子どもは3歳を過ぎると、ごっこ遊びなどの空想力を活かした遊びをするようになります。子どもの空想力は非常に豊かで、大人が想像もつかないような生き物を生み出したり、突拍子もない展開を引き起こしたりします。
空想の内容によっては、親が「空想の世界ばかりに入り浸っているようで心配」「現実との違いがわからなくなったらどうしよう」と感じることもあるようですが、空想力は子どもが成長するうえで欠かせないものです。
今回は、空想力によって身につく力や、空想力向上のための方法について紹介します。
空想力が子どもにとって大切な理由
『本物の学力は12歳までの「作文量」で決まる!』の著者、樋口裕一氏は、毎日の会話から空想力を鍛えることをすすめています。例えば、テレビドラマを活用し、「犯人は誰だと思う?」「主人公はこれからどうすると思う?」などの会話が、作文力、国語力をつけるのです。
また、JAPAN絵本よみきかせ協会代表理事であり、こどもまなび☆ラボ絵本部顧問でもある景山聖子先生は、子どもの空想力について以下のように話しています。
幼児期は人生の中で唯一、空想の世界で見たり聞いたりしたことを「現実」の出来事として体験できる、貴重な時間――。
幼児期の子どもは、絵本での出来事を実際に体験したかのように感じるのだそうです。たとえば、パパと一緒に魚釣りに行き、日が沈むまで存分に遊び尽くす様子が描かれた絵本を読み聞かせたとしたら……?
「パパ、またおさかな つかまえに行こうね。おもしろかったね、おいしかったね。」
こんなふうに言うのだそうですよ。そして、この空想力を使った疑似体験が、子どもの様々な力を養ってくれるのだそうです。
空想力でこんな力が身につく
では、空想力によって身につく力を見てみましょう!
【1】思いやり
空想力を使ってごっこ遊びなどをする子どもは、自分以外の誰かになりきります。例えば「ヒーローになって悪者を退治する」「犬や猫など人間以外の動物になる」などです。
そうすることで「ヒーローになって悪者を退治すると、誰かに感謝される」「犬や猫はこうすると楽しい気持ちになる」など、行動次第でさまざまな感情を呼び起こすことへの気づきにつながります。
このとき、親が「こんなふうにしたらもっと感謝されるんじゃない?」「こうしたら、もっと喜んでくれると思うよ」などとポジティブな感情を導くためのアドバイスをすると、思いやりの気持ちが養われます。
【2】体系的思考
空想力がある子どもは、例えばバナナがあった場合、その購入者や生産者、調理法や売っているお店など、さまざまなことを疑問として親に投げかけたりします。これは物事に対して付随する多くの情報を分析・分類する体系的思考を養うことにつながります。
親としては、子どもに質問攻めにされるのに飽き飽きしてしまうこともあるかもしれません。しかし、空想力向上のためには大切な過程です。できる限り向き合い、一緒に考えてみましょう。
【3】プレゼンスキル
子どもが空想上のストーリーなどを話すことは、自分の考えをプレゼンしているという意味もあります。親にとっては支離滅裂な内容だったとしても、子どもの空想にしっかりと耳を傾けてあげましょう。
時々、内容についての質問するのもおすすめです。そうすることで、自分の意見や考え方をしっかりと相手に伝えるプレゼンスキルの向上につながります。
【4】対人能力
空想上でさまざまな人物を演じる子どもは、立場によって感情や役割が変わることを自然と覚えていきます。例えば、おままごとでお母さん役の子どもは、赤ちゃん役の子どもを優しくあやし、お父さん役の子どもは堂々とした振る舞いで家族の中心人物になったりします。
この場合、子どもの家族の言動を真似ているケースも多いです。自分とは違う立場の人物になりきり、それに合った振る舞いをしていくことで、人との関わり方を学ぶきっかけとなり、やがて対人能力の向上につながります。
空想力を身につけるためのポイント
子どもの空想力をアップさせるためには、以下の工夫が効果的です。
■子どもの空想を否定しない
時に子どもは、残酷で暴力的な空想をすることがあります。親としては心配になるかもしれませんが、それを頭ごなしに否定してしまうと、子どもは空想すること自体が楽しくなくなる可能性があります。そうならないために、空想そのものは否定せず、残酷さや暴力がネガティブな感情をもたらすことを教えましょう。
例えば、誰かを叩いたりする空想をしている場合は「もし〇〇ちゃんが誰かに叩かれたら、どう思う?」と、その後を想像させるような問いかけをします。子どもが良くない空想をしていた場合は、物事の善悪を教えるチャンスとして捉えるようにしましょう。
■大人ならではの空想で一緒に遊ぶ
子どもの空想が大人には思いつかないようなものであるのと同じように、大人の空想は子どもにとって新鮮なものです。子どもが空想のストーリーについて教えてくれたり、ごっこ遊びに誘ってきたりしたときには、ただ子どものペースに合わせるのではなく、親独自の空想で対応しましょう。大人ならではの空想は子どもにとっては意外なものであり、大きな刺激になることがありますよ。
■親子で絵本を作る
子どもの空想を絵本にしましょう。子どもが絵を、親が文章を担当して、1冊の絵本を作り上げます。空想上の物語を絵として表現する作業は、表現力・空想力アップに有効です。また、絵本作りを通した親子の共同作業は絆を深めることや思い出作りにもなります。
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子どもの空想力は、その時期ならではの視点や考えが詰まった貴重なものであり、情緒面の発達に大きく影響します。親は子どもの空想を見守りつつ、思う存分空想できる環境を整えてあげましょう。
文/田口るい
(参考)
Gymboree|「ごっこ遊び」は子どもの成長に不可欠なものだった!?
あそびのもりONLINE|赤ちゃんの育ちと空想遊び
保育ing|空想の世界を持っていて、お友達とうまく遊べない様子
おむつのパンパース|幼児の活動:幼児のゲームと遊びの種類
Study Hacker こどもまなび☆ラボ|現実と空想を区別できるのは6歳以降? 親の”救世主”読み聞かせで、子どもは絵本を「体験」する
樋口裕一著(2016),『本物の学力は12歳までの「作文量」で決まる!』,すばる舎.