2022.4.21

「人に頼る力・甘える力・助けてもらう力」の高い子が、 “なんでも自分でできる子” よりも強いワケ

編集部
「人に頼る力・甘える力・助けてもらう力」の高い子が、 “なんでも自分でできる子” よりも強いワケ

(この記事はアフィリエイトを含みます)

「〇〇君は自分でなんでもできるのに、うちの子は先生に頼ってばかり」「お友だちに手伝ってもらうことが多いみたい」と、悩んでいる親御さんは少なくないでしょう。

もしかしたら、「自分のことは自分でできる子」「人に迷惑をかけない子」に育ってほしいと考えていませんか。でも、じつは「人に頼ること」も立派なスキル。しかも、これからは「頼る力」が生きていくうえでの必須スキルとも言われているのです。

今回は、「人に頼る力」「頼る力の育て方」について考えてみましょう。

日本人は人に頼ることが苦手?

日本人は一般的に、人に頼ることが苦手なようです。医師・公衆衛生学修士である吉田穂波氏は、この理由を著書『「頼る」スキルの磨き方』のなかで、「人に頼ることは “相手に対して申し訳ないこと” で、なるべく避けるべきだと考える人が多い」からではないかと分析しています。

また、日本の社会傾向として、「悪いことが起きても自己責任」といった自己責任論が多いことも原因のひとつなのだそう。助けてほしい状況にあっても、「問題が起きたのは、あなたの責任でしょう?」と思われてしまうのではないか……と、他者に頼ることを躊躇してしまうのです。

しかし吉田氏は、今後はもっと多様性を重視する社会になっていくため、「誰もが困っていることを打ち明けやすい環境」にしていかなければいけないと強調しています。そしてこれからは、人に頼るスキルが「社会人にとって最も必要な能力のひとつ」となっていくようです。

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「人に迷惑をかけない子」に育てようとする親が多い

なぜ日本人は人に頼ることが苦手なのか。教育評論家の親野智可等氏は、「自分のことは自分で。人に頼るな。甘えるな」と、親が子どもに言いすぎているからだと述べています。

では、「自分のことは自分で。人に頼るな。甘えるな」と親が言い続けた結果、子どもはどんな大人に成長するのでしょう? 親野氏は、子育てや家事をひとりで抱え込んでしまってうつ病になったり、職場で度を超えた仕事量をこなすうちに過労死してしまったりといった事例に結びつく可能性があるとしています。

そういう人たちが「自分1人ではもう無理。助けて」と言えないのは、なぜでしょうか? それは、子どもの頃からの刷り込みによって、「自分の仕事は自分でやらなければ。人に迷惑をかけてはいけない。人にやってもらってはいけない」という気持ちが強いからだと考えられます。

(引用元:東洋経済オンライン|「自分のことは自分で!」子どもに実は逆効果な訳

長い人生、人に迷惑をかけずに自分だけの力で生きていくなんて不可能でしょう。親野氏の言うように、生きていくためには「人に頼る・甘える・助けてもらう」といった能力が必要なのです。

幼児教育の専門家である立石美津子氏も、「人に迷惑をかけてはいけない」「誰かに頼ってはいけない」と、親からインプットされすぎた子どもは、トラブルをひとりで抱え込んでしまうと述べています。

そのような子は、たとえば学校でいじめにあったときでも、「いじめを受けている自分をさらけ出すのは、恥ずかしいことだ」「親を落胆させてはならない」「心配をかけてはならない」という偏った思考になってしまい、親に相談することをためらってしまうのだそう。

そうならないよう、子どもには「人に頼ってもいい」ということを教えなければいけないと、親野氏は言います。「困っているときは誰かに頼ってOK」「相手に迷惑をかけていると思わなくてもいい」と、親が子どもに伝え続けることが大切なのです。

