2020.10.29

エリクソンの発達段階説とは? 8つの段階まとめ

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エリクソンの発達段階説とは? 8つの段階まとめ

教育について調べているとき、「エリクソンの発達段階説(ライフサイクル論)」を目にしたことはありませんか? エリクソンの発達段階説では、人の生涯が8つの段階に分けられています。それぞれの段階で「発達課題(development task)」もしくは「心理社会的危機(psychosocial crisis)」に直面し、それをクリアしていくことで、人間は精神的に成長する……という内容です。

エリクソンの発達段階説は、子どもへの接し方に悩む親に判断の軸を示してくれます。そこで今回は、子育てに高い関心を寄せるお母さんやお父さんへ、子どもの発達について学べる講座やおすすめの本と合わせ、エリクソンの発達段階説をご紹介しましょう。

発達段階説を提唱したエリク・エリクソンとは

エリクソンの発達段階説には、エリクソン自身の人生が大きく影響しています。まずは、エリクソンの人物像を解説しましょう。

心理学者エリク・H・エリクソンは、1902年にドイツのフランクフルトで生まれました。母親は、デンマーク系ユダヤ人の名家の出でしたが、父親は不明。エリクソンが3歳のとき、母親はドイツのユダヤ人小児科医と再婚しました。

エリクソンは、母親とも義父とも違い、金髪に青い目でした。そのため、黒髪・黒い目が多いユダヤ教会では「異教徒」のように見られていたそう。また、外国人蔑視の風潮が強い時代だったため、地元の学校では「デンマーク人」と呼ばれ差別されていたそうです。子ども時代の経験は、「自分は何者なのか」とエリクソンが悩むきっかけになりました。

学校を卒業後、エリクソンは画家を目指すも挫折。精神分析で有名なジークムント・フロイトの娘、アンナによる実験学校の教師となりました。そこで、子どもの気持ちに対する理解力の鋭さと、細やかな関係づくりの能力が高く評価されます。生徒たちの回想によると、エリクソンは「子どもたちが何に関心をもっているかを直感的にわかってくれる人」だったそうです。

教師としての才能を認められたエリクソンは、児童分析家となりました。しかし、1933年、反ユダヤ主義を掲げるヒトラーがドイツで首相に任命されると、エリクソンはアメリカに渡って米国籍を取得。問題行動を起こす青年たちの心理療法に従事し、精神分析家・児童分析家としての名声を確立したのです。

エリクソンは、イェール大学の人間関係研究所で文化人類学者たちに出会ったのをきっかけに、精神分析に文化人類学を取り入れることを思いつきました。その成果が、発達段階説の原点となる名著『幼年期と社会(Childhood and Society)』(1950年)です。エリクソンの発達段階説は、「心理社会的発達理論(psychosocial development)」と呼ばれ、発達心理学において代表的な位置を占めています。

エリクソンによる有名な業績としては、「アイデンティティー」や「モラトリアム」も挙げられるでしょう。私たちにとって身近な概念や用語は、エリクソンが提唱したものだったのです。

エリクソンの研究成果は、乳幼児~老年と全年齢層を網羅しているため、教育の現場だけでなく、私たちの子育てや生涯学習にも活かされています。それでは、エリクソンの発達段階説の内容を詳しく説明していきましょう。

エリクソンの発達段階論2

エリクソンの発達段階説1:乳児期

エリクソンの発達段階説は、フロイトの発達段階を下敷きに、より心理社会的な観点で提唱されたものです。人間の生涯は8つの段階に分かれ、各段階で「危機」が発生。その「危機」を克服できれば健康的に生きられ、できなければ挫折を感じたり希望を失ったりしてしまう……という、ライフサイクルのモデルです。

では、8つの発達段階を詳しく説明していきます。

【乳児期(infancy)】
0歳~1歳半
【心理社会的危機】
基本的信頼対不信(trust vs. mistrust)

