子どもは思っているよりずっと頑丈で、多少のことではどうにもならない。それだけの話です。

今日のお話は、その「実は下ろしていいこと」を、ちょっと覗いてみる、という気軽な内容です。

「失敗しちゃダメ」と思う人ほど、削られていく

そもそも、子育てに「失敗」と呼べるようなものがどれくらいあるか、というところから考えてみます。

子どもは好奇心のかたまりで、油断するとなんでも口に入れます。スリッパくわえる、葉っぱを食べる、ティッシュを丸呑みしようとする。そのたびに大慌てになって、「目を離した私のせいだ」「もしお腹こわしたらどうしよう」「もし喉につまっていたら」と、寝るときまで自分を責めてしまう。

たしかに、ヒヤッとはします。だけど、ほとんどの場合、子どもはケロッとしています。多少のことでは、人間そう簡単にどうにかなりません。本当に気をつけるべきは、命にかかわるごく一部のことだけ。それ以外は、「ヒヤッとした」で済む、ただのアクシデントです。

「失敗してはならない」と思っているとき、私たちは、本当はアクシデントでしかないことまで自分の失点としてカウントしてしまっています。

完璧主義になるのは、子どもが大事だからです。どうでもよかったら、こんなにヒヤッともしないし、後から自分を責めたりもしません。「失敗しちゃダメ」と思えるのは、それだけ真剣に向き合っている証拠でもあります。

ただ、すべてを「失敗」として抱え込んでいたら、エネルギーがいくらあっても足りません。慣れていないものに全集中すれば、誰だって疲れます。

📖 研究でも、こう言われています

「子育てで失敗してはならない」と感じやすい親ほど、日々の疲労感や、子どもとの距離を感じる気持ちが強く出やすい――。日本人の働く親1,200人を対象にした調査で、こうした傾向が示されています(中部大学心理学部の川本大史氏らが2018年に『Frontiers in Psychology』誌で発表した論文より*1)。

目を閉じてこめかみに手を当て、育児に疲れ切った様子の母親と、奥のベビーチェアに座る子ども

「正解探し」で疲れるのも、当然のこと

育児情報って、よく見るとそもそも矛盾しているのです。

「子どもはたくさん遊ばせるべき」と書いてある本のとなりに、「子どもには静かに過ごす時間が必要」と書いてある本がある。「叱るより褒めて伸ばす」という記事の下に、「甘やかしすぎは将来のため」と書いた記事が出てくる。「うちの子はこれで東大に行きました」という体験談の隣に、「うちはこれで不登校から立ち直りました」という体験談が並んでいる。

これらを全部まじめに受け取ろうとしたら、そりゃ破綻します。そもそもそれぞれの主張が矛盾しているし、しかも体験談はサンプル数1。片方を100点にしたら、もう片方は自動的に0点になる構造です。

だから、「正解を探しているのに見つからない」と感じているとしたら、それはあなたの探し方が下手なのではありません。もともと、どこにも置いていないのです。

育児書を10冊読んでも、結局わが家のわが子は世界に一人。最終的には「うちのやり方」を見つけていくしかない、というのは、続けた人だけがたどり着くシンプルな実感です。情報を見限る賢さではなく、矛盾だらけの情報のなかから、自分の家にフィットするやり方を取捨選択していく感覚、と言ったほうが近いかもしれません。

📖 研究でも、こう言われています

「子育てで間違えてはいけない」「期待どおりに育てなければ」というプレッシャーが強い親ほど、日々の疲労感や、親としての達成感の低下が強まる傾向が見られた、というデータがあります(台湾・国立政治大学教育学院のリン・ガオシエン氏らがポーランドの親506人を対象に2025年に『Personality and Individual Differences』誌で発表した論文より*2)。

完璧でいられなかった日のほうが、じつは子どもにとっていい日かもしれない

完璧にこなした日より、「今日はちょっとごめん、無理。これでいいよね」と言えた日のほうが、家の空気は少しゆるみます。家の空気がゆるむと、子どもはのびのびする。のびのびした子どもは、心が安定する

これは、実感としても腑に落ちる話ではないでしょうか。

逆に、子どもの頃を思い出してみてください。

たまにありませんでしたか。お母さんが、なんだか急に教育熱心になった日。育児セミナーか何かで影響を受けてきたのか、急にきちんと向き合おうとしてくる。背筋がピンとして、口調も少しよそゆきになって、ごはんも妙にちゃんとしている。子どもなりに「なんか今日、いつもとちがう」と察して、こっちまで肩がこわばる――。

そういう日、ちょっとやりにくかった記憶、ありませんか。

逆に、ふだんの、にこにこしてゆるっと過ごしていた日のお母さんやお父さんのほうを、私たちは「優しくて楽しかったな」と覚えていたりします。

親側に立つと「ちゃんとしなきゃ」と思う日が、子ども側から見ると「いつもとちがって、ちょっとやりにくい日」になっている。完璧でいようとすればするほど、子どもにとっての”いい日”から遠ざかっていく、というのは、案外そういうことなのかもしれません。

