からだを動かす/ダンス 2018.5.16

ダンスを学ぶことで得られるメリット ストリートダンサー・マシーン原田さん~どんな子が上達して、どんな子が上達しない?~

ダンスを学ぶことで得られるメリット ストリートダンサー・マシーン原田さん~どんな子が上達して、どんな子が上達しない?~

いま子どもが実際にダンスを楽しんでいたり、これからダンスを習わせてみようかと考えている親のみなさんに、ダンスが子どもの「心にも身体にもいい」理由を、プロダンサーとして活躍し、現在は世界的なダンスイベントを仕掛けるオーガナイザーであるマシーン原田さんに聞きました。あわせて、ダンスが上達する子はいったいどんな子たちなのか? もし子どもが「やめたい」と言い出したときは? といった、親なら気になる疑問にも答えてくれました。

構成/岩川悟 取材・文/辻本圭介

ダンスは身体能力や表現力だけでなく、多様な考え方や協調性も身につく!

——ダンスは身体に良さそうなイメージがありますが、原田さんはなぜ身体にいいとお考えですか?

原田さん:
あくまで一ダンサーとしての感覚的な観点からの考えになりますが、ダンスは基本的に人間の本能に根づいている面があるように思います。たとえば、赤ちゃんに音楽を聞かせると、勝手に体を動かしたりニコニコ笑ったりしますよね? つまり、ダンスは本能にもとづいている動きなので身体に対して無理がなく、音楽に合わせて踊ることが結果的にストレスのない運動にもなっているのです。精神的にも肉体的にもリラックスした状態で運動できるため、身体にとても良いものだと考えています。

——心と身体が密接に関係していることを考えると、ダンスは子どもの心の成育にもいいように思えますが。

原田さん:
そうですね。多くのキッズたちを見ていると、心の成育にもまちがいなく良い影響があると感じます。ダンスは、先生や同じクラスチームの友だちと一緒に踊ることが多く、密接なコミュニケーションが必要とされるため、協調性や社会性が自然と育成されていきます。また、キッズだけのスタジオはあまりないため、自然と年上のお兄さんやお姉さんと接する機会も増えるんですよね。すると、人馴れしやすくなるという意味でも精神的な発達は早くなり、いろいろなことに物怖じしない子どもにもなります。

——大人の世界と自然に触れられることで、多様な考え方が身につきそうですね。他にも、子どものころにダンスをしていると育まれることはありますか?

原田さん:
最近は、感情表現が苦手な子どもが増えていると言われますが、ダンスをしていると、やはり表現力は養われます。たくさんの人にもまれるということは、裏を返せばオリジナルでないとなかなか目に止まらないということなので、がんばるうちに自然と表現力が豊かになっていくはずです。

——ダンスは身体的な要素だけでなく芸術的な要素もあり、子どもには難しいもののようにも思えます。

原田さん:
だからこそ、チャレンジ精神を育むことができる。うまく踊れなくて悔しがって泣き出す子もいますが、そうした子たちは悔しさをバネに何度もチャレンジを繰り返していきます。得意なことを伸ばすのは比較的簡単にできますが、大切なのは、苦手なことに出会ったときにどうするか。とくにダンスは、すべての動きを連動させてひとつの流れとして表現する身体芸術なので、苦手な技やパートだからといって簡単にあきらめるわけにはいきません。苦手なことにもチャレンジして克服しなければならないからこそ、粘り強さや、いい意味での「あきらめの悪さ」が育ちます

※2010年のBREAKER’S REVENGEで踊る原田さん

親の子どもへの接し方次第で、ダンスが上達するかどうかが決まる

——これまでたくさんの子どもを見てきて、ダンスが上達するのはどんな子ですか?

原田さん:
まずは、素直な子。次に、自分で考える子。そしてなんといっても、「ハマる」子ですね。もちろん素直だからハマるわけですが、そんな子は、先生のアドバイスやたくさんの情報を自分なりに考えて吸収していきます。そのように自分で創意工夫できる子が、オリジナル性を発揮してぐんぐん伸びていく。ただわたしは、本来どんな子でもそのような力を持っていると考えています。本能のままに自由にやりたいことをやれば、自然と創意工夫できる力を子どもは持っているのです。だからこそ、親はそれを暖かくサポートすればいい。子どもがありのままでいられないとき、余計なものを背負わせているのは、結局、親なのだと思います。

——ダンスが上達しない子の場合、親の接し方にも問題はあるのでしょうか?

