あたまを使う/国語 2026.8.5

読書感想文、何を書けばいい?「面白かった」の先へ広げる親の聞き方

読書感想文、何を書けばいい?「面白かった」の先へ広げる親の聞き方

読み終えた本を閉じたわが子に、「どうだった?」と聞いてみる。返ってくるのは「面白かった」のひとこと。そこで会話は途切れ、原稿用紙のマスは白いまま、時計の針だけが進んでいきます。夏休みの読書感想文、そんな食卓を前にため息をついたことはありませんか。

でも、その「面白かった」は、けっして中身のないひとことではありません。心が動いたからこそ、出てきた言葉です。「どうだった?」という問いは入り口が広いぶん、子どもは何から話せばいいのか迷子になっているだけ。

じつは、この「面白かった」のひとことには、まだ声にならなかった続きが隠れています。それを引き出すカギは、親の「問いかけ方」をほんの少し変えること。今回は、子どもの感想を引き出す親の関わりを、発達科学の視点から見つめ直してみます。

「面白かった」は、行き止まりではなく入り口

子どもが「面白かった」と言うと、多くのお母さんは「どこが?」「どんなふうに?」と、その先を聞きたくなります。ところが、いざたずねてみると「わかんない」「ふつう」で会話が止まってしまう。そんな経験がある方も多いのではないでしょうか。

じつはこれ、内容がつまらなかったわけではありません。子どもにとっても、心は動いているのに、それをどう言葉にすればいいのかがわからず、そのあとが続かないだけなのです。

発達心理学の視点から見ると、「面白かった」はゴールに失敗した言葉ではなく、これから広がっていく会話のスタート地点です。そして子どもが自分の体験を言葉にする力は、親との日常的な「振り返りの対話」を通じて育つことがわかっています

過去の出来事を親子で詳しく、感情をこめて振り返る関わりを積み重ねた子どもは、自分の経験を語る力がより豊かに育つと、複数の研究をまとめたレビューが報告しています。この関わりは記憶の力だけでなく、言葉や感情を理解する力、さらには読み書きの力にもつながっていくとされます。(エモリー大学ほか、発達心理学者ロビン・フィヴァッシュ氏ら)*1

つまり「面白かった」のひとことは、まだ言葉になりきっていない子どもの心の動きが、ぽつんと顔を出した瞬間。そこから先を一緒にたどっていくのが、あなたの出番です。急いで書かせようとしなくても、そのひとことを否定せずに受け止めるところから始めればいいのです。

では、その心の動きを、どんな声かけならそっと引き出せるのでしょう。

開いた本を手に持ち、想像を膨らませるように笑顔で上を見上げる女の子

子どもの言葉は、「開いた質問」で豊かになる

手がかりになるのが、母親の「質問のしかた」を調べた研究です。母親の問いかけには、大きく2つのタイプがあります。ひとつは「楽しかった?」のように「はい・いいえ」で終わってしまう閉じた質問。もうひとつは「あのとき、どんな感じだったの?」のように、子どもが自分の言葉で答えを埋めていく開いた質問です。

開いた質問を多く投げかけ、子どもの答えに新しい情報を足していく母親の関わりは、子どもが自分の経験を語る力を育てるとされています。

1歳半 〜 2歳半の子をもつ母親を対象に、過去のできごとを詳しく振り返って話す関わり方を身につけてもらう縦断的な介入研究がおこなわれました。訓練を受けた母親の子どもは、受けていない母親の子どもにくらべて、2歳半の時点(115組)でも3歳半の時点(100組)でも、より豊かに記憶を語ったと報告されています。(オタゴ大学、心理学者エレイン・リース氏ら)*2

対象は幼児期の親子ですが、「開いた問いかけで子どもの語りは豊かになる」という関わりの芯は、本の感想を引き出す場面にもそのまま生きてきます。とはいえ、いきなり「開いた質問を」と言われても、とっさには口から出てこないものです。では、どうすればいいのでしょうか?

