教育を考える 2024.10.30

【保育士が明かす】登園しぶり解決法 〜”魔法の言葉”と絶対避けたいNG対応〜

【保育士が明かす】登園しぶり解決法 〜”魔法の言葉”と絶対避けたいNG対応〜

朝の慌ただしい時間。保育園の玄関で「イヤだよ」「行きたくない」と泣くわが子を前に、胸が締め付けられる思いをしているママやパパ。そんなあなたの気持ち、よくわかります。

小さな子どもにとって、大好きなママやパパと離れて過ごすのは、とても勇気のいることです。入園したばかりの慣れない時期はもちろん、成長の過程で誰もが通るイヤイヤ期など、さまざまなタイミングで登園を嫌がることは自然なこと。それは、お子さまが健やかに成長している証でもあるのです。

でも、急がなければいけない朝に限って、こんな状況になってしまいますよね。「このままでは仕事に遅刻してしまう」「ほかの子は泣かないのに」と焦る気持ちもわかります。ただ、今日はちょっと立ち止まって、お子さまの気持ちに寄り添ってみませんか?

今回は、登園しぶりの理由や対応方法について、一緒に考えていきましょう。完璧な解決策はないかもしれません。でも、あなたとお子さまに合った、無理のない方法が必ず見つかるはずです。

「ママがいいー!」泣き叫ぶ、子どもの登園しぶり

登園しぶりとは、通っている保育園や幼稚園に子どもが行きたがらない様子のことです。行きたくない気持ちからママにしがみついて離れなかったり、泣き叫びながら家に帰りたがったり……。また、気持ちをうまく伝えられず、保育士やパパを叩いて暴れる子どもも少なくありません。

登園しぶりは、新しい環境に戸惑いがちな入園当初や、登園が久しぶりとなる長期休み明けに多く見られます。そのほか、イヤイヤ期などのタイミングで感情が爆発してしまい、登園しぶりになってしまう子も……。

0歳児はただ泣くばかりですが、1歳児は逃げだそうと体全体で嫌がり、2歳児にもなれば言葉で行きたくない気持ちを表現するようになります。そして子どもの年齢が上がるほど、体も大きくなり力も強くなるので、パパやママは本当に大変なのです。

なお、登園しぶりは特別なことではありません。大人が不意に「今日は仕事行きたくないな……」と思う気持ちと同じだと考えれば共感できるのではないでしょうか?

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登園しぶり、なぜ起こる? 原因は〇〇だった

登園しぶりの原因は、子どもによって違いがあります。ここからは、よくある登園しぶりの原因をご紹介していきます。

原因1:ママやパパといっしょにいたい

最も多いのが「ママやパパと離れたくない」という寂しさからくるものです。必ずお迎えにきてくれることや、保育園でも楽しく過ごせることがわかれば、徐々に解決してくるでしょう。幼児期になっても寂しさから登園を嫌がる場合は、母子分離不安の可能性も。家庭だけでなく、保育園と連携した対応が求められます。

原因2:入園したばかりで環境に慣れていない

入園したばかりは、慣れない場所で不安がいっぱいです。そのため「ここにいるのが怖い」などの恐怖心から、登園しぶりが起こります。ある意味、想像力が豊かであるとも言えるでしょう。なお、入園当初に自分の置かれた状況を把握できず、数週間経ってから泣く子どもも少なくありません。保育士と信頼関係ができれば、少しずつ改善すると考えられます。

原因3:家庭環境に変化があった

家庭環境になにか変化があったときは、情緒が不安定となり登園しぶりが見られる可能性があります。しかもこの場合、子ども本人も「なぜ登園したくないのか?」が理解できていません。ですから、引っ越しやきょうだいの誕生など、なにか思い当たることがないか思い起こしてみましょう。心が安定するまで見守る必要があるため、登園しぶりが長引いてしまう可能性があるといえるでしょう。

原因4:保育園で過ごす時間が楽しくない

単純に、以下のような理由から保育園での生活に嫌悪感を抱き、登園を嫌がることも多くあります。

  • 参加したくない苦手な活動がある
  • 大きな行事が近づきプレッシャーを感じている
  • 自分の好きな遊びを楽しむ時間がない
  • お友だちに叩かれたり噛まれたりする
  • 厳しく叱る保育士のことを苦手と感じている

 
保育園で起きたイヤな出来事が、登園しぶりのきっかけになることも。このような理由で起こる登園しぶりは、原因がハッキリしているため対応しやすいとも言えるでしょう。

原因5:体調がすぐれない

体調がいつもと違うと感じ、登園をしぶるケースもあります。子どもは自分の症状をうまく言葉で伝えられないため、発熱などがないかぎり、親が子どもの体調の変化に気づかないことも。緊張や疲れで体に異変を感じていたり、長期休み明けに生活リズムが崩れていたりと、病気と言うほどではないけれど、「なんとなく体調が悪い……」という場合があるのです。