原田さん:
それは大いにあり得ると思いますね。なぜなら、多くのキッズを見てきた経験から言うと、まず上達しないのは素直じゃない子。そして、それよりも多いのが、親に仕切られている子だからです。先にも言ったように、本来子どもは自分で考える力を持っているのだから、親には「もっと子どもに考えさせてあげてください」と伝えたいですね。

——せっかく続けてきたのに、子どもが「やめたい」と言い出すこともあります。

原田さん:
その気持ちが本心かどうかしっかり話を聞いて、正面から受け止めてあげるといいですね。子どもはちょっとしたことで落ち込むし、好きだからこそ、完璧を目指し過ぎて「やめたい」と言ってしまう場合だってある。子どもに無理強いをさせるのだけは絶対避けるべきですが、「やめたい」という気持ちは肯定しながらも、そこから少しずつ一緒に気持ちを整理していけば、新たな気持ちで戻っていくこともできます。頃合いが難しい面もありますが、とにかく大切なのは親の価値観を押しつけないこと。あくまでも、子どもの気持ちを中心に正面から向き合ってあげてください

——なにをしても飽きっぽい子はどうすればいいですか?

原田さん:
突き放すわけではありませんが、飽きてしまっているならやめればいいんです(笑)。どんなことでも、無理にやらせる必要はまったくありません。飽きたわけだから、親は次に打ち込めるなにかを見つける手伝いをしてあげればいい。でも、子どもが飽きているのに、「これまでやってきたんだから」と続けさせる親をよく見かけます。気持ちはわからないではないですが、やっぱり心が向いていなかったらなにをやっても面白くないし、結局は上達もしません。だから、飽きたら本当にやめたほうがいいのです。

——ただ、それではなにも身につかない子どもになってしまいそうで心配です。

原田さん:
そもそも、子どもって飽きっぽいものだし、飽きっぽいことは決して悪いことではありませんよ。わたしも子どものころはいろいろなものが好きでしたが、いまだに続けていることなんてひとつもありません。そのくらい、子どもというのは好奇心旺盛な生き物なんですよね。だからこそ、飽きたらやめて次へ行ったほうがいい。「あと半年がんばろう」ではなく、一回やめてみる。もし本当にやりたかったら、また自分から戻っていきますから大丈夫です。子どもを信じてあげることも、すごく大切なことだと思うのです。

※イベントで躍動する若いダンサーたち

■ ストリートダンサー・マシーン原田さん インタビュー一覧
第1回:ダンスを学ぶことで得られるメリット~どんな子が上達して、どんな子が上達しない?~
第2回:ダンス界におけるキッズシーンの未来は明るい! ~ダンスのプロリーグ『DANCE LEAGE』を準備中~
第3回:【夢のつかみ方】(前編)~夢に近づくために「ハマり症」であれ!~
第4回:【夢のつかみ方】(後編)~挑戦しなければ、成功も失敗も起こり得ない~

【プロフィール】
マシーン原田(ましーん・はらだ)
1964年生まれ、大阪府出身。株式会社アドヒップ代表。1980年代前半に、映画『フラッシュダンス』『ワイルド・スタイル』などを見てブレイキングに出会い、ダンサーとしてのキャリアをスタートさせる。伝説のブレイクダンスチームであるAngel Dust Breakersのリーダーとして活躍。その後、世界最大級のストリートダンスコンテスト『JAPAN DANCE DELIGHT』をはじめとし、数多くのダンスイベントを運営するなど大きな発信力と影響力を持つようになる。1994年から22年間にわたり発行したフリーペーパー『DANCE DELIGHT MAGAZINE』は、日本全国のストリートダンスファンを夢中にさせた。著書に『35年間ダンスを踊り続けて見えた夢のつかみ方』(ザメディアジョン)がある。

【ライタープロフィール】
辻本圭介(つじもと・けいすけ)
1975年生まれ、京都市出身。明治学院大学法学部卒業後、主に文学をテーマにライター活動を開始。2003年に編集者に転じ、芸能・カルチャーを中心とした雜誌・ムックの編集に携わる。以後、企業の広報・PR媒体およびIR媒体の企画・編集を中心に、月刊『iPhone Magazine』編集長を経験するなど幅広く活動。現在は、ブックライターとしてもヒット作を手がけている。

35年間ダンスを踊り続けて見えた夢のつかみ方
マシーン原田 著
ザメディアジョン(2017)