「危ないからダメ」「そこに登っちゃダメ」——公園で遊ぶわが子に、気づけばそう声をかけている。
ほんの数分の公園遊びで、「ダメ」を何度言っただろう。子どものためを思って言っているのに、なんだか自分まで疲れてしまう……。そんな経験、ありませんか?
じつは遊びのなかの「危険」には、排除すべきものと、むしろ子どもの成長に必要なものの2種類があります。子どもの遊び環境に関する専門家でTOKYO PLAY代表理事・嶋村仁志氏のインタビューをもとに、「2種類の危険の違い」と親にできることを解説します。
目次
ポイント1. 「リスク」と「ハザード」を区別する
→ 成長に必要な危険と、排除すべき危険を見極める
遊びにおける「危険」は、2つの種類に分けて考えられます。
リスクとは、子ども自身が「ちょっと怖いな」と感じながらも、あえて挑戦しようとする危険のことです。たとえば、少し高い段差を飛び降りる、細い丸太の上を渡る、包丁を使う——。子どもは「失敗したら転ぶかも」「落ちるかも」と、ある程度予測しながら挑戦しています。
このリスクこそが、遊びのおもしろさそのものです。「ちょっと怖いけど挑戦してみる」というドキドキが、子どもを夢中にさせます。
一方、ハザードとは、子どもには予測できない隠れた危険のことです。遊具のボルトが緩んでいて突然外れる、ロープが劣化して切れる、地面に釘が飛び出ている——。こうした危険は、子どもの目には見えません。予測も回避もできないため、重大な事故につながります。
ハザードは遊びの楽しさとは無関係で、子どもの成長にも役立ちません。だからこそ、大人が徹底的に取り除く必要があります。
このように、すべての「危ない」を同列に扱わず、リスクとハザードを区別する目をもちましょう。
🏠 親の役割
- ハザードは徹底除去:遊ぶ場所の安全チェック(遊具の破損、危険物の確認)
- リスクは見守る:子どもが「ちょっと怖い」と感じながら挑戦しているなら、成長のチャンス
ポイント2. 小さな危険を幼いうちに経験させる
→ 大きな事故を防ぐ「危険察知力」が育つ
嶋村仁志氏は、「高さの感覚は5歳までに80%が育つ」と指摘しています。
嶋村氏の子どもは、2歳のときに包丁で手を切りました。「早すぎるのでは?」と思う人もいるでしょう。でも嶋村氏は言います。「2歳なら、2歳の力なりのケガしかしない。これが中高生になって大人同様の力をもってから初めて刃物を使ったとしたら……それこそ危険ではありませんか?」
小さな頃に「小さな危険」を経験していないまま体だけが成長すると、中高生になってから命が危険にさらされるようなことをやってしまうかもしれません。幼いうちに小さなケガを経験しておくことが、大きくなってからの重大な事故を防ぐのです。
TOKYO PLAYが実施したアンケート「10歳までに経験しておきたい危険なこと」では、第1位は「高いところ」。木登りや塀昇り、階段からジャンプといった体験です。それから、「火を使う」こと——アイロンやライター、たき火。また、「刃物を使う」こと——包丁やナイフ、鉛筆を削るといったことがランクインしました。
🏠 家でできること
- 高いところ体験:木登り、階段ジャンプ、塀昇り
- 火を使う:たき火、ライター体験(大人の見守りのもと)
- 刃物を使う:包丁、ナイフ、鉛筆削り
💡 実例
あるプレーパークでケガをした子どもが、親への連絡を嫌がりました。理由を聞くと「僕がやりたいことをやって怪我をしたのに、プレーパークの人に謝らせたくない」と。自分で責任をもつという感覚を、遊びを通じて学んだのです。
ポイント3. 子どもの力を奪う「過度な禁止」をしない
→ 自分で判断する力を育てる
「ジャングルジムは2段目まで」「ブランコの立ちこぎは2年生から」——。いま、子どもを預かる施設では、細かいルールがいくつもあります。
でも、こうした過度な禁止は、子どもが自分で「これは大丈夫」「これは危ない」という境界線を引く力を奪ってしまいます。
その結果、幼い頃から危険を経験せず、恐怖心が育たないまま体だけが成長し、中高生になっても危険がわからず、命に関わる行動をしてしまう——。そんなケースも起きています。
大切なのは、すべての危険を避けることではなく、「排除すべき危険(ハザード)」と「成長に必要な危険(リスク)」を見極めることです。
🏠 見直すポイント
- 家庭の「危ないからダメ」ルールを棚卸し:本当に必要なルールか振り返る
- 子どもと一緒にリスクを考える:「どうしたら安全にできるかな?」と問いかける
- 「ママやって」と言われたら要注意:親の先回りしすぎのサイン
FAQ:よくある質問
Q1. ケガをさせるのが怖いです
A. 小さなケガは大きな事故を防ぐ学びです。擦り傷や軽い打撲を経験しながら、子どもは「痛い」を知り、次からは気をつけるようになります。リスクのある遊びでは、子ども自身が「危ないかも」と身構えているため、大きなケガにはなりにくいのです。
Q2. リスクとハザードの判断が難しいです
A. 判断の基準は「子どもが『危ないかも』と予測できるか?」です。予測できる→リスク、予測できない→ハザード。迷ったときは、子どもの様子をよく観察しましょう。
Q3. 「危険な遊び」はどこまで許すべきですか?
A. 子どもと一緒に考えることが大切です。明らかに発達段階を超えた危険な挑戦をしようとしているなら、「今回はやめよう」と話し合いましょう。大人が一方的に判断するのではなく、「そこは高すぎるね」「もう少し低いところから練習してみよう」と、危険の程度を一緒に考えることです。
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子どもの遊びには、多少の「危ない」が必要です。
ハザードは徹底的に取り除く。でもリスクは、子どもの成長に欠かせないもの。この2つの違いを理解することで、親は安心して子どもの挑戦を見守れるようになります。
「危ないからダメ」ではなく、「どうすれば安全にできるかな」と一緒に考える。そんな関わり方が、子どもの判断力を育て、より大きな危険から身を守る力につながっていきます。
小さなリスクを乗り越えた先にある、子どもの誇らしげな顔。その成長を信じて、見守る勇気をもちましょう。
(参考)
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|大切にしたい遊びの”リスク”。子どものチャレンジを支える遊びのルールとは?
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|危険にも種類がある。挑戦が達成感に変わる「リスク」と「ハザード」はどう違うのか?
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|子どもの工作が”失敗作”でも、親はアドバイスしてはいけない