📖 研究でも、こう言われています

「決まったやり方」に固執せず、その日の状況や子どもの様子に合わせて柔らかく対応できる親――研究者たちが「心理的柔軟性が高い」と呼ぶ親のもとで育つ子どもは、内面の不安も、外向きの行動の問題も、ともに少ない傾向が見られた、というデータがあります(北京聯合大学教師学院のジア・ワン氏らが中国の就学前児の親1,060人を対象に2025年に『Child and Adolescent Psychiatry and Mental Health』誌で発表した論文より*3)。

もしかしたら、あなたが「今日もうまくできなかった」と落ち込んでいる夜、お子さんは案外、ふつうに穏やかな気持ちでベッドに入っているかもしれません。

白い背景に、青い線で結ばれた赤・黄・緑・青の点が脳の形を描く「神経ネットワーク」のイメージ図

「これは下ろしていいこと」リスト

ここからは、「これができない日があっても、全然大丈夫」という”べき”を、いくつか並べてみます。毎日そのままにする話ではなく、しんどい日に右側を選んでも何も損なわれない、という意味のリストです。1〜2個でも「あ、これだったら今日くらいいけるかも」と思えるものがあれば十分です。

抱えてしまいがちな”べき” じつは、こうでいい
朝ごはんは栄養バランスのとれた手作りであるべき バナナと牛乳の日があっても、なんの問題もありません
夜は決まった時間にしずかに寝かしつけるべき 30分遅れる日があっても、特に何も起こりません
休日は子どもとちゃんと遊んであげるべき 疲れた日くらいは、同じ空間にいるだけで十分です
子どもの前ではイライラを見せるべきじゃない 機嫌の悪い日があったって、何もおかしいことではありません
お風呂は毎日きちんと入れるべき 1日くらい飛ばしても、特に困ることは起きません
SNSのキラキラ家庭と比べて落ち込んでしまう 向こうも撮っていない9割があります

ひとつでも「これは今日くらいなら」と思えたものがあれば、それを今日の自分にゆるしてあげるだけで十分です。

話し合う親子の画像

最後に、ちょっとだけ

ここまで読んでくださって、ありがとうございました。

なんだか結局、「完璧主義はよくない」みたいな、よく見る話になってしまっていたら、ごめんなさい。

ただ、この記事の意図はそこではないんです。子育ての処方箋を渡したかったわけでもありません。伝えたかったのは、ひとつだけ。世の中にあふれている「いい親」像に、振り回されすぎないでほしいということ。

あなたのお子さんは、あなたのお子さんです。本にもSNSにもママ友の話にも、いろんな「子ども」が出てきますが、それらはあなたのお子さんではありません。性格も、好みも、ペースも、家庭の環境も、ぜんぶ違います。だから、それらを参考にはしても、あなたとあなたのお子さんに100%当てはまることなんて、ないんです。だいたいで大丈夫。

それに、こんな記事を最後まで読んでいる時点で、あなたはきっとすごくちゃんと子どもを大事にしている人です。そういう人のもとで、お子さんはきっと、いい子に育っていきます。すでに育っています。

だから、大丈夫です。
***
今日は手抜きごはんでいい、今日は寝かしつけが30分遅れてもいい、今日はちょっとイライラした自分を責めないでいい。

ほっと息をついて、明日また、あなたのペースで歩いていってください。

FAQ(よくある質問)

「いい親であるべき」を手放すことについて、寄せられがちな疑問にお答えします。

Q1. 「べき」を下ろしたら、子どもがだらけてしまわないか心配です。

A. 大丈夫です。研究が示していたのは、親の “べき” が下がると親自身の心がやわらぎ、その結果、子どもとの関わりがあたたかくなるという循環でした。子どもの態度がゆるむかどうかではなく、家族全体の空気がほどける。だらけではなく、安心が広がる、というイメージです。

Q2. どの”べき”から下ろせばよいか、わかりません。

A. 「これだけは絶対に守らなければ」と感じているもの、つまり、いちばん肩がこっているところから下ろすのがおすすめです。「毎晩9時までに寝かせるべき」「朝ごはんは必ず手づくりであるべき」など、1日のうちで自分の呼吸が浅くなっているところに、ヒントがあります。

Q3. 周りの親はもっときちんとしているように見えて、つい比べてしまいます。

A. 子育てに絶対の正解はなく、家庭ごとに事情も子どももちがいます。研究が見せているのは、「みんなと同じやり方」を目指す親より、「自分の家のやり方」を柔らかく見つけていける親のもとで、子どもがのびていくという事実でした。比べたくなった日は、すこしSNSや情報から距離を置いてみるだけでも、肩の力が抜けます。

 

(参考)
*1: Frontiers in Psychology|Preliminary Validation of Japanese Version of the Parental Burnout Inventory and Its Relationship With Perfectionism(Kawamoto, Furutani & Alimardani, 2018)
*2: Personality and Individual Differences|The interplay between parental perfectionism, emotional intelligence, and parental burnout(Lin, Szczygieł & Blanchard, 2025)
*3: Child and Adolescent Psychiatry and Mental Health|The effect of parental psychological flexibility on children’s behavioral problems: a moderated mediation model(Wang, Liu & Lin, 2025)