あたまを使う 2026.7.23

「なんでカブトムシは夜に動くの?」に答えられなくて大丈夫。親子で「一緒に調べる」最高の夏休み

「なんでカブトムシは夜に動くの?」に答えられなくて大丈夫。親子で「一緒に調べる」最高の夏休み

夏の夜、玄関の明かりの下やコンビニの駐車場で、カブトムシを見つけたことはありませんか。昼間はあんなに探しても見つからなかったのに、暗くなったとたん、ひょっこり姿を見せる。うれしそうにかけよる子どもが、ふと顔をあげて聞いてきます。「ねえ、なんでカブトムシって夜に動くの?」

とっさに答えられなくて、ちょっと気まずい。そんな経験、きっとあなただけではありません。

でも、ここでお伝えしたいことがあります。その質問に、すらすら答えられなくてまったく問題ないのです。むしろ「分からないね、なんでだろうね」と一緒に首をかしげる時間こそ、子どもの興味の芽を一番大きく育ててくれます

カブトムシが夜に動くのには、理由がある

とはいえ、少し知っておくと親子の会話がぐっと弾むのも事実です。カブトムシが夜に動くのには、大きく4つの理由があります

夜に動く理由 どういうこと?
① 夜行性だから もともと夜に活動する生き物。昼間は木のかげや土の近くでじっと休んでいます
② 乾燥を避けるため 体が小さく水分を失いやすいので、気温が下がって湿度の上がる夜に動きます
③ 天敵を避けるため 昼間に活発な鳥に見つかりにくく、生き残る可能性が高まります
④ エサや仲間を探すため 樹液を探したり、相手を見つけたりするために、夜のあいだに移動します

そして、多くのママが不思議に思うのが「なぜ街灯や玄関灯に集まるの?」という点です。じつはここには、最近分かったばかりの意外な答えがあります

昔は「カブトムシは光を目印にして飛んでいる」と説明されてきました。ところが最新の研究で、それは少し違うことが分かってきたのです。飛んでいる昆虫は、光そのものに向かっているのではなく、明るいほうへ背中を向けようとする性質をもっています。(インペリアル・カレッジ・ロンドン、昆虫学者のサミュエル・ファビアン氏)*1

本来この性質は、夜空の明るさをたよりに体の傾きを保つためのもの。ところが人工の強い光が地上にあると、その明かりに背中を向けようとして、まるで街灯に吸い寄せられるように、ぐるぐると飛んでしまうのです。

つまり、玄関に来たカブトムシは、光が好きで来たわけではなく、道に迷ってしまった結果なのかもしれません。「電気が好きなんじゃなくて、間違えちゃったんだね」と話すと、子どもは少し驚いた顔をします。ふだん見ている当たり前の景色に、じつは知らない仕組みが隠れていた。その発見は、子どもの世界をぐっと広げてくれます。

🔬 研究で分かっていること

高速度カメラで飛ぶ昆虫を撮影した研究では、昆虫は光に「向かっている」のではなく、明るいほうへ背中を向ける習性のせいで人工の光に「捕まって」ぐるぐる飛んでしまうことが示されました。街灯に集まるのは、方向感覚が乱された結果だったのです。(インペリアル・カレッジ・ロンドン、昆虫学者のサミュエル・ファビアン氏)

ライトアップされた夜の公園

「一緒に調べる」が、最高の教育になる理由

ここで、少しだけ研究の話をさせてください。

科学館で親子が展示を使う様子を観察した研究では、子どもの日常的な科学的思考の多くが、親子のやりとりのなかで生まれていることが示されています。(ピッツバーグ大学、ケビン・クロウリー教授)*2

特別な教室や実験でなくても、玄関先でカブトムシを眺めながらの会話が、じつな理科の学びの場になっているのです。夏休みの自由研究やドリルだけが勉強ではありません。むしろ、子どもが心を動かしたその瞬間の会話こそ、一番記憶に残る学びになります。

さらに心強い研究もあります。人が強い好奇心を感じている瞬間は、脳の記憶に関わる部分がより活発にはたらき、そのとき出会った情報が記憶に残りやすくなることが分かっています。(カリフォルニア大学デービス校、神経科学者のマティアス・グルーバー氏)*3

「なんで夜に動くんだろう?」と子ども自身がワクワクしている瞬間は、まさに学びが深く根づくゴールデンタイム。答えを先に教えるよりも、その「知りたい」の熱が高まるのを待つほうが、ずっと記憶に残るというわけです。

🔬 研究で分かっていること

子どもの科学的な思考は、親子の何気ない会話のなかで育まれます(ピッツバーグ大学、ケビン・クロウリー教授)。さらに、強い好奇心を感じているときほど記憶が定着しやすいことも分かっています。子どもが「知りたい!」と感じている、その熱こそが最高の教材なのです(カリフォルニア大学デービス校、神経科学者のマティアス・グルーバー氏)。

子どものほめ方01

答えを教えるより、「なんでだと思う?」と聞き返す

では、具体的にどう声をかければいいのでしょう。おすすめは、答えを探すかわりに、まず聞き返してみることです。「ほんとだ、昼間は動かないのは、なんでだと思う?」そう返すと、子どもは自分なりに考えをめぐらせます。

「暑いのが嫌いなのかな」「鳥に食べられちゃうから?」その予想のひとつひとつが、立派な仮説です。合っていても、間違っていても、まったく問題ありません。予想して、確かめて、また考える。この流れそのものが、じつは理科の実験と同じ形をしているのです。

答えを教えることが悪いわけではありません。ただ、教わった答えよりも、自分の頭でたどりついた発見のほうが、子どもの記憶にはずっと深く残ります。だから、答えを急がなくて大丈夫。「一緒に調べよう」のひとことが、子どもの好奇心に一番の興味を与えてくれます。

***
今年の夏、もし玄関先やお出かけ先でカブトムシに出会ったら、無理に正解を教えようとしなくて大丈夫です。「なんで夜に動くのかな」「電気に集まるの、不思議だね」と、子どもの隣で一緒に首をかしげてみてください。そのあとで図鑑で調べてみたり、次の夜もそっと観察してみたり。その小さな時間の積み重ねが、子どもの興味の芽を、自然に伸ばしてくれます。

FAQ(よくある質問)

Q. カブトムシは何時ごろが一番活発ですか?

A. 日が沈んで気温が下がる夜が中心です。夜8時から10時ごろにかけて動きが活発になりやすいので、暗くなってからの観察がおすすめです。

Q. 玄関に来たカブトムシは、飼ってもいいの?

A. 飼うか逃がすかを子どもと相談すること自体が、生き物への向き合い方を学ぶ機会になります。飼う場合は霧吹きで湿り気を保ち、昆虫ゼリーをあげると元気にすごせます。

Q. 「なんで?」に答えられないと、理科が苦手な子になりませんか?

A. むしろ逆です。親が一緒に不思議がる姿勢そのものが、子どもの好奇心を育てます。答えの正確さより、「知りたい」を大切にすることのほうが、ずっと学びにつながります。

(参考)
*1 Fabian, S. T., Sondhi, Y., Allen, P. E., Theobald, J. C., & Lin, H. (2024)|Why flying insects gather at artificial light. Nature Communications, 15(1), 689.
*2 Crowley, K., Callanan, M. A., Tenenbaum, H. R., & Allen, E. (2001)|Parents explain more often to boys than to girls during shared scientific thinking. Psychological Science, 12(3), 258-261.
*3 Gruber, M. J., Gelman, B. D., & Ranganath, C. (2014)|States of curiosity modulate hippocampus-dependent learning via the dopaminergic circuit. Neuron, 84(2), 486-496.