乳児期に最も育つのは、基本的な信頼感です。望み通りに愛されることや、母親との一体感を経験することで、人への信頼が育まれます。

言葉を話せない赤ちゃんが望むことは、とてもシンプルですよね。お腹が空いて泣いたらミルクをもらえること、お尻が気持ち悪くて泣いたらオムツを取り替えてもらえること、寂しくて泣いたら抱っこしてもらえることなどです。こうした欲求を十分に満たされた赤ちゃんは、「きっと誰かに助けてもらえる」と信じる「希望(hope)」の力を身につけられるそう。

反対に、誰からも望みを叶えてもらえなければ、「誰も助けてくれない」という不信感や、自分に対する無力感、自己不全感を身につけてしまいます。また、「頑張っても無駄」と、すぐギブアップしてしまうようになるのだとか。

お母さん・お父さんがご存じのように、赤ちゃんの望みをいつでもすぐ満たしてあげるのは、かなり大変なこと。筆者にも覚えがありますが、授乳やおむつ替えが深夜にまで及び、寝不足で疲労がたまって倒れそうになることもありますよね。しかし、「できるだけ望みに応えることで、赤ちゃんが他人や自分への『希望』を得られるよう応援しているのだ」――無理は禁物ですが、そう思うと日々の努力が報われる気がしませんか?

以上が、エリクソンの発達段階説における第1段階「乳児期」です。

エリクソンの発達段階論3

エリクソンの発達段階説2:幼児前期

エリクソンの発達段階説における2番めの段階は「幼児前期」。

【幼児前期(early childhood)】
およそ1歳半~3歳
【心理社会的危機】
自律性対恥・疑惑(autonomy vs. shame)

幼児前期は、自律性が育つ時期です。自律性とは、衝動をコントロールし、自らを律する力のこと。乳児期に自分や人への信頼感をしっかり育めた子ほど、自律的な活動に取りかかりやすいそうです。

幼児前期には、それまでハイハイしていた赤ちゃんが歩き始め、おしゃべりもできるようになります。いわゆる「魔の2歳児」「いやいや期」に突入です。親の言うことを素直に聞かず、かんしゃくを起こして抵抗するなど、手のかかる年頃ですよね。

また、トイレや食事のトレーニングなど、子どもにとって最初の「しつけ」が始まります。しつけを通して子どもの自律性を育てるのに大切なのは、やり方を繰り返し教え、自分でできるようになるまで待ってあげること。いつからできるか子ども任せにすることで、子どもは「意志(will)」という力を獲得できるのです。

しかし、子どもが失敗しないようにと親がやってあげてしまえば、「自分でやってみよう」という自律性が育ちません。また、頑張っても失敗するたびに叱られ続けたら、「またダメだったらどうしよう」という羞恥心を覚え、チャレンジする意志を失ってしまうでしょう。

多忙な親にとって、子どもに何度も同じことを教え、自分からやり出すまで待つのには忍耐がいります。けれど、生き抜くのに大事な「意志の力」を身につけてもらうためと思えば、子どもが意欲的に取り組む瞬間を待つことも苦に感じなくなるかもしれませんよ。

以上が、エリクソンの発達段階説における第2段階「幼児前期」です。

エリクソンの発達段階論4

エリクソンの発達段階説3:遊戯期

エリクソンの発達段階説における3番めの段階は「遊戯期」。

【遊戯期(play age)】
3歳~5歳
【心理社会的危機】
自発性・積極性対罪悪感(initiative vs. guilt)

自律心を身につけた子は、遊戯期に自発性や積極性が育ちやすくなります。「どうして?」と質問攻めにしてくる好奇心旺盛な子もいるでしょう。保育園や幼稚園に通い出して友だちの輪が広がり、危険なイタズラに没頭したり取っ組み合いのけんかをしたりと、とにかく服が汚れ、ケガも多くなります。

