からだを動かす 2019.5.21

体力スコアの高い子どもほど成績優秀。体力をアップさせる健康三原則を取り入れよう!

編集部
体力スコアの高い子どもほど成績優秀。体力をアップさせる健康三原則を取り入れよう!

子どもの「学び」に強い関心をお持ちの読者の方であれば、もうすでにご存知かもしれませんが、「学力」と「体力」は深い関係にあるのです。

今回は、学力と体力の関係、そしてなぜ体力が必要なのか、どうすれば子どもに体力をつけられるのかを説明します。

持久力が高い子どもは「記憶力」が優れている

学力と体力の相関関係については、これまでさまざまな研究により証明されてきました。そのひとつが、2001年にカリフォルニア州教育局が行なった、学業成績と運動との関連性についての大規模な研究調査です。小学5年生約35万人、中学1年生約32万人、中学3年生約28万人を対象に、心肺機能や筋力、持久力、体脂肪率などの体力スコアと、数学およびリーディング(英語読解)の成績との関連性を分析しました。その結果、体力スコアの高い子どもほど、成績優秀であることが確認されました。

なぜ、体力が学力に影響を及ぼすのか——。この疑問についても、さまざまな説があります。例えば、海馬の成長が関係しているという説です。海馬とは、記憶に関わる脳の器官で、運動による刺激を受けると成長するといわれています。実際、これまでの研究により、持久力の高い子どもは、同世代で持久力の低い子どもと比べ海馬が大きく、記憶力が優れていることが確認されています。

一方で、運動そのものが学力によい影響をもたらすことも明らかになっています。フィンランドの調査では、よく歩く子ほど勉強を苦にしないことがわかりました。また、アメリカの実験では、有酸素運動で心拍数を増やすと、算数の試験の得点が上がるという結果が出ています。さらに、別の調査では、身体を動かした直後、物事に集中できる時間が長くなることが立証されました。

体力をアップさせる健康三原則2

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乗り遅れ注意! 今、子どもの体力は向上傾向にある

しかしながら、体力を向上させるのはそう簡単なことではありません。特に現代は、子どもたちの運動量が減っています。その原因のひとつは、交通手段の発達や、電化製品の普及など、生活が便利になったこと。

また、外遊びをする時間や場所の確保、仲間づくりがしづらくなっていることも関係していると考えられています。さらに、深刻なのは、保護者の意識の低下です。体力の重要性に対する認識不足が、子どもの運動機会を減少させているとも言われています。

そんななか、子どもたちの体力は、近年向上傾向がみられるようになりました。スポーツ庁が平成20年度から開始した「全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果」によると、平成30年度の体力合計点は、小学生女子は過去最高値、男子は平成22年度に次ぐ2番目に高い値、中学生は男女ともに過去最高値でした。その主な要因としては、各学校や教育委員会が、体力の重要性に気づき、向上に向けてさまざまな取り組みを行ってきたことが挙げられます。

つまり、地道な努力と工夫次第で、体力は向上できるということです。環境や時代背景のせいにして、それらを怠っていると、遅れをとってしまいます。逆を言えば、少し意識を変えるだけで、体力・学力ともに人一倍抜きん出ることができるかもしれないのです。

体力をアップさせる健康三原則3

体力をつけるための食事・運動・睡眠

子どもの体力向上のために、家庭でできることは何でしょうか。いろいろなことが考えられますが、絶対に欠かせないのは健康な生活習慣の定着です。

国は、子どもたちの健康な生活に必要なものとして、「調和の取れた食事、適切な運動、十分な休養・睡眠」という健康三原則を掲げています。この食事・運動・睡眠の3つは、体力向上にもつながる要素です。では、具体的にどんな食事・運動・睡眠を心がければいいのでしょうか。

【1. 調和の取れた食事】

健康増進にも体力向上にも、栄養バランスの取れた食事は欠かせません。特に、カルシウム(乳製品、小魚類など)・ビタミン(魚類、きのこ類など)・たんぱく質(肉類・魚類・卵など)は、丈夫な身体づくりに必要な栄養と言われており、バランスよく取り入れたいものです。

とはいえ、毎食栄養バランス満点なメニューをつくるのはなかなか大変です。そこで、もっと手軽なことから始めてみましょう。それは、「何を食べるか」ではなく、「規則正しく食べる」ということです。

「毎日朝食を食べる」「毎日決まった時間に夕食を食べる」——この2つを習慣としている家庭の中学生は、そうでない家庭の中学生より男女ともに体力があるという調査結果が出ています。朝ギリギリまで寝て、朝食を抜いている家庭や、その日の都合に応じて夕食時間がバラバラという家庭は、そこから改めていくとよいでしょう。

【2. 適切な運動】

体力向上には、当然ながら運動習慣が不可欠です。運動量の目安として、1週間に420分以上運動している小中学生は、そうでない同年齢の小中学生より体力があるという調査結果が出ています。1週間に420分ということは、毎日同じ時間運動するとすれば1日60分です。まずは、この時間数を目標に、運動する習慣をつくってみましょう。

とはいえ、運動が苦手な子どもは、たった1時間の運動もしたがらないかもしれません。であれば、遊びに運動を取り入れてみましょう。その際のポイントは、できるだけ多様な動きができる遊び方を選ぶことです。例えば、鬼ごっこなら、歩く、走る、くぐる、よけるなどの動きを経験することができます。慣れてきたら、「スキップで移動する」「両手でタッチする」など、動き方にルールを加えてみるのもよいでしょう。

また、遊びには保護者が積極的に関わることも大切です。必要に応じて手を添えたり、見守ったりするほか、遊具の使い方を教えたり、周囲の状況に気づかせたりなどして、安全を確保しましょう。

【3. 十分な休養・睡眠】

睡眠も運動と同様に、どれくらい必要なのかわからないという方がいるかと思います。目安として、1日の睡眠時間が8時間以上の小学生、および6時間以上8時間未満の中学生は、それ以外の同年齢の小中学生より体力があるようです。よほど夜更かししない限り、現実的な睡眠時間と言えるのではないでしょうか。

ただ、単純に長時間眠ればいいわけではありません。食事と同様、同じ時間に就寝し、同じ時間に起床することが重要なのです。例えば、身体の代謝や免疫を活発にする「コルチゾール」、精神の安定を促す「セロトニン」というホルモンは、朝5時から7時くらいに大量に分泌されます。それらが適切に分泌されるようにするには、毎朝だいたい同じ時間に早起きすること、しっかり朝日を浴びることなどがよいとされています。ですから、曜日などにかかわらず、「夜は9時までに寝て、朝は6時頃起きる」といった睡眠ルールをしっかり決めておくとよいでしょう。

体力をアップさせる健康三原則4

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こうして見てみると、体力向上を目指すことは、学力向上ばかりか健康増進にもつながることがわかります。また、子どもだけでなく、大人も一緒に心がけることで、効率よく行えます。これを機に、家族全員の生活習慣を根本から見直してみてはいかがでしょうか。

(参考)
文部科学省|3 子どもの体力の低下の原因
文部科学省|子どもの体力向上のために
文部科学省|幼児期運動指針
スポーツ庁|平成30年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果
東洋経済オンライン|子どもの学力と体力の知られざる深い関係
プレジデントオンライン|脳細胞が増える運動「3つの条件」
COOP共済|今月のテーマ『体力・運動能力がアップする子どもの食事』
「早寝早起き朝ごはん」全国協議会|なぜ「早寝早起き朝ごはん」が必要なのでしょうか
大学ジャーナル|アクティブで持久力がある人は記憶力も優れている 筑波大学
サカイク|「早寝」「早起き」の子が、体力が向上するのはなぜ?