わが子ががんばった姿を見たら、思わず「すごいね!」と言いたくなりますよね。その気持ちは、お子さまの成長を心から喜んでいる証拠です。そのうえで、じつは「すごいね」のほかにも、子どもの心にすっと届くほめ言葉の型がいくつもあることが、心理学の研究や子育ての実践からわかってきています。
この記事では、いつもの「すごいね」に加えて使える、6つの「ほめ言葉の引き出し」を具体的なフレーズつきでご紹介します。引き出しが増えれば、ほめることはもっと楽に、もっと楽しくなります。
目次
1. 事実をそのまま実況する
もっとも簡単で、もっとも効く引き出しです。上手・えらいと評価する代わりに、見たままの事実を言葉にするだけ。「青と黄色をたくさん使ったんだね」「最後の1ピースまで自分ではめたね」。
評価の言葉がひとつもなくても、子どもは「ちゃんと見ていてくれた」と感じ、それが何よりのほめ言葉になります。
じつはこの方法には、大げさにほめることの落とし穴を避けられる利点もあります。自信の低い子どもへの誇張したほめ言葉は、「次も同じ結果を出さなくては」というプレッシャーになり、挑戦する意欲をかえって下げうることが実験で示されています。(ユトレヒト大学、エディ・ブランメルマン博士ら)*1
事実の実況なら、誇張がないので安心です。
| 評価する言い方 | ➡ 実況する言い方 |
|---|---|
| 「上手な絵だね!」 | 「空をピンクにしたんだね」 |
| 「えらいね!」 | 「言われる前に宿題始めてたね」 |
| 「すごいね!」 | 「10回も跳べるようになったんだ」 |

2. 質問でほめる
「どうやってつくったの?」「どこをいちばん工夫したの?」と、質問の形をした、立派なほめ言葉です。質問されると、子どもは自分の工夫や努力を自分の言葉で話し始めます。
本人も話しながら「自分はこんなに考えたんだ」と気づく。これは、親から与えられるほめ言葉よりも深く残る、自分自身による承認です。
また、能力を評価する言葉よりも、努力や工夫の過程に光を当てる言葉のほうが、子どものやる気を持続させることが実験で示されています。(コロンビア大学、キャロル・ドゥエック教授ら)*2
質問は、その過程を子ども自身に語らせる、一番自然な方法なのです。
3. 過去のその子と比べる
「お兄ちゃんはできたのに」「○○くんはもう泳げるって」と、他の子との比較は子どもを苦しくさせます。
比べる相手は、ひとりだけ。過去のその子自身です。「先月は5回だったのに、もう10回跳べるんだね」「1年生のときは泣いてたのに、今日は自分で言えたね」。
過去のわが子と比べるほめ方は、どんな子にも必ず「伸びた事実」を見つけられます。競争が苦手な子、きょうだいの下で自信をなくしがちな子にこそ効く引き出しです。

4. 「ありがとう」でほめる
「お皿を運んでくれてありがとう」「妹と遊んでくれて助かったよ」。感謝の言葉は、じつはほめ言葉の一種です。しかも「えらいね」と違って上から評価する響きがなく、誰かの役に立てたという実感を子どもに残します。
家族の一員として頼りにされている感覚は、テストの点や競技の結果とは別の場所で、子どもの自己肯定感を支えます。お手伝いのあとはもちろん、「今日も元気に帰ってきてくれてありがとう」でもかまいません。
5. 「ママはうれしい」と気持ちを伝える
「あなたはえらい」という主語が子どもの言い方に対して、「ママはうれしかったよ」と主語を自分にして気持ちを伝える言い方があります。評価ではなく感情の共有なので、子どもは「合格・不合格」を気にせず、親の喜びをそのまま受け取れます。
「発表会、ママは胸がいっぱいになったよ」「あなたが笑ってると、パパも嬉しいな」。気持ちの言葉に正解も不正解もありません。だからこそ、ほめ方に自信がない日でも使える、一番失敗しない引き出しです。
6. 自分で決めたことをほめる
結果でも努力でもなく、「自分で選んだ・決めた」という判断そのものを認める引き出しです。「習いごと、自分で続けるって決めたんだよね」「今日の服、自分で選んだんだ。いいね」など、自分の決断を認められた経験は、「自分で考えて選んでいいんだ」という感覚を育てます。
これから先、進路や友人関係など、親が代わりに決められない場面はどんどん増えていきます。小さな決断を認められて育った子は、大きな決断の場面でも自分を信じることができるのです。
ほめ言葉の引き出し 6つの早見表
| 引き出し | フレーズ例 |
|---|---|
| 事実を実況する | 「最後まで自分でやったんだね」 |
| 質問でほめる | 「すごい!どこをいちばん工夫したの?」 |
| 過去のその子と比べる | 「先月より跳べるようになったね」 |
| 「ありがとう」でほめる | 「運んでくれて助かったよ」 |
| 気持ちを伝える | 「ママはうれしかったよ」 |
| 決めたことをほめる | 「自分で決めたんだね。いいね」 |
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引き出しは、ひとつ増えるだけでいい
1 〜 3歳のころに努力や工夫を認められて育った子どもは、5年後の小学生になったとき、「能力は努力で伸ばせる」と信じ、難しい課題にも楽しんで向かえる傾向があったという追跡研究があります。(シカゴ大学、スーザン・レヴィン教授ら)*3
子どもの未来を育てるのは、毎日の暮らしのなかの小さな積み重ねです。6つ全部を覚える必要はありません。「これなら言えそう」と感じた引き出しをひとつ、試してみてください。
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「すごいね」は、これからも使っていい言葉です。そこに引き出しがひとつ増えるだけで、ほめることはもっと自由になります。事実を実況しても、質問しても、ありがとうと言っても、うれしいと伝えても——どの言葉の奥にも、「あなたを見ているよ」というメッセージが流れています。それが伝われば、ほめ方はもう、充分に成功しているのです。
FAQ(よくある質問)
Q. 実況するだけで、本当にほめたことになるのでしょうか?
A. なります。子どもにとっては「見ていてもらえた」こと自体が承認です。物足りなく感じるときは、実況のあとに「ママはうれしいな」と気持ちをひとこと足してみてください。
Q. 質問すると「別に」「わかんない」と返されます。
A. よくあることなので大丈夫。「ここの色、どうやって選んだの?」と対象をしぼって聞くと答えやすくなります。答えない日は実況の引き出しに切り替えましょう。
Q. 6つの引き出しに、使う順番や優先順位はありますか?
A. ありません。お子さまの性格や場面で選んでかまいません。迷ったら、いちばん失敗しにくい「事実を実況する」から始めるのがおすすめです。
(参考)
*1 Brummelman, E., Thomaes, S., Orobio de Castro, B., Overbeek, G., & Bushman, B. J. (2014)|“That’s not just beautiful—that’s incredibly beautiful!”: The adverse impact of inflated praise on children with low self-esteem. Psychological Science, 25(3), 728-735.
*2 Mueller, C. M., & Dweck, C. S. (1998)|Praise for intelligence can undermine children’s motivation and performance. Journal of Personality and Social Psychology, 75(1), 33-52.
*3 Gunderson, E. A., Gripshover, S. J., Romero, C., Dweck, C. S., Goldin-Meadow, S., & Levine, S. C. (2013)|Parent Praise to 1- to 3-Year-Olds Predicts Children’s Motivational Frameworks 5 Years Later. Child Development, 84(5), 1526-1541.