親にとっては心配ですが、好奇心のままに挑戦を繰り返すことで、子どもは自分の体力・知力・能力を確認しているそうです。まるで、真理を探究する科学者みたいですよね。

それなのに、「あれもダメ、これもダメ」と親に止められ、話しかけても「静かにして!」とうんざりされてばかりでは、子どもはどう感じるでしょう。「やりたいことをするのは悪いこと」「知りたがることは悪いこと」と、罪悪感を覚えてしまうのです。

親の態度としては、命の危険がある行為は制止し、公共の場での振る舞い方を教えつつ、やりたがることを十分体験させてあげるのが正解になりそうですね。そうすれば、子どもは自発性と罪悪感のバランスをうまくとれるようになり、自分がなんのためにその行動をとるのかわかる「目的意識(purpose)」という力を獲得できます。

以上が、エリクソンの発達段階説における第3段階「遊戯期」です。

エリクソンの発達段階論5

エリクソンの発達段階説4:学童期

エリクソンの発達段階説における4番めの段階は「学童期」。

【学童期(school age)】
5歳~12歳
【心理社会的危機】
勤勉性(完成)対劣等感(industry vs. inferiority)

学童期に獲得できるのは勤勉性です。勤勉とは、社会的に期待される活動へ、自発的・習慣的に取り組むこと。友だち関係のなかで磨かれる力です。

学童期は、小学校に通う時期と重なります。小学校では、時間割に従って授業があり、ほぼ毎日宿題が出されますね。委員や係の活動もあるので、子どもどうしで協力しながら役割を果たすようになるでしょう。やがて自信をつけ、自分には「能力(competency)」があるのだとわかります。また、友だちから学び、友だちに教える経験を通して勤勉さを育むでしょう。

しかし、友人と助け合ったり共感したりといった経験が不十分では、ほかの子との優劣ばかりを意識するようになってしまいます。自分より優れている友人には、尊敬や共感ではなく劣等感を、自分のほうが優れていると思えば、健全な誇りや自信ではなく優越感を覚えてしまうのです。

勤勉性を獲得できる友だち関係のイメージは『ドラえもん』。優劣のフィルターを通すと、力の強いジャイアンや、お金持ちのスネ夫は優越感を、スポーツも勉強も苦手なのび太は劣等感を覚えるでしょう。それでは、足を引っ張り合い、互いを低め合うだけの関係で終わってしまいますね。

しかし、『ドラえもん』の映画だと、ジャイアンは親分肌、スネ夫は手先の器用さ、のび太は思いやりと勇気など、自分の長所を活かせる役割を引き受けます。そして、互いに認め合い、力を合わせて困難を乗り越え、ともに成長していくのです。親としては、友だちと比較して子どもの劣等感や優越感をあおるのではなく、友だちと認め合い、高め合えるようアドバイスしてあげたいですね。

以上が、エリクソンの発達段階説における第4段階「学童期」です。

エリクソンの発達段階論6

エリクソンの発達段階説5:青年期

エリクソンの発達段階説における5番めの段階は「青年期」。

【青年期(adolescence)】
12歳~18歳
【心理社会的危機】
アイデンティティー対アイデンティティーの混乱(identity vs. identity confusion)

青年期に入ると、自分を客観視でき、自分は何者かと考えるようになります。そうして、自分の本質や他者との違いを知ることにより、アイデンティティーを確立するのです。

客観的な自己認識に必要なのは、自分を理解し、評価してくれるくらいに深く付き合える友人。友だちと共感し合い、助け合う経験を学童期にできていれば、価値観を共有できる友人を探しやすいでしょう。自分のやりたいように振る舞いつつ「きみらしいね」と仲間から認められることで、「そうか、自分はこういう人間なんだ!」と自覚でき、自分らしさに忠実に生きようとする「忠誠(fidelity)」の力を獲得するのです。

しかし、乳児期~学童期の発達課題をクリアできていなければ、仲間との心理的距離を測れず、共感的なコミュニケーションをとれません。精神的な居場所を見つけられず、「自分はなんのために存在しているのかわからない」とアイデンティティーの混乱が生じてしまうでしょう。

