「お金の教育なんて、うちは何もできていない……」「有名人の家庭みたいに、特別なことをしてあげられない」。そんなふうに感じたことはありませんか。
でも、その気持ちこそが、お子さんの将来を思う親の愛情そのものです。そして、じつは安心していただきたい事実があります。世界一の投資家と呼ばれるウォーレン・バフェット氏の家庭は、驚くほど「普通」だったのです。
今回は、バフェット家のエピソードをひもときながら、幼稚園 〜 小学校低学年のいまだからこそ家庭でできる、小さなヒントをご紹介します。
目次
幼稚園からできる「お金のはなし」に、特別な教材はいらない
バフェット氏は、親がお金の教育で犯しがちな間違いについて、こう指摘しています。「子どもが幼稚園のころから始められるのに、多くの親は10代になるまで待ってしまう」と。
「え、幼稚園から?」と身構える必要はありません。バフェット氏が大切にしたのは、金融の知識ではなく「よい習慣」です。たとえば、こんなことから始められます。
・貯金箱に硬貨を入れて、貯まっていく様子を一緒に眺める
・「いま買う? それとも来月まで待って大きいのを買う?」と、待つ選択肢を見せる
「待つ」経験には、興味深い研究があります。4歳のときに目の前のお菓子を我慢して待てた子どもたちを追跡したところ、青年期になってから学業成績が高く、ストレスへの対処も上手な傾向が見られました。(アメリカ スタンフォード大学で行われた研究、ウォルター・ミシェル教授ら)*1 この研究は「実験の結果がすべて」ではありませんが、「待つ経験」が子どもの育ちと関連する可能性を示す、有名な手がかりのひとつです。
また、子ども時代の金銭に関する研究をまとめたレビュー論文では、知識を教え込むことよりも、家庭での日常的な関わりや、実際にお金を扱う体験の積み重ねが、大人になってからの経済的な安定と関連する可能性が示されています。(アメリカ ウィスコンシン大学、エリザベス・オダーズ=ホワイト准教授ら)*2
つまり、マネー教育の主役は教材ではなく、いつものスーパーでの親子の会話。すでに毎日やっていることに、ひとつ足す意識でよいのです。
バフェット氏が初めて株を買ったのは11歳のとき。それでも本人は「始めるのが遅すぎた」と冗談まじりに振り返っています。世界一の投資家にとっても、子ども時代の「早くから触れる経験」はそれほど大きかったのです。
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世界一のお金持ちなのに、家はずっと「普通の家」
ウォーレン・バフェット氏は、総資産が20兆円を超えるともいわれる伝説の投資家です。ところが、その暮らしぶりは拍子抜けするほど質素なことで知られています。
住まいは、1958年に31,500ドルで購入したアメリカ・オマハの一軒家。豪邸に住み替えることなく、半世紀以上も同じ家で暮らし続けています。朝食はファストフード、好きな飲み物はコーラ。子どもたちは、自分の家が特別なお金持ちだとは長いあいだ気づかなかったといいます。
バフェット氏は株主への手紙のなかで、オマハの自宅を「人生で3番目によい投資」と紹介し、「最良の投資ふたつは結婚指輪だった」と書いています。お金の神様が最上位に置いたのは、株ではなく家族との暮らしでした。
つまり、バフェット家の子育ての土台にあったのは、高価な教材でも英才教育でもなく、「身の丈に合った、当たり前の毎日」でした。
特別なことをしていなくても大丈夫。毎日の買い物、毎日の食卓、毎日の会話。そのなかにこそ、子どもがお金や暮らしについて学ぶ材料は、もう充分にそろっているのです。

「信じて任せる」。先回りしない親だった
バフェット氏は、自身の父ハワードについて「6歳のころからずっと私のヒーローだ」と語っています。父から学んだ最大のことは「よい習慣を早くから身につけること」だったそうです。
そしてバフェット氏自身も、6歳でガムやコーラを売る小さな商売を始めています。ここで注目したいのは、親が「危ないからやめなさい」と先回りして止めなかったこと。小さな挑戦と小さな失敗を、そばで見守っていたのです。
この「見守って任せる」姿勢には、研究の裏づけもあります。小学生の親子を対象にした調査では、子どもの自主性を尊重する親のもとで育った子どもほど、自分から進んで学ぶ力や学校での適応力が高い傾向が見られました。(アメリカ ロチェスター大学、ウェンディ・グロルニック博士ら)*3
