教育を考える 2020.7.6

“過度な期待” が子どもの自己肯定感を下げる。親の理想を押しつけるのは危険です

編集部
“過度な期待” が子どもの自己肯定感を下げる。親の理想を押しつけるのは危険です

みなさんは、わが子にどのような人間に育ってほしいと願っていますか? 生まれる前は、「とにかく健康で元気な子だったらいい」と漠然と考えていたかもしれません。しかし、成長を追うごとに勉強ができてスポーツが得意だったらいいな……」「誰からも好かれてお友だちがたくさんできたらいいな……と、期待が膨らんでいっていませんか?

今回は、親の期待が子どもに与える影響について考えていきましょう。

イライラするのは、子どもに「期待」してるから

子育てをしていると、わが子に対して「どうしてこんなこともできないの?」とイライラしたり、口うるさく注意したりすることもありますよね。ですが、みなさんが子どもにどうして○○できないの?」と感じていることの裏側には、「あなたが子どもに期待していること」が隠されているのです。

たとえば、モジモジしておとなしいわが子に対して、「どうして自分からお友だちに遊ぼうって言えないの?」とイライラしがちなのであれば、子どもが社交的で積極的であることを期待しています。

日本メンタルヘルス協会公認カウンセラーのマツダミヒロさんによると、「人は、相手にかけた期待が外れたときに、怒りを感じたりイライラしたりする」とのこと。そして思い通りに動いてくれない子どもに、自分の価値観を押しつけて、自分の望む反応を求めているとも述べています。

私たちは親として、わが子によりよい人生を歩んでほしいと願う一方で、自分が想像する幸せの型に子どもをはめ込もうとしているのかもしれません。教育評論家の石田勝紀先生は、「親が子どもへの理想のイメージをもつこと自体は問題ない」としながらも、“こうあるべき” 姿を押しつけて、親の価値観や思考の枠からはみ出た子どもを、強制的に戻させようとすることが問題と述べています。

自分が理想とするこうあるべき姿をわが子に押しつけていないか、いま一度思い返してみましょう。自分ではそんなつもりがなくても、子どもが本来望んでいることとかけ離れているようなら、少し立ち止まって考え直す必要があるかもしれません。

子どもに期待しない02

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親の期待は「子どもの自己肯定感」を低下させる

親が子どもに期待しすぎることで、子ども自身にはどのような影響が及ぶのでしょうか。専門家の意見や、いくつかの事例を挙げていきます。

わかったフリをするようになる

親が子どもの「現時点での能力」をちゃんと理解できずに、高いレベルばかり要求した結果、子どもの脳は “ある状態” に陥るのだそう。『100万人が信頼した脳科学者の絶対に賢い子になる子育てバイブル』(ダイヤモンド社)の著者、ジョン・メディナ氏は、「自分の脳にはまだその準備ができていないのに、親からの期待が高くなるほど子どもは窮地に追い込まれる。すると脳は強制的に『低次思考』のレベルへと思考力を戻すと述べています。その結果、子どもはその場ではわかったようなフリをするものの、本質的には理解できていないので、何も身につかないというわけです。

妥協するようになる

メディナ氏によると、親の過剰な期待は、子どもが本来もつ好奇心までも奪ってしまうとのことです。子どもは好奇心をかき立てられると「これってどうなっているのかな?」と自問し、それにより成長するもの。しかし、親の期待に応えようとする気持ちが強くなると、「どうすれば親を満足させられるだろう」と妥協するようになります。つまり、親の反応ばかりを気にするようになるのです。

自己肯定感が下がる

家庭教育の専門家である田宮由美さんは、「親が子どもの可能性を信じることは、親子の信頼関係を深めることにもつながる」としつつも、あまりにも期待が大きすぎることで弊害も生まれると言います。親が常により高いレベルを求めることで、子どもは「いまの努力」を認められずに報われない気持ちになるでしょう。すると、期待に応えられない自分を卑下し、「自分はダメなんだ」と自信をなくして、自己肯定感の低下を招いてしまうのです。

いい子症候群になる

「大人の顔色をうかがい、先回りして親の期待に応えようとする自主性のない状態」は、いい子症候群になっているサインです。『ほめると子どもはダメになる』の著者で心理学博士の榎本博明先生は、「親の言いなりに動く “いい子症候群” の子は、自立できない心配がある」とし、自分で考えて動くことができないので、判断力や実行力が欠けたまま大人になる恐れもあると述べています。

反動で反抗的になる

『女の子の学力の伸ばし方』などの著者で、進学塾VAMOSの代表でもある富永雄輔先生は、「子どもに期待をかけすぎるのは、父親より母親が多い傾向がある」と述べています。特に娘に対して、母親はより大きな期待をかけることがあるそう。

彼女たちは幼いが故に、親の期待が自分にとってつらいものになってきてもそれを表現する力がありません。だから、なおさら親はそれを押しつけてしまい、あるとき、親と子どものパワーが逆転したときに、大きな反抗となって返ってきます。

(引用元:ダイヤモンドオンライン|娘に「自分の人生のリベンジ」をさせる子育てをしてはいけない

親の期待に押しつぶされてしまうことは、子どもにとっても親にとっても、望まない結果を招いてしまうのです。

子どもに期待しない03

自分の「親としての評価」を気にしていませんか?

いくら「子どもに期待するな」と言われても、愛するわが子に期待してしまうのは当然のことです。しかし先に挙げたように、過剰な期待は子どもの人生に悪影響を及ぼします。どうしたら子どもに過剰な期待をせずに、適度な距離感で見守ってあげられるのでしょうか。

前出のジョン・メディナ氏は、子どもは大人の成功の代用品ではないと述べています。自分の親としての評価を上げるために、子どもを立派に育てようとしていませんか? まわりの人たちからほめられたいという理由だけで、子どもに無理を強いていませんか?

親はつい、自分の子どもをまるで自分の分身のように考えがちですが、どんなに小さくても子どもは自分とは違う人間だということを忘れてはいけません。ですから、自分の人生でやり残したことをやらせようとしたり、自分が経験して失敗したことを頑なにやらせなかったりするのではなく、本人が望めば好きなようにやらせてあげるのがベストです。

また、子育ては競争ではありません「あの子に比べて優秀」「あの子に比べて劣っている」といった評価を自分の子どもに下すことは、わが子の本来の姿を見ていないのと同じです。まずは、親の自分だからこそわかる「わが子のよいところ」をしっかりと認めてあげましょう。

現役東大生の西岡壱誠さんによると東大生の親は子どもに過度な期待をしないとのこと。しかし、子どもが「自発的に考えて、努力すること」を全力で応援する親が多く、プレッシャーを与えずに子どもの可能性を引き出すことに成功しているケースがよく見られるそうですよ。

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わが子に期待してしまうのは、愛情をもって育てている証拠です。大事なのは、子どもの気持ちを無視して親の期待を押しつけたり、親の期待に沿うように子どもを誘導したりしないこと。子どもを信じ、適度な距離感を心がけましょう。

(参考)
マツダミヒロ(2014),『“質問”に答えるだけでイライラがニコニコに変わる!魔法の子育てしつもんBOOK』,カンゼン.
東洋経済オンライン|子どもを追いつめる、親たちの「願望と正論」
ダイヤモンドオンライン|「期待しない子育て」が脳にとてつもなくいいワケ
All About|子どもの自己肯定感が低いのは親のせい?NG言動5つと高める子育て
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