小学生の宿題といえば「音読」があります。入学したての頃は、音読するわが子の姿に成長を感じたものです。しかし2年生、3年生になっても毎日宿題として出され、内心では「え? まだ音読するの?」と少し疲れてしまっている親御さんもいるのではないでしょうか?
じつは音読には、私たちの想像以上に子どもの能力を引き出して伸ばす効果があるのです。そのメリットを知れば、きっと毎日の音読を聞くのが楽しみになりますよ。
低学年がとことん「音読」をするのは理由があった!
「特に低学年の子どもにとって、音読は大切なもの」と断言するのは、筑波大学付属小学校の青木伸生先生です。もちろん、上手にスラスラと読めるようになることも大事ですが、それ以上に、低学年の子どもが身につけなければならないことが音読によって鍛えられるそう。
学校側の狙いとしては、次のポイントが挙げられます。
1. 体づくり
学校では、音読する際に、しっかり両足を床につけておなかから声を出すように指導しています。そうすることで、体が小さい低学年の子どもの体幹が鍛えられます。
2. 声の大きさの調整
低学年の子どもは、まだ声の大きさを調整することが上手にできません。聞き手がどの位置にいるかによって、どれくらいの大きさで話すかということはもちろん、はっきりとした発音で聞き取りやすい話し方を意識することで、相手に的確に声を届ける練習になります。
3. 日本語のリズムをつかむ
低学年の国語の教科書には、リズムよく読める詩が多いのも特徴のひとつ。これらの文章を、テンポよくリズムに乗って声に出して読むことで、日本語の響きを体感できます。
保護者のチェック項目にも、「大きな声で」「姿勢を正しく」「『、』や『。』に気をつけて」などが記載されていると思います。毎日ただなんとなくこなしていた「音読」も、じつはしっかりとした目的があったのですね。
驚くべき音読の効果
音読って意味あるの? と疑問に思いながらも、「宿題として出されているからしょうがない」と受け入れて、毎日聞き流していませんか? じつは音読をすることによって、子どもの脳はたくさんの刺激を受けているのです。音読をきっかけに、子どもの能力がぐんぐん伸びることも期待できますよ。
音読の効果1:文章への理解が深まる
文章を黙読するだけでは理解できないことが多い低学年の子どもにとって、自分の声を聞きながら読む音読は、内容を理解するのにぴったり。青木先生によると、「言葉を目で追いながら耳からも入れることで、理解を深めることができる」そうです。
音読の効果2:脳が活性化されて記憶力がアップする
「脳トレ」で知られる東北加齢医学研究所の川島隆太教授によると、音読によって脳の前頭葉に含まれる「前頭前野」という場所が活性化されるそう。また、音読直後は脳がより働きやすくなり、記憶力が20~30%も増加することもわかっています。
音読の効果3:コミュニケーション能力が鍛えられる
脳の前頭前野はコミュニケーション能力にも関係しています。友だちや先生に話しかけるのが苦手な子は、音読によって前頭前野を活性化させることで、積極的に人とコミュニケーションがとれるようになるでしょう。
音読の効果4:集中力が高まる
また、前頭前野が活発に働いている脳内では、セロトニンという物質が多く分泌されます。セロトニンは精神を落ち着かせ、集中力を高める効果があるため、音読を続けている子は自然と気持ちのコントロールができるようになるのです。
音読の効果5:黙読も速くなる
教育評論家の親野智可等先生は、「音読がすらすらできるようになると、普段の黙読も速くなる」と述べています。音読によって語彙や言い回しを覚えて使いこなせるようになるため、語彙力も向上し、「読む力」がしっかりと身につくのです。
もっと音読の効果を上げたい!
最後に、音読の効果をさらに上げる方法をいくつか紹介していきます。ぜひ参考にしてください。
川島教授は、子どもの音読を聞く際には「手を止める」「すかさずほめる」を徹底して心がけるべきだと述べています。家事をしていたらいったん手を止めて、子どもの音読に付き合いましょう。そして、読み終わったらすかさずほめてあげるのです。川島教授いわく、「これだけで子どもの脳は非常に活性化する」のだそう。
この「手を止める」「すかさずほめる」は、脳科学では “即時フィードバック” と呼ばれます。子どもが何かをしたとき、間髪入れずにほめてあげることで、子どもの脳は爆発的に反応して物事に対する意欲が向上するのです。また、ほめるだけでなく、子どもの読み方に対する感想を述べるのもいいでしょう。
青木先生は、「音読ができたことをほめながら、『さっきのセリフをとっても大きな声で読んだのはどうして?』『小さな声で読んだのはどうして?』といったふうに問いかけてみる」ことをアドバイスしています。物語は会話文とそれ以外の地の文で構成されています。なかでも、会話文の読み方によって、子どもがどれだけ登場人物の気持ちを理解しているかがわかるというわけです。
もしかしたら子どもは、無意識のうちに声のトーンや読む調子を変えていたのかもしれません。しかし、この「振り返り」によって登場人物の気持ちを考える訓練になり、読む力がぐんと高まるのです。
ここでひとつ、気をつけなければならないのは、上手に読めなくても叱らないこと。親野先生は、「叱ることで、その子の自己肯定感をボロボロにしてしまい、伸びる芽を摘み取ってしまうこともある」と注意を促しています。
最初はつまずくことも多いかもしれません。しかし、何度も繰り返し音読し、その姿をお母さんやお父さんに見守ってもらいほめてもらうことで、自信につながっていくのです。毎日の音読は、子どもの自己肯定感を高めることにも役立ちそうですね。
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慣れてくると「面倒だな」と感じがちな音読ですが、さまざまな能力を伸ばすのに効果的だとわかれば、音読の時間はより有意義なものに変わります。ぜひ親子のコミュニケーションにも役立ててくださいね。
(参考)
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「宿題の定番」になるのも頷ける。意外だけどすごく重要な「音読」の4つの狙い
STUDY HACKER|音読の効果とやり方を丁寧に解説。テキストの選び方・おすすめの本は?【保存版】
SankeiBiz|子供の頭をよくする音読&褒めワザ 「脳トレ」で知られる川島隆太所長に聞く
いこーよ|宿題の定番「音読」はなぜ大事? 黙読との効果の違いも紹介!