アイデンティティーを確立するには、自分の可能性を取捨選択するため、さまざまなチャレンジが必要です。そのため、エリクソンの発達段階説における第5段階「青年期」には、アイデンティティーを確立するまでの猶予期間として「モラトリアム」が認められていると考えられています。

エリクソンの発達段階論7

エリクソンの発達段階説6:初期成人期

エリクソンの発達段階説における6番めの段階は「初期成人期」。

【初期成人期(young adult)】
18歳~40歳
【心理社会的危機】
親密性対孤立(intimacy vs. isolation)

もう子どもではなく、お母さんやお父さん世代の発達段階になりますね。社会に出てひとり立ちし、恋愛を経験して結婚する人も多い年齢層です。

初期成人期の課題は「親密性」。自己をしっかり確立したうえで、他者と親密な関係を結ぶ能力です。エリクソンは、親密性を「相手に自分を賭けても自分を失わない関係」と表現しました。親密性を育むには、青年期にアイデンティティーを確立できたかどうかが大事になるそうです。

友人・恋人・配偶者などと、互いに信頼できる安定した関係を長く続ければ、「愛情(love)」の力を得られます。しかし、青年期までの発達課題を順調に克服できなかった場合、自己を確立できておらず、自分を失う恐怖に支配されるため、他者と積極的に関わることができません。表面的な付き合いしかできなかったり、人との関わりを拒絶したりして、孤独に陥ってしまうのです。

児童精神科医の佐々木正美氏は、親密さを土台とする成熟した健全な家庭こそ、子どもにとって理想的だと語っています。親自身が他者と親しくすることも大切なのですね。

以上が、エリクソンの発達段階説における第6段階「初期成人期」です。

エリクソンの発達段階論8

エリクソンの発達段階説7:壮年期

エリクソンの発達段階説における7番めの段階は「壮年期」。

【壮年期(adulthood)】
40歳~65歳
【心理社会的危機】
次世代育成能力対停滞(generativity vs. stagnation)

壮年期の発達課題は「次世代育成能力」。前の世代の文化を引き継ぎ、自分の代で新たな創造を加え、次の世代に譲り渡すことを意味する、エリクソンの造語です。青年期で育んだ親密な人間関係から芽生える能力だそう。

壮年期は、子どもが成長して手がかからなくなり、少しずつ時間にゆとりが出てくる頃です。習い事をする子どもに触発されて、自分でも習い事を始めたり、自分磨きとして語学をやり直したりなど、生涯学習をスタートさせる人も多いのではないでしょうか。

家庭や職場、習い事などで上の世代から学んだことを、子どもなど下の世代に伝えていけば、「世話(care)」の能力を得られます。壮年期の後半では、お孫さんの世話を頼まれるかもしれませんね。佐々木氏によると、孫の子守りは「創造的で生き生きと次の世代に関われる」チャンスであり、精神の健康のためにも非常に大事だそうです。

しかし、世代間のつながりをもたなかったり、次の世代のことなど眼中になかったりして、自分の世代・時代のことだけ考えていると、「停滞」と呼ばれる状況に陥ってしまいます。次世代に何を残すか自覚した生き方ができていないと、エリクソンの発達段階説における最後の「老年期」で、自分が存在した意味を見いだせなくなってしまうそうです。

エリクソンの発達段階論9

エリクソンの発達段階説8:老年期

エリクソンの発達段階説における8番めの段階は「老年期」。

【老年期(mature age)】
65歳以上
【心理社会的危機】
自己統合対絶望(ego integrity vs. despair)

老年期になると、多くの人が退職し、子育てを終え、老後の生活が始まることでしょう。人生の総決算とも言える発達課題は「自己統合」。宇宙・地球・人間のように大きな歴史の流れのなかで、自分の人生の意味を見いだすことです。

壮年期までの発達課題をクリアしていれば、老年期で「賢さ(wisdom)」を獲得できます。思うようにいかなかった人生だとしても、「人生は山あり谷あり。だからおもしろい」など、うまく折り合いをつけられるのです。

