教育を考える 2026.3.9

「自分で選んだのに文句を言う」——選択と責任の関係を理解するのは何歳から?

編集部
「自分で選んだのに文句を言う」——選択と責任の関係を理解するのは何歳から?

「自分で選んだんでしょ!」と言いたくなる瞬間は、子育てのなかで驚くほど多くあります。アイスの味を選ばせたのに「やっぱりそっちがよかった」と泣く。遊びに行く先を本人が決めたのに「つまんない」と不機嫌になる。靴を自分で選んだはずなのに「足が痛い」と文句を言う。

親としては、「ちゃんと自分で考えて選んだのだから、その結果は受け入れてほしい」と思うのが自然です。しかし発達心理学の知見を紐解くと、子どもが「選択」と「責任」の関係を理解するには、大人が想像する以上に複雑な認知能力の発達が必要であることがわかります。

この記事では、子どもが「自分の選択の結果を引き受ける」力をいつ頃から身につけていくのか、最新の研究をもとに解説します。

「後悔」を感じられるのは何歳から?

「自分で選んだのに文句を言う」という行動の裏には、じつは「後悔」という感情が深く関わっています。後悔とは、「もし別の選択をしていたら、もっとよい結果になっていたかもしれない」と感じるときに生まれる感情です。つまり、現実の結果と「ありえたかもしれない別の結果」を比較する、いわゆる「反事実的思考(counterfactual thinking)」が必要になります。

クイーンズ大学ベルファストのオコナー氏らによる一連の研究では、子どもが後悔を経験できるようになるのは、おおむね5 〜 6歳頃からであることが示されています*1。 この研究では、子どもに2つの箱のうち1つを選ばせ、選んだ箱の中身を見せたあとに、選ばなかった箱の中身を見せるという実験を行いました。選ばなかった箱のほうがよい景品だったとき、6歳頃の子どもの多くが「悲しくなった」と報告しました。これが後悔の感情の芽生えです。

しかし、ここで重要なのは、5 〜 6歳の子どもが感じるのは「結果を見た後の後悔(経験的後悔)」であって、「事前に後悔を予測する力(予期的後悔)」ではないという点です。

寝室で不満を表明する男の子

「後悔を予測する力」が育つのは8歳頃

発達心理学者のマコーマック氏らの研究によれば、子どもが「もしあっちを選んだら、きっと後で嫌な気持ちになるだろう」と事前に予測できるようになるのは、8歳頃です。*2

6歳の子どもは後悔そのものを感じることはできますが、選択する前の段階で「この選び方をしたら後悔するかもしれない」と想像する力はまだ十分に備わっていません。これは、前頭前野の発達と密接に関わっています。前頭前野は、将来の結果を予測し、衝動をコントロールし、複数の可能性を比較するための脳の領域です。この部分が十分に成熟するまでには長い時間がかかり、思春期を経て20代前半まで発達が続きます

つまり、幼児期から小学校低学年の子どもが「自分で選んだのに文句を言う」のは、わがままではなく、脳の発達段階からすると当然のことなのです。

「自分が選んだから悪い結果になった」と理解できるのはいつ?

後悔と密接に関わるもう一つの概念が「責任」です。「自分が選んだのだから、この結果は自分の責任だ」と理解するには、「選択」と「結果」の因果関係を把握したうえで、「自分がその選択の主体だった」と認識する必要があります。

オコナー氏らの2015年の研究では、6 〜 7歳の子どもを対象に、結果に対する「責任の度合い」を操作する実験を行いました。*3 子ども自身が選択した場合と、他者によって決められた場合を比べると、自分で選んだときのほうが、悪い結果に対してより悲しみを感じやすいことがわかりました

ただし興味深いことに、自分で選んでいない場合でも、子どもたちは悲しいと感じる傾向がありました。これは、純粋な後悔というよりも、フラストレーション(思い通りにならないことへの苛立ち)の影響と考えられています。

つまり、6 〜 7歳の子どもは「自分が選んだことで結果が悪くなった」という因果関係を何となく感じ取ることはできますが、「この結果は自分の責任だ」と明確に理解し、受け入れるにはまだ発達途上にあるということです。

教室の子どもたち

「文句を言う子ども」に必要なのは、叱責ではなく感情の橋渡し

研究結果を踏まえると、「自分で選んだんでしょ!」と叱ることは、子どもの発達段階に照らして適切とは言えません。なぜなら、子どもはまだ「選択 → 結果 → 責任」という一連のつながりを完全には理解できていないからです。

