教育を考える 2026.7.18

そもそもワールドカップって、いつからあるの? 親子で楽しむ、90年を超える歴史の話

そもそもワールドカップって、いつからあるの? 親子で楽しむ、90年を超える歴史の話

いま、世界中がひとつのボールを追いかけています。テレビをつければ、見たことのない国旗が並び、聞いたことのない国名が飛び交う。子どもがその画面をじっと見つめて、ふいにこう聞いてきたことはありませんか。「ワールドカップって、いつからやってるの?」

とっさに、うまく答えられなかった。そんな方も多いのではないでしょうか。じつはワールドカップには、90年をこえる長い歴史があります。最初の大会がどんなものだったのか、なぜ4年に一度なのか、日本はいつから出ているのか。知ってみると、大人でも「へえ!」と声が出るような物語がたくさん詰まっています。

今回は、そんなワールドカップの歴史を、親子で楽しめるエピソードとしてご紹介します。子どもの「いつから」「なんで」という問いが、親子の会話を広げるきっかけになる。そんな時間の入り口になればうれしいです。

一番最初の大会は、90年以上前

ワールドカップが初めて開かれたのは、1930年のことです。いまから90年以上も前、日本ではまだ昭和が始まったばかりのころの話です。

記念すべき第1回大会の開催地は、南アメリカのウルグアイでした。この年、ウルグアイは国ができて100年というおめでたい節目を迎えていて、しかもサッカーがとても強い国だったことから、最初の舞台に選ばれたのです。

ただ、この第1回大会には、いまでは考えられないような苦労がありました。当時はまだ飛行機で気軽に移動できる時代ではなく、ヨーロッパの国々がウルグアイまで行くには、船で3週間ほどもかかったのです。あまりの遠さに、多くのヨーロッパの国が参加をためらい、最終的に集まったのは13の国だけでした。今大会が48の国と地域であることを考えると、ずいぶんこぢんまりとした始まりだったことがわかります。

そんな第1回大会で優勝したのは、開催国のウルグアイ。地元のたくさんの声援を受けて、初代王者に輝きました。小さな国から始まった小さな大会が、90年をこえて世界中が見守る大舞台に育っていった。そう考えると、歴史のつながりを感じます。

🏆 サッカー豆知識|FIFAって、なに?

ワールドカップを主催しているのは、「FIFA(フィファ)」という団体です。日本語では「国際サッカー連盟」といい、世界のサッカーをまとめる役割を担っています。1904年にヨーロッパの7か国でつくられ、本部はスイスにあります。いまでは211もの国と地域が加わっていて、これは国際連合に加盟する国の数よりも多いのです。世界には、サッカーでつながる大きな輪がある、ということですね。

太陽の光を浴びながら、サッカーコートの白線に足を踏み出すスパイクを履いた選手の足元のアップ

優勝カップには、不思議な物語がある

ワールドカップといえば、優勝したチームがかかげる金色のトロフィー。じつはこのカップにも、子どもが聞いたら目を丸くするような、おどろきの物語があります。

一番最初のトロフィーは、「ジュール・リメ杯」と名づけられていました。ところが、このカップは何度も盗まれるという、数奇な運命をたどります。1966年には展示中に盗まれてしまいましたが、見つけ出したのは「ピクルス」という名前の犬でした。道ばたのしげみに落ちていたカップを、この犬が発見したのです。世界中が犬のお手がらに拍手を送りました。

その後、3回優勝した国がカップをそのままもらえるという決まりがあり、ブラジルが最初にこの権利を手にします。ところが、そのカップは1983年にまたしても盗まれ、いまも見つかっていません。まるで物語のようですが、これはすべて本当にあった話です。

そして、いま使われているトロフィーは、じつは優勝した国も持ち帰ることができません。優勝チームが掲げているのは本物ですが、大会が終わると返すことになっていて、かわりに同じ形のレプリカが記念として贈られるのです。「せっかく勝ったのに持って帰れないの?」と、子どもが驚くポイントかもしれません。

試合中のスタジアムで両手を挙げて歓声を上げる観客たちのシルエット

日本が初めて出たのは、意外と最近

「日本って、昔からワールドカップに出てるの?」。そう聞かれたら、どう答えるでしょうか。じつは日本代表が初めてワールドカップに出場したのは、1998年のフランス大会。いまから30年もたっていない、意外と最近のことなのです。

そこに辿りつくまでの道のりは、決して平たんではありませんでした。日本は長いあいだ、あと一歩のところで出場を逃しつづけていました。初出場を決めたのは、1997年にマレーシアのジョホールバルでおこなわれた、イラン代表との大事な一戦。試合終了まぎわに決勝ゴールが生まれ、日本は悲願の初出場を勝ち取ります。この試合は「ジョホールバルの歓喜」と呼ばれ、いまも語りつがれる名場面になりました。

そして、この1998年大会からは、8大会続けて出場をはたしています。「昔は出られなかったけれど、いまは当たり前のように出ている」。その変化の物語もまた、子どもと話してみたいところです

⚽ サッカー豆知識|「神の手」って、なに?