自分が存在した意味を感じるには、世代間のつながりのなかに自分を位置づけるといいそう。自分に大切なものを託してくれた親や先生など、亡くなった先人の記憶が心に生き続けているからかもしれません。そのため、自身の死に直面しても、自分の人生には意味があったのだと納得し、次世代に希望を託しつつ、安らかに死を受け入れられるのではないでしょうか。

しかし、前の世代から受け継いだものも次世代に残せるものもないと、自分が存在した意味を確認できず、絶望に陥ってしまいます。英国の文豪チャールズ・ディケンズの『クリスマス・キャロル』に出てくる、守銭奴のスクルージをイメージすると、わかりやすいかもしれません。

スクルージは、周囲の人々との温かなつながりを拒絶し、孤独を好んでいました。しかし、幽霊によって未来へ連れていかれ、誰からも忘れ去られて朽ち果てた自分の墓を目にし、激しい絶望に襲われるのです。スクルージの場合、現在に戻って生き方を180度変え、やり直すことができました。けれども、現実の世界で時間を巻き戻すことはできません。

親としては、前の世代から次の世代へと伝承していく大切さを、子どもたちが小さい頃から折に触れて教えるとよいのではないでしょうか。また、私たち親自身、「つなぐ世代」として、最後に「よい人生だった」と言える境地を目指したいものですね。

ここまで解説してきたように、エリクソンの発達段階説は人間の生涯全体を網羅しているため、子どもだけでなく、両親や祖父母世代にも生き方の指針を示してくれるのです。

エリクソンの発達段階論10

エリクソンの発達段階説を学べる本

もっと詳しく知りたい人のため、エリクソンの発達段階説を学べる本を2冊ご紹介します。

『子どもの心はどう育つのか』

 
エリクソンの発達段階説について、本記事でも参考にした、とてもわかりやすい本をご紹介します。著者は、児童精神科医の佐々木正美氏。育児書のベストセラー『子どもへのまなざし』シリーズの著者として、ご存じの方も多いのではないでしょうか。

佐々木氏は、エリクソンの発達段階説を念頭に置いて、3人の子育てを実践したそう。夫婦の生き方にも多くの示唆を与えられたと語り、次のように話しています。

人間はライフサイクルをこのように生きると、健康に生き生き生きることができて、その反対の生き方が、いろいろなところで挫折をしたり希望を失ったりしてしまうことになるという、実にみごとなモデルをエリクソンは教えてくれましたね

(引用元:佐々木正美(2019),『子どもの心はどう育つのか』, ポプラ社.)

『子どもの心はどう育つのか』は、著者の経験も交えつつ、エリクソンの発達段階説をわかりやすく説明しています。新書サイズで持ち運びやすいので、家事や育児、仕事の合間に、エッセイ感覚で読んでみてはいかがでしょう?

『アイデンティティ 青年と危機』

 
エリクソンの発達段階説をより詳しく知りたい人は、エリクソンの著書 “Identity: Youth and Crisis” の全訳に挑戦しては? ただし、エリクソンの文章には、独特の読みにくさがあります。発達心理学を専門とする東京工芸大学の准教授・小澤一仁氏によると、エリクソンも記述の難解さを自覚していたのだとか。

『アイデンティティ 青年と危機』を訳した中島由恵氏によると、エリクソンのわかりにくい記述は、言葉に限定的な意味をもたせることを避けようとした結果だそう。そのため、中島氏は、自分の子に買った子ども向けの図鑑におけるエリクソンの発達課題の説明が明快すぎて、疑問を抱いたそうです。

エリクソンの発達段階説に触れている主な部分は、第3章「ライフサイクルーアイデンティティのエピジェネシス」。さらっと読める内容ではありませんが、わかりにくさにインスパイアされ、むしろさまざまな考えが浮かんできます。子どものこと、そして自分自身のことをイメージしながら読み進め、エリクソンの発達段階説について思索を深めてはいかがでしょうか?