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子どもが「頼る力」を手に入れるために親ができること

とはいえ、自分が困っているときの「助けを求めるためのノウハウ」や「上手な助けられ方」などを教えてもらったことがある親御さんは、そう多くないはずです。「人に頼ってもいい」「迷惑をかけているなんて思わなくてもいい」と言葉で伝えること以外にも、子どもの「頼る力」をつけるために親ができることがあります。専門家のアドバイスをまとめました。

「困っている人を助けよう」と子どもに伝える

「迷惑をかけるな」という “呪いの言葉” を言われた子どもは、失敗を恐れてチャレンジができなくなり、自己肯定感も下がってしまうと、心理学を取り入れた個別指導塾「坪田塾」塾長の坪田信貴氏は話します。「迷惑をかけるな」ではなく、「迷惑をかけるのはお互いさまだから、困っている人がいたら助けよう」という言葉を積極的に伝えましょう。

また、誰かを助けてあげたときに人は「自分が役に立ててよかった」「頼られると嬉しい」と思うはず。前出の吉田氏は、 “頼ったり頼られたりしながら人は生きている” と子どもに教えることが大切だとしています。

子どもに「自分でできるでしょ!」と言わない

着替えや食事など、子どもは成長とともに自分でできることが増えてきますが、「ママやって」と甘えてくる日もありますよね。そんなとき、「自分でできるでしょ!」と突き放すと、逆に子どもの自立が遅くなると言うのは、保育・子育てアドバイザーの上野里江氏。

上野氏は、子どもが「ママやって」と甘えてきたら、笑顔で手伝ってあげてほしいと話しています。親が子どもの甘えを満たすことで、「困ったときに人に助けを求められる」「人の力を借りることができる」といった、 “本当の意味で自立した子ども” に育つのだそうです。

子どもに「お手伝い」をお願いする

子どもにお手伝いを頼むと、子どもの頼る力が育ちます。臨床心理学者の黒沢幸子氏は、「いま、〇〇ができなくて困っているの。〇〇を手伝ってもらえたら、すごく助かるわ」など、子どもにお手伝いをお願いするのがよいと話します。

その際は、「子どものできる範囲のお手伝い」を「具体的に伝える」ようにしましょう。また、そのつど「ありがとう!」「助かったよ」と伝えることも重要です。家庭内で助けたり助けられたりする経験を重ねると、子どもは「助け合うって気持ちがいいことなのだ」と理解できます。すると、家庭外でも上手に人に頼れるようになるのです。

「頼むときの心構え」を教える

じつは、6児の母でもある吉田氏。第一子の子育て中は、「頼る力」の必要性を強く感じつつも、実際にはなかなか人に頼れなかったと話します。しかし、公衆衛生学、コーチング理論、脳神経科学などの科学的な切り口で整理したところ、「誰かに頼ることは、自分と相手の自己肯定感を高める」という結論が出たとのこと。

吉田氏は、『受援力ノススメ』(内閣府資料)のなかで、「誰かになにかを頼むときの心構え」として以下を挙げています。

  • 頼むことは、相手への信頼、承認、尊敬だととらえる
  • 頼む代わりに自分ができる仕事を引き受ける
  • こちらから先に頼むと、相手もこちらに頼みやすくなる
  • 感謝やねぎらい、助かっていることを伝える

 
吉田氏のアドバイスを、お子さまの年齢に合わせて、わかりやすい言葉で説明してあげてくださいね。

***
ケーブルテレビ事業を展開するJCOM株式会社が2019年に行なった調査では、「気軽に頼ることができる世のなかになったらいいなと思う」と回答した人が7割近くいたようです。親世代は特に、頼りたいけど頼れない……と感じている人が多いのかもしれません。子どもだけでなく親自身も、「困っているときは誰かに頼っていいのだ!」と、頼ることに対する罪悪感を払拭していきたいものですね。

(参考)
吉田穂波(2022),『「頼る」スキルの磨き方』, KADOKAWA.
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