寝転がって泣き叫ぶ男の子

登園しぶりへの対処法は? じつはNGだった「あの行動」

仕事に遅刻しそうなとき、登園しぶりがあると本当に大変ですよね。子どもの不安や葛藤に寄り添ってあげたいと思っても、朝の忙しさで余裕がなくなってしまう人も多いはず。そこでここからは、すぐに取り入れられる対処法を解説していきます。

■登園しぶりがある子どもの送り出し

登園しぶりの理由や子どもの性格によって対応は異なりますが、基本はイライラせず時間が許す限り子どもの気持ちに寄り添うことが大切です。なるべくスムーズに登園できるよう、家庭から登園までの子どもとの接し方をまとめてみました。以下の流れのなかで、できることがあれば取り入れてみてくださいね。

登園しぶり「送り出しのコツ」
  • 子どもに疲れや緊張、病気などがないか確認する
  • ぎゅ~っと抱きしめて安心感を与える
  • 好きなキャラクターの服や靴を身につける
  • お気に入りのおもちゃやタオルケットなどを持参する
  • 登園カードを自分でタッチするなど特別感を与える
  • 行きたくない気持ちに共感する
  • 公園に行くなどお迎え後の予定を約束する
  • 別れの儀式を決めて切り替えられるよう促す
  • 諦めがつくよう笑顔で潔く離れる
  • 保育園での楽しかった出来事を思い出せるように関わる

 
子どもは親の表情をよく観察しています。そのため「保育園に預けるなんてかわいそう」「こんなに泣いているし休ませようかな」などと親が考えてしまうと、子どもはその気持ちを察知してしまいます。保育園は安心できる場所であると伝えるためにも、登園しぶりにはあっけらかんと笑顔で対応することが大切です。

また、家を出る前にイヤイヤのスイッチが入ってしまうと、そのまま流れるように登園を拒否されることがあります。そのため、もしものときは「パジャマで行きたい」「長靴を履きたい」などの子どもの要望に応える姿勢も必要です。服や運動靴など、必要なものはすべて持参して保育士へ預けましょう!

カラフルな女の子用の長靴

■これだけは避けたい……登園しぶりのNG対応

逆に、親御さんにしてほしくないNG対応は「嘘をつくこと」です。以下のような嘘をついて保育園に連れて行くようなことがあると、登園しぶりが長引いたり、親子の信頼関係が崩れてしまったりする恐れがあります。

登園しぶり「NG対応」
  • 今日は保育園じゃなくて買い物に行くよ
  • 保育園に行かないなら注射に連れて行くよ
  • 今日は保育園をちょっと見に行くだけだから
  • 今日は給食より前に、早くお迎えに行くね
  • お迎えのあとにおもちゃ買ってあげるから

 
休めるものなら休ませてあげたいと思うのが親心。しかし、仕事は仕事。「無理に登園させるのはよくない」とわかっていても、簡単に休ませてあげられないのが現実です。とはいえ、焦りから嘘をつくことはおすすめできません。

仕事に遅刻しそうでどうしようもないときは「保育園に行くよ」と事実だけ伝え、とりあえず玄関まで連れて行って保育士に任せてしまうのが得策です。そのためには、保育士との連携が欠かせません。

グッドポーズをとる女性保育士2人

■保育士と連携して登園しぶりを見守ろう

登園しぶりを家庭だけで対応するのは、とても大変です。保育園での過ごし方が原因になっていることもあるため、なるべく連携して見守れるようにしましょう。とはいえ、すべての責任を保育園に押しつけるのはNG。あくまでも相談ベースで、家庭から送り出しまでで困っている状況を伝えましょう。

なかには、登園しぶりは一瞬だけでママやパパが見えなくなった瞬間に「せんせ~!」「あそぶ~!」と、切り替えている子どもも……! 一種の儀式のようにとりあえず泣いて別れるという子どももいます。保育士と連携することで知ることができる姿もあるため、ぜひ保育士に「わが子の本当の姿」を確認してみてくださいね。

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いつ落ち着くか、そしていつ始まるかわからない登園しぶり。理由はそれぞれ異なるため、まずはその原因を知り、共感することが大切です。また、保育園での活動内容やお迎えの目安を伝えると、見通しが立って不安が減少するかもしれません。さまざまな対応を試し、子どもが安心して楽しく保育園生活を送れるようにしたいですね。

【ライタープロフィール】
山本あやか(やまもと・あやか)
児童学科で4年間学び、保育士資格や幼稚園教諭一種免許を取得。保育士として約10年勤務。現在、小学生2人を育てながら「働きながら子育てする大変さ」と対峙中。ワーキングマザーが安心して子どもを預けられるよう、さまざまな情報を発信します。