エリクソンの発達段階論11

エリクソンの発達段階説を活かす

エリクソンの発達段階説を含め、子どもの発達について関心をおもちなら、保育に関する知識を学べる講座はいかがでしょう? 子どもとのよりよいコミュニケーションを望むお母さん・お父さんに、子どもについて学べる講座をご紹介します。

チャイルドアートセラピー講座

ヒューマンアカデミーの「チャイルドアートセラピー講座」では、子どもが描いた絵を通して心理状態を知る方法を習得できます。計18時間で、アートセラピーの基礎知識や絵と感情の関係を学べるので、芸術が好きな方には特におすすめです。詳しい内容は、デジタルパンフレットをダウンロードすることで確認できます。

ACE認定チャイルドマインダー養成講座

同じくヒューマンアカデミーには「ACE認定チャイルドマインダー養成講座」もあります。チャイルドマインダーとは、0歳~12歳を対象とした、英国発・少人数保育のスペシャリスト。大勢の面倒を一度にみる保育士と異なり、1名~数名の子どもとじっくり向き合うのが特徴です。

「家庭的な保育」に必要な知識・技術を基礎から学べるので、まったくの初心者でも大丈夫。転職や開業を目的としていなくても、子どもとのコミュニケーションの質を高めたいと思う親にとって役立つ内容です。最新の詳しい内容は、デジタルパンフレットをご確認ください。

子どもにどう接したらよいか悩み、不確かな情報に振り回されてしまう方も多いのではないでしょうか。その点、上記の講座は、子どものメンタルなどに関する専門知識を体系的に学べる便利な手段です。エリクソンの発達段階説のように、子どもの成長に合わせたコミュニケーション方法を学ぶため、利用してみてはいかがでしょう?

***
筆者が初めてエリクソンの発達段階説を知ったのは、佐々木氏の著書『完 子どもへのまなざし』(福音館書店、2011年)でした。子育てや、親としての自分の立ち位置を考える際の判断軸として、活用できるなと感じています。

子どもは日々成長し、親自身も年齢を重ねていくので、それまでうまくいっていたやり方が通用しなくなることもしばしば。悩みや迷いが生じることも多いですよね。子どもへの接し方を変える必要を感じたり、親としてのあり方に迷ったりしたときは、本記事でご紹介したエリクソンの発達段階説を、ぜひ参考にしてみてください。

文/上川万葉

(参考)
エリク・H・エリクソン 著, 中島由恵 訳(2017),『アイデンティティ 青年と危機』, 新曜社.
佐々木正美(2019),『子どもの心はどう育つのか』, ポプラ社.
佐々木正美(2011),『子どもへのまなざし(完)』, 福音館書店.
鎌原雅彦・竹綱誠一郎(2005)『やさしい教育心理学』, 有斐閣.
L・J・フリードマン 著, やまだようこ・西平直 監訳, 鈴木真理子 訳, 三宅真季子 訳(2003),『エリクソンの人生 アイデンティティの探求者(上・下)』, 新曜社.
林洋一 監(2010),『史上最強図解 よくわかる発達心理学』, ナツメ社.
大矢泰士(2017),「アイデンティティ概念の理論的背景と問題点について――精神分析的観点による再検討のために――」, 東京国際大学論叢. 人間科学・複合領域研究, 2号, pp.17-37.
小沢一仁(2019),「自己理解のためにエリクソンのアイデンティティ概念を捉え直す――主観的視点から斉一性と連続性に焦点を当てて――」, 青年心理学研究, 31巻, 2号, pp.91-108.
廣瀬清人・小林京子(2020),「発達研究における基礎理論の展望」, 聖路加国際大学紀要, 6巻, pp.26-32.
小沢一仁(2014),「教育心理学的視点からエリクソンのライフサイクル論及びアイデンティティ概念を検討する」, 東京工芸大学工学部紀要. 人文・社会編, 37巻, 2号, pp.97-102.