バフェット氏は子どもへの遺産について「何でもできると思えるだけの額を。でも、何もしなくていいと思うほどの額は残さない」と語っています。子どもの力を信じて任せる姿勢は、財産の渡し方にまで一貫していたのです。
「手を出さずに見ているのは、心配で落ち着かない」。その気持ちは、わが子を守りたい親として当然のものです。だからこそ、全部を任せる必要はありません。「今日のおやつ、ふたつのうちどちらにする?」と選ばせてみる。そんな小さな「任せる」から始めるだけで、充分な1歩になります。
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「最高の投資は、自分自身」
投資の神様が、講演のたびに若い人へ伝えている言葉があります。
「最高の投資は、自分自身に投資することだ」
株でも貯金でもなく、自分自身。バフェット氏がその代表として挙げるのが、読書の習慣です。少年時代から図書館の本を読みあさり、いまも1日の多くを読むことに費やしているといわれます。
子どもにとっての「自分への投資」は、もっと身近なものでかまいません。好きな図鑑を眺める時間、夢中でつくる工作、何度も読み返す絵本。「好き」に没頭する時間そのものが、お金では買えない財産になっていきます。
親にできるのは、その時間を「そんなことばかりして」と取り上げないこと。むしろ「面白いね、それ」と一緒に眺めてあげること。それだけで、子どもの自分への投資は、どんどん膨らんでいきます。
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世界一の投資家の家庭にあったのは、特別な英才教育ではなく、普通の暮らしと、子どもを信じるまなざしでした。今度のお買い物で「どちらにする?」とひとこと聞いてみる。まずは、そんなふたりの小さなやりとりから始めてみませんか。
FAQ(よくある質問)
Q. お小遣いは何歳から始めればよいですか?
A. 決まった正解はありませんが、バフェット氏は「幼稚園のころから始められる」と述べています。金額の管理よりも、「自分で選ぶ」「使ったらなくなる」を体験することが目的なので、少額の硬貨から気軽に始めてみるのがおすすめです。
Q. マネー教育の教材やアプリは必要ですか?
A. 必ずしも必要ありません。研究でも、知識の詰め込みより家庭での日常的な体験の積み重ねが重視されています。いつもの買い物や貯金箱など、毎日の暮らしのなかでできることから充分に始められます。
Q. 子どもの「買って買って」には、どう対応すればよいですか?
A. 頭ごなしに断るのではなく、「ひとつだけ選ぼう」「来月まで待ったら、もっと大きいのが買えるよ」と、選ぶ経験・待つ経験に変えてみましょう。がまんの押しつけではなく、子ども自身が選んだという実感が、お金との上手なつきあい方の土台になります。
(参考)
*1 Mischel, W., Shoda, Y., & Rodriguez, M. L. (1989)|Delay of Gratification in Children. Science, 244(4907), 933-938.
*2 Drever, A. I., Odders-White, E., Kalish, C. W., Else-Quest, N. M., Hoagland, E. M., & Nelms, E. N. (2015)|Foundations of Financial Well-Being: Insights into the Role of Executive Function, Financial Socialization, and Experience-Based Learning in Childhood and Youth. Journal of Consumer Affairs, 49(1), 13-38.
*3 Grolnick, W. S., & Ryan, R. M. (1989)|Parent Styles Associated With Children’s Self-Regulation and Competence in School. Journal of Educational Psychology, 81(2), 143-154.