では、どのように接するのが効果的なのでしょうか。

1. まず感情を受け止める

「そっちのほうがよかったなって思ったんだね」「残念な気持ちになったんだね」と、子どもの感情をそのまま言葉にしてあげましょう。後悔の感情を抱くこと自体は、発達の重要なステップです。その感情を否定するのではなく、まず受け止めることで、子どもは安心して自分の気持ちに向き合えるようになります

2. 選択と結果のつながりを穏やかに伝える

感情を受け止めたあとで、「○○ちゃんがこっちを選んだから、こうなったんだよね」と、因果関係を穏やかに説明します。責めるのではなく、事実を確認する語り口がポイントです。こうした言葉かけを繰り返すことで、子どもは少しずつ「選択」と「結果」のつながりを学んでいきます

3. 次の選択に活かす声かけをする

「今度同じようなことがあったら、どうしたい?」と問いかけることで、後悔の経験を未来の意思決定に結びつける手助けができます。オコナー氏らの研究でも、後悔を経験した子どもは次の選択で適応的な判断をしやすくなることが確認されています。*1 後悔は単なるネガティブな感情ではなく、よりよい判断力を育てる原動力 にもなるのです。

4. 選択肢を発達段階に合わせて調整する

幼児に多すぎる選択肢を与えると、後悔や不満が生じやすくなります。「赤と青、どっちがいい?」のように2つの選択肢に絞る。あるいは「今日はこの3つのなかから選んでね」と範囲を限定するなど、子どもが「自分で選んだ」という実感を持ちつつも、過度な負担を感じない工夫が大切です

親子で手をつなぐ

選択と責任の理解は「段階的に」育つ

ここまでの研究知見をまとめると、子どもの「選択と責任」に関する認知発達には、段階的なプロセスがあることがわかります。

4 〜 5歳頃には、反事実的思考の芽生えが見られ、「もしこうだったら」という考え方が少しずつできるようになります。5 〜 6歳頃には、選択の結果を見た後に後悔を感じる力が育ち始めます。6 〜 7歳頃には、自分が選択の主体であることが後悔の強さに影響するようになり、責任の概念が芽生えます。そして8歳頃になると、選択する前に「後悔するかもしれない」と予測する力が現れ始めます。

ただし、これらはあくまで目安であり、個人差があります。また、日常の複雑な状況では、想定以上に理解が難しくなることも当然あります。
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大切なのは、「この年齢ならこれができて当然」と決めつけるのではなく、子どもの今の発達段階を理解し、少し先を見据えた声かけを重ねていくことです。

FAQ(よくある質問)

Q. 3歳の子どもにも「自分で選ばせる」経験は必要ですか?

A. はい、必要です。ただし、3歳児に選択の「責任」を求めるのは発達的に早すぎます。この時期の「選ばせる」目的は、自律性の芽を育てることです。「りんごとバナナ、どっちが食べたい?」のようなシンプルな二択から始めましょう。結果に不満を言っても、「選んだんでしょ」と責めるのではなく、「りんごにしたんだよね。おいしいね」と選んだ事実を穏やかに確認するだけで十分です。

Q. 小学生になっても文句ばかり言います。発達に問題がありますか?

A. 小学校低学年であれば、選択の結果に不満を言うこと自体は発達的に自然な姿です。後悔を予測する力が育つのは8歳頃からですので、低学年のうちは「選んでから後悔する」ことが多くても心配いりません。ただし、小学校高学年になっても極端に選択を避けたり、常に他者のせいにしたりする場合は、自己効力感の低さや不安の強さが背景にある可能性もあります。気になる場合はスクールカウンセラーなどに相談してみるのもよいでしょう。

Q. 「自分で選んだんだから我慢しなさい」と言うのは逆効果ですか?

A. 必ずしも逆効果とは限りませんが、伝え方には注意が必要です。「選んだから我慢しなさい」という言い方は、子どもの後悔の感情を否定するメッセージになりがちです。後悔を感じること自体は、より良い選択をする力を育てるうえで重要なプロセスです。まず「残念だったね」と気持ちを受け止めてから、「自分で選んだんだったよね。次はどうしようか」と未来に目を向ける声かけのほうが、子どもの学びにつながりやすいでしょう。

参考
*1 O’Connor, E., McCormack, T., & Feeney, A. (2014). Do Children Who Experience Regret Make Better Decisions? A Developmental Study of the Behavioral Consequences of Regret. Child Development, 85(5), 1995-2010.
PubMed Central

*2 McCormack, T., Feeney, A., & Beck, S. R. (2020). Regret and Decision-Making: A Developmental Perspective. Current Directions in Psychological Science, 29(4), 346-350.
SAGE Journals

*3 O’Connor, E., McCormack, T., Beck, S. R., & Feeney, A. (2015). Regret and adaptive decision making in young children. Journal of Experimental Child Psychology, 135, 86-92.
ScienceDirect