サッカーの歴史には、「神の手」という有名な言葉があります。1986年の大会で、アルゼンチンのマラドーナという選手が、手でボールをゴールに入れてしまいました。本当はルール違反ですが、審判が気づかず、得点が認められてしまったのです。試合後、マラドーナがこれを「神の手のおかげ」と言ったことから、この名がつきました。ちなみに同じ試合で、彼は5人をかわす伝説のゴールも決めています。

晴れた日の芝生の上で、楽しそうにサッカーボールを追いかけて走るユニフォーム姿の子どもたち

「いつから?」「なんで?」を、親子で楽しもう

さて、ここまで読んで、「子どもにうまく説明できるかな」と身がまえた方もいるかもしれません。でも、どうか安心してください。大切なのは、正しく完ぺきに教えることではないからです。

そもそも、子どもが投げかける「なんで?」「いつから?」という問いには、とても大きな意味があります

🔬 研究より

子どもの質問は、知識の足りないところを自分で見つけて、必要な情報を取りこもうとする、かしこい仕組みだと考えられています。3歳から5歳の子どもがする質問の、じつに4分の1ほどが「なぜ?」という理由をたずねるものだ、という報告もあります。(アメリカ カリフォルニア大学マーセド校、ミシェル・シュイナード氏)*1

つまり子どもは、ただの気まぐれで聞いているのではなく、本気で世界を知ろうとしている。その姿を、まずは嬉しく受け止めてあげたいところです。そして、歴史の話は、そんな子どもの心に特別よく響きます。

🔬 研究より

幼い子どもは、時間を「過去」と「現在」という2つの大きなくくりで捉えることがわかっています。そして5歳から6歳ごろになると、この違いを、少しずつ感じ取れるようになっていきます。このとき、大人が語って聞かせる物語こそが、子どもの歴史への興味を一番引き出すのです。(ノルウェー ノルウェー科学技術大学、イングヴェ・スカイヴェラン氏)*2

「日本が初めて出たのは、パパが子どものころだよ」。そんなふうに話してあげるだけで、子どもの目はきっと輝きます。難しい年号を覚えさせる必要はありません。「過去」と「現在」の感覚が伝われば、それで充分なのです。

🔬 研究より

正しく教えなきゃ、とがんばらなくて大丈夫。子どもが「なんで?」と聞いてきたら、「いい質問だね、一緒に調べてみようか」と、地図やスマホをのぞいてみる。じつは、こうして親子で同じものに目を向け、言葉をかわす時間そのものが、子どもの学びを支えることも研究から示されています。(オーストラリア テルスラ研究所、ブラッド・ファラント氏ら)*3

聞いた話を、子どもが自分の言葉で誰かに伝えたくなる。そんな姿が見られたら、それは立派な学びの証です。90年をこえるワールドカップの物語が、親子の会話をふくらませる、たのしいきっかけになりますように。
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出場している国のことをもっと知りたくなったら、その国のくらしや文化をのぞいてみるのも楽しいものです。

FAQ(よくある質問)

Q. ワールドカップは、いつから始まったのですか?

A. 第1回大会は1930年、南アメリカのウルグアイで開かれました。いまから90年以上前のことです。当時の参加国はわずか13か国で、開催国のウルグアイが初代王者に輝きました。以来4年に一度開かれ、今大会は48の国と地域が参加する大きな大会に育っています。

Q. 日本代表は、いつからワールドカップに出ているのですか?

A. 初出場は1998年のフランス大会で、意外と最近のことです。1997年の「ジョホールバルの歓喜」と呼ばれるイラン戦での勝利で、初めての出場を決めました。日本が挑戦を始めてから初出場まで43年かかり、その後は8大会連続で出場しています。

Q. 子どもに歴史を話しても、まだ理解できないのでは?

A. 完璧に理解できなくても、まったく問題ありません。幼い子どもは「むかし」と「いま」という大きなくくりで時間を捉え、5〜6歳ごろから少しずつ「ずっとむかし」と「ちょっとまえ」の違いがわかってきます。年号を覚えさせるより、「うんとむかしの話だよ」と物語として聞かせてあげることが、一番の入り口になります。

(参考)
*1 Chouinard, M. M. (2007)|Children’s questions: A mechanism for cognitive development. Monographs of the Society for Research in Child Development, 72(1), 1-129.
*2 Skjæveland, Y. (2017)|Learning history in early childhood: Teaching methods and children’s understanding. Contemporary Issues in Early Childhood, 18(1), 8-22.
*3 Farrant, B. M., & Zubrick, S. R. (2011)|Early vocabulary development: The importance of joint attention and parent-child book reading. First Language, 32(3), 343-364.