あたまを使う/非認知能力 2025.12.23

年末年始の帰省・旅行が “学び” に変わる。移動中からできる「旅育」実践ガイド

編集部
年末年始の帰省・旅行が “学び” に変わる。移動中からできる「旅育」実践ガイド

年末年始の帰省や旅行。移動中に子どもがぐずったり、「あと何分?」と何度も聞いてきたり……大変な思いをした経験はありませんか?

でもじつは、移動時間も帰省先での時間も、関わり方を少し変えるだけで子どもの力を育む時間に変わります

「旅育」とは、旅そのものが目的ではなく、子どもが大人に向かって成長するプロセスを大切にする考え方。特別な準備や教育は不要です。

本記事では、旅育の第一人者である旅行ジャーナリスト・村田和子さんのインタビューをもとに、帰省・旅行ですぐに実践できる関わり方のアイデアをご紹介します。

【1】計画・移動を “子どもと一緒に” 決める

◾️計画段階から子どもの意見を聞く

旅育で最も大切なのは「子どもを子ども扱いしない」こと。大人同士で旅行するとき、行き先を一方的に決めたり、相手の希望を聞かないことはありませんよね。家族旅行でも同じです。

・子どもに選択肢を与える

完璧な計画を求める必要はありません。「海に行く? 山に行く?」「おじいちゃんとお城に行くのは、明日にする? それとも明後日?」といった複数の選択肢から選ばせるだけでも、子どもにとっては「自分が決めた旅」になります。旅に臨むモチベーションがまったく違ってきます。

・「家族全員」で旅行計画を立てる

子どもがせっかく「あれをしたい」「これをしたい」と言ったのに、現実的に難しいからと却下してしまうと、自己肯定感を下げることになってしまいます。家族会議でプレゼンをして、家族全員で計画を立てましょう。「パパの案もいいな」など、自分の案とどう折り合いをつければいいのかと考え、答えを導こうとする他者理解の力が育ちます。

家族で考えている

◾️移動中はスケジュールを “見える化” する

たとえば、車や電車で3時間移動するとします。よくあるのは、移動中に子どもが「あと何分? どれくらい?」と大きな声で何度も聞いてくるパターン。でも、なぜ子どもがそうやって聞いてくるのか考えたことはあるでしょうか。

じつは、「不安」が子どものぐずる要因になることが多いのです。スケジュールを知らなければ、いまある状態がいつまで続くのかわからず、大人だって不安になると思いませんか?

・あと何分か、次に何をするか、周囲の状況をセットで伝える

「今日はここからここまで行くよ」「時間は何分くらいかかるから、なにをして過ごそうか」と事前に話してあげれば、子どもは安心感を得られ、静かにできることが多くなります。

・「小さな予定」を一緒に立てる

「15分あるからなにをしようか」と子どもに考えさせる。経験を重ねるうち、「15分だとご飯を食べるのは難しいから、トイレに行って飲み物を買う」というふうに、徐々に時間の感覚をつかんでいきます。

車から顔を出している親子

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【2】年齢の違う人と話す機会をつくる

◾️たくさんの人と挨拶をできるようにする

帰省や旅行で出会う人といえば、祖父母、親戚、宿の人たち、普段なら関わりの少ない学年の子どもなどーー「年齢の違う人」と関わることも、成長につながります。さまざまな年齢層の人に挨拶ができるようになると、子どもの自信につながるでしょう。

・挨拶の「小さな目標」を立てる

たとえば宿に着く前に、「これから宿の人たちがみんなで『いらっしゃいませ』って言ってくれるから、大きな声で『こんにちは』とあいさつをしようか」と事前に小さな目標を共有する。目標をきちんと達成できたら、たくさんほめてあげましょう。

挨拶をする家族

◾️親子であえて別行動する時間をつくる

帰省や旅先で、親子であえて別行動する時間をつくってみましょう。別々に過ごすことでコミュニケーション力や伝える力がぐんぐん伸びますよ。

・祖父母と子どもだけでお出かけや留守番をする

祖父母と一緒に公園などに出かけてみるのも◎。また、家で祖父母や親戚と留守番をしてみるのもいい体験になるでしょう。「頑張っていたよ」「よくお手伝いしてくれたよ」と子どもがほめられたときは、謙遜はNGです。「ほめてもらえたね、よかったね」と言ってあげる。親が一緒に評価を受け取ることで、子どもの自信と喜びが深まります。

・キッズプログラムや体験活動に参加する

最近は、子どものみで参加OKなプログラムが豊富です。子どもがやりたいようなら、どんどん挑戦させてあげましょう。プログラム終了後、子どもを迎えに行くと、目をきらきらさせて「ママ、動物の足跡を見つけたよ!」などと報告してくれる――。家族みんなで体験したら起こり得ないことです。親子別々に過ごしたことで、そのあいだに味わった感動を子どもが一生懸命に親に伝えようとしてくれるでしょう。

祖父母と過ごす孫

【3】旅・帰省の記録を「モノ」として残す

◾️写真や作品を目に見える形で残す

子どもは未来を見て生きています。つまり、日々起きたことは脳の奥にしまわれていくのです。

だからこそ、家族旅行の思い出や、旅先での成功体験を「モノ」として残してあげましょう。そうすることで、日常で旅を思い出し、そのたびに子どもが自己肯定力を高めることにつながります。

・写真や思い出を部屋に飾る

データのまま保存するのではなく、子どもと見返してプリントしてアルバムにする。子ども自身が選んだイチオシの写真、あるいは旅先でつくった「モノ」を部屋に飾るのもおすすめです。それらを見れば、子どもは旅の経験、自分が頑張った経験を思い出します。

・旅先・帰省先から自宅に絵葉書を送る

家族それぞれが一言コメントを書いた絵葉書を自宅に送る。写真に残っていないささいなことも、コメントがあればしっかり思い出になります。幼いときは大きく拙かった字がだんだん小さくなり、そのうち難しい漢字も交じってくる。写真のアルバムとはまたちがった思い出の残し方です。

***
帰省や旅行は、なにかを教え込む時間ではありません。でも、スケジュールを共有する。人と関わる。できたことを喜ぶ。思い出を残す。それだけで、移動時間も、帰省も、旅も学びに変わります

(参考)
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|子どもの人生は”旅”で幸せになる。いまの時代こそ親子で旅に出るべき理由
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|旅先での行動は”親子別々”に。”親の不在”が深める子どもの「自信」
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|旅の計画には”正解がない”。子どもの「考える力」を育む旅行プランの立て方
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