あたまを使う/非認知能力 2026.7.13

「仲良しなのに、意地悪される」子どもの“フレネミー”関係。親は切らせるべき?

「仲良しなのに、意地悪される」子どもの“フレネミー”関係。親は切らせるべき?

「〇〇ちゃんと遊ぶのは楽しい。でも、いつも意地悪なことを言われる」。子どもからそんな話を聞いて、胸がざわついたことはありませんか。相手が明らかな「敵」なら、対応はまだ考えやすいもの。けれど、わが子が「大好き」と言っている相手だからこそ、口を出していいのか、黙って見守るべきなのか、迷ってしまいますよね。

こうした「友達のようで、敵のようでもある」相手は、friend(友達)とenemy(敵)を組み合わせて「フレネミー」と呼ばれます

もともとは大人の人間関係を語る言葉ですが、子どもの世界にも、この関係はたしかに存在します。今回は、子どものフレネミー関係に親はどう向き合えばいいのかを、研究知見をもとに考えていきます。関係を切らせる話ではないので、安心して読み進めてください。

「好き」と「つらい」が同居する関係は、大人でも消耗する

はじめに知っておきたいのは、「好きなのにつらい」という関係そのものが、心と体にかける負担の大きさです。

大人107名を対象にした実験では、アンビバレントな友人とペアになった参加者は、支えになってくれる友人とペアになった場合と比べて、嫌な出来事を話す場面での血圧の反応が大きく、そばにいるだけの安静時でも心拍数が高く、不安も高まることが示されました。(ブリガムヤング大学、心理学教授のジュリアン・ホルト=ランスタッド氏ら)*1

注目したいのは、この実験の相手が、対立している相手ではなく「友人」だったこと。仲がよいはずの相手でも、関係にネガティブな面が混ざっているだけで、体は目に見えないストレスを受けているのです。

「意地悪されるくらいなら、遊ばなければいいのに」と、考えてしまうかもしれません。でも、人生経験を積んだ大人でさえ、こうした相手との距離のとり方には悩み、消耗します。まだ経験の少ない子どもが、「好き」と「イヤ」のあいだで揺れて、気持ちをうまく整理できないのは、むしろ自然なことなのです。

だからまずは、「これは迷って当然の、難しい関係なんだ」と、親自身が受け止めるところから始めましょう。「なんで嫌なのに遊ぶの?」というもっともな疑問を、いったん脇に置くだけで、子どもの話を聞く姿勢は変わります。親が焦らないこと。それが、この問題に向き合う最初の一歩です。

黒板の中央から外側に向けて、さまざまな方向や形を示す複雑な矢印をチョークで描いている手

意地悪は「仲良しのなか」でこそ起きている

「友達なんだから、仲良くしなさい」。よく使われるこの声かけが子どもに届かないのには、理由があります。

子どもを対象にした調査では、仲間はずれや無視といった「関係性への攻撃」が、友達関係の外側だけでなく、親しい友達どうしの内側でも起きていることが確認されました。女の子の場合、友達から受ける攻撃は身体的なものより関係性へのものが多く、この関係性への攻撃は、特に女の子の心理的な適応の難しさと結びつきやすいと報告されています。(ミネソタ大学児童発達研究所、教授のニッキ・クリック氏ら)*2

この研究の原題には「友達がこんなだなんて誰も教えてくれなかった」という嘆きが込められています。「友達 = 安全な相手」とは限らない。研究者がわざわざ論文にするほど、友情の内側で起きる意地悪は見過ごされやすいのです。

子どもの世界の“フレネミー”よくある3つの型

① ダメ出し型

「教えてあげてるだけだよ」と言いながら、ダメ出しを続ける

② 仲間はずれ型

「言うこと聞かないと、もう遊んであげない」と仲間はずれをちらつかせる

③ 張り合い型

「私のほうが先にできたよ」と、ことあるごとに張り合ってくる

どれも遊びの延長に見えるため、大人の目には映りにくいのが特徴です。

家庭でも同じことが起こります。「仲良しなんだから大丈夫でしょ」と流してしまうと、子どもは「この気持ちはわかってもらえないんだ」と感じて、口を閉ざしてしまうかもしれません。

子どもが友達への違和感を口にしたときは、事実の確認や相手の事情の解説よりも先に、「そっか、イヤだったんだね」と気持ちをそのまま受け止める。この順番が、フレネミー関係ではいっそう大切になります