「なんで?」を、こんな問いかけに変えてみる

そこで、つい聞きがちな「閉じた質問」を、どう言い換えれば「開いた質問」になるのか。そのまま食卓で使えるビフォーアフターの型を、4つ紹介します。

問いのタイプ つい聞きがちな「閉じた質問」 こう変えると「開いた質問」に 引き出される力
場面への問い 「面白いところ、あった?」 「いちばん心に残ったのは、どのページ? 理由より先に、記憶の映像を思い出す力
気持ちに名前をつける問い 「楽しかった?」 「そのとき、どんな気持ちだった? うれしい、びっくり、それとも……」 感情に名前をつけ、言葉にする力
自分に引きつける問い 「主人公、すごかったね?」 もし〇〇が主人公だったら、どうしてた?」 物語と自分を重ねて考える力
くらべる問い 「この本、好き?」 「前に読んだ本と、どこがちがった? くらべて、自分のなかの基準を見つける力

こうした問いに共通するのは、正解を探させないこと。どれも「はい・いいえ」で終わらず、子どもが自分の言葉で続きを埋められる形になっています。その日の子どもの様子を見て、ひとつ試すだけで充分です。

問いかけで言葉が動きはじめたら、次は、その言葉がどこへ向かっていくのかがポイントです。

両親に囲まれ、笑顔で話を聞く女の子の表情

「気持ち」を一緒にたどる時間が、感想文の芯になる

読書感想文がほかの作文と違うのは、あらすじを写すことでも、正解を当てることでもなく、「自分の気持ちと向き合う」ことにあります。だからこそ、その気持ちを引き出す親の関わりが、そのまま感想文の芯になっていきます。

中国と豪州の親子94組を対象にした調査では、母親が子どもの気持ちに寄りそいながら過去のできごとを振り返る「支持的な関わり」が、子どもが自分の経験を詳しく語る力を通じて、思いやりのある行動にもつながっていたと報告されています。(モナシュ大学、心理学者ローラ・ジョブソン氏ら)*3

子どもの感想を引き出す会話は、感想文のためだけではありません。その子が自分の心を言葉にして、人と分かち合う力そのものを育てているのです。そう考えると、食卓での「あのページ、どうだった?」という何気ないやりとりが、ずいぶん頼もしいものに思えてきませんか?

感想を引き出す、応え方を少しだけ変えてみる

子どもの「面白かった」を聞いたとき、感想を急かす必要はありませんが、ほんの少し応え方を変えるだけで、言葉は広がります。うまく言葉が出てこなくても、「そっか、あのページね」と、子どもがめくっていたページを一緒に見るだけで構いません。
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今日、もし本の話をする時間がとれたら、ひとつだけ試してみてください。「なんで?」と理由を聞くかわりに、あなた自身が「ママはここが好きだったな」と、感じたことを先にひとことそえてみる。自分の感じ方を先に少し開いて見せると、子どもも安心して自分の感想を話し出せます。

FAQ(よくある質問)

Q. 感想を聞いても「わからない」と言われます。どうすればいい?

A. 「わからない」は考えるのをやめた合図ではなく、まだ言葉が見つかっていないサインのことが多いです。無理に言わせず、「じゃあ、いちばん最初に思い出す場面はどこ?」と、記憶をたどりやすい聞き方に変えてみてください。ページを一緒にめくるだけでも、そこから言葉が出てくることがあります。

Q. 親が感想を言いすぎると、誘導になりませんか?

A. 「こう書きなさい」と結論を渡すのは誘導ですが、「お母さんはここが好きだった」と自分の感じ方を一例として見せるのは、子どもに安心を渡す行為です。大事なのは、そのあとに「〇〇はどうだった?」と、子ども自身の番を必ず残すこと。正解を示すのではなく、話しやすい空気をつくると考えてみてください。

Q. 物語の本でないと、感想文は書きにくいですか?

A. そんなことはありません。図鑑や写真集でも、「どこにいちばん驚いた?」「これ、やってみたいと思った?」と気持ちを引き出せれば、りっぱな感想文になります。子どもが興味をもって開く本かどうかを、いちばんの基準にして大丈夫です。

(参考)
*1 Fivush, R., Haden, C. A., & Reese, E. (2006)|Elaborating on Elaborations: Role of Maternal Reminiscing Style in Cognitive and Socioemotional Development. Child Development, 77(6), 1568-1588.
*2 Reese, E., & Newcombe, R. (2007)|Training Mothers in Elaborative Reminiscing Enhances Children’s Autobiographical Memory and Narrative. Child Development, 78(4), 1153-1170.
*3 Wu, Y., He, Z., & Jobson, L. (2022)|Maternal Emotional Reminiscing, Child Autobiographical Memory, and Their Associations with Pre-Schoolers’ Socioemotional Functioning. Journal of Cognition and Development, 23(2), 210-230.