手をつなぐ2人の人の形の切り抜きと、長く伸びた影

「切る・続ける」の二択にしない。友情には“質”というものさしがある

では、親はこの関係を終わらせる方向へ導くべきなのでしょうか。じつは、「切るか、続けるか」の二択で考えないことがポイントです。

発達心理学では、友情を「質」でとらえる考え方が定着しています。思いやりや親密さといったポジティブな特徴が多く、対立やライバル意識といったネガティブな特徴が少ない友情が「質の高い友情」であり、そうした友情は子どもが仲間の世界でうまくやっていくことを支えると整理されています。(パデュー大学、心理学教授のトーマス・バーント氏)*3

つまり友情は、「ある・ない」のスイッチではなく、明るさを調節できるライトのようなもの。よい面と困った面の両方を含んだグラデーションで見られるものなのです

この見方を親がもっているだけで、対応の幅は広がります。「あの子とはもう遊ばない!」という強い介入でも、「気にしすぎよ」という放置でもない、中間の関わり方が見えてくるからです。

しかも、友情の質は固定ではありません。成長とともに相手の言動が落ち着くこともあれば、クラス替えを機に自然と距離ができることもあると思えるだけで、親の肩の力も少し抜けるのではないでしょうか。

机に頬杖をつき、隣に座っている男の子のほうを穏やかな表情で見つめている女の子

今日からできる、3つの「足し算」

最後に、具体的な関わり方です。関係を無理に切らせるのではなく、いまの生活に次の3つを足してみてください。

1. 気持ちの「翻訳」を手伝う

「〇〇ちゃんのこと、好きなんだね。でも、あの言い方はイヤだったんだね」。好きとイヤ、ふたつの気持ちを分けて言葉にしてあげるだけで、子どもの頭のなかの混乱は軽くなります。そのうえで「両方の気持ちがあっていいんだよ」と伝えられたら充分です。矛盾した気持ちに名前がつくと、子どもは自分を責めずにすみます。

2. 距離の「グラデーション」を一緒に考える

いきなり友達を辞めるのではなく、「毎日遊ぶのを、ときどきにしてみるのはどう?」など、関係の濃さを段階で調節する経験は、この先の長い人間関係でも生きる練習になります。決めるのはあくまで子ども自身。親は「毎日」「週に何回か」「学校でだけ」のように選択肢を並べる係に徹しましょう。自分で選んだ距離なら、子どもは納得して守ることができます。

3. 居場所をひとつ足す

その友達だけが世界のすべてにならないように、習いごとや近所の遊び仲間など、別のつながりやコミュニティをひとつ用意しておくのもよい方法です。「ここがダメでも、あっちがある」という感覚があるだけで、子どもは対等な立場で「イヤ」と言いやすくなります。

***
フレネミーとの付き合いは、じつは大人になっても続くテーマです。だからこそ、幼いうちに「好きとイヤは両方あっていい」「距離は自分で選んでいい」と知った経験は、わが子にとって一生ものの財産になります。答えを急がず、子どもの気持ちと一緒に歩いていきましょう。悩みながら揺れる時間も、子どものコミュニケーション能力の土台を育てているのです。

FAQ(よくある質問)

Q. 「フレネミー」とはどういう意味ですか?

A. friend(友達)とenemy(敵)を組み合わせた言葉で、友達のように親しく振る舞いながら、意地悪や張り合いなどの敵対的な言動もとる相手を指します。心理学の「アンビバレントな関係」に近い概念です。

Q. 相手の子や相手の親に、直接注意してもいいですか?

A. 直接の注意はトラブルが大きくなりやすいため、おすすめしません。まずはわが子の気持ちの整理を優先し、園や学校で意地悪が続く場合は、先生に事実を伝えて見守りをお願いするのが安全です。

Q. いじめとの見分け方はありますか?

A. 目安は「本人が苦痛を感じているかどうか」です。現在のいじめの定義に回数や継続性の条件はなく、一度の出来事でも深く傷ついているなら相談の対象になります。泣く、登園・登校をいやがる、眠れないなどのサインがあれば、早めに園や学校へ相談してください。

(参考)
*1 Holt-Lunstad, J., Uchino, B. N., Smith, T. W., & Hicks, A. (2007)|On the importance of relationship quality: The impact of ambivalence in friendships on cardiovascular functioning. Annals of Behavioral Medicine, 33(3), 278-290.
*2 Crick, N. R., & Nelson, D. A. (2002)|Relational and physical victimization within friendships: Nobody told me there’d be friends like these. Journal of Abnormal Child Psychology, 30(6), 599-607.
*3 Berndt, T. J. (2002)|Friendship quality and social development. Current Directions in Psychological Science, 11(